転生クックは人が好き   作:桜日紅葉雪

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息抜きに投稿。
side指定が無い場合,主人公視点です。一応流れとしては

主人公視点
  ↓
別視点
  ↓
ギルドの動き
  ↓
一話終了

を予定しております。それではごゆっくりお楽しみください。



第1話

イャンクック。大怪鳥の名で呼ばれる、飛竜種だ。

飛行、ブレス、尾を振り回す、突撃してくるなどの攻撃でハンターを襲う強敵だ。

だが、強敵といってもあくまで初心者から見れば、だ。

確かに人間など比べ物にならない大きさは脅威だし、生半可な刃物では通らない位鱗も硬い。

しかし逆に、その程度の大きさは飛竜の中では小柄で、それなりの業物なら簡単に切り裂ける。

上位ハンターから見れば、唯のでかい鳥とまで思われているかわいそうなやつでもあるのだ。

そんなイャンクックは、初心者卒業の登竜門のような扱いを受けている。これから出てくる強敵の基本的な行動を教えてくれるイャンクックは、ギルド内の一部で「クック先生」と、呼ばれている。

さて、何故こんなに長々とイャンクックについて説明したかと言うと…俺、イャンクックなんだ。

 

 

 

 

いきなりこんなことを言っても訳がわからんと思う。俺も分けわかんないから皆安心して欲しい。

まず、自己紹介からはじめよう。「草露 日光」これが、俺の名前だ。専業主婦の母とサラリーマンの父というごく平凡な夫婦の間に生まれた、ごく平凡な日本男児だ。特に運動が趣味な訳でもなく、だからといって引きこもっていたりもしない。優秀な幼馴染も兄弟姉妹さえもいない。普通に生きて普通に死にそうな何処にでもいる男。それが俺だ。

だというのに、寝て起きてみればこの体だ。一応それなりにゲームもしていたからこの体が何かはすぐにわかった。飛び方もブレスの使い方も、教えられてもいないのに自然に分かった。全く訳がわからないのに、この体のことだけが簡単に理解できた。全く持って気持ち悪い。まぁ、どうでもいいがね。

とりあえず、夢か現か、人間の俺はどうなったか等等,何にも分からんからとりあえず、生命活動を行おうと思う。なんにしても、生きてりゃどうにかなるのさ。

巣穴から飛び立つ。ゲームでは一つの巣穴にいろんなモンスターが住み着いていたけど、やっぱりこの巣穴は俺専用らしい。遠くの方に別の巣らしき物があった。まぁ、一つの巣に複数の種族なんて、縄張り的にありえんよな。

それはおいておいて、空を飛ぶのは存外気持ちがいい物だ。空から見た世界はとても綺麗だった。暫らく巣穴の上を旋回してみたが、近くに人の住んでいそうな村は無かった。道らしきものはあったから、それをたどっていけば村にはたどり着けるのだろう。まあ、この体でいけるわけも無いので関係無いのだが。

俺が探していた物は村なんかじゃなくて水場だ。これは立派な物があった。大きな川だ。幅だけで見たらアマゾンも目じゃねーだろうなって位の川があった。さっそく行ってみる。やっぱり着地は怖かった。

思わず滑走路に滑り込んだ飛行機みたいな方法で着地してしまった。早くゲームみたいに垂直着陸できるようになりたい。足が痛い…

近くで水を飲んでいた草食動物が驚いて逃げ出してしまった。ごめんよ、こんなふがいないクックで…

まあ、そんな些事は置いておいて水を飲もう。朝から何も口にしてないから早く飲みたいし。

 

 

 

御馳走様でした。うん。この水は美味しいね。

 

「Gyaaaaaaaaa!!!」

 

美味しい水に満足して悦に浸っていると、後ろから断末魔みたいな声が聞こえた。振り向いてみると、真っ白な気持ちの悪い生き物がいた。…あれだ、皆大好きな卑猥竜だ。これの紅い方に従兄弟がやられてたなぁ…とか思いながら眺める。俺が眺めるその先で卑猥竜さんは明後日の方を向き尻尾を地面にくっつけた。そのまま大きく首を撓めて…

 

「Gya!」

 

雷のブレスを吐き出した。…何度見てもおかしいよね、これ。地面を電気が這うだなんて…電気逃げないの??

