名探偵の事件簿(ケース・ファイル) -コナンVS金田一少年- 作:ワニ夫くん
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○ミステリー研究会部室
座っているのは、金田一一、七瀬美雪、江戸川コナン、毛利蘭。
部としては休みの日だったが、とりあえずコナンと蘭を招いたのだ。
コナンは辺りを見回している。蘭たちは話を進めている。
コナン(不動高校ミステリー研究会……そういや、この高校、推理作家も輩出してたんだっけ)
美雪「ごめんなさい、はじめちゃんのせいで散らかってるけど」
蘭「いえ、全然。お構いなく。……とにかく、そういうわけで、二人のところに来てみたんだけど、お二人は何かこの手紙の差出人について心当たりありませんか?」
美雪「ううん。特には何も……」
金田一「俺もナシ。うーん……わかるのは、やっぱりあの時の参加者の可能性が特に高いって程度の事かな」
蘭「え? どうして?」
金田一「……俺たちの住所を調べられる人間だからだよ」
蘭「でも、あの事件を報道か何かで見た人が、後から調査したのかも」
金田一「それが変なんだ。俺や美雪は、毎回警察やマスコミにちょっと融通効かせてもらって、事件に関与してない事にしてもらってたんだから。一緒に事件に巻き込まれた有名な探偵たちならともかく、あの場にいなかった人たちは俺や美雪の事なんて知らないはずだぜ。仮に外から関わった人間を調べ上げて手紙を出したとしても、俺や美雪の名前になんて滅多に行き着けないはずだ」
美雪「……それもそうね。考えてみれば、あたしたちがあの事件に関わった事を知ってる人なんて、あの時のメンバーと警察以外にはほとんどいないわ」
蘭「へえ。どっかの推理オタクとは、まるで反対ね」
金田一「……どっかの推理オタクねぇ」
金田一は思案気になる。その前で、コナンがスマホをいじっている。
コナン「……うーん。確かに、いまネットで検索してみたけど、金田一さんの名前はあんまりヒットしないね。ちょっとは金田一さんの事だと思う話題も出てくるけど」
コナン(まあ、俺はあの頃から、警察関係の噂で何となく彼の事は知っていたが、流石に未成年の情報だけあって、顔や所在地など詳しい事までは知らなかった……。そう考えると、ごく一部の人間しか彼の名前を知りえないのも事実だ。まして、解決したわけでもないあの事件なら特に彼のプライバシーを追う必要がない……)
金田一「――それで、蘭さんだって今回は、俺たちの家じゃなくて学校を訪ねてきたんだろ。あの時は多分、住所は言ってなくても、高校の名前くらいは言ったから、それでこの学校を当たったわけだ」
蘭「ええ。確かにそうね……」
コナン「蘭姉ちゃんは、ニュースになってた事件を思い出してここに来たんだよ。金田一さん、ここで起きた事件を解決したんでしょ? すごいよねー?」
金田一「ん? ああ、何度かでかい事件が起きてるからわかんねえけど、多分この間の化学部のだろ? 一応俺が解決したって事にはなってるけど」
美雪「はじめちゃんは、他にも色んな事件を解決してるのよ」
コナン「へぇ。何度も事件を解決したんだー! 高校生なのに、まるで新一兄ちゃんや平次兄ちゃんみたいだね!」
ソファの裏から、カメラを持った少年が現れる。彼は佐木竜二。
佐木竜二「そりゃあ、先輩がいれば大概の事件は片が付きますから。何しろ、あの名探偵の孫で、この高校でも何度となく様々な事件を解決してきた英雄ですもんね」
金田一「げっ、佐木二号。お前どっから湧いて出た!?」
佐木「ボクは先輩のピンチが来るときは必ずこのカメラに収める係ですから♪」
金田一「あぁ? ピンチ?」
佐木「ええ、実は今日も、ボクの亡き兄が夢に出てきましてね。また先輩がピンチに陥るから、今すぐセンパイのもとに向かってお助けしろ……助けられなくてもカメラを回して記録しておけとお告げがあったんです」
金田一「だぁ~っ! もう、不吉な事言わないでくれよ佐木……毎回そのパターンで酷い目に遭ってきたんだからな!」
佐木「ボクは事実を言ったまでです! ……うーん、それにしても画になりますねぇ。二人の探偵、夢の共演!」
佐木は金田一とコナンがフレームに入るようにカメラを回す。
コナン「え!?」
金田一「二人の探偵? なんでこのガキが探偵なんだよ?」
コナン「いや、ぼく……!」
佐木「知らないんですか、先輩。この子、世間を賑わす怪盗キッドを追い詰めて、何度か新聞にも載ってるんですよ?」
コナン(あ、なんだそっちか……)
美雪「ああ! そうね! どこかで見た事あると思ったら! あの怪盗キッドの! ミス研でもスクラップしてあるわよ! ほら!」
ミス研のファイルを取り出し、怪盗キッドの事件で新聞に載るコナンの写真を、美雪が金田一に見せる。
金田一「う~ん。こいつがね。……それにしても、なんか、それ以外のどっかでも見た事あるような……」
コナン(やべっ!)
