転生クックは人が好き   作:桜日紅葉雪

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今回は早いぞ!?

えっと、戦闘はないですが人によっては残酷な表現に感じるかもしれません。一応注意しておいてください。


第14話

延々と吹き出し続ける溶岩が、火山を赤く紅く照らし出している。

火口を見下ろすその場所に、何かの羽ばたく音が聞こえて来た。

背に溶岩吹き出す光景を背負い、玉座に降り立つのは一対の龍。

灼熱よりも、溶岩よりも煌々と輝く赤き炎帝。

蒼い炎を思わせる煌めきを放つ青き炎妃。

番の古龍は、遠き西の地を眺めながら

重く響く

高く通る

大きな咆哮をあげた。火山が脈動する。動乱は近いと。一対の炎龍の背後で、一際大きな噴火が起こった。

 

 

(飛べないって、不便だな…)

 

金獅子の死体を咥えたまま、俺は歩いていた。目的地は飛べば直ぐとは言え、翼を失った今足を使って歩いていくしかない。そうして気付く意外と歩くには遠い距離。

金獅子を咥えての移動なので、移動速度はさらに輪をかけて遅くなる。というか、筋肉の塊だからだろうとても重い。筋肉って脂肪の何倍の重さだっけ?6倍?よくは覚えてないけど、これだけの大きさになると相当重量に違いが出てそうだ。

肉を食いたいといったが、血抜きはしてない。というか、やろうとしたけど無理だった。嘴じゃあ鈍器で殴ってるようなもんだから脈を裂けないし、ついばもうにも筋肉が固すぎて無理。爪はそもそも刺さらないで、血抜きなんてしようがないのだ。

だから移動中。巣に向かってるわけじゃあない。ゲームでいうエリア1だ。なんでかっていうと、話の流れで分かるかもしれないけど、血抜きのため。

 

(ああ、歩く度に体の節々が痛い…早く肉食って寝たいなぁ)

 

なんて考え事していると、どこからか声が聞こえて来た。

…と言うかこの声

 

「赤色の旦那~!ご無事ですかにゃ!?」

 

なんていいながらこちらに走り寄ってくる猫人族。さっき俺を庇ってくれた子だ。

猫人族は俺の近くまで走り寄ってくると、俺の咥えている金獅子を見て毛を逆立てた。

 

「ふにゃ!…にゃー、さすが赤色の旦那。大戦果ですにゃ」

 

そういいながら、息絶えた金獅子をつんつんとつつく猫人族。

苦笑いしながらも、この先のエリアに行くからそこに刃物を持ってきてほしいと頼む。

不思議そうにしてはいたが、一応OKはしてもらえた。あの猫人族の無事も確認できたし、心置きなく自分のことに集中できそうだ。

少しだけ軽くなった足取りで、俺はエリア1を目指した。

 

 

 

 

 

 

てなわけで着きました。エリア1。水飲んでたアプトノスさんは驚いて向こう岸に行っちゃったけど、ごめんね。

数分もしないうちに猫人族がやってきた。…10人くらい。それぞれがナイフのような刃物を持っている。猫人族に頼んで金獅子の首を切ってもらう。血管まで切らないといけないから割と深くまで。

と、頼んだのはいいけれど、やっぱり猫人族の力では金獅子の皮膚を破れなかった。仕方がないので猫人族からナイフを借り、金獅子の牙の上にナイフを当てた状態で固定し、俺の嘴で上からぶっ叩いた。

全体から見れば微々たる量ながら結構な勢いで血を出しつつ牙が取れた。長さも結構あるし多分いけるはずと、今度はその牙を嘴で宛がい、それを上から足で押さえつけた。体重が乗っていくごとにゆっくりと牙が金獅子の首に食い込んでいく。中ほどまで入り牙が固定されたのを確認して足を離して上から嘴でぶっ叩く。牙が、ズブリと音を立てて首に突き立った。猫人族に牙を抜いてもらう。

 

キュポンッ

 

