名探偵の事件簿(ケース・ファイル) -コナンVS金田一少年-   作:ワニ夫くん

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2:『探偵たちの日常』

 

 

 

○現在。夜、米花自然公園・本陣広場

 

 米花自然公園を捜査中の剣持警部。『本陣広場』で遺体が発見されたらしく、たくさんの捜査員が群がる。

 

剣持「ったく、非番の時に呼び出されたと思ったらまたコロシかよ……。胸を刺してわざわざ頭も撃つなんて、面倒なコロシ方だな……それで、ガイシャの身元は?」

 

警察A「はっ! 戸塚美津子……職業は、事務員。年齢は四十二歳です」

 

剣持「事務員? どこの事務員だ?」

 

警察A「それが……」

 

 そこへ、目暮警部、佐藤刑事、高木刑事が歩み寄る。

 

目暮「……おーい、待ってくれ、剣持警部」

 

剣持「ん? あんたは確か……目暮警部でしたな」

 

目暮「ああ。これよりこの米花町での事件は我々強行犯捜査三係と、特殊犯捜査七係で合同捜査を執り行うよう指示が出た」

 

剣持「合同捜査? そりゃまたなんで」

 

目暮「上からの指示だよ、理由はわからんがな」

 

剣持「はぁ。まあ、ご苦労な事です。そういう事なら、よろしくお願いします、目暮警部」

 

目暮「ええ、こちらこそ、よろしくお願いします。剣持警部」

 

高木・佐藤「よろしくお願い致します」

 

剣持「……しっかし、このくらいの事件ならそっちに全部任せちまってもよさそうなもんだな。わざわざ呼びつけやがって……」

 

目暮「は?」

 

剣持「ああ、いや、俺は非番だったんですがね。たまたま近くで学生時代の同期と飲み会をしていたせいで、こちらに合流してくれと言われまして。ま、幸い帰りも車だったんで飲んではいませんが」

 

高木「はぁ」

 

剣持「いやあ、てっきり人手不足で呼ばれたのかと思っていたんですがね……この様子だと、いつも通り、上司の気まぐれってやつですよ。……まったく、とんだ災難です」

 

目暮「……あなたの直属の上司というと……やっぱりあの?」

 

剣持「ええ。多分その人ですよ、有名な」

 

目暮「そうか……そりゃ不幸な事だ」

 

剣持「ええ、まったく」

 

 ため息をつく二人。

 

高木「佐藤さん、剣持警部の上司って……?」

 

佐藤「知らないの? 警視庁で最も敵に回してはいけない相手トップ5の一人……いずれ嫌でも会うわよ」

 

高木「……警視庁で最も敵に回してはいけない相手、ですか? ……なんだか会いたくないなぁ」

 

 

 

 

 

 

○翌朝、毛利探偵事務所

 

 

 江戸川コナン、毛利小五郎、毛利蘭が朝食を食べている。

 小五郎が新聞を広げ、社会欄の記事を読んでいる。

 ニュースから映像が流れているが、無視されている。

 

ニュース・レポーター『この米花運動公園に、来週、新たなモニュメントが披露されます。その名も、「ドームス」! 名前の通り、小さなドーム状で、中にはいくつもの遊具が入っています。寄贈者は、あのマガデーグループの子会社・マガデーゲームスやマガデートイズを束ねる若き社長、佐山天成さんです! 今回はそんな佐山社長にお話を伺いました!』

 

ニュース・佐山天成『こんにちは、マガデーゲームス社長の佐山です。このドームスは、子供たちが雨の日でも公園の遊具で遊べるよう設計されました。御覧のように大きさは半径40メートルほど。室内ですが、小さな公園で遊んでいるような感覚で楽しんで頂けたらと思います。子供たちにはきっと、秘密基地のように思えるかもしれませんがね……。天井はスイッチ一つでほら!』

 

 佐山がスイッチを押すと天井が開閉して、ガラス張りの状態になる。

 

ニュース・佐山『晴れの日には、こうしてガラス張りにできますから、青空を楽しむ事も可能です。小さい子が危ない目に遭わないよう、防犯カメラも設置されています』

 

ニュース・レポーター『あの……上の窓は外れたり、落ちたりしないんですか?』

 

ニュース・佐山『ええ、あくまで室内にいる安全さと、外にいるような楽しさを両立させる事がコンセプトです。窓も滅多な事では割れないように特殊な防弾ガラスを使っています。サッカーボールどころか、砲丸をぶつけても壊れません。安全性にはかなり気を使いました。まあ、あとは中に自社の広告を貼るだけで完成ですよ。ははは』

