転生クックは人が好き   作:桜日紅葉雪

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1時間前に前編を上げています。まずはそちらからご覧ください。


番外編 流石〇〇〇キノコ。何でもありだぜ…(後編) ※擬人化・クロス要素あり

 

 

~~~~interval story~~~~

 

 

目の前で朱い鱗の怪鳥が人になった。これを見るのは初めてじゃない。いや、直接目にするのは初めてか。けれどモンスターが人になる。これは初めてじゃあない。だって、ランも…

いや、今はこんなことを考える必要はないだろう。ただ、モンスターの時から気の良かったこの赤毛の男が作る料理とやらが、人間が食べれるものを作ってくれるかのほうが問題だ。なんたって、調理器具から作っているのだから。いやほんと、大丈夫なのか?これ?

 

 

 

~~~~interval end~~~~

 

 

 

 

レンド「待て待て待て、料理つったってお前、ここで何ができるんだよ。まさか、その辺のキノコ並べて肉をちぎれば出来上がりなんて言わねぇよな!俺は人間だぞ!?」

 

鳥「落ち着きたまへよレンド君。大丈夫だから大人しく見てろって。さて、まずは包丁からか…」

 

レンド「…は?」

 

ちっとばかし固まったレンド君を無視して鉄鉱石(ゲームでいう11の奥から嘴で取ってきた。)にブレスを吐く。いくら人になったとはいえ、内臓までは変わっていないらしい。いつも道理に吐くことができた。ブレスは鉄鉱石へとあたり、不純物と鉄を分離させる。素手でぶっ叩くたびに、火花とともに鉄の中の不純物が取り除かれていく。当然、俺に鍛冶の知識なぞあるわけもなく、しっかりとした包丁何座できないが、使い捨てにするなら十分なものができた。手を使って形を整えながら何度もぶっ叩く。自分で滅茶苦茶やっている自覚はあるが、まあ、できるんだからどうでもいいや。形になった刃を水飲み桶の水につける。ばきっていう音がしたが、形は変わってないし問題ないな。ヒビなんて見えない。見えないったら見えない!

できた包丁は水につけたまま置いておく。打ち直し云々あるんだろうが、俺に知識なんかないもんね。ばきっと折れてしまわなければ上出来なんだい。

奥から金レイアの燻製肉を取ってきて、水で戻す。ちなみに火力は当然ブレス使用だ。薪が燃え尽きない程度に弱めて打つのは最初は大変だったよ…

その鍋の中に塩を入れる。ちなみにこの塩煮沸消毒した川の水を大量に用意して、塩にして水に溶かす。それをまた塩にして…と繰り返し、ものすごい時間をかけて作った。おかげで苦味もほとんどなくなった。普通に売れるレベルだと思うぞ?

しばらくして肉から出汁が出きったあたりで一旦肉を取り出す。青キノコを入れてネンチャク草で団子状にした薬草も入れる。しばらく煮込んだ後に再び肉を入れて完成!!

あたりに美味しそうな香りが広がっている。約8割が肉の匂いなんだけどな。

 

ラン「う、ぅん…」

 

掬うためのお玉を製作中に、匂いにつられたのかランちゃんが起きた。

起きた後しばらく周りを見渡してコテンと首をかしげた。ちなみにレンド君は俺のほうを呆然と見ている。まあ、人間にはとても理解できない調理法だもんな。鍋なんて水飲み桶を流用してるし。あ、もちろん包丁もどきは取り出してるぞ??

ほんの少し前に巣の前を通りがかったモスを絞めて肉を確保。包丁で切り分けて、熱した岩の上で焼く。状況を理解したのかランちゃんがテクテクとレンド君のほうへと歩いていく。…いちいち動きがかわいい子だな。

 

ラン「ねえねえレンドさん、ここどこですか?」

 

レンド「うぇっ!ああ、イャンクックの巣らしい」

 

ラン「イャンクック??」

 

レンド「あ、ええと、大きな鳥さんだ」

 

ああ、と納得するランちゃん。どうやらランちゃんの中で俺は大きな鳥さんとして記憶されたらしい。

にしても、ちらちらとこっちを見てるレンド君は一体何を気にしてるんだろうね?

 

ラン「でもレンドさん、大きな鳥さんはどこに行っちゃったんですか?ついでにあそこの赤い髪の人って誰ですか?」

 

レンド「ああ、あの人がお、大きな鳥さんだ」

 

おーい、顔が引きつってますよー?

