名探偵の事件簿(ケース・ファイル) -コナンVS金田一少年-   作:ワニ夫くん

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9:『コナンVS金田一少年』

 

 

 

○不動総合病院

 

 

 蘭と小五郎が不動総合病院に来ている。

 

蘭「――もう、コナンくんったら。また心配かけて……」

 

小五郎「まったく、またおめえは余計な事に首突っ込んで……」

 

コナン「ご、ごめんなさい。でも、大丈夫だよ……どこにも異常はなかったみたいだから」

 

小五郎「そういう問題じゃねえ! おめえを追いかけたあの金田一とかいうガキも怪我を負ったそうじゃねえかっ! いいか、コナン。事件ってのはな、ガキの遊びじゃねえんだ……!! 相手はいかれた連続殺人犯なんだぞ! 奴を追うのがどれだけ危険な事かわかってんのかっ!?」

 

蘭「そうよ、コナンくん。これで少しはわかったでしょ?」

 

コナン「……」

 

コナン(金田一があの時呼びかけてくれなかったら、俺はあの爆発に直撃していたかもしれない……)

 

蘭「本当に反省してるの!?」

 

 怒る蘭を見て、小五郎は声のトーンを抑える。

 

小五郎「もういい、蘭。こいつも金田一の事では、きっちり反省してるみたいだからな。……それからな、金田一についてだが、なんでも、あいつの疑いは今回の疑いは晴れたらしいな」

 

コナン「ほんとっ!? おじさんっ!!」

 

小五郎「ああ、目暮警部の話だと、確かに二つの事件でアリバイがあったし、凶器はどこかの店で金田一が触ってたモノが、偶然犯人に使われたんじゃないかって話だ。最近の指紋じゃねえ事がわかったみてえだからな」

 

コナン「……よかった。ありがとう、おじさん」

 

小五郎「ふんっ」

 

 その時、同じ病院で検査を受けていた金田一が現れる。

 

金田一「あ、こんちわ。毛利サン、それに蘭さん。さっきはどうも……」

 

小五郎「ああ、お前か……金田一。どうだ、おまえ、具合は」

 

金田一「とりあえず、打撲があったくらいでなんとか。すんません、心配かけたみたいで」

 

蘭「良かった……」

 

コナン「ごめんなさい、金田一さん……」

 

金田一「いや……とにかく、お前や少年探偵団の奴らに大きな怪我がなくて良かったよ」

 

小五郎「コホン。それより金田一、お前にも少し話がある。確かに、今回の怪我については、うちのコナンが一番悪い! ……だが、おめーもこれまで色んな事件に首突っ込んで警察の邪魔してきたそうじゃねえか。この前の不動高校の事件を解決したのもお前だって聞いたぞ!? ええ、どうなんだっ!?」

 

金田一「あ、あはは……。あん時は、俺しか解く人間がいなかったんだよ……それに、解いたのは剣持警部って事にしとくつもりだったし……」

 

小五郎「首突っ込んだ事に変わらねえだろっ! 二度とくだらん推理ができねえように……」

 

蘭「もう、お父さん……その辺に……」

 

 そんなとき、美雪と佐木がやってくる。

 美雪が思わず金田一に抱き着く。

 

美雪「――はじめちゃん!」

 

金田一「美雪……悪い、心配かけたな」

 

美雪「ううん。コナンくんを追いかけてたんでしょ?」

 

金田一「ああ。でも、ほら、ここ二日ずっと警察から逃げてたし、そっちの事でも心配かけちまったかなって」

 

美雪「はじめちゃんは悪くないじゃない!」

 

金田一「……まあな。でも、ごめん!」

 

美雪「ううん。良かった。無事でこうしてまた会えて……」

 

佐木「じーっ」

 

 金田一と美雪がそれぞれお互いの身体を離す。

 

金田一「あ、佐木! 馬鹿、撮るなよっ!」

 

小五郎「なんだ、ガキが色気づきやがって……ケッ! こいつらも同じかよ」

 

金田一「そんなんじゃないって……!」

 

 そんな様子を、蘭はじっと見つめる。

 蘭の中には、自分のもとへこうして帰ってくる新一の姿が浮かんでいた。

 なつかしさに、少し蘭の目に涙がたまる。

 

蘭「……」

 

美雪「蘭さん……どうかしたの?」

 

蘭「あ、ううん……。金田一さんが美雪ちゃんのところにちゃんと帰ってきて良かったなって、そう思ったらちょっと涙が出てきちゃって……」

 