 

ニュース・レポーター『佐山社長、ありがとうございました! ドームスは来週日曜日より一般に解放されるようです。続けて、本日の天気は……』

 

 コナンはご飯を食べている。

 

コナン「蘭姉ちゃん、おかわり!」

 

小五郎「かぁ~っ! 何がドームスだ、そんなニュースはどうでもいいんだよっ! またどっかのガキが事件に首突っ込んで警察の邪魔してやがるじゃねえか! そっちをやれ、そっちを!」

 

蘭「もうお父さん。また新聞読みながらご飯食べて……」

 

小五郎「んー! だが見ろよ蘭、まーた高校生が事件解決だとよ! 近頃この手のニュースがいくらなんでも多すぎるぜ! あの……なんだ、工藤新一とかいうガキに、関西のあの服部平次とかいうガキ! 事件は子供の遊びじゃねえっての! ちなみに、この事件を解決した『高校生探偵』とやらは、本名一切非公開だとよ。スカしやがって!」

 

コナン(今日も朝っぱらからうるせえな……。工藤新一がいなくなって有名になれたと思ったら、また商売敵が登場してご機嫌斜めか……?)

 

蘭「ねえ、お父さん、その新聞見せてっ!」

 

 蘭が新聞を取り上げ、真剣に読み進める。

 記事に書いてあるのは、「私立不動高校にて発生した殺人事件」との事。

 

小五郎「おい蘭。まさかお前、新一が絡んでるとでも思ってんのか? 残念だが、その事件は、その不動高校とかいう学校の生徒が解決したんだとよ」

 

蘭「……先の不動高校の殺人事件、同校の生徒が解決したと複数の情報が寄せられており、警察はそれを事実と発表したが、本人の希望により本名非公開……」

 

小五郎「聞いてんのか? まったく、ガキが軽々しく事件なんぞに首を突っ込みやがって……そういうのは警察や大人の探偵に任せろってんだ、大人の探偵に!」

 

蘭「なんだ……やっぱり新一じゃないのか。まあ、そうよね。あの目立ちたがり屋が本名も明かさずに事件解決なんてするわけないもん」

 

コナン(おいおい、ずっと目立たずやってるっつーの……)

 

 と呆れつつ、コナンもふと思い出す。

 

コナン(ん? 待てよ? 不動高校? 確かその名前どっかで……)

 

コナン「ねえねえ蘭姉ちゃん! その事件って」

 

蘭「もう、コナンくんも! いまは食事中でしょ、事件は後! 食事が先! まったく……」

 

コナン「はぁい……ごめんなさぁい……」

 

小五郎「おいコナン、おめえも毎回毎回事件に首突っ込んでばかりいると、あの新一とかいうガキみたいに嫌味と目立ちたがりと推理オタクが治らなくなるぞ。気ぃつけろよ?」

 

コナン「えへへ……」

 

コナン(ったく、誰が嫌味で目立ちたがりの推理オタクだっての……)

 

小五郎「だいたいなあ、近頃物騒すぎるぜ。ガキが同級生を殺してガキが解決。この事件に出てくる名前、全部少年ABCじゃねえか」

 

コナン(なるほど、結局、読んでもさっぱりってワケね)

 

 と、突然蘭が大きな声を出す。

 

蘭「あ、そうだ、忘れてた! 新一といえば……今日ポストに入ってた!」

 

小五郎「ああ!? 新一がポストに入ってただ?」

 

蘭「違うわよ、なんだか変な手紙がポストに入ってたの。『若き名探偵と、その助手へ』って書いてあって……だから新一にも届けられてると思うんだけど。えっと……どこやったかな……」

 

コナン(俺宛……?)

 

小五郎「ああ? なんで俺宛じゃねえんだよ。探偵宛だろ?」

 

蘭「だって、お父さんは若くないでしょ。あ、ほらこれよ」

 

小五郎「……お? それもそうだな。んー、どれどれ、見せてみろ」

 

 蘭が取り出した手紙をコナンと小五郎が見る。

 

小五郎「招待状。毛利蘭様へ。半年ぶりでございます。この度、若き探偵を集めた極上のミステリーゲームを主催致しました。工藤新一様の助手として、あなたにもぜひミステリーゲームに参加して頂きます。最初のステージは本陣広場……。“死神の子”より」

 

