嘘予告詰め合わせ 作:耳音戈
3勇者が使えない呪文を使っていますがノリでご容赦くださいませ。
裏切られた。
裏切られた。
裏切られた。
人に裏切られたならば、まだいい。
罵るなり見捨てるなり、いくらでも道はあるだろう。
運命に裏切られたならば、まだいい。
都合のいいことを考えていた己を笑うなり次善策を練るなり、いくらでもやるべきことはあるだろう。
だが。
敬愛し、一度は自ら救った神に裏切られたならば。
そのとき、人は何を信じ、何を拠り所とすればよいのだろうか――?
これは、ある勇者の挫折と長い彷徨と出会いと再起、そしてある魔法使いの少年の物語である。
「本当に、いいのか」
人を壊れ物のように扱う、仲間の声が鬱陶しい。
「くどい。何度も話したはずだ」
だから、突き放す。
「何故私とここで一緒に生きてはくれないの……!?」
勝手な夢を押し付けてくる、恋人の声が耳に障る。
「諦観を押し付けるな」
だから、突き放す。
「……良いのじゃな?」
何もかもを諦めた、老人の声が心に痛い。
「ああ、やってくれ」
だから、突き放した。
故郷からこの異世界まで、全ての苦楽を共にした仲間たちを眺めやる。
戦士は、その剛毅な顔を辛そうに伏せていた。
虫唾が走る。お前とて故郷に帰ることを、栄達を夢見ていたはずだ。
女賢者はその場に泣き崩れている。
悟りの書も主を間違えたとしか思えない。何が賢き者だ。
最後の一人、老魔法使いは……くそ。
何もかもを見通したような、いつもの目。
居たたまれず、私は目を逸らした。
魔法陣の中央に立つ。
大魔王の城の廃墟から世界移動のための手がかりを探すのに一年。
その再現に更に数年を費やした。
魔王を倒し、世界を渡り、勝利の為に父さえ見捨て、大魔王を倒して。
得られた物は、故郷との永遠の別離。
そんな結果は、認めない。
何が、伝説の勇者だ。
何が、光ある者だ。
何が、ルビスの使いだ。
そんな言葉が欲しくて戦ったのではない。
呪いあれ精霊の神。その名はルビス!
呪いあれ神の中の神。その名はミトラ!
私を、父を、仲間たちを謀り、異世界に封じた神々め!
私は、お前たちの思惑どおりになどならない!
「……始めてくれ」
「わかった。……もう会う事は二度とあるまい。
さらばじゃ、勇者どの」
その言葉を最期に 私は 忌々しい アレフガルドと呼ばれる地から 消え失せた。
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「どこだ、此処は……?
あれは! 世界樹か!?」
「……そこまでにしておけ侵入者」
「なんだ? 子供?」
「何だ? 私の知らん言語だと?」
「言葉が通じていない……!?
ここは懐かしき故郷ではないということか。
ふ、はは、最期の賭けにも敗れたか……!」
「マスター。彼の話す言語は87%の確率で地球上には存在しません」
「異世界人だとでも言うのか?
まぁいい、捕まえれば分かる話だ! 捕らえるぞ茶々丸!」
「イエス、マスター」
「面白い! 魔法で私と張り合うか!」
「ちっ、ベギラマ!」
「! 早い、ワン・ワードで触媒も無しにこの速度でこの熱量か!
茶々丸!」
「イエス、マスター」
「戦う気は無い! ええい言葉が通じんか!
降りかかる火の粉は払わせてもらうぞ! ライデイン!」
「これは何の騒ぎだい、エヴァ?!」
「あの人は、いったい――」
「えーと……ファンタジーに出てくる勇者って感じ?」
「話は後だタカミチ、ぼーや、カグラザカアスナ。
気をつけろ、手ごわいぞ!」
「く、あの少女たちだけでも手一杯だというのに――!」
「仕方あるまい、人相手に使いたくはなかったが――
ギ ガ デ イ ン!」
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堕ちた英雄と魔法使いたちの邂逅。
「異世界の……勇者!?」
「ホントに勇者あ?!」
「魔王殺し、だと!?」
「文字通りの、英雄というわけかい?」
「私を勇者と呼ぶな。吐き気がする」
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勇者は、英雄に憧れる少年にかつての自分を見る。
「ネギは、英雄を目指しているのか?」
「そう言うわけじゃ、ないですけど。
父さんは英雄と呼ばれるほど強い魔法使いだったんです。だから――」
「やめておけ。英雄など、ろくなものじゃない」
「え――」
「あのねえ!
