ここの質問はアンケートでは?とご指摘いただいたので活動報告に移させていただきます。詳しくはそちらで。
では、本編どうぞ。
雪の吹雪く霊峰の山頂付近。吹き付ける雪で白に覆われた世界。その中で、同色に、しかし周りに溶け込まない確固とした色として、煌めく蒼白の光が動いていた。
ゆったりとした動きで歩く蒼白の光は突如嘶き、堂々そびえる一本角に光を集めた。
同時に光へと飛びかかる色白い鳥竜種。
吹雪の音をかき消す轟音、
目を焼き尽くさんばかりの極光。
唐突に起きたその現象が止んだ時、その場には鱗を黒く焦がした鳥竜種の死体が転がるばかりだった。
(ん…朝か…)
いつもの如く目を覚ました俺は、全快して久しい羽を大きく伸ばした。
痺れともいえない小さな振動を羽に背に感じながら起き上がる。
巣に異常なし、体に痛みなし、天気も快晴。
さあ、今日ものんびりと日常を過ごそう。
(…いつもこんなこと考えたりしないんだけど、フラグじゃないよね?)
よぎった不吉な考えを振り払うように頭を軽く振り、外へと飛び出す。
まずはとりあえず…ご飯だね。
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さあ着きました。蟲のたまり場。ずっとおんなじ所を食べてたら虫がいなくなっちゃいそうだから、いろんな所を回って複数のたまり場を見つけておき、そこに何日か空けながらローテーションで回してる。
今日は、ゲームでいうところのベースキャンプのすぐ前。川の畔にある蟲のたまり場だ。
初めてポルナレフ'sにあったところだな。そんな思い出の場所にゆっくりと降り立つ。ゆっくりと離着陸なんてあの時には考えられなかったなぁ…って、まだ一月位しか経って無いんだけどね。
先客のアプトノスさんに(気持ちだけだが)挨拶をして、俺は食事を開始した。
(ご馳走様でした)
ある程度食べた俺は水を飲みに川へ近づく。透き通った川は、俺の姿をきれいに映し出す。
赤く染まった鱗に大きな翼、少し細めの足に巨大な嘴のある顔。
人間だったはずの俺が、怪鳥になり、いつの間にか怪鳥からも外れた存在になった。俺の体の事なのにほとんど何もわからない。ま、なるようにしかならないからどうでもいいね。
不思議なことに、自分の身に起きていることについて不安はない。
そんな事より、ちょくちょくやってくる俺に喧嘩を売ってくる大型モンスターの方が気がかりだ。てか、あいつらなんでこんな所にしょっちゅうやってくるんだか…
そんなことを考えながら、水を飲む。嘴をつけると同時に水面に波紋が広がり、俺の姿は見えなくなった。
ポチャン
と小さな音が響いた。俺の水を飲む音でもアプトノスさんが川を渡る音でも無い。もっと小さな、俺の耳でさえ微かに聞き取れるくらいの大きさの音だった。
首を巡らせた先に、波紋と、水中に潜っていくカエルの姿があった。
納得した俺は最後に水を一飲みして、踵を返す。
ボゴンッ
再び背後から聞こえる、今度は大きな音。振り返ると、大きな波紋と大きな板が水中に沈んでいく光景だった。不思議に思い、川に近づこうとする。ふと周りを見ると、アプトノスさんが一声鳴いて、川の浅瀬へと走っていく光景が移った。対岸には、川辺から高い場所へと続く坂があり、アプトノスさんの群れの先頭がちょうどその坂を上りきっていた。高いところに上ったものから安心したように走るのをやめて背の低い草を食むそれを見て、俺も空を飛ぶ。危険察知は俺の何倍も彼らの方がすごいのだ。
空を旋回して周りをうかがう。
森方向に大型モンスターの気配なし、遠くに小さな鳥が飛んでいるのが見えるが、間違っても飛竜のような大きな物ではない。
すぐ近くに危険なしと判断して、下へと視線を戻した。
同時に上がる大きな音と水柱。ばらばらになって飛び散り、太陽光を綺麗に反射させながら落ちていった。
その光景を余所にアプトノスさんたちは、怯えて走り出す。
水面を割って飛び出してきたのは、巨大な魚に足と翼をつけたような異形。水竜だった。
一匹のアプトノスさんが足をもつらせて倒れる。水面から顔を半分だけ出した水竜は首を持ち上げて、レーザーのような水流を吐き出した。その水流はアプトノスさんに迫り、
…当たることなく、着弾地点の水を跳ね飛ばした。
(あ、あっぶねー…)
何があったかと言うのは、水面に叩きつけられるように落ちた水竜を見ればわかりやすいんじゃないだろうか?