と、栓の抜けるような音がして、金獅子の首から噴水のような血が立ち上った。すかさず首を水の中に沈める。当然入っていけば入っていくほど深くなっていくため、首が下を向き、少しずつ川の水に血が流されていった。水につけた理由は傷がふさがらないようにするためだ。人間がリストカットするときも、ただ切っただけでは致死量の出血が起こる前に傷口が固まり止血されてしまう。しかし、風呂場でもなんでも水につけていれば傷口が固まることはなく、血がなくなるまで出ていくというわけだ。そもそもかさぶたができるのだって血の中にある血小板とかなんかがくっつきあってできてるみたいだし、今回みたいに流水があれば問題ない。

血抜きをしている間暇なので、近くに生えている薬草をついばんだ。やはりすぐに傷がなくなったりはしないが、痛みは引いて行っている。プラシーボ効果なのか本当にすごい草なのか…よくはわからないが、まあ便利だから良しとしよう。アオキノコと一緒に食べたら効果上がったりしないかな?またいつか試してみよう。

薬草を食べても血抜きはまだ終わっていない。金獅子の周りだけ川の色が変わり、なんか肉食魚っぽい魚がよってきた。アロワナとかアロワナとか。

あまりにもたくさん来たので一匹食べてみた。…美味しかった。美味しかったけど、口の中で弾けて小骨が喉に刺さっていたい。破裂アロワナだったんだね…金獅子とは別の位置にブレスをはいて喉の小骨を焼却処分する。…小骨をとるためだけにブレスをはいたイャンクックって多分俺が初めてだと思う。仕方ないね。痛かったんだもの。

肉食魚がやってきたことでまた水竜なんかが来るかと思ったがそんなことはなく、しばらくして川の色は元に戻った。金獅子の体はやせ細り、ムキムキマッチョといった感じだったからだが、血の抜けたことで体積が減り、皮がブヨブヨするほどにまで余っている。何とも不細工な格好だ。血の抜けたことで筋肉の重量も落ちたのか、持ち上げなおすとすごく軽かった。これなら持ち運びも楽になりそうだな。さっきの薬草で歩くのも楽になったし。

猫人族にお礼として先ほど使った牙をあげて別れた。家に帰ったら飯だな。中の肉をどうやって食うかあんま考えてなかったけど、楽しみにしよう。流石にさっきの血抜きで全て血がなくなったわけではないようで、まだごく少量ながら血が出ている。生のままではあまり調理保存できないだろう。

 

(いったん全身に加熱を行ったほうがいいかな?)

 

けど、ブレスじゃあ皮膚も焼けなかったしどうしたものかね?

巣についた俺はとりあえず物は試しと金獅子に食らいついた。キチギチと嘴を閉じようとするが、皮が千切れる気配はない。余った部分が逆に千切りにくくしているようだ。

どうしようかと考えていると、一つだけ閃きがあった。とりあえずやってみようと皮にブレスを吐く。しばらくすると、縮れてしわしわになる。それを確認してブレスを吐く位置を変える。1時間もこの地味な作業を続けていると、全身の皮が縮れ、皮が余ってブルドックのようだった体が、ミイラのようにカピカピになっていた。その状態で食らいついてみる。先ほどと違い、皮ではなく肉をかんだブニョッともコリッともつかない感触が俺に伝わってくる。金獅子の体が浮かないように頭に片足を乗せ、そのまま首を思いっきり跳ね上げるとブチィという音を立てて、肉が剥がれた。気をよくした俺は、そのまま顔以外の殆どを千切り取った。残ったのは骨だけ。内臓なんかは肉を千切るときに一緒に千切れたり引っ付いてきていたりする。結構スプラッタな光景だが、俺はもう見慣れてしまった。引っ付いたりくっついたりしている内臓を丁寧にとり、内臓はそのまま俺の胃へボッシュート。苦味が強かったが、砂肝のような触感が楽しめた。うむ。うまいな。残った肉はいったんひとまとめにする。その中から大体半分ほどを塩漬けにして燻製。残りをいつもの岩のプレートで焼いて食べる。全部そのまま食べるのももったいないので、一部は肉をミンチになるまで叩き潰し、粘着草とマイルドハーブ、これまたミンチのレアオニオン(一個しか見つけてない)を混ぜて、ハンバーグのようにして食べる。油を強いていないせいで、プレートに肉が引っ付くが、汚いとも思わないし、後で削って食べるさ。肉の味だが、うまいといえばうまかった。ただ、筋肉だからか結構筋っぽく、細かい処理ができない現状ハンバーグにしたのは失敗だった。まあ噛めば噛むほど出てきた肉汁はとてもおいしかったのだけれど。

