時空の先導者 〜創生の竜と終末の騎士〜   作:ティア

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turn3 ルーキーの挑戦

「……いい?デッキのグレード配分は、グレード3が7〜8枚。グレード2が10〜11枚。グレード1が15〜16枚。で、グレード0が17枚。わかった?」

 

「わ、わかった」

 

「それを踏まえて、君のデッキを見てごらん?」

 

「えっと……」

 

俺とホノカさんが出会った翌日のこと。俺は昼休みにホノカさんに呼び出され、昼飯を一緒に食べながら、ヴァンガードについて教えてもらっている。

 

「君のデッキの配分が、いかにグチャグチャなのかよくわかったでしょ?」

 

「グレード3とグレード2が12枚……グレード1が9枚……。グレード0は17枚あるけど……」

 

「トリガーの種類もメチャクチャだね。コンセプトがあってのことならわかるけど、カズキ君のデッキのトリガーは、適当もいいところだし」

 

「……返す言葉がない」

 

俺が勝てなかった原因は、思った以上に複雑だった。まずはデッキの問題。次にプレイングに問題があった。全体を把握してファイトを進めるということが、俺にはできていなかった。

 

「プレイングのコツはさっき言った通りだから、後はデッキをどうにかしないとね。Gゾーンのカードだって、まともに使えるカードが限られているし」

 

「まずはネクステージをどうにかしたいんだよな……。でも昨日知ったんだけど、ネクステージってかなりレアなカードなんだな」

 

「かなりどころじゃないよ!?1枚で1000円を超えることなんて、当たり前のカードなんだから!」

 

お、俺って運がよかったんだな……。俺のネクステージは、ネクステージがパッケージに載っていたブースターから引き当てたものだ。

 

「せっかくネクステージを持ってるんだし……1枚だけでもシングルで買っておきたいな……」

 

「ミルキーウェイには売ってないのか?」

 

「売ってるよ。でも……あそこは1枚4000円するから……」

 

「よっ!?」

 

高っ!?ネクステージって、そんなにレアだったのか。何となく手に入れた俺を褒めてやりたい。

 

「く……俺、金ないんだけどな……。来月になれば小遣いもらえるんだけど」

 

「昨日言ってたもんね。私も何とかしたいんだけど……今はできるだけお金を貯めておきたいし」

 

「何で?」

 

「来月になれば、新しいブースター『月煌竜牙』が発売されるからだよ!」

 

そうだったのか。月煌竜牙……全然知らなかった。

 

「そのパックにはギアクロニクルも収録されていて、同時にギアクロニクルのトライアルデッキ『鳴動の次幻竜』も発売されるんだ」

 

ギアクロニクルのデッキか……。これは楽しみだな。

 

「なら、ネクステージもそうだけど、そのデッキとパックのために金を温存するべきなんだな」

 

「そういうことだね。だから、今は持ってるカードでデッキを調整して、カードが手に入ったら、本格的にデッキを仕上げていこう」

 

「了解。で、今日の放課後は時間大丈夫なのか?」

 

「日直の仕事で、少し遅れるかも。だから、先に行ってていいよ」

 

「そっか。そろそろ昼休みも終わりそうだし、またショップで会おうぜ。その時に、デッキ調整頼む」

 

「うん。またね、カズキ君!」

 

 

 

 

***

 

 

 

そして、放課後。俺はいち早く、ミルキーウェイに向かっていた。何人かヴァンガードをしている人もいたが、今はデッキをどうにかしなくては。

 

「いらっしゃい。おや、君は昨日ホノカちゃんとファイトしていた……」

 

「戸坂カズキです。まだ初心者……ですけど」

 

「カズキ君ですね。今後とも、このショップをよろしくお願いしますね」

 

「はい。で、早速なんですけど……」

 

俺はデッキを取りだし、1枚のカードを見せる。それは、クロノドラゴン・ネクステージだった。

 

「おお!ネクステージですか!運がいいですね!」

 

「でも、1枚しかないんですよ。それで、ネクステージをもう1枚ほしいと思ってるんですけど……」

 

「ネクステージですか?そうですね……今だと、1枚5000円ですね」

 

「ごっ!?樋口1枚分の価値かよ!?」

 

それに、ホノカさんから聞いた値段よりも高くなってるぞ!?