コナン(黒字に白。それにしても変なフォントだな……自作か? それに、これとほとんど同じモノをどこかで見た事があるような……日時も書いてないし、本陣広場なんて聞いた事もない。妙な手紙だ)

 

小五郎「あー、そういや最近脱出ゲームだの謎解きゲームだのが流行ってるんだったか? 道理で俺には招待が来ないワケだ。ガキの遊びに興味はねえからな。だーっはっはっ!」

コナン「ねえ、蘭姉ちゃん。半年ぶりって?」

 

蘭「実は、半年前、確か同じように『若き探偵を集めるミステリーツアー』っていうゲームに新一の付き添いで参加した事があったのよ。でも変ね……あの時私たちを呼んだ鬼沢さんが招待するわけないし。一体、今度は誰がこんなものを届けたのかしら?」

 

 蘭が悩んでいるところで、コナンがふと気づく。

 

コナン(そうだ、思い出した! 若き探偵を集めるミステリーツアー……俺がまだ工藤新一だった時の事件だ!)

 

コナン「ねえ、蘭姉ちゃん! 差出人は!?」

 

蘭「それが、どこにも書いていないみたいで……」

 

コナン「じゃあ、なんか、その時他のミステリーツアーに参加してた人覚えてない? 平次兄ちゃんとかはいないよね?」

 

蘭「うーん、服部くんはあの時招待されてなかったみたいだし、世良ちゃんも……いまよく会う人はいないわね。確か……あっ! そうよ」

 

コナン(そうそう、その通り! そいつを辿れば、何かわかるかもしれねえ!)

 

蘭「さっき新聞に載ってた不動高校よ、どっかで聞いた事あると思ったら、半年前の事件で一緒だった! 七瀬美雪ちゃんと、それから……確か、キンダニくん!」

 

小五郎「キンダニー?」

 

コナン「がくっ」(ずっこける)

 

蘭「え? どうしたのコナンくん」

 

コナン「え、いや……たぶん、それ、金田一一(ハジメ)さんって名前だと思うよ。日本にキンダニなんていう苗字の世帯はないし、ほら、金田一一っていう名前、盾に書くと『金田一一』で『金田二』に見えるでしょ。それでどこかで縦書きされたのを見て、蘭姉ちゃんも勘違いしちゃったのかなーって」

 

コナン(実際、おめー半年前にそっくりそのまま同じ勘違いしてたもんな……)

 

蘭「あっ、そうね、確か金田一くんよ。そういえば、確か名前もコナンくんの言う通り、ハジメだったはずだわ!」

 

小五郎「金田一一……なーんか聞いた事のある名前だな」

 

コナン「ね、じゃあさ、その人たちに連絡とってみたら? もしかしたら同じような手紙が来ているかもしれないよ」

 

小五郎「んー。っつっても、どうせただの悪戯だろ。相手にすんなよ、そんなもん」

 

蘭「そうね、誰かの悪戯かしら。捨てた方が良かったりしてね」

 

コナン(いや……この手紙、どうやらただの悪戯じゃない! あの時と全く同じフォントで書かれている……だが、あの時の犯人は刑務所の中だ。一体、誰が? とにかく、まずはあの時のあの探偵……金田一一だ。半年前にあの事件で出会った、あいつを当たれば、あるいは……)

 

 

 

 

 

 

○回想。半年前、雪割荘

 

 件のミステリーツアーの参加者たちが座っている。

 

工藤「――さて、どうやら我々を呼んだ主催者もまだ準備ができていないようですし、今のうちに自己紹介でもしておきましょうか。これから始まるミステリーゲームのライバルとしてね。ちなみに、私は工藤新一。こっちは幼馴染の毛利蘭です。皆さんも、順にお名前と、それから一言程度の紹介をお願いします」

 

 

黒須宗男「黒須だ。彼は王剛。コンビで探偵をやっている。スペシャルゲストだとか何とかで、今日は若い探偵たちに指導をするよう言われて来ている」

 

王剛「……」

 

工藤(黒須宗男……伝説の名探偵と呼ばれた探偵。強引な捜査や警察との繋がりが指摘されているが、伝説と呼ばれるだけあって解決した事件の数は知れない。黒須探偵事務所で一緒に働いている王は元・鬼警部だ。二人とも金がないと動かない事で有名な探偵だが、一体どうやって呼んだんだ?)