金田一「大袈裟だな、蘭さん。こんな事よくあるって! あ、もしかして、蘭さん俺の事好きだったり……それなら大丈夫! 俺は蘭さんが抱き着いてくれたって、もう全然……」

 

美雪「はじめちゃん!(諫める) ……ごめんね、蘭さん。きっと、工藤新一さんの事を考えてたのよね」

 

金田一「え? あ、そうだ、その工藤って奴、どこにいるんだよ。この事件に関わってるらしいんだけどさ、まだ一度も会って話を聞いてないんだよ」

 

 美雪、蘭、コナンがうつむく。

 

蘭「……新一はね、いま、事件で遠くに行ってるらしいの」

 

金田一「なんだって!? それじゃあ、コナン、お前の連絡相手は……」

 

コナン「あ、えっと」

 

蘭「あ、でもたまにコナンくんや私に電話するのよ。帰ってきてはくれないけど……」

 

金田一「そうか……そういえば、あんたたちも幼馴染なんだったな」

 

蘭「どこにいるのかな……。今度の事件でも、コナンくんに協力してるって。でも、私たちの前には来てくれないんだよね」

 

コナン(蘭……悪い。俺もいつか、金田一みたいに、絶対にお前のもとに帰ってくるからよ……)

 

 コナンの神妙な表情を見て、金田一は押し黙る。

 

金田一「……あ、そうだっ! 蘭さん、喉乾かないっ!?(少し焦ったように)」

 

蘭「え?」

 

金田一「そういう時はさ、ちょっとあったかい飲み物でも飲んで落ち着くのが良いよ。俺が買って来るから!」

 

美雪「で、でも、はじめちゃん。怪我してるじゃない! いいわ、それなら私が買って来るわよ」

 

金田一「いいよ、俺とコナンで行くから。こんなのかすり傷だし、心配かけたお詫びにさ。えーっと、俺とコイツと、美雪と佐木と、蘭さんと小五郎さんの分ね」

 

コナン「えっ!?」

 

蘭「ごめんなさい、変な心配かけちゃって……でも大丈夫だから」

 

金田一「良いよ、良いよっ! なんでもいいから、とにかくおごるよ! 行こうぜ、コナン!」

 

コナン「えっ!」

 

小五郎「せっかくこいつが心配料に飲み物の一杯でも奢るって言ってんだ。ここはひとつ、お言葉に甘えようじゃねえか。……というわけで、金田一。俺のはビールを頼むぞ!」

 

金田一「とりあえず、全員コーヒー買って来るからなー!」

 

 既に金田一とコナンは向こうに行っている。

 

小五郎「……聞いてねえのかよ」

 

佐木「あのー、そもそも僕たち未成年だからビールは買えませんし、病院の自販機にビールなんてありません……」

 

小五郎「……あ、そっか」

 

 

 

 

 

 

○不動総合病院・自動販売機の設置されている休憩スペース

 

 金田一とコナンが二人でいる。

 他には誰もいない。

 

コナン「ねえ、どういうつもり? 金田一さん。わざわざ僕を指名して呼ぶなんて。普段はこういうとき、美雪さんと一緒に行動するんでしょ」

 

金田一「江戸川コナン……探偵、だろ。お前、話すたびに口調を変えてるよな。感情的になった時には、素が出る」

 

コナン「……それがどうかした?」

 

金田一「いや、それは別に良いよ。でも、蘭さんはずっと待ってるってよ、工藤新一の事。……なあ、コナン。本当は、あいつがどこにいるのか、お前が一番よく知ってるんじゃないか? 信頼できる同級生の蘭さんや、探偵の毛利さん、他にも警察の知り合いがいるっていうのに、工藤新一はわざわざお前を頼ってる。流石にそれは妙だよ」

 

コナン「どう思ってるの? 金田一さんは」

 

金田一「これから言う事に確証はないよ。どうしてそんな事になってるのかだってわからない。はっきりとした根拠もない。でも、俺はこう思ってる」

 

コナン「……」

 

金田一「……俺の目の前にいる江戸川コナンが、工藤新一本人だって!」

 

コナン「……」

 

金田一「最初は、弟か何かだと思った。だけど、そもそもお前は最初に会った時から少し様子が違っていた。……ただ頭が良いだけじゃない。俺や工藤しか知りえない半年前の事件についても、かなり普通についていってるんだ。お前が屋上で連絡を取っていた相手も、あの状況は本来なら工藤なのが自然なのに、そうじゃなかっただろ?」