 

「やっぱ金のこと考えると……厳しいな」

 

「それにネクステージは、出来れば4枚ほしいカードです。今のカズキ君なら、後3枚買っておきたいですね」

 

「あ、合わせて15000円……。小遣いが飛ぶ……」

 

これでは、とても来月のデッキとパックに金を回せる余裕がない。かといって、このままではネクステージは宝の持ち腐れ状態だ。

 

「無理して1枚だけでも買うかな……?」

 

「せっかく強力なカードがあるのに、本来の力を引き出せないようなら、もったいないですからね」

 

そこなんだよな。だから、迷っているんだけど。

 

「そこで……賭けをしてみませんか?」

 

「賭けですか?」

 

店長はショーケースに展示されていたネクステージを3枚取り出すと、俺の前に並べた。

 

「このネクステージ3枚を賭けて……君にはファイトをしてもらいます。勝てば3枚のネクステージはタダであげます」

 

「えっ!?いいんですか!?」

 

「運のいい初心者に、ささやかなプレゼントです。ただし、負けたら自腹で買ってもらいます。最低でも、1枚」

 

「う……」

 

喉から手が出るほどのチャンスだ。ネクステージ3枚を無料でもらえるのは完全に儲けもの。

だが、見返りも大きい。1枚だけでいいとは言え、ここで5000円を支払うのは避けたい。それに……

 

「俺、デッキが完成していなくて……」

 

「あれ?昨日はホノカちゃんとファイトしていたんですよね?」

 

「構成がグチャグチャだとホノカさんに指摘されて……これからデッキ調整をするつもりなんです」

 

昨日は運よく勝てたが、今日はどうなるかわからない。

 

「自分のデッキに、自信がないんですか?」

 

「……正直、自信ないですよ。ホノカさんにデッキを見てもらうまでは、これでいいって思ってたんですから。だから、せめてデッキの構成だけでもどうにかしてから……」

 

「でも、君が組んだデッキでしょう?」

 

俺の言葉を一蹴するように、店長は優しくも力強く言葉を被せる。

 

「構成を見直して、ファイトに臨むこともいいかもしれない。ですが、そんなものに囚われずにファイトすることにも、意味があるかもしれません」

 

「意味……」

 

「確かに、ホノカちゃんが言ったように乱雑なデッキかもしれません。それでも、君が考えて組んだデッキです。今の君のデッキをぶつけることが、大切ではありませんか?」

 

今の俺……。持てる力を最大限にぶつけて、弱い俺やデッキでもやれることをする。それが、大切なのか……。

 

「……わかりました。俺、やります!

 

「いいですね。初心者は、何事も挑戦することが必要です。デッキが上手く組めなかったり、弱かったりするのは当然ですよ。誰だって、最初は同じ。経験を重ねて強くなるんです」

 

「だから、俺にこのデッキでファイトするように……」

 

「ホノカちゃんの力を借りたデッキではなく、今の君のデッキで、実力を示してほしい。それがきっと、いい経験や成長につながる。強さになる。そう思ったんです」

 

俺のことを、そこまで考えてくれていたんだな……。まだ出会ったばかりの初心者なのに……。

 

「ま、ネクステージを簡単に渡したくないって言うことでもあるんですけどね」

 

「うわっ、何かズルい」

 

「価値あるカードを無償であげようと言うのです。それ相応のリスクは負ってもらわないと」

 

さっきいいこと言ってただけに、俺の中の店長の株が一気に下がってる。

 

「では、対戦相手なんですが……」

 

「えっ?店長じゃないんですか?」

 

「私はしませんよ。ショップの店長のくせに、ファイトの腕は全然なので……」

 

いや、散々言ってたくせにファイトはダメなの?

 

「なので……ユウキ君!」

 

ブースターパックを眺めていた1人の少年が、俺たちのところに近づいてくる。身長は俺と同じくらいで、同年代だろう。

 

「何すか?」

 

「この子とファイトしてほしいんです。ネクステージ3枚を賭けた、重要なファイトなんですよ」

 

「何!?そんな太っ腹なことしていいんすか店長!」

 

「僕から初心者である彼にできる、精一杯の贈り物ですよ」

 

「贈り物のレベルが凄すぎですって!」

 

話し口調から察するにムードメーカーと言ったところか。店長とは仲がよさそうだ。

 

「おい、お前!初心者らしいが、名前はなんて言うんだよ?」

 

「俺は戸坂カズキだ。あんたは?」

 

「真島ユウキだ!羨ましい初心者め!俺がネクステージほしいくらいだぜ!」

 

「いや、ユウキ君はギアクロニクル使ってないでしょう?」

 

「それくらい羨ましいんすよ!店長!」

 

だろうな。ショップからすれば、損失しかない行為だからな。

 