ひとしきり食べて満足した俺は、デザート代わりと、金獅子の目を食べてみた。父さんが魚の目玉がうまいといって食べていたのを思い出したからだ。あの時の俺は気持ち悪いと食べなかったが、まあもっと気持ち悪いものも見てる俺は、別段に忌避感を抱くこともなく普通に食べた。

それよりも眼球を取り出す時に、視神経がブチブチィと音を立てて千切れたのが少し気持ち悪かった。で、目玉を食べてみた感想だが、なんだかイクラのようだった。口の中でぷちっと弾け、中身のゼリー状の液体が口の中に広がって、生臭い匂いを立てたが、味は上手かった。後で口を洗っておこう。匂いが残りそうだ。プチッという感覚が気に入った俺は、ちゃっかり両目とも食べて、満腹感に幸せを感じながら眠りについた。

 

 

 

 

 

 

で、目が覚めた。朝飯は骨と昨日の肉。骨はマ王のやつよか固くなかったから普通にせんべいのように食べた。

美味しいね。んで、負傷時恒例現状確認。昨日損傷軽微だった首より上。当然問題なし。違和感もないし、水に映った顔にも異状なし。次、胴体および足。…若干太くなった気がする。大分格上の肉だろうし、その影響だろう。後で試してみる必要あり。痛み等は特になしっと。はい、お次は本命の両翼。右翼、問題なし。こっちも若干翼膜が厚くなってる感じはあるけど、違和感はない。左翼…異状あり。

うん。問題はないけど異状はある。っていうか、治ってた。半分ぐらいなくなってた翼が治ってた。早くね?いくらなんでも早くね?マ王のとき骨がくっつくまで何日かかったよ…あー、翼膜の厚みは見たところ右翼と同じくらい。こっちは脚力とか以上に注意して試してみよう。あれだけ死と隣り合わせの戦いだったのに傷跡は直ぐに癒えてしまった。いいことではあるがなんか釈然としない。…考えても仕方ないか。とりあえず、確認がてら水飲んでこよ。

 

 

猫人族side

 

猫人族長「さて皆の衆、よく集まってくれたにゃ」

猫人族B「いえ。それで族長、話とはなんですかにゃ?」

猫人族長「うむ。これにゃ」

猫人族A「…なんですかにゃ?何かの牙に見えるのですが」

猫人族長「金の悪魔の牙にゃ。赤い竜に頂いた物にゃ。これをどうするか今日は話し合ってもらいたいにゃ」

 

猫人族たち「ザワ・・・ザワ・・・」

     「ヒキワケニシネェカ…」

     「ドォーミノー!サッサトヤルノデェース!」

     「ヤル?エィッ!」

     「キャー、エッチー!」

     「オ、オレハワルクヌェ!」

 

猫人族I「うるせーですにゃ。普通にこの里のシンボルにでもするのですにゃ…」

総員「それにゃ!」

 

以降この村は、猫人族たちの間で金牙の村と呼ばれるようになった。

 

 

ギルド本部への通達

なんかアレがラージャン食べてたらしいですけど、それ以外は平和でした。

ラージャンの肉って食べたことある人いるんですかね?そもそも目撃情報が少なすぎて研究も進んでないみたいですし…

あ、アレが撃退したもう一頭のラージャンはしばらくして衰弱死したようです。古龍観測隊が死体持って帰ってるみたいですから、研究が進むといいですね。

 

ギルドポッケ支部への通達

確かに平和ですね。いいことです。

ついにアレ呼ばわりですか。まあ、イャンクックの皮をかぶった何かですし問題ないですかね。ラージャンの肉なんて開拓民の皆様ぐらいしか食べてないんじゃないですかねぇ?少しだけ食べてみたい気もします。古龍観測隊が引き取ったラージャンはギルドで引き取りました。丸々一匹ですから大分進みそうですよ。…どっかの王女様がコート作るから皮よこせなんて言ってますけど…

 

 

 




平和だ…次の次で森丘はいったん終了かもしれん。
先生の異動とか、ギルドも苦労しそうですねぇ・・
先生も新しい生徒を迎えるでしょうし…
先生もギルドも頑張ってください。

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