端的にいうと、水流が吐き出される直前に水竜の顔を蹴り飛ばしたのだ。
結果、着弾地点はずれ、蹴り飛ばした足が水流にほんの少しだけ巻き込まれ、すっぱりと切れていた。
(つか、超痛い。刃物でざっくりと切られた気分だ…)
実際に似たようなものだけど…と内心苦笑い。
倒れたアプトノスさんが無事に起き上がり対岸の壁を駆け上ったのを確認して、虫のたまり場がある方の地面に降り立つ。
攻撃を邪魔された水竜がいきり立って水面から飛び出し、俺へと飛びかかる。
その高さを見ると、どう考えても対岸の高い場所には届かない。アプトノスさん達は大丈夫そうだ。
心配事のなくなった俺は逃げようと足を動かして、あまりの激痛に地面を転がった。
体勢を崩して転んだ俺の頭上を水竜が通過し、ひときわ大きな尾びれが俺の背中を叩いていった。それだけで背中の鱗が何枚か砕け散ったのを感じた。だけど、それだけで済んだのは僥倖だ。足の痛みを何とか無視して起き上がる。何があったのかと先ほどまでたっていた場所に目を向けると、潰れた虫がパチパチと音を立てていた。それを見るにどうやら俺は傷ついた足で雷光虫を踏み殺してしまったらしい。
雷光が傷口を焼き出血が止まったが、痛いものは痛い。しばらくはマ王様との戦いの後のように歩くのが億劫になりそうだった。まあ、あの時ほどではないのだろうが。
現状確認を済ませて、水竜に向き直る。
水竜はちょうど、大きな足で体を跳ね上げて立つ所だった。
地面をその足でしっかりと踏みしめてこちらへと振り向く水竜。
その体がゆっくりと撓み、地面を滑るように這い、突進してきた。
空へと飛びあがって躱す。水竜はそのまま川へと戻っていった。引いたかと思ったのだが、そうでもないらしい。水中から空を飛ぶ俺へと向けて、あのレーザーのような水流が向かってきた。
あわてて避ける。
水中から第二射、第三射と連続で襲い掛かってくる水流。球切れとかを待とうにも、川の中じゃあ無尽蔵に撃ててしまう。このまま逃げてしまってもいいとは思うのだが、水面を見ながら飛ぶとなるとスピードが落ちてしまい、背中を向けるにはあまりにも不安だ。しかし、速く飛ぼうとすれば水面を見れず、当たってしまうかもしれない。あの水流の威力は身をもって実証済みだ。間違っても当たりたくはない。
どうにかならないかと、ブレスを吐いてみる。当然ながら、水中にいる水竜には当たらない。
攻略に行き詰ったので、状況を元に戻そうと試みる。水の中から固定砲台のように水流を放ってくるのだから、水の中から俺が見えなければいいのだろう。飛来する水流の合間を縫って頭を地面に向け、落下する。一瞬前まで俺がいた空間を水流が貫いていった。
急速に近づく地面に、以前のようにビビることなく着地する。着地の衝撃で傷が開き、刺すような激痛に体勢を崩し地面を転がりながら、水流が止まったのを確認する。どうやらうまくいったようだ。しかし、さっきの着地でゆっくり歩くならともかく走ったり跳ねたりが出来ない。水竜の攻撃圏外に出るには空を飛ぶしかなさそうだ。
最初の巻き直しのように水面を割って水竜が飛びかかってくる。
