転生クックは人が好き   作:桜日紅葉雪

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唐突にお久しぶりです。なんやかんやで進級できてしまった桜日紅葉雪です。
とりあえず前回言ったように今回はほのぼの回です。最後以外。
あとなんか言うことあったっけ?まあいいか。ではどうぞ~


第11話

目が覚めると、俺の背中から何かを叩くような音が聞こえた。同時に走る小さな痒み。

何事かと後ろを向いてみると、二足歩行の猫が数人で俺の背中をつるはしのようなもので叩いていた。一匹の猫が俺の背中から採ったのであろう朱い鱗の欠片を誇らしげに掲げていた。周りの猫はそれを見て無邪気に拍手している。

猫好きの俺としては和む。和むんだが…それで勢い付いてつるはしを振るいまくるのはやめてくれないかね?すごく、痒いです。

思わず身震いしてしまったことで、起きているのがばれたのか、猫たちは一斉に俺の背中から逃げ出して行った。途中で一匹の猫が凸凹している俺の背中で躓いて落ちていったので尻尾でからめとってゆっくりと地面に下ろしてやる。しっぽに絡まった瞬間ビクッと震えていたが、下ろしてやるとこちらに一礼して逃げ出して行った。なんか、いい気分。

その日はその後特に何もなく普通に水飲んで虫とキノコを食べて寝た。…そう何度も出歩くたびに騒動に巻き込まれると思うなよ?

 

次の日目が覚めると、また猫が寄ってきていた今度は起きるのが早かったらしく、俺の背中に縄を投げている所だった。彼らがとっていくのは所詮鱗の欠片でしかなく、一日もたてば治ってしまうので、別に採られてもかまいやしない。痒いけど。うまく縄がかからずに四苦八苦している彼らをポイポイと嘴で背中に乗せていく。アタフタする猫たちだったが、俺が危害を加えないとわかると

 

「にゃほーい」

 

なんて鳴きながら投げられていた。うん。可愛いな。

背中から数枚の鱗の欠片を取った彼らは背中から翼を伝って地面に戻ると、俺の前に整列して一礼してからワイワイ…というかにゃんにゃん騒ぎながら楽しそうに帰って行った。

その日の昼すぎ。ご飯を食べ終えて一服していた俺のもとに、朝方来ていた(?)猫がやって来た。

どうしたのかと思いながら見ていると、身振り手振りを加えながら話し始めた。内容は要約するとただ一つ

 

「子供たちと遊んでくれないかにゃ?」

 

だった。是非も無し。無茶苦茶遊びたい。

首を振って肯定の意を返す。猫は嬉しそうに礼をした後、子供たちを呼ぶのか、一旦戻っていった。…下手するとそこらの人間より礼儀正しいんじゃないかと要らない事を考えつつ、子猫を待つ。多分今俺はものすごく浮かれているんだろうなと思う。まあ、仕方ないよね。可愛いは正義!

5分ぐらい待っていると、地面からひょっこりと子猫が顔を出した。可愛い。その隣にも子猫が出てきた。超かわいい。そのまた隣にも、また、また、また…もう、どうしよう。可愛いが止まらない。

最終的には16匹の子猫がやって来た。

なんだここは、全て遠き理想郷(アヴァロン)か??

俺があまりの光景に固まってじっと子猫たちを見つめていると、子猫はその純粋な瞳で俺を見つめ返してくる。可愛い。

俺がどうしようかと首をかしげると、それにつられて子猫も首をかしげる。どうしようもなく可愛い。

時々手をなめて顔にこすりつける猫らしいしぐさをする。可愛すぎる。

脳内が可愛い一色に染まった俺は、とりあえず考えるのをやめて、子猫との触れ合いを楽しむことにした。朝の猫たちにやったように、一匹一匹をくちばしで背中に放り投げる。最初の一匹がビクッと怯えたものの、投げられてからは早かった。投げられては我先にと翼を伝って駆け下り、もう一度とせがんでくる。数匹の子猫は、ゆらゆら揺れる俺の尻尾を捕まえようと走り回っている。尻尾がぶつからないように細心の注意を払いながら、捕まらないように大きく動かす。尻尾が頭上を通るたびにキャイキャイ鳴く子猫がすごい可愛いです。