俺の素朴な疑問をよそに、その雷撃は3方向に真っ直ぐと突き進み、草原を掠めて

 

「うわっ、クックもいる!!」

 

「おい!聞いてねぇぞ!!」

 

「確かに…そんな情報も無かったし、移住してきたのか??」

 

その草原から、3人のハンターが出てきた。太刀女と双剣男と槍男だ。今の話を聞くに、そこの卑猥竜の討伐にでも来てたんだろうか?まあいいや。厄介ごとになる前に俺は逃げるぜ!翼をはためかせて空へと昇る。

ハンターさん卑猥竜の討伐、頑張ってね。

なんて心にも無いことを考えてながら見下ろしていると、明らかにほっとされた。まあ、確かに同時に襲われたら面倒だよね。黒ファラとか黒カタとか…あ、俺は2Gまでしかやってないよ。最近は仕事が忙しくてね…

前世のゲーム事情に思いをはせながら対岸へと飛び様子を見る。え?逃げないのかって?逃げてるじゃん。この川、アマゾンより川幅広そうなんだぜ。

さて、対岸の卑猥竜vsハンター'sだが、結構善戦してる。今、耳を広げてハンター'sの会話聞いてるんだけど、

 

(太刀)「帯電中は私しか攻撃できないよね?」

 

(槍)「一応俺もできるが?」

 

(双)「俺は様子見だな」

 

(太刀)「うーん、じゃあ、距離感が微妙だからあんたが攻撃して。私も様子見に回るわ」

 

(槍)「了解した」

 

こんな感じだ。慎重なパーティーみたいだし、いい感じかな。っとと、太刀さんが潰されたよ。ゲームだと吹き飛ばされるだけだったけど、ここではどうなんだろう?

 

(双)「ライラ!!大丈夫か!!」

 

(槍)「貴様はこっちを向いてろ!!」

 

(太刀)「ッ…・メ…ねが…」

 

太刀使い…ライラさんだっけ?彼女は戦闘不能ながらいまだ息はありそうだ。とりあえず、一安心。いまはイャンクックだけど、元は人間だしね。人死の現場は喜べない。かなりの重症なのか、声が良く聞こえないけど、助かって欲しいね。

しかし、あのランスの人も一人でよく頑張るなぁ…声を上げながら一人で攻撃してるから集中攻撃されてるけど、槍を捨てて盾だけ構えてから、安定感が格段に増した。メイン盾さん素敵!!

卑猥竜は一向に倒れない槍使いさんに業を煮やしたのか、口から白い息を吐き始めた。怒り状態突入…かな?

一発一発の間隔が早くなってさらに攻撃も重くなるけど槍さん大丈夫かなぁ…ほら、卑猥竜も息を吸って…

 

 

「Gyaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」

 

 

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

ウ・ル・サ・イ・ヨ☆

 

切れました。本当に切れました。んだ、あの卑猥竜め、てめえは俺が、ぶっ・殺・す☆

翼を広げる。槍使いさん達はまだ立ち直れていないのか硬直している。…関係ないね。

空をかけ、高速で卑猥竜に接近。ブレスを準備中のところ悪いが、死んでくれ。

足の爪をぶよぶよしている首に食いこませる。そのまま勢いを殺さずにライディング。地面と俺のサンドイッチだ。いくらぶよぶよしていても、流石に俺の重さで押さえつけられた状態で擦られては無事ではないらしい。皮が裂けて血が流れ始めた。

痛そうだ。止血してあげよう。足で蹴り、体を反転させる。傷口がグロイが、関係が無い。喉の奥に熱を感じる。当然だ。俺もブレスを吐こうとしているのだから。傷口に、粘着性の熱ブレスを吐き出す。着弾、炎上。肉の焼ける匂いがする。卑猥竜は悲鳴をあげているようだが、貴様の咆哮で聴覚がいかれてるみたいだ。気にもならない。ふらふらと起き上がった卑猥竜は俺を引き離そうとしているのか、帯電の準備をしている。傷のせいか行動は遅いが。

俺だけよけようと思えば簡単だ。空を飛べばいい。帯電終了と同時に自由落下をすればそれなりにダメージが入るだろう。だが、問題はすぐ近くに槍さんがいると言うことだ。このままでは巻き込まれるだろう。

仕方が無い。追撃はいったん中断しようか…

槍さんを甘噛みで咥えて、双剣さんとライラさんの下へと移動する。此方をキッと睨む双剣さんを無視して、槍さんをゆっくりと下ろす。後ろで放電している卑猥竜を無視して、水を飲み終わった後に食べようとしていた薬草をライラさんの上に落とす。何故薬草と知っていたかは分からないけど、頭の中に情報はあった。問題ない。

不思議そうにしているハンター'sを置いて卑猥竜へと向き直る。逃げ出そうとしているのか、翼をはためかせているが、そうは問屋が卸さない。

 

俺の怒りはまだ静まってないんだよ!!