空を飛ぶにも時間が足りない。横に避けるには足が使えない。結果、やむを得ず先ほどのように体勢を低くしてやり過ごす。振るわれる尾びれに巻き込まれないように尾びれを注視して、背中に走った衝撃で俺の体が突き飛ばされた。振り返るとこけている水竜。特に怪我はなさそうだったが、絶好のチャンスだ。おそらく、俺を踏みつけようとして背中に足をつけ…勢いのままに通り抜けて行ったのだろう。何とも間抜けな話だが、俺にはありがたい。岩に生えている苔の上で滑った時に岩に全体重が乗らないように、勢いで突き飛ばされただけの俺はそこまでのダメージはなかった。怪我していない方の足に力を入れて起き上がり、腹に力を入れ羽ばたいて飛び上がる。空の俺にむかってブレスを吐こうと開けた水竜の口に、濃縮されたブレスがぶつかった。
(いや、いつ溜めたのって、ちゃんと[腹に力を入れて]って言ってるじゃん)
訳の分からない言い訳を考えているうちに、口内を焼かれる痛みに声になっていない悲鳴を上げた水竜が川へと逃げていく。大火傷をしたのだから水の中から水流を撃ってきたりはしないだろう。安心して、そのまま巣へと帰っていく。はあ、また歩くのも辛い日々がやってくるのか…
ハンター’s side
善性イャンクックの近況調査依頼を受けてギルドを発った俺たちは、早速森丘に向かった。
1日かけて森丘に着いた俺たちは、キャンプで朝食を食べていた。
「これを食べた後は、善性イャンクックの巣へと向かう。途中でどこかに立ち寄る気はないが、採取したいものがある奴はいるか?」
この発言に、誰かが異を唱えることもなく、巣へと一直線に向かうことが決まった。
決まった、のだが…
俺たちのパーティーは、3人構成だ。大剣を使うリーダーに、ハンマー使いの俺。それと、ライトボウガンを使う先月から入って来た新人。
その新人が俺たちの中で最後に飯を食い終わった後、ベースキャンプを出ようとした。
その時に、大きな爆音が響き渡った。
顔を見合わせた俺たちは走ってベースキャンプを飛び出す。開けた視界の中で、水竜ガノトトスと善性イャンクックが戦っていた。足に傷を受けていた善性イャンクックが空に飛びあがり、それを打ち落とそうとしたガノトトスがブレスを使う。
その開いた口に、図ったかのようなタイミングで善性イャンクックのブレスが炸裂した。
いや、実際にタイミングを計っていたのだろう。ガノトトスの口の中で炸裂した炎がこちらにまで吹き付ける。異常に熱い。普通のブレスでは考えられないことだった。
後で、鍛冶屋のおやじに聞いた話によると、この時善性イャンクックが吐いた青い色の炎は、俺たちが使う炎の何倍も熱いものなんだそうだ。普通に考えたら、喉が焼けただれてしまいそうなんだが…あの善性イャンクックは、もう何でもアリなんだと思う。
呆けた顔の俺たちはしばらくその場でたたずみ、リーダーが
「帰るか…」
と言うまでそこに立っていた。後にも先にも、俺たちのチーム至上、最速のクエストクリアだったのは言うまでもない。
ギルド本部への通達
沼地、並びに火山で、大量に小・中型モンスターの死体が発見されました。
調査をお願いします。
ギルドポッケ支部への通達
調査班を数グループ送りましたが、帰投者がいません。
当件を緊急事態と認定、暫く沼地並びに火山を封鎖してください。
この流れで次はまさかのほのぼの回の予定。
いいのか、俺?
いいんだ、俺。