最後は洞窟の中で、16匹の子猫を鬼にした追いかけっこをしていた。本気で逃げるわけにもいかないので、ギリギリのところで逃げ続ける。暫くして捕まっちゃたんだけど、どうして人間にかかわらず小さい子って捕まえるときに抱き付くんだろうね?可愛すぎて足が止まり、すぐに16匹皆に捕まってしまった。その後はみんなでお昼寝時間。最初は俺の体の上で楽しそうに大騒ぎしてたのだけど、1人、また一人と眠りについて、最終的には俺を寝床に全員でお昼寝だ。おやすみ~。なんて眺めてたんだけど、結局俺も眠くなってしまった。まあ、ランポスみたいな肉食竜も近くにはいないしいいか。俺も寝ることにしました。おやすみなさい。

目を覚ますと、日がだいぶ傾いていた。背中の子猫たちはまだみんな寝ている。俺は、子猫たちの親が迎えに来るまで再び眠りへと落ちた。ああ、子猫が温かい…

 

翌日、目が覚めると猫たちが俺の周りでワイワイ騒いでた。

俺が起きたのに気付くと、こっちによってきて背中にあげてほしいと言ってきた。別段断る理由もないので乗せてあげる。今日も今日とて「にゃほーい」だ。そんなに楽しいのかね?まあ、俺は眼福だけど。

それにしてもワイワイ騒ぐのを見てるのはすごい楽しいが、痒いんだよなぁ…

 

「ありがとうにゃ!」

 

まあ、こうやって喜んでくれるからそれをこらえる価値はあるけどね。

猫さんたちを見送ってご飯を食べて帰ってくると今度は子猫たちとのふれあいだ。今日は1匹増えて17匹の子猫と遊んだ。

皆を乗せて空を飛んだら、大好評で何度もせがまれてちょっと大変だった。と言うか、空で落ちようとするのはやめてくれ。肝が冷えるから…

そんなこんなで空の旅が終われば昨日と同じように鬼ごっこをした後みんなと一緒にお昼寝。

親猫さんがくるまで一緒に眠る。なんという至福。

 

暫く、こんな日が続いた。猫さんたちとも仲良くなり、いつの間にか、

 

「赤色の旦那~、今日も上げてくださいニャ~」

 

なんて、変な呼称と一緒に呼ばれるようになった。まあ、こっちの言葉もわかるみたいだし、さみしい気持ちも殆ど薄れたからいいこと尽くめなんだけどね。そういえば今更だけど、俺の鱗なんてなんに使うんだろうか?まあ、毎日取りに来るくらいだし需要があるんだろう。俺の気にすることでもないか。

思考を打ち切ってご飯を食べに行く。水飲み場で猫さんにあって、手を振られた。尻尾を振りかえすことで返事をする。木の実を取りに来ていたのだろう。ひとしきり手を振ると足元の袋を背負って帰っていった。何とも平和な光景である。

う~ん、ここ最近大変だったからなぁ。今までの不運がこれで帳消しになった気分だ。

…なんて言ってたら、また何かしらおこりそうだけど。

 

(まあ、そうなったとしてもこの目の前の友人(友猫?)位は守りたいね。うん。せっかく力があるんだし、守れるなら守らないと。)

 

そんな風に思っていた俺は、どこかで忘れていたのかもしれない。この世界で俺の力なんて中途半端もいいところだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今、強者の前に、倒れ伏している…。

 

「Gurlaaaaaaa!!!」

 

咆哮とともに金の模様の浮き上がる黒い拳が振りかぶられ、

赤色が咲いた。

 

 

 

 

 

 

前日談

 

