やはり俺が魔法科高校に通うのは間違っている。 作:ガタオガタ
俺がいる忘れました。
生徒会室に呼ばれ、存在を忘れさられた次の日。
この日から、第一高校ではクラブの勧誘期間となる。
昨日の出来事でどうやら達也は風紀委員入りを果たし、早速今日の午後から巡回活動を開始するそうだ。
昼休みでは達也は生徒会室へと呼ばれていた為、達也を除いたメンバーで昼食を取った。先の話もその時に聞いたものだ。
入学早々大変だと思う。が、辛いのは自分の方だと八幡は思う。何故なら、慣れない学校生活が始まり直ぐに生徒会室に呼ばれ、何か話しがあるのかと思いきや忘れ去られる。これはいじめか?と思った程だ。
巡回活動を開始するそうだ、とは言ったものの、実は既に活動している。
達也は風紀員としての活動、レオや美月はクラブの見学、エリカはふらっと居なくなり、そして八幡は悠々と帰宅中。我ながら中学と変わらない生活に、苦笑いを零す。いや、違う。いくら様々な体験をした中学生活といえど、集団で無視された事は無い。その事実に泣きそうになる。
悠々と帰宅中と言ったが、エリカなどからは一応誘いを受けていた。しかし、八幡には今日用事がある為、断ったので帰宅中だ。
「あら、こんな所で会うなんて最悪ね」
もう少しで帰宅、という所で凛とした耳通りの良い声が聞こえた。その声の主の方へと顔を向ければ、いつも通りの澄ました顔をした人がいる。
「高校でも中学の頃のように菌を撒き散らしているのかしら?比企谷菌?」
「いや、そんな比企谷君?みたいに言わないでくれる?」
会う度罵倒を浴びせてくる女性に、八幡は軽く微笑む。その微笑みに、その女性も微笑みかえしてれる。まるで二人の間では、桃色の世界が形成されたかのように、八幡は感じた。
「気持ち悪い顔を向けないでくれないかしら?顔が腐るわ」
訂正。桃色でもなんでもない。自分はこの女性にとって、玩具なのだど今更ながらに思いだす。
それでも、この罵倒が懐かしいと思ってしまうとは、自分の毒されているのだと八幡は思う。
「あーはいはい。すみませんね。所で雪ノ下1人か?」
「ええ、由比ヶ浜さんは少し遅れるそうよ」
「そうか。まぁ、なんだ。とりあえず家来るか?」
元々、雪ノ下も由比ヶ浜も、家に来る予定だった。八幡の用事とは、中学時代に色々ありながらも、大切な友達と会うことだった。
その為、普通に話を進めただけなのに、罵倒が飛んでくる。
「比企谷君の分際で私を家に誘う?身の程を弁えて欲しいわね」
「分かった分かった。会えて嬉しいのは分かるがとりあえず行くぞ。由比ヶ浜がもううちに着いてるかもしれないだろ」
そう言ったら顔を真っ赤にして怒り出した。八幡は知っている。雪ノ下雪乃、この女性が赤くなる時は早口で罵倒を浴びせ、無視しようがなんだろうが続けて言ってくる。その為、対処法は、聞き流して家に向かう、だ。
「先行くぞー」
雪ノ下に止められていた帰宅への足を再度動かす。後ろだは未だに罵倒を浴びせ続けている雪ノ下。この光景も、八幡にとっては懐かしい光景だ。
雪ノ下の罵倒は帰宅するまで続き、家に着いてからもチクチクと何か言っている。完全無視だ。
帰宅して少しして、インターホンが鳴る。リビングに備え付けられたモニターを見れば、髪をピンクに染めた女性が立っている。とても笑顔だ。
家は八幡の家なのだが、お客を迎えたのは雪ノ下である。しかし、それも仕方ないだろう。雪ノ下とピンク色の女性、由比ヶ浜結衣は親友なのだから。
玄関からは雪ノ下の凛とした声とは違い、活発な明るく高い声が聞こえる。その声色から、随分とはしゃいでいるのが解り、リビングにいる八幡はどうしても笑みを浮かべてしまう。
自分が笑みを浮かべている事に気づき、慌てて口元を抑えるが時すでに遅し。雪ノ下と由比ヶ浜がニコニコといい笑顔──思わず顔が引き攣るほどにはニヤついている──をしていた。
八幡にとって、この2人と過ごす時が一番油断出来ないだろう。何故なら、八幡はこの2人にとって、大事な人であり、そして玩具なのだから。
その後は3人で世間話をしていた。