全く、俺は気にしていないって言ってるのに…

 

鳥「おはよう、ランちゃん。大きな鳥さんだよー」

 

ラン「あ、おはようございます。鳥さんって人間だったんですねー」

 

鳥「あははっ、残念ながら俺は人間ではないのですよ。なんかキノコ食べたらこうなっちゃった」

 

ラン「へー、あ、本当だ。鱗がちゃんとあるや。駄目ですよーなにかもわからないキノコを食べちゃったら。毒があることだってあるんですから」

 

鳥「ごめんごめん。ランちゃんは優しいなぁ…あ、スープ作ったんだけど食べる??」

 

ラン「あっ、いただきますー」

 

和気あいあいと話す俺たちと、頭を抱えてうなだれるレンド君。そんな不思議な空間が出来上がった。

木をくりぬいて作った皿にスープをよそい食べる。因みに箸を木を例のナイフで割いて作ってみたが二人は使い方がよく分かっていないようだった。

 

ラン「んー、これ、使いにくいです」

 

鳥「そうかな?慣れればナイフやフォークより使いやすいと思うんだが…」

 

レンド「なんでイャンクックがこんなもんになれるんだよ…あっくそ…」

 

俺のように慣れていないランちゃんやレンド君が箸に四苦八苦している。見ていて楽しくはあるが…

 

鳥「二人とも、指が違うから食べにくいんだよ。ほら。こうやって持ってみろ」

 

指を見せながら肉をつかんでみせる。見様見真似でランちゃんも肉をつかんでみた。

今度は落とすことな持てている。

 

ラン「あ、取れました。…んぐっ。はふぅ…美味しいですねぇ…」

 

レンド「…おっ、ほんとだ。お~、刺したりもできるからフォークよりも便利かもな…」

 

やはり慣れるとそれだけ使いやすくなってくるのだろう。だんだんと食べる速度が上がってきた。

それに比例するように食材はなくなっていく。程なくして俺の用意した料理は全て無くなってしまった。口にあったようで何よりだ。

レンド君とランちゃんが二人で何かを話している。それを邪魔する気にもなれず、少しその場を離れる。まあ、せっかく来てもらったんだし、お土産でも作ろうかな。

 

(所詮、にわか知識だけどね)

 

残っていた金火竜の鱗を数枚集める。俺の手は自分のブレス程度の熱では熱さを感じない。鉄鉱石を置いてブレスを吐きかける。溶けた鉄鉱石を叩いて不純物を取り除く。冷えるのを待ってまた溶かし叩く。何度も繰り返し、溶けた時にオレンジに近い色以外に何も出てこなくなったのを確認して溶けた鉄を掬う。わかっちゃいたが熱くない。1800度を超えているだろうに…まあ、実害無いしいいか。

鱗を溶けた鉄で張り合わせていく。セルフ溶接だ。銀色に輝く鉄を金色の鱗が囲っていく。そうして花のような形になった鱗の上にもう一度今度は量を少なくして鉄を乗せる。その上に腕からとった鱗を乗せる。出来上がったそれは、金色の花だった。中央の強い緋色が全体の色を映えさせている。我ながらきれいだ。冷えるのを待ち、勝手に剥がれ落ちないのを確認する。うん。いい感じ。

次に後ろの無駄に長い髪を切り落とす。ドンドンと束ねて紐にしていく。ほどけないように両端をブレスで溶かし合わせる。…が、溶けない。鉄をも溶かす自慢のブレスは自分の髪を溶かすことができなかった。構わずもう一回。まだまだもう一回。何度か繰り返し、俺の手のほうが熱いと感じ始めたころようやく変化が現れた。そう、髪をライターで燃やした時によくあること。要するに縮れたのだ。ショックを受けた。俺の努力が…仕方がないので鉄でくっつける。紐は赤一色がよかったんだけどなぁ…まあ、我慢。

紐を溶接し(例の如く溶け縮れることはなかった)完成。名前は…えっと…「月光緋彩のお守り」って所かな?気に入ってもらえるといいけど。

 

鳥「ただいまー。お話は終わったかい?」

 

ラン「あっ鳥さん!どこに行ってたんですか?」

 

鳥「いや、ちょっと奥でね。さて、雨も止んだみたいだけど、どうする?」

 

レンド「ああ、それを話してたんだ。どうもここはベースキャンプからあんまり離れてなさそうだし、歩いて帰れるかなって」

 

そっか。まああんまり離れてないのは確かだし、武器も持ってるランド君がいれば大丈夫だよな。

 

鳥「そっか。んじゃあ気を付けて帰れよ」

 

ラン「はい。お昼ご飯ありがとうございました。」

 

鳥「こっちもな。ほかの誰かとご飯食べたの久しぶりだったから楽しかったよ。それと…ほい、ランちゃん。自作で悪いが、お土産だ」

 

ラン「?わぁっ、綺麗ですねぇ…」

 

レンド「なんだそれ…って!これ金火竜の鱗じゃねえか!」

 

鳥「いやぁ…この前襲われてさ。頑張りました。因みに君らが今日食べた肉も金火竜の肉だよ」

 

レンド「マジかよ…」

 

鳥「マジ」

 

ラン「???」

 

ランちゃんは俺たちが話している内容がよく分からなかったのか首をかしげている。

まあ、貴重なものだとは思わないよねぇ。綺麗だけど。

 