 

 

松山美紀「私は松山美紀よ。何件かの事件を解決した程度だから、有名な高校生名探偵の工藤くんに勝てるかは不安だけど、よろしくね」

 

工藤(松山美紀……いくつもの特技を持つ、『女ホームズ』と呼ばれる女子大生か。何度か新聞にも出ていた。犯罪組織『白のリボン』の壊滅には彼女のちょっとした助言が不可欠だったと言われている……)

 

 

鬼沢誠人「鬼沢誠人です。彼女は幼馴染で助手の笠原和美。二人で探偵事務所を開いて、それなりに事件に関わってます」

 

笠原和美「よろしくお願いします……」

 

工藤(彼は鬼沢探偵事務所の鬼沢探偵。かつては高校生探偵として名を馳せたらしい……俺や蘭みたいなものかもな。助手の和美さんは初めて見るが、メガネをかけていて大人しそうな人だ……確か、この人は本名で小説家もやっているんだっけ)

 

 

時任新奈「時任新奈。一応、短大卒業してすぐに探偵社に勤めたから、探偵としては日が浅いんだ。もう知ってる人もいるけど、ここで多くの同業者と友達になっておきたいな。よろしく! あはは」

 

工藤(時任新奈。私物のミョーな発明品を使って犯人を撃退する事で有名な、通称『おもちゃ探偵』。子供みたいな性格の女だって聞いたが、この様子だとどうやら本当らしいな。とても松山さんと同い年には見えねえし、俺や蘭より年上で成人っていうのも信じがたいぜ)

 

 

深海十四郎「深海十四郎です。探偵というよりは、占い師ですが……よろしくお願いします」

 

工藤(占い師探偵・深海十四郎。本業が占い師で、事件に関わるのを好まないが、どういうわけかいつも必ず事件に遭遇してしまう探偵。……結局、占いより推理が当たると専ら評判だ。そして――)

 

 

金田一一「俺は、不動高校二年生の金田一ハジメっす。キンダニじゃなくて、金田一ね」

 

 蘭を見やり、蘭が少々恥ずかしそうにする。

 

金田一「で、こっちは、幼馴染で同級生の七瀬美雪。松山さん、よろしく!」

 

松山「え……あ、よろしくね、金田一くん」

 

美雪「もう、はじめちゃん! 松山さんにデレデレしない!」

 

黒須「……フンッ、この頭の悪そうなガキがどうして彼らのような名探偵と一緒に呼ばれたのか疑問だな」

 

金田一「ムッ」

 

美雪「……コホン。でも、これでもはじめちゃんは、あの有名な名探偵・金田一耕助の孫なんですよ? これまでにいくつもの難事件を解決してるんです!」

 

黒須「何? じゃあ、こいつがあの、警察の間で有名な……?」

 

工藤「ええ、私も会うのは初めてで気づきませんでしたが、彼こそ、あのオペラ座館の事件や背氷村の事件を解決した、本名非公開の探偵ですよ。よろしく、金田一さん」

 

 金田一に握手を求める新一。

 

金田一「……(嫌そうな顔をする)」

 

 

 

 

 

 

○現代。私立不動高校

 

 

金田一「すかーっ! すかーっ!」

 

 教室に巨大ないびきが響き渡っている。

 いびきの正体は、授業中にも関わらず爆睡している金田一一。

 

七瀬美雪「起きて、起きて、ねえはじめちゃん!」

 

金田一一「むにゃむにゃ……俺の名前は金田一はじめ……幼馴染で同級生の七瀬美雪と遊園地に遊びに行って……むにゃむにゃ……背後から近づいてくる玲香ちゃんと四つのおっぱいに挟まれて……むふふ」

 

美雪「もう、なんて夢見てんのよっ!!」

 

 美雪が怒ってハジメの頭をチョップで叩く。

 

金田一「イデデデデ……痛ってぇ~! 何すんだよ美雪! 嫉妬はみっともないぞ……あれ? 玲香ちゃんは? 玲香ちゃんはどこ~!?」

 

美雪「いつまで寝ぼけてんのよ……!」

 

金田一「寝ぼけてる? ……はっ! なんだよ美雪、今のは夢かよ……折角良い夢見てたってのに起こしやがって……」

 

美雪「もう! それより今、授業中よ! はじめちゃん!」

 

金田一「え? あっ……バカ、それを早く言えよ美雪っ!」

 

美雪「ブースカ寝てたあんたが悪いんでしょうがっ!」

 

金田一「なんだよブースカって。それを言うならグースカだろ! 快獣じゃねえんだから……」

 

 喧嘩する金田一たちの前に、先生が立つ。

 

先生「金田一っ! またお前か……」

 