コナン「えへへ~! ぼく、新聞に載ったんだ~偉いでしょ~金田一さん」
金田一「うーん……。まあいっか!」
コナン「……ふぅ。ん?」
コナンのポケットで、スマホが鳴る。
金田一「?」
コナン「あ、あはは。蘭姉ちゃん、ちょっと僕トイレ!」
美雪「あら、コナンくん。場所わかる?」
コナン「うん! ここ来るまでに見たから」
すぐに教室を出て走り出すコナン。
金田一「……やっぱり怪しい」
◆
○不動高校・屋上
電話を取るコナン。相手は阿笠博士。
コナン「もしもし、博士?」
阿笠『ああ、新一。さっき沖矢さんに聞いてみたんじゃが、確かに新一の家のポストに妙な手紙が入っていたようじゃ』
コナン「内容は、やっぱりミステリーゲームの招待状ってやつか?」
阿笠『ああ。いま哀くんがフォントを調べている最中じゃ。確かに、一見明朝体に見えるが、普通のパソコンには搭載されていない、誰かの自作のフォントが使われているみたいじゃな。ほとんどそこらのフォントと変わらないんじゃが、『新一』の『一』の字はずいぶん歪な形になっておる』
コナン「ネットのフリーフォントとかでもないのか?」
阿笠『調査中ではあるんじゃが、何しろ哀くんもついさっき帰ってきたばかりだからな……』
コナン「なるべく早くしてくれって言っといてく……」
灰原哀『――言っといてもらうよう頼まなくても、直接言ってくれていいわよ』
コナン「あ、灰原! 丁度良かったぜ! ネットで今回のフォントと同じものがねえか……」
哀『……あのねぇ!!! こっちはさっき帰ってまだ一時間しか経ってないってのに、ずーっとインターネットでフォントを照合してんのよ!! これでもかってくらい早く!!』
コナン「あ、ああ……わ、悪かった……悪かったって……。でも、ありがとな。今度、比護さんの試合のチケット当たったらお前にやるから……」
コナンの通話が切れる。
コナン(げっ、切りやがった……)
???「おい、何の調査を誰に頼んでるんだ?」
コナン「え?」
振り返ると、そこには金田一がいる。
コナン「あ、あれれ……金田一お兄さん。どうしたの?」
金田一「『どうしたの?』はこっちだよ。この屋上はこの俺の庭なの! ……なーんか怪しいと思ってついてきてみたら、案の定だよ。小学生がスマホで何してんだ」
コナン「えへへ、いいでしょ。買ってもらったんだぁ~」
金田一「へー、そうか。それはともかく、どう見たってここはトイレじゃないぜ?」
コナン「ぎくっ!」
金田一「それに、さっきと口調は違うわ、ゲームの招待状について独自に調べてるわで、どうも何か隠してるっぽく見えるんだけど?」
コナン「き、気のせいじゃないかな? ぼくただの普通の小学一年生だもん……」
慌てるコナン。怪しむ金田一。金田一は少し気を抜く。
金田一「……まっ、いいや。あのフォントなら、ちょっと調べりゃすぐわかるよ」
コナン「え?」
金田一「あれ、『バーチャバトラー』っていうソシャゲーのタイトル用フォントだよ。すぐピンときたね」
コナン「『バーチャバトラー』?」
コナン(そういえば、最近、元太や光彦がやってたな……ん? でもそれって)
コナン「で、でも、それって、炎か何かを字にしたようなロゴじゃなかったっけ?」
金田一「そうじゃなくて、そのゲームは毎回、『第一話』とか『第二話』とか章題が分かれてて、サブタイトルがつくの。そのタイトルのロゴが、あれと全く同じって事。俺の名前の『一』がちょっと反り返ってたり、『七瀬』の『七』が丸っこいのも、全く同じだったよ。漢数字のフォントが毎回ちょっと変わっててさ」
コナン「ね、ねえ、そのフォントってネットとかでも手に入る? ほら、ロゴメーカーってあるじゃない? ゲームやアニメのロゴを再現できるようなサイト」
金田一「うーん、多分そうだと思うんだよな」
コナン「え? 多分って?」
金田一「バーチャバトラーがサービスを開始したのは、つい一か月前なんだ。それより前、半年前にも同じフォントで手紙が来ている。だから、元のフォント自体がどこかで配信されてないとおかしいんだ」
コナン「それじゃあ、犯人もゲーム会社も、どこかからそのフォントを引用した可能性が高いって事だね!」
コナン(もし、ネットに転がってるようなフォントだったら、犯人の特定は厳しそうだが……)
金田一「ああ。とにかく、フォントのモトを探るなら、まずはそのゲーム会社に問い合わせて、どこからフォントを見つけたのか探ればいいって事だな。めんどくさいから俺はそういうのパスだけどね。それに、もし本当にただネットから引用しただけだったら、犯人の特定も難しいし」
コナン「……あれ、金田一さんは、あの手紙の差出人の事、興味ないの?」