 

金田一「きみは、直接博士に電話をしていた。これは、あくまで推測だけど……あれだけの高い技術を持っている博士がいるなら、もしかしたら人間を子供にする事だってできるかもしれない。ファンタジーじゃなくてさ」

 

 コナンは何か考えている。

 

金田一「どうだい、江戸川コナン!」

 

コナン「……ねえ、金田一さん。前に、事件は、あくまで警察に任せるべきものだって言ったよね? 自分は関わりたくないって。……でも、この真実を知ってしまったら、どうなるかはわからないよ? 金田一さんの身にも危険が及ぶかもしれない。それを背負う覚悟はある?」

 

 金田一は少し髪を掻く。

 

金田一「……そんなの今更関係ねえよ。もし、俺が同じ立場だったら、美雪の事を絶対に泣かせない! 近くにいて、それでも泣かせるなんて……平気でそんな事をする奴がいるなら……俺は、絶対に許したくないね! まして、目の前にいるならさ!」

 

コナン「金田一……」

 

金田一「どうなんだよ、コナン!」

 

 横から灰原が現れる。

 

哀「――隠し通せる相手じゃないみたいよ。名探偵さん」

 

コナン「灰原……! お前、いつからそこに!」

 

哀「さっきから、ずっとよ」

 

金田一「哀ちゃん……? きみも何か知っているのか?」

 

哀「ええ、教えてあげるわ。その代わり……あなたにはまた新しい死神からの招待状(チケット)が届くかもしれないけど、あなたはそれも……覚悟の上なんでしょう?」

 

 金田一が頷く。

 

 

 

 

 

 ――時間が経過する。

 

 

 

 

 

哀「――つまりは、そういう事よ」

 

金田一「……人間を小さくする薬。そんなものが……それに、黒の組織だって……?」

 

哀「世の中には知らない方が良い事もあるわ。でも、あなたはそれを知ってしまった。私たちと同じね。もう、あなたには一生影が付きまとう……」

 

金田一「ああ、でもまだ信じられねえよ。きみが、もう俺たちみたいな年だって? 本当なら、どんな姿か見てみたいね」

 

哀「信じても信じなくても、もし他言したらあなたは組織に消される。悪いけど、私の話はここまでよ」

 

金田一「そうか。……話してくれて、ありがとう。……どっちにしろ知っちまったもんはしゃーないよ。きみの言う通り、隠して生きるしかない」

 

哀「あなたのその前向きさが、ちょっとうらやましくなるわ。……とりあえず、私はもうコーヒーを持って先に行ってるわね。あんまりみんなを待たせちゃ悪いものね」

 

金田一「あ、ああ。サンキュー……哀ちゃん」

 

 金田一、コナンの方を見下す。

 

金田一「コナン……」

 

 コナンは薄く笑う。

 

コナン「……間抜けな話だろ、金田一。俺は、余計な事に首を突っ込んじまったばっかりにこの世で最も危険な組織に追われるようになっちまった。まったく、本当に笑えない冗談だぜ。この姿の事も、相手に危険が及ぶ以上、誰にも言えねえ……大切な人にもな」

 

金田一「お前は、あの蘭さんを危険な目に遭わせない為に、ずっと自分がいる事を隠してたのか……」

 

コナン「ああ。あいつを組織との戦いに巻き込むわけにはいかねえ。たとえ、この身が滅んじまっても、どんなにつらい想いをさせちまっても……あいつだけは、守りたいんだ」

 

金田一「……」

 

 金田一、少し黙る。

 

金田一「……悪かったな、コナン。いや、工藤。何も知らないのに、自分だったら許さねえなんて言っちまった」

 

コナン「いや……おめえの気持ちは痛いほどよくわかるさ。だって――工藤新一を地球上の誰より許してねえ人間は、他でもない、ここにいるんだから」

 

金田一「……」

 

コナン「やっぱり、今となっては、やっぱりあん時は大人しくしてればよかったのかもしれねえよ。結局、奴らは捕まえられなかったし、蘭を今もずっと泣かしちまってる……もし、おめえみてえに大人しくしてたなら、そうならずに済んだかもしれない……そう思うと――」

 

金田一「……それはわかんないね! 俺も同じ状況なら、同じ事をしてたかもしれねーし」

 

コナン「? どうしてだ? 事件に関わりたくねえんだろ?」

 

