やはり俺が魔法科高校に通うのは間違っている。 作:ガタオガタ
駅