「それで?第一高校はどうなのかしら?」
「どうと言われてもな……差別が酷い学校?」
八幡の発言に、雪ノ下眉間を抑えため息を零す
「普通にこういう場合は、良い所を言うべきでしょう?第一高校の事を知らない人がそれを聞いたら第一印象最悪だわ」
正論だった。
「いや、そう言われてもだな……あ」
1つ、面白い話題を思い出した。
雪ノ下はどうかわからないが、お菓子をバクバク食べてる由比ヶ浜にとってはいい話題かもしれない。
「うちの新入生総代なんだが、顔も声も、雪ノ下に似てるぞ」
なるべく、適当に言う。あまり自信満々に伝えると、雪ノ下に馬鹿にされるのは目に見えている。
「はぁ……それが」
「それほんと!?」
雪ノ下のセリフに被せて、由比ヶ浜が叫ぶ。雪ノ下は思わず眉を寄せている。その反対に、由比ヶ浜は先程まで口に入っていたお菓子をどこにやったのか、とても驚いている。
(俺には食べたお菓子の処理速度の驚きだぞ……)
「ああ。本当だ。それに、似ているのは見た目だじゃない。得意とする魔法までもが一緒なんだ」
「そう。その人とは是非とも力比べをしたいものね」
「きゅ、九校戦で頑張れ?」
「ゆ、ゆきのん落ち着いて!お菓子凍っちゃったから!」
そう、現在、机の上に置いていたお菓子はひとつ残らず凍っている。いや、お菓子だけではなく、机も、大気中の水分すら凍ってきている気がする。
司波深雪も同じような現象を引き起こしていた。感情による魔法の漏れだし。その様は顔が美しいだけに実に恐ろしい。まさに氷の女王だ。
「あら、ごめんなさい」
そう謝る雪ノ下は実に穏やかだ。
何故雪ノ下が感情を爆発させたか、それは……
「そこまで私にそっくり。なのに私は新入生総代では無い。何がダメだったのかしらね?」
実に、実に美しい笑顔だ。その再発した冷気がなければ。
雪ノ下は何を隠そう、超がかなりの数つく負けず嫌いだ。そして、条件似ていれば似ているほど、その傾向は如実に現れる。八幡はもう黙った。この状態の雪ノ下を止めれるのは親友である由比ヶ浜だけだからだ。
「もう、ゆきのん!ここ小町ちゃんの家なんだよ!ゆきのんの部屋が濡れたら小町ちゃんの迷惑になるじゃん!」
(いや、由比ヶ浜さん。小町の家でもあるけど、俺の家でもあるんだよ?今この場にいるのは俺なんだよ?)
「そ、そうね。ごめんなさい。由比ヶ浜さん」
「気をつけてよね!」
ぷりぷり怒られた雪ノ下は反省したようだ。小動物の様にちっさくなってしまった。正直、八幡はこの状態の雪ノ下が大好きだ。
ピピピッ
電子音が鳴り、その方に顔を向ければ由比ヶ浜が腕輪型のCADを扱っていた。
雪ノ下の得意魔法は、司波深雪と同じ振動系魔法(冷却魔法)であり、その反対に由比ヶ浜は振動系魔法(加熱魔法)が得意である。
由比ヶ浜のCAD魔法を発動する。
雪ノ下の魔法により、凍っていたお菓子、机などの氷が溶け、蒸発して行く。少し経てば、元通りになっていた。
八幡は思う。この2人が親友になれたのも、全く真逆の2人だからこそだろうと。見た目も、性格も、得意魔法まで。全てが真逆。この2人は歯車であり、お互いにきっちりとハマっている。そんな2人と仲良く過ごせている事に、八幡は感謝を捧げる。
まだ話している2人から目を離し立ち上がり、飲み物を取りに行く。
この時、八幡は気が緩んでいた。雪ノ下の凍らせたものは机とお菓子だけでは無い。目に見えていたのがそこだっただけであり、雪ノ下の足元は凍っている。由比ヶ浜はそこに気付かない。何故ならアホの子だから。そして飲み物を取りに行く八幡は雪ノ下の前を通る。八幡は凍った床で足を滑らし、雪ノ下と由比ヶ浜は驚き、その場に留まる。
もうお分かりだろう。ラッキースケベである。この時の八幡心境は、自分は死んだと思ったそうだ。
「おっにぃちゃーん!!!雪ノ下さん達来てるなら言って……よ」
元気に入ってきた八幡の妹小町、その目からは一切の光が灯っていなかった。
小町のその目は、八幡の死んだ目にそっくりだったと、雪ノ下と由比ヶ浜は証言している。