猫人族、酒場にて

にゃ~にゃにゃ~ 日の昇る時に~

にゃにゃ 赤い神鳥が目覚める~

にゃ~にゃ~ 我ら猫人~ その背に乗り~

にゃ~あ~ 神の欠片を賜る~

神鳥は子に寄り添い~ にゃあ~ 子は神鳥の加護で眠る~

にゃにゃ~ 神鳥は~ 我らに~ にゃあ~

もっとも~ 近い~ にゃ~ 守り神~

来る禍に~ にゃ~ 立ち向かうもの~

 

猫人族B「いい歌にゃね。何の歌にゃ?」

 

猫人族A「赤色の旦那のお話にゃ~」

 

猫人族B「にゃ~、なるほどにゃ。けど赤の旦那は神鳥っていうより、気のいい兄貴って感じにゃな~」

 

猫人族A「にゃ~、そんな気もするけど、それじゃあ語呂が悪いにゃぁ…」

 

猫人族B「確かににゃあ~…そういえば、来る禍ってなんにゃ?」

 

猫人族A「猫髭の知らせにゃ。最近嫌な予感がするんだよにゃあ…」

 

猫人族B「お前の予感は良く当たるからにゃあ…あ~心配になって来たにゃ」

 

猫人族A「あ~なんかごめんにゃ。ほら、酒でも飲んで忘れるにゃ」

 

猫人族B「おうにゃ!」

 

異常現象調査班

 

ハンターK「おい、このケルビのここ…」

 

ハンターT「んあ?その毛がどうした?」

 

ハンターK「ケルビの毛よりも黒いんだが…それに、異常に硬い。」

 

ハンターT「…ちょっと見せてくれ」

 

………

 

ハンターT「やっぱり固いな。剥ぎ取りナイフでも断ち切れない…」

 

ハンターK「報告…だな」

 

ハンターT「そうだな…」

 

ハンターY「おーい、そっちにブルファンゴが行ったぞー!」

 

ハンターK&T「「え?」」

 

ドスッ!

 

「「ブルッファア!」」

 

ギルド本部への通達

あー、ギルド本部へ臨時連絡。ギルド本部へ臨時連絡。

小・中型モンスターが大量に死亡していた件ですが、沼地・火山と来て、砂漠・密林・雪山でも同じ事象が確認されました。このままこの現象が移動を続ければ、おそらく次は…森丘です。

正直、頭痛が止まりませんが、古龍観測隊を派遣したいので許可をお願いします。

善性イャンクック、ここ最近大人しくしていたと思ったら特大の問題を持ってきそうなんですが…胃薬って、経費に入りますか?

 

ギルドポッケ支部への通達

…はっ、あ、はい。了解です。ギルドマスターの認可において古龍観測隊派遣を許可します。

ああ…ここ最近ようやく通常営業に戻れたと喜べたのですが、そうですか、またですか。とりあえず、平穏無事に済むことを祈りましょう。

本来は、小・中型モンスターの大量死亡は異常事態も異常事態で口の悪い言い方をすればヤベェどころじゃないのですが…

ゴホン。真面目なお話に戻りますが、調査の結果沼地・火山では報告後異常現象は起きていないようです。このことからやはりこの異常事態は、大型モンスターの移動が原因だと考えられます。ギルドにはこのような現象の資料はありましたが、原因については信憑性のある資料が見つかりませんでした。調査班の全滅から考えれば、この原因に殺されてしまったものと思います。また近隣の村から、金色の牙獣種を見たという報告が上がってきているので、このモンスターについても分かり次第報告します。当然ながら、異常現象のあった場所には当面立ち入り禁止です。ハンターの皆様から苦情があるかと思いますが、異常現象以外については話さないようにお願いします。

願わくば、森丘で何かしらの進展があることを祈り…たくはないですね。不謹慎なのは理解してますが。

あ、胃薬は自費でお願いしますね。




と言うことで、次回は戦闘ですね。今回も血が出ますよ。ドバドバ出ます。…多分。
1週間以内にあげられたら褒めて欲しいな(チラッ

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