やはり俺が魔法科高校に通うのは間違っている。 作:ガタオガタ
無事入学式が終了し、IDカードの交付受付へと八幡達は来ていた。予め各人別のカードが作成されている訳ではなく、個人認証を行ってその場で学内用カードにデータを書き込む仕様の為、どの窓口に行っても手続きは可能だが、ここでもやはり、自然と壁は生まれてしまう。達也達とは自己紹介を交わしただけの関係に過ぎないと思っている八幡は、さっさとIDカードの登録を終わらせ、さっさと家に帰るつもりであったが、達也達に呼び止められていた。
「どこへ行くんだ?比企谷」
そう名指しで呼ばれては振り向かない訳には行かない為、八幡は渋々振り返り、達也へと自分の向かう行き先を伝えた
「家に帰るんだよ、この後は何もないだろ?」
「そうだな。話は変わるが、比企谷は何組だ?」
「俺はE組だが…」
八幡のクラスを聞いた達也達の反応は、エリカ、美月、皆揃って笑顔であった。その反応に八幡は顔を顰めた。
「まぁお前らの反応で大体分かったが、みんなE組か?」
「ああ、俺もエリカも美月もE組だ」
達也の回答に、またもや顔を顰めた八幡に、エリカが
「何よ?八幡は私達と同じクラスなの嫌なわけ?」
「いや、別に嫌って訳じゃないが…」
先程の自己紹介の時点で、実は八幡もエリカ達と自己紹介をしていた。しかし八幡は、エリカの異常なほどのコミュニケーション能力に苦手意識を持っていたのだ。
「まぁいいけどね!とりあえずどうする?私達もホームルームへ行ってみる?」
エリカは達也の顔を見上げてそう訪ねた。美月と八幡に聞かなかったのは、八幡は1人で先に行こうとしている所を、美月に捕まっていたからだろう。
古くからの伝統を守り続けている学校を除き、今の高校では担任教師は存在しない。事務連絡には一々言伝ではなく、全て学内ネットに接続した端末配信で済まされる。学校用端末が1人1台体制になったのは何十年も昔のことで、個別指導も、実技の指導以外では、余程のことが無い限り情報端末が使用される。それ以上のケアが必要な場合は、専門資格を複数持つカウンセラーが学校に必ず配属されることになっている。ホームルームの必要性は、実技や実験の授業の都合だ。実技や実験を時間内に終わらせ、尚且つ余剰時間を作らないためには、一定数の人数が必要なのだ。担任制度が無くなることで、クラスメイトの結びつきは、強くなった。何はともあれ、新しい友人を作るためなら、ホームルームへ行くのが一番の近道である事は確かだ。しかし、達也はエリカの誘いに、頭を振った。
「悪い。妹と待ち合わせているんだ」
今日はもう授業も連絡事項もない為、達也は諸手続きが終わったらすぐ、妹と一緒に帰る約束をしていた。達也の発言を聞いた八幡は
「え?そんな理由で断れるの?じゃあ俺も妹が家で待ってるから帰るわ」
どう考えても今考えた理由で帰ることをエリカ達が納得するはずもなく、エリカは八幡の右腕を思い切り蹴った……しかし、その時鳴り響いた音は、本来人間の体からなるはずの無い金属音だった。
「痛ったー!!ちょっと八幡!腕に何か仕込んでるでしょ!」
「腕には何も仕込んでいないぞ。ちょっとした事情でな、俺の右腕はこんな風になってるんだ」
そう言い八幡は手袋を外し、右腕の袖をまくって見せた。その腕を見た美月は口元を抑え、エリカも驚愕の表情を浮かべ、達也でさえも目を少しだが見開いていた。
「機械鎧オートメイル!!」
「昔、事故で右腕を失ったんだ。まぁあまり詮索しないでくれると助かる」
「わ、わかった」
八幡の真剣な頼みに流石のエリカも了承の意を示すしか無かった。エリカの了承を得た八幡は静に制服と手袋を元に戻した。
「ところで司波、妹をまってるんじゃ無かったか?」
「ああ、そろそろ来る頃だろう。それとさっきも言ったが、俺の事は達也でいい」
「バッバカお前、いきなり名前呼びとか出来るわけ無いだろ、友達かよ」
そんな風に慌てる八幡を達也は疑問符を浮かべながら見ていたが、そのタイミングで達也の妹が登場したようだ。
「お兄様、お待たせ致しました」
そう言いながら現れたのは、入学式で新入生答辞を読み上げていた、司波深雪であった。達也の予定ではそのまま帰るだけであったのだが、思わぬ来客がいるようだった。
「こんにちは、司波君。また会いましたね」
人懐っこい笑顔と言葉使いを多少取り繕ったように言ったのは、この国立魔法大学付属第一高校の生徒会長である七草真由美であった。七草のセリフに達也は無言で頭を下げた。そんな愛想に乏しい応答にも関わらず、七草は微笑みを崩さない。そんな七草の表情を見た八幡は、ああ、この人猫被ってるとお得意の観察眼で見破っていた。皆が七草真由美か、司波達也に目を向ける中、達也の妹である司波深雪だけは達也の傍らに親しげに寄り添う少女達が気になるようだった。
「お兄様、その方たちは……?」
「ああ、こちらが千葉エリカさん。そしてこちらが柴田美月さん。そして最後に比企谷八幡。皆同じクラスなんだ」
「そうですか……早速、クラスメイトとデートですか?いえ、ダブルデートですか?」
深雪のそんな発言を聞いた八幡は確信した。司波達也の妹は、ブラコンだと。そして達也はシスコンだと達也の表情をみて確信した。
「そんなわけないだろ、深雪。お前を待っている間、話をしていただけだ。そういう言い方は3人に失礼だろ?」
達也からしたら妹のこのように拗ねた顔も可愛いのだが、紹介を受けて、名乗りもしないのは外聞があまりよろしくない。達也が目に軽い避難の色を乗せると、一瞬だけハッとした表情を浮かべた後、深雪は一層お淑やかな笑顔を取り繕った。
「はじめまして、千葉さん、柴田さん、比企谷さん。司波深雪です。お兄様同様よろしくお願いします」
「柴田美月です。こちらこそよろしくお願いします」
「よろしく。あたしのことはエリカでいいわ。貴方のことも深雪って呼ばせてもらっていい?」
「ええ、どうぞ。苗字では、お兄様との区別がつきにくいものね」
3人の少女が改めて挨拶を交わしている様を、八幡は静かに見ているだけだった。そして達也は八幡の背中に視線を向けながら、先程見た、八幡の機械鎧について考えていた。この世界には世界中で活躍する、機械鎧の会社が存在する。八幡の機械鎧はパッと見だが、自分の調べた世界に一つしか存在しない機械鎧に酷似していると思い、家に帰ったら調べようと思っていたのである。そんな達也の視線を八幡は敏感に感じ取りながらも携帯をポケットから取り出し、誰かにメールを送るのであった。