「くそぅ……こんなのに軽々しくネクステージ渡すなんて何か嫌だ!ファイトするぞ、初心者!」

 

「あぁ。望むところだ!」

 

テーブルに向かい合い、ファイトの準備を進める。手札5枚を引いて、互いに伏せてあるカードに手を添えた。

 

「行くぜ、初心者!手加減なしだ!」

 

「もちろんだ。行くぞ!」

 

「「スタンドアップ!ヴァンガード!!」

 

ファーストヴァンガードが表になる。ネクステージを賭けたファイトが、今始まった。

 

「ガンナーギア・ドラゴキッド!(5000)」

 

「ハーブリンガー・ドラゴキッド!(5000)」

 

相手はなるかみ……どんなクランだ?

 

「ギアクロニクルか。どこまでやれるかな?俺のターン!ドロー!サンダーシャウト・ドラゴン(8000)にライド!ハーブリンガーは左後ろへ!ターンエンド!」

 

「俺のターン、ドロー!スチームファイター ウルニギン(7000)にライド!ガンナーギアは……後ろでいいか」

 

今回はGアシストしなかったぞ。と言っても、手札にグレード1がこれしかなかったけどな……。

 

「ガンナーギアのブースト、ウルニギンでアタック!(12000)」

 

「おっと、毒心のジンでガード!」

 

「ってことは……トリガーが出ても無理か。ドライブチェック、腹時計付きのギアラビット。スタンドトリガー!」

 

言ってる側から普通に出るなよ……。しかも、スタンドトリガーなら、攻撃の終わったリアガードをスタンドするトリガー……。今は使えない。

 

「ガンナーギアをスタンドして……パワーも一応与える。(17000)ターンエンド」

 

 

カズキ:ダメージ0 ユウキ:ダメージ0

 

 

「バニラのスタンドトリガー……。トライアルデッキ弄ったくらいか?」

 

「言っただろ?俺は初心者なんだ。デッキのことは、あんまり期待しないでほしいね」

 

「そんな奴がネクステージ?強いカード持ってたら強くなれるわけじゃねぇんだぜ?」

 

「別に無理に強くなるつもりじゃない。俺は、ただネクステージがほしいんだ」

 

「……?」

 

ネクステージと言えば、今のギアクロニクルにとって強力なカード。初心者が強くなるための近道として集めるものかと思っていたが、何か違う。

 

(奴なりに、ネクステージじゃないといけない理由があるってことか?)

 

「ユウキ……だったか。あんたのターンだよ」

 

「おっ、そうだった。俺のターン!ドロー、ヒートブレード・ドラグーン(9000)にライド!」

 

当たり前だけど……順当にライドしてるな。

 

「ハーブリンガーの前にボルテージホーン・ドラゴン(9000)をコール!ヒートブレードで、ウルニギンにアタック!(9000)」

 

「スチームメイデン ウルルでガード!」

 

「……ウルル、か。今のは、俺だったらガードするのにギアラビットを使ったな。公開済みの手札を残せば、後々シールド値の目星をつけられやすくなるぜ?」

 

「……あっ」

 

普通にガードするだけでも、先のことまでイメージしないといけないのか。奥が深いんだな、ヴァンガードって。

 

「なるべく公開済みのカードからガードに使う。優しい俺から初心者君に、アドバイスってとこだな!」

 

「言葉の言い回しに悪意を感じるのは、気のせいか……?」

 

「何のことですかね?初心者君?ドライブチェック、マイティボルト・ドラグーン」

 

何か、煽られているみたいだな……。ま、トリガーが出なくてよかった。

 

「ハーブリンガーのブースト、ボルテージホーンでアタック!(14000)」

 

「ここは……ノーガードするか。ダメージチェック、グリマーブレス・ドラゴン」

 

「ターンエンド」

 

 

カズキ:ダメージ1 ユウキ:ダメージ0

 

 

「今度はこっちの番だな。俺のターン!スタンドアンドドロー!スチームファイター アンバー(9000)にライド!」

 

「アンバー……とことんトライアルデッキだな」

 

「続けて、スチームナイト カリブム(8000)をコール!」

 

「って、おい!そいつを入れてるのかよ!?」

 

そこまで驚くカード……なのか?確かスキルは……ああ、そういうことか。

 

「カリブムのスキル。ハーブリンガーをデッキの下に戻す。その後、戻したカードのグレードマイナス1のカードをコールするけど……」

 

「ヴァンガードにねぇよ!そんなカードは!」

 