金田一「さあね……。でも、俺は昔からジッチャンからこう教わってきた。――真実がわかった時に初めて誰かが救われる事が、きっとある。それなら、その真実を暴いてみせる誰かが必要なんだって! そして……きっと暴かれない事で誰かが苦しみ続ける事が、不幸になる事が、世の中にはたくさんある筈なんだ! それをジッチャンは、教えてくれた……」

 

コナン「……なるほど、誰かを助けるのに論理的な理由はいらねえってワケか。でも、そうか……やっぱり、あんたのおじいさんは、日本が誇る名探偵なのかもな……」

 

 コナンは、笑いながら立ち上がる。金田一がその背中に語り掛ける。

 

金田一「ああ……俺も、ジッチャンの事はそう思ってるよ。……なあ、工藤新一は、俺と同じ、高校生探偵なんだろ」

 

コナン「……ちょっと前までの話だけどな」

 

金田一「ちょっと、最後にひとつだけ訊いていいかな?」

 

コナン「何だよ」

 

 金田一の声のトーンが暗くなる。

 

金田一「……お前も、誰かを救えなかった事や、……自分のせいで誰かを死なせちまった事があるのか……?」

 

コナン「……」

 

金田一「さっき俺は、真実を暴く事で人が救えるって言ったよ。でも、必ずそういうわけじゃない――そうじゃなかった事も、ある」

 

コナン「真実は時に人を殺してしまう……か」

 

金田一「……ちょっと前に、俺が関わった事件でさ、俺がいなけりゃ起きなかった事件があったんだ。それに、今までも何人も、『助けてほしい』って声を聞いてやれなかった子や、俺が事件に巻き込んで死んじまったヤツや、俺が真実を明かした事で自殺を選んだ犯人がいた。その中には大事な友達もいたよ」

 

コナン「……」

 

金田一「……だけど、俺がやってきた事は間違いじゃないって……俺が謎を解かなきゃ救われなかったものもたくさんある筈だって、美雪には言われた。俺は、いまも美雪の言葉を信じてる。……お前もそういうの、ちょっとはわかってて、それで探偵やってんのかと思ってさ……」

 

コナン「……ああ。その痛みも、ちょっとはわかるよ。――ただ、ほんの、一人分くらいだけどな……」

 

金田一「一人分?」

 

コナン「……だから、俺は、もう、絶対に犯人に自殺なんてさせねえ。推理で犯人を追い詰めて、死なせちまったら殺人者と同じだ」

 

金田一「……」

 

コナン「……でも、何人もの犯人を自殺させちまったとしても……お前は違うぜ、金田一。美雪さんが言ってたんだろ? お前は、自分が暴いてきた真実で、確かに誰かを救ってきてるって。それなら、お前は、これからも多くの真実を見つけて、それでも、犯人を二度と死なせないようにすればいい……。それに、お前は今日、あの高遠から、俺を二度も助けようとしてくれた。この俺自身の無傷が、金田一一が誰かを助けられた立派な証拠だろ?」

 

金田一「後悔するのは仕方ないけど前に進め、か……」

 

コナン「……それに、もしかしたら……お前の見てきた真実は、本当は俺より多くの人を救ってきたのかもしれない。――俺も、これまで、救えなかった人や、後悔している事だってある。でもやめられない、やめちゃいけないんだ! そうやって死んで……言葉をなくした被害者たちに言葉を与え、人が犯罪を犯す本当の理由を見つけて……誰かの心や、消しちゃいけない真実を護る事が出来るのは、スーパーマンじゃない……俺たち探偵だけなんだよ!!」

 

金田一「コナン……」

 

コナン「ふっ……まっ、そのやり方はそれぞれだけどな! それに、お前にだって良い幼馴染(ワトソン)がいるんだろ。……だから」

 

金田一「だから? 何だよ」

 

コナン「お前も……幼馴染は大切にしろよ。そのままで、ずっとそばにいられるんだからな……」

 

 コナンは、金田一の方を見て悲しそうに笑った。

 

金田一「……ああ。言われなくても、名探偵と呼ばれた金田一耕助(ジッチャン)の名にかけてね!」

 

 立ち上がり、コナンの後ろを歩く金田一。

 

金田一(工藤新一……お前も、ただのいけ好かない奴だと思ってたけど……違ったよ。『犯人を絶対に死なせない』……その信念があるなら、俺はあんたと一緒にこの謎を探っていく事が出来る!)

 

コナン(金田一一……誰よりも犯罪を憎み、誰よりも犯罪者を憎まない探偵か。ホント、面白い奴だ!)

 

 

 

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