金田一「げっ、ノモッツァン! え、えっと、ほら、俺、今美雪に殴られたばっかりで、もうそういうのは間に合って……!」

 

 金田一をひっぱたく音が鳴る。大笑いしつつ、方々で噂する同級生たち。

 

同級生A(男子)「なあ、先週の科学部の殺人事件、あいつが解決したって噂あるけど、結局あれマジなのか?」

 

同級生B(男子)「そんなわけないだろ。あいつが……。でもあの学年一美人の七瀬さんがあいつの面倒見てくれてるっていうのは凄えよな」

 

同級生C(女子)「保体の岡部に聞いたけど、あの事件、だいたい警察がやってくれて、キンダニはそこに突っ立ってたなんだって」

 

同級生D(女子)「そりゃキンダニじゃ無理でしょ。立派な名探偵の孫だって聞いたけど、本当におじいさんが偉いだけで本人はあれだもん」

 

同級生E(女子)「おじいさんが凄いって話だけで、毎回色んな噂が立つのよね。まあ、ある意味スゴいけど」

 

 ため息をつく美雪。

 

美雪「もう……本当にはじめちゃんが解決したのに。……でも、普段のあれを見てたら仕方ないか……」

 

金田一「許して、先生!」

 

先生「うるさい、放課後に職員室に来いっ! いいな!?」

 

金田一「……へーい」

 

 

 

 

 

 

○不動高校・職員室

 

 教師が金田一に話をしている。

 

先生「まったく、お前はいつになったら反省を覚えるんだ。成績は赤点スレスレ、スポーツが出来たり、他の特技があったりするわけでもないし、挙句に素行も悪い。出席もギリギリじゃないか。これじゃあ大学進学どころか就職も……いや、進級さえも厳しいぞ」

 

金田一「えへへ、そこをなんとかしてほしいんすけど……」

 

先生「ダメだ。多めに見る事はできん。お前の頑張り次第だな」

 

金田一「ちぇっ!」

 

先生「舌打ちをするな! ……それから、もう一つ言いたい事がある。お前この前の殺人事件に関わってたそうだな?」

 

金田一「……え? いや、でも俺、悪い事は何もしてないっすよ」

 

先生「それはわかってる。だが、生徒の間ではなんでもお前が解決したっていう話が飛び交ってるそうじゃないか。俺もあんまり詳しくは訊けてないんだが、あれはまさかお前が自分で流した噂じゃないだろうな?」

 

金田一「え、そんな」

 

 そんなとき、近くの白衣の教師が横から口を挟んだ。彼の名前は、栗本翼。

 

栗本翼「あの……すみません。口を挟むようで悪いんですけど、先週の化学部の件でしたら、解決したのは、ほんとうに彼なんですよ」

 

先生「栗本先生! そんな冗談を。こいつがあの事件をなんて……」

 

金田一「そうっすよ、栗本先生、それ言わない約束……!」

 

栗本「いいじゃないか、それが真実なんだから。あの事件に立ち会って、君の凄さは他人に伝えたいくらい見せてもらったつもりだしね。他にも、きみの活躍は色々聞いてるよ」

 

金田一「……ったくもう、おしゃべりな人がいるんだよな」

 

先生「まさか、本当にこいつが……?」

 

栗本「ええ、まあ、そういうわけなんです。もしかすると、彼にも出来る事があると言えるかもしれませんよ。すぐに、新たな東の高校生探偵と呼ばれる時が来るかも……」

 

金田一「冗談きついよ、栗本先生。そんなの絶対やだね。そんな事して、どれだけ恨みを買うかわかんねーし、命がいくつあっても足りねえじゃん」

 

先生「コホン。あー……まあ、そういう事なら、とにかく今日は良い。栗本先生はああいうが、たかだか一度まぐれで事件を解決したからといって、お前にそれ以上、事件解決なんて真似は無理だ。くれぐれも、勘違いしないようにな! それに、加害者にもなるなよ! それじゃあ帰って良いぞ」

 

金田一「へいへーい。わかりましたよ。さよなら、先生。また明日」

 

金田一(べろべろばー)

 

栗本「――あ、そうだ。金田一くん! ちょっと。近々、俺の方から面白い報告をする事になると思うから、ちょっと楽しみにしててくれよ」

 

金田一「え? 面白い報告? ああ、もしかして、……その薬指のリングの事っすか?」

 

 金田一が笑って去る。

 

栗本「……やれやれ、なんでもお見通しか」

 

 栗本の左手の薬指には、金色の指輪がはまっていた。

 

 

 

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