あんたがどんな目に遭ったか知らないけど! ネギに当たるなんて最低よ!」
「最低、か。まったくだな。
悪かった。
ただ、私は、先達として、英雄の裏にある真実に気付いてほしかっただけだよ。
……試みに問うがねお嬢さん」
「……何よ」
「何もかもに裏切られた時、神にさえ裏切られた時、人はどうしたらいいと思う?」
「……」
「いや、悪かった。私はこれで退散しよう。おやすみ」
「……あの人は、何で……いったい、何があんなに悲しいんでしょう」
「……そんなの、私に分かるわけないじゃない」
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悪の魔法使いにも嘲られる日々。
「最初に見せた魔法の腕から期待してみたが……腑抜けか、貴様」
「何とでも言うといい、吸血鬼」
「……フン! 貴様を僕にしてくれようと思ったが、腑抜けは要らん。どこへとなりと去れ。
それともその血、吸い果たしてくれようか?」
「そうしたければ、好きにするがいい」
「……とっとと失せろ、亡霊が。貴様など吸う価値も無い」
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異世界での、日常。
「あのー。異世界の勇者って、貴方ですか?」
「私を勇者と呼ばないでくれ。それで、何か用かな可愛いシスター」
「サインください」
「……は?」
「だからサインですってば」
「……こちらの字が分からない」
「ありゃりゃ。そうなんですか? じゃあ、何か記念に下さい」
「………………大した物は無いが、祈りの指輪でいいかね?」
「あ、ココネの分もお願いします」
「…………分かった」
「あの子たちに不用意に物をあげないで下さい。付けあがりますから」
「……申し訳ない、シスターシャークティ」
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騒がしい異界の街は、堕ちた勇者の思いも彼自身も、お祭り騒ぎに飲み込んでいく。次第に馴染んでいる事に気付いてしまう勇者。
「……楽しい、か。
そういえば、あの世界に落ちた後、楽しいことなど一つもなかったな」
「本当に~?」
「どういう意味だね?」
「気付かなかっただけじゃないですか?
オジサン、意外と目の前しか見てないし」
「そうかな?」
「そうですよ」
「そうか。そうかもしれんな。ところでオジサンは止めてくれ。私はまだこれでも二十代だ」
「十も違えばオジサンです」
「そうか。じゃあ私はチビッコと呼んでやる」
「誰がチビッコですか!」
「主に精神年齢かな?」
「最近随分と楽しそうじゃないか勇者」
「私を勇者と呼ぶな。
だがまあ、そうだな。この街を守るのも、悪くはないと思っている」
「フン……今のお前なら下僕にしてやっても良いぞ」
「遠慮しておこう」
「やあ。国語の勉強かい?」
「タカミチか。まあ、会話できるとはいえ、看板くらい読めなければ不便でな」
「聞いたよ。鳴滝姉妹の悪戯に引っ掛かって婦人服店に――」
「言うな」
「ふぉっふぉっふぉ。随分と振り回されておるようじゃのう」
「元気が良すぎるぞ。ここの学生は」
「じゃが、楽しいじゃろう?」
「……ああ」
「最初に会うた時より、はるかに良い顔になっとるの」
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しかし、かつての世界からの魔の手に平穏は破られる。
「かの世界の護り手は勇者ロトに託すと決定があった!
異界で朽ちることなど許されぬ」
「ふざけるな! 誰が神の言うことなど聞くものか!」
「今生の貴様の意志は関係無い。我が使命は貴様の魂を持ち帰ること――
守るべき大地を投げ棄てた愚かな勇者よ。死ぬがいい!」
「ぐぅっ……強い。ゾーマの足元にも及ばないが――」
「他愛もない。仲間を棄てた貴様は既に勇者足り得ぬ。
さて、とどめだ――「雷の暴風!」?! 何奴!」
「勇者の仲間なら、ここに居るでござるよ」「独りで戦うな。そう仰ったのは貴方ではないですか」「報酬は、高くつくよ?」「すいません、誰かあの怪物の名前を――」「本屋、あんたは引っ込んでた方が――」「それは朝倉もだと思うです」「影使い・高音! 助太刀いたします!」「わ、私も!」「勇者など胡散臭い限りですが、この学園を守るためなら、致し方ありませんな」「生徒は下げた方がよいのじゃないかなあ刀子さん。聞くとも思わないけど」「もう遅いのではないかと」「ふぉっふぉっふぉ。異界の神の使いとは、久方に腕が鳴るのう」「……学園長も戦われるのですか?」「ジジイがこんな面白そうな事見過ごすわけないだろう。茶々丸、準備はいいか?」「イエス、マスター」
「勇者さん! 僕たちも、戦います!
だって、僕らの街ですから!」
「……ありがとう。
すまないが皆の力を貸してくれ」
「そんな、馬鹿な――」
「人間を舐めすぎだ、神の使いよ。
――ミナデイン」
▼
そして、別れの刻。
「帰っちゃうんですか?」
「また、ここに来られても敵わないしな。
自分のやった事の後始末を付けにいくさ」
「また、会えますか?」
「無理だろうな。……泣いているのか?」
「泣いちゃ、悪いんですか?」
「……いや」
「私の言えたことではないが……ネギ」
「はい」
「……独りで何もかもやった気にはなるなよ。
仲間が居てこそ。
すべてはたぶん、そんなものだ」
「……お元気で」
「そちらもな」
かくて、魔法使いと勇者の道は分かたれた。
勇者はかの地にて永きに残る伝説となったという。
魔法使いがどうなったかは――また、語る機会もあるだろう。
オリ主タグはこの拗らせた3勇者くんのために付けました