「ってわけで、一応デッキをシャッフルしてくれよ。スキルでデッキは確認するっぽいし」

 

なるほど。このカードはこういう使い方をするんだ。覚えておくか。

 

「終わったぜ。次は?」

 

「カリブムの後ろにラッキーポット・ドラゴキッド(4000)をコール!ガンナーギアのブースト、アンバーでアタック!(14000)」

 

「ノーガード!」

 

「ドライブチェック……スチームメイデン エルルだな」

 

ダメージにはなるかみの守護者、完全ガードのユニットであるドラゴンダンサー アナスタシアが入る。ラッキーだ。

 

「ラッキーポットのブースト、カリブムでアタック!(12000)」

 

「サンダーシャウトでガード!序盤からダメージはやらねぇよ!」

 

「くっ、ターンエンド!」

 

 

カズキ:ダメージ1 ユウキ:ダメージ1

 

 

「俺のターン!スタンドアンドドロー!」

 

次でグレード3。行動の幅が一気に増える。

 

「へへ、行くぜ。食らえ!障壁穿つ雷鳴!ライド!ドラゴニック・ヴァンキッシャー!!(11000)」

 

「おお……!」

 

「感心してる場合かよ?魔竜戦鬼 チャトゥラ(8000)をコールし、ボルテージホーンでアンバーにアタック!(9000)」

 

「さっきの教訓、活かしてやる!腹時計付きのギアラビットでガード!」

 

ガードはなるべく公開済みのカードから。ここは助言通りにラビットを切った。

 

「ほお?やるな。なら、ヴァンキッシャーでアタック!(11000)」

 

「ここはノーガードだ!」

 

「ツインドライブ!1枚目、ライジング・フェニックス。2枚目、プラズマダンス・ドラゴン。クリティカルトリガー!パワーはチャトゥラ(13000)クリティカルはヴァンキッシャーだ!(11000 ☆2)」

 

クリティカルトリガーか……。ダメージが一気に引き離されていく……。

 

「ダメージチェック、1枚目、引っ込み思案のギアレイヴン。2枚目、スチームバトラー ダダシグ。クリティカルトリガー!効果はアンバー!(14000 ☆2)」

 

よし、これでチャトゥラのパワーは足りなくなった。アタックは通らない!

 

「……チャトゥラで、アタック!(13000)」

 

「え……パワーは足りていないのに?」

 

「残念だけどな、チャトゥラにはスキルがある!こいつはヴァンガードにしかアタックできない代わりに、アタックした時だけパワープラス3000される!(16000)」

 

「く……」

 

そんなスキルがあるなんて、全然知らなかった。

 

「初心者のカードプールの知識のなさが響いたな!」

 

「今覚えたから問題ないな。それに、これからいくらでも覚えていける」

 

「格好つけて言うな!で、アタックはどうすんだよ!?」

 

「もちろん、ノーガード!」

 

「散々引っ張ってノーガードかよ!?」

 

今の手札だとガードできないんだから、仕方ないだろ……。

 

「ダメージは……うっ、スチームバトラー ダダシグ。またクリティカルトリガーか……」

 

「無駄にトリガー消費したな。ラッキー!」

 

「う、うるさいな!早くターンエンドしろよ」

 

「おっと、残念。チャトゥラにはまだスキルがある」

 

まだ何かあるのかよ……。

 

「チャトゥラはアタックがヒットした時、CB1で1枚ドロー!さらに相手のドロップゾーンから、ウルルをバインド!」

 

「……バインド?」

 

「フィールドとは違う場所に置いて、そのファイトでは使えなくするスキルのことだな!」

 

そんなスキルもあるのか。まだまだ勉強不足みたいだな。

 

「これで今度こそターンエンド!」

 

 

カズキ:ダメージ4 ユウキ:ダメージ1

 

 

「ようやく俺のターンか……。スタンドアンドドロー!」

 

かなり離されているからな……。ここからグレード3になれるし、一気に仕掛けにいく!

 

「時空の鼓動を呼び覚まし、未来へ羽ばたく翼となれ!ライド!クロノジェット・ドラゴン!!(11000)」

 

「へぇ……」

 

「さらにジェネレーションゾーン解放!憧れを翼に変え、未来をこの手に!ストライドジェネレーション!!」

 

今回はさすがに馬鹿正直にネクステージにストライドはしない。勝つためには、今の俺が持つユニットだけでどうにかするしかない。

 

今、俺がネクステージの代わりに、ストライドしたGユニットは……

 

「時空竜 フェイトライダー・ドラゴン!!(26000)」

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