鳥「まあ、使った物が貴重ってこと。俺の手作りだから当然だけど、世界に一つしかないからね。大事にしておくれ」

 

まあ、ショックではあるけどその辺に捨ててくれても構わんのよ?レンド君が許すとも思えないけど。

 

ラン「はい!」

 

鳥「んじゃあ二人とも。またね」

 

レンド君は驚いてはいたようだが、はっと我に返って挨拶を返してくる。ランちゃんもそれに続いて俺が飛んできた道を戻っていった。多分もう人化することはないだろうけど、楽しいひと時だったな。二人を見送って洞窟に戻る。

洞窟の端に転がっていたドキドキノコを無造作に放り込む。久しぶりだったけど、楽しいひと時でした、っと。

すぐに視界がぐるっと回って力が抜ける。そうして一瞬ののちに、俺の体は怪鳥に戻っていた。

怪鳥に戻った俺の耳が最初に聞いたのは、鳥竜種の鬨の声だった。

 

 

 

 

 

~~~~side out~~~~

 

 

 

 

 

~~~レンド side~~~~

 

 

綺麗なお守りを貰ったランは、嬉しそうに山道を駆け下りていく。

最初、あの怪鳥にあったときはどうなるかと思ったが、結局なんだかんだ言って俺もランも心から楽しんだんだと思う。…まさか、猫人族以外のモンスターが作る料理にうまいと思わされるとは思わなかったが…

それにしても…と、考えがあの最後にもらったお守りに移る。

 

(あれは間違いなく金火竜の鱗だろうな。俺も本物を見たことあるわけじゃないけれど、同じ黄色主体の色でもゲネポスのような俗な色じゃない。もっと神々しい色だった。じゃああのイャンクックが仕留めたのかと聞かれると、疑問しか残らないよなぁ…)

 

まず、種族的に無理だと思う。どこの世界にリオレイアを倒すイャンクックがいるというのか。しかもリオレイアの中でも別格の強さを持つ金レイアだ。まあ、無理だわな。じゃあ、なんで持っているのかってことではあるが…と、そんなことを考えていたからだろうか。俺がそれに気づいたのは致命的に遅すぎた。

 

ガサガサっ!

 

近くの草が不自然な音を立てた。ランが動きを止めて、俺の近くに寄ってきた。しかし、聞こえる足音はどう考えても複数だった。ゆっくりゆっくりと下っていく。暫くして定期的に聞こえてきていた音が消えた。嵐の前の静けさだろうか。無意識のうちに息をのむ。意を決し、次の一歩を踏み出した瞬間、狩人の声が響き渡った。

 

「ギャオッ!ギャオッ!ギャオーッ!!」

 

同時に周囲からランポスが現れる。数は、1,2…6匹。

自分一人なら何とか切り抜けることはできるだろう。しかし、今は後ろにランもいる。この状態では…

迷っていると、ランが声をかけてきた。

 

「レンドさん、私を置いて逃げてください」

 

「なっ…できるかっそんなことっ!!」

 

こうして話しているうちにも、ランポスたちの包囲網はだんだんと縮まってくる。急がないと、強行突破も難しくなるだろう。やるなら、今しかないだろう。

 

「レンドさん、忘れていませんか?私だって、ランポスなんですよ?」

 

「それでもッ、それでも今の君は、女の子だ。行くぞっ!」

 

ランの手を引いて思いっきり走り出す。腰から抜いたハンターナイフを大きく振り、前方のランポスを無理やりに押しのけて走る。それでも、俺たちの足でランポスから逃げれるわけもなく、もう少しで最初に怪鳥とあった水辺というところで追いつかれた。とびかかってきたランポスをなんとか盾でいなすも足が完全に止まる。

 

「ランッ、先に行け!」

 

そう言って、ランを水辺のほうに突き飛ばした。そのままランポスのほうへ向きなおる。ここからは、背水の陣だ。そんな覚悟で飛びかかってくるランポスを迎え撃とうと腰を下ろす。そんな俺の目の前で…ランポスは、爆ぜ消えた。

爆風に驚いたランポスたちが完全に動きを止めた。空から飛んできた第二の火玉に巻き込まれてもう一匹が爆ぜ散る。それとほぼ同時に、もう一匹のランポスが、空から降りてきた何かに踏みつぶされて絶命。あまりのことに動けない俺の前に、舞い降りた怪鳥の咆哮が聞こえた。

ちらりとこちらを向いた瞳に、

 

(かっこいいじゃん?)

 

と、あのいけ好かない笑顔とともに言われた気がした。それにニヤリと笑い返して、押し出されたまま動いていなかったランの手をとって走り出す。

後ろで聞こえる爆音をBGMに、俺たちはベースキャンプに飛び込んだのだった。

 

 

 

~~~~番外編 end~~~~

 

 

 

 




ということで番外編でした。もうちょっとランとレンドにスポット当てたかったかな…
多分今日もう一本本編を上げると思うのでそちらもぜひ見てくださいね。
では!

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