金田一「あんまりね」
コナン(意外だな。だが……)
コナンが声色を変える。
コナン「金田一さんは、確か、偉大な名探偵、金田一耕助の孫なんだよね。この程度の謎じゃ、その血は騒がない?」
金田一「……悪いけど、俺には俺の事情があんの。まあ、巻き込まれた事件や、どうしても解かなきゃいけない事件が解けるなら、その時は解くしかないけどさ、それ以外は全部警察の仕事だろ。……だいたい、大変なんだぜ。報酬も出ないし、毎回殺されかけるし」
コナン(……確かに、俺もこうして子供になっちまったのも、事件に余計な首を突っ込んだのが原因だ……。しかし――)
コナン「でも!」
金田一「……そもそも、俺も何度も事件に首突っ込んだけど、それで良かった事なんて一度だってないんだ。まあ、ただ、今回の件は確かにちょっと気になるし、警察の知り合いにちょっとは相談してみるつもりだけど。……あ、あと、お前にも一応忠告しておくけど、お前もこういう事件に首突っ込んでも、ほんとろくな事ねえぞ? ……ほら、戻るぜ」
金田一がそう言って顔を顰める。金田一は先に屋上を去る。
コナン(確かに、彼の言っている事は理解できる。だが、気に食わねえ……! あいつだって、あれだけの頭脳があるならわかってるはずだ! あの手紙には、かつての殺人事件とつながる……俺たち探偵への怨念のような感情が込められてる事くらい!)
金田一の背中を見つめるコナン。
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○不動高校・廊下
金田一(……工藤新一、か)
金田一が窓の外を見ながら何か考えている。
金田一(そういえば、あの高校生探偵、なんていうか……出会った頃の明智警視にそっくりな奴だったな。嫌味でスカした性格で、事件を楽しんでるようにも感じた。だけど、今も本当にそうなのか……? あの時の犯人……鬼沢さんは)
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○回想、三か月前。留置所
面会室、金田一が鬼沢誠人を訪問している。
鬼沢「――久しぶりだね、金田一くん。元気だったかい? ……まさか君が面会に来てくれるとは思ってなかったよ」
金田一「ええ。鬼沢さんも、思ったよりは元気そうで」
鬼沢「……そうでもないよ。あんまり元気が出る環境じゃなくてね」
金田一「そりゃそうか……。でも、実は、俺もなんすよ。あの事件以来、なんていうか……何かが引っかかり続けててさ」
鬼沢「もしかして、推理で工藤くんに負けたからかい?」
金田一「……いえ、それは関係ないです。あれは、あくまで殺人事件っすから。俺は、こうして犯人が見つかって、罪を償ってくれていればそれで良いと思ってます。……でも、なんていうかな、もっと別の部分では、終わっている気がしないんすよ、あの事件」
鬼沢「終わった気がしない? 僕はすべてを自供したよ。小説やドラマのように、誰かを庇ってるというわけじゃない。工藤くんや君の推理に間違いはない」
金田一「ええ、それはわかってます。犯人はあんたで間違いないと思う。ただ、俺もこれまで……何度かこういう事件に首突っ込んだ事があるんですよ。事件って、解決してそれで終わりってわけじゃないんですよね。大抵いつも、事件を目にした人々の人生には続きがあるし、事件そのものにももっと深い裏があるんです。……俺はいつも、そういう運命に弄ばれる人たちを、たくさん見てきました」
鬼沢「なるほどね。この事件の裏にもドラマがあると」
金田一「……それで、最近、ちょっと調べたんすよ。うちの部室に、ミステリー研究会……いや、推理小説研究部の会報が全部残ってて、その中に高校時代のあんたや和美さんの書いた物も見つかったんです」
鬼沢「会報? ――……なるほど、そうか。言いたい事はわかったよ。まいったな。それなら、君の事だから、僕たちの事情もすべて調べてお見通しなんだろうね」
金田一「全てかはわかんないっすけどね。……勿論、その事で、これ以上詮索するつもりや、調べてわかった事を外に話すつもりもありません」
鬼沢「そうか。……とても助かるよ」
金田一「でも、まだ、その件であんたに伝えておきたい事があって……。あ、そうだ。その前に一つ訊きたいんすけど、工藤はここに来ましたか?」
鬼沢「工藤くん? いや、別に見かけなかったが」
金田一「そうっすか……」
鬼沢「何かあったのかい?」
金田一「いや、別になんでもないっすよ……」
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