嘘予告詰め合わせ 作:耳音戈
不思議な少年と出会ってから数ヶ月。
無事再会を果たしたロトの末裔たちは、はるか未来のローレシアを見物するために船出し――
「なあ。嵐に遭ってから何日経ったっけ……」
「さぁ。とりあえずまだ水と食料はあるけど」
「あんまり喋らない方がいいわよ貴方たち。陸地、見えないし……」
――出航直後に嵐に見舞われ、ものの見事に大海原を漂流していた。
※
通りすがりの探索船に拾われ九死に一生を得た一行は驚愕の事実を知る。
「ぺるぽい? るぷがな? 聞いたことねーな。よっぽどド辺境から来たんだなあんたがた」
「勇者ロト? すまないが知らんな。勇者といえば、有名なのはアリアハンのオルテガかサマンオサのサイモンだ。……もう、二人ともこの世には居ないが」
「まさか、異世界だっていうのか?」
「ロランを追っていつのまにか未来に行っちゃったりしたけど、今度は異世界なのかー。退屈しないね」
「あのな」
「僕とナナはもう気付いてたけど」
「え?」
「星の配置がぜんぜん違うのよね……」
「いや、そういうことは教えてくれよ。俺がそういうの分からないって知ってるだろう」
「何日漂流してたと思うの。もうとっくに気付いてるものと思ってたわ」
「ぐ」
「うん。僕もそう思ってた。ごめんね」
「ぐぐぐ」
訂正。驚愕したのはロランだけだった。
※
探索船にて仕事を手伝う代わりにどこかの町まで送ってもらうことになった一行。彼らは徐々に奇妙なことに気付く。
しびれくらげの大群との戦いにて。
「ベギラマッ!」
パウロの手から放たれた火炎の渦は、しかし大群のほんの一部を焼き払うだけに終る。
「あれ?」
「首かしげてる暇があったら前に出て戦ってくれよ魔法戦士さん!」「うあーしびれる~」
「あ、ごめん」
(えーと……ベギラマの範囲がちっちゃくなってる?)
大王イカ戦にて。
「丸焼きにしてあげるわ。イオナズン!」
舷側に這い上がった大王イカを爆砕した挙句、燃えカスが帆に乗って大騒ぎ。
「あー。その、なんだ。船のために戦ってくれるのは助かるがイオナズンは勘弁してくれ。船が壊れる」
「ご、ごめんなさい船長さん」
「可愛い顔してスゲェよな……」「俺、口説くのやめとこう……」
(呪文の威力が桁違いになってる……? なんで?)
「ねぇ、気付いてる?」
「うん。ちょっとおかしいよね」
「呪文の威力が上がってるのよね」
「効果範囲がおかしくなってるんだよ」
「え?」
「あれ?」
稲妻の剣が唸りを上げ、凄まじい一撃が繰り出される。テンタクルスは足を数本まとめて斬り飛ばされ、返す刀で一刀両断された。
「おおー、毎度すげぇな兄ちゃん!」
「若ぇのにたいしたもんだ」
「この世界のモンスターも僕の敵じゃないのか……」
「うんうん。ある意味で悩みが無くていいよね」
「どういう意味だよ」
「いいのよ、貴方はそれで」
「だから、何の話だよ!」
一人例外も、いた。
※
ついに町を発見し、探索船から下りることにした一行。
「私としてはこのまま乗っていってほしいがな」
「勝手を言ってすまない、船長」
「ま、いいさ。おっと、こいつはせんべつだ。もらっておいてくれ」
「こんなに……?(この金貨、見たこと無いわ) ありがとうございます」
「ところで、あの町の名前、なんて言いましたっけ?」
「あれはダーマ神殿の門前町さ」
謎のスカウトとの邂逅。
「へーいそこ行く戦士どの! アリアハンで勇者のお供しない?」
「……は?」
「んんん? なんだ無職なのか? その技量でもったいない! 神殿で職に就いて来な、きっともっと強くなれるぜ!」
「えーと……職ってなんだ?」
新たなる、道。
「戦士、武闘家、魔法使い、僧侶、商人、盗賊、遊び人……まさか、ここって」
「勇者ロトの伝説に出てくる……」
「……転職の神殿?!」
「そ、それじゃあ、今度は過去に来たってのか!?」
悩むままに転職を終え、一行はアリアハンの自称スカウトに導かれるがままついに時を越え再会を果たすが――
「オレは旅になんか出ねぇっつーの!」
――未来の勇者は、この上なくやさぐれていた。
使命を果たしたはずのロトの末裔と、未だ伝説に至らぬ勇者の卵。
運命は彼らに何をさせようというのか。
一行が見る伝説の真実とは。
ロトシリーズ、夢のコラボレーション。
「異境の三勇者と伝説の勇者」
Coming Soon!(しません)