 

同じく飛び上がりながら、ブレスの準備をする。地上でやるよりも時間が掛かったけど、出来たから問題は無いね。卑猥竜の上をとり、自由落下。急激な加重で卑猥竜の上昇が止まる。それどころか、落下が始まった。駄目押しとばかりに翼を足で掴み、頭にブレスを吐きかける。抵抗が止まり、落下速度も上がった。地面に墜落する寸前で足を離して翼を一振り。空からの転落死を演じた卑猥竜の上にふわりと着陸することに成功する。ハンター'sに自慢するように一鳴きして巣へと帰還する。

あ~スッキリした。…あ、そういえばご飯どうしよう…

 

 

 

 

 

ハンター's side

 

 

双剣使い

あ、ありのままに今起こった事を話すぜ

「フルフルとの戦いで窮地に立たされたと思ったら物凄い紳士なイャンクックに助けられた」

な…何を言っているのかわからねーと思うが 

俺も何が起きたのかわからなかった…

心拍数がどうにかなりそうだった…偶然とか運良くとか

そんなチャチなものじゃ断じてねぇ

凄く恐ろしい物の鱗片を味わったぜ…

 

太刀使い

何とか、歩けるぐらいまでは回復した。

あのイャンクックには感謝してもしきれないわね。

それにしても一体なんなのかしらあのイャンクック…

フルフルを倒しただけならまだ捕食のためかとも思えるけど…

いや、むしろイャンクックはされる側だと思ってたわ…

それに、あの初めの時。私たちを認識していたにもかかわらず、襲ってこずに少し離れた場所で私たちを観察してた。唯のイャンクックじゃあなさそうね。ギルドにきちんと報告しておかなきゃ…

 

槍使い

あ、ありのままに今(ry

…俺の扱い酷くね!俺、今回すげー頑張ったのに!!

にしても、あのクックすげーなぁ…フルフル相手に圧勝だぜ?訳わかんねぇよ…実は強かったんだなぁ…フルフルより上位のモンスターならハンターランク3からかぁ…でもそうしたら、ガノトトスやショウグンギザミより強い扱いなんだよなぁ…流石にそれは無いか…あっ!!そうか、フルフルが過大評価を受けてるんだ!!え?じゃあそんなフルフルに負けかけた俺たちって・・・うわぁぁぁぁ!!

 

ハンター's sideout

 

 

ギルド本部への通達

ポッケ地区森丘にて、イャンクックを確認。環境適応フルフル相手に圧勝する能力を持ちながら傷を負ったハンターを回復させると言う謎の行動を確認。討伐を見送り、調査依頼を出すことを推奨。なお、当件のイャンクックを確認したハンターはライラ(HR4)ポルナ(HR3)レファン(HR3)の3名。ライラは環境適応フルフルとの交戦時に負傷。当件のイャンクックに薬草を受け取り、帰還可能に。レファンからはフルフルの攻撃から守ってもらったとの報告が上がっています。

 

ギルドポッケ支部への通達

該当イャンクックへの調査依頼表を以下の文面で出すことを許可する。

 

     調査クエスト

      森丘の紳士?

    依頼主:ハンターズギルド

    依頼内容:

    森丘にてハンターに友好的

    と思われるイャンクックの

    目撃情報が上がった。これ

    を調査してきて欲しい。な

    お、先手を仕掛けることを

    禁止とする。

 

    報酬金 : 4000z

    契約金 : 1000Z

    指定地 : 森丘

 

    指定モンスター:

    イャンクック

 

    特殊条件

    指定モンスターに対する

    先制攻撃の禁止

 

受注可能ランクは2から。なお、当件のイャンクックに遭遇したハンター3名をドンドルマヘ招集する




いろいろ適当ですが,息抜きということで一つ。
あ、でも変な所を指摘してくださるのはありがたいです。
では,また別のやつが詰まった時にでもお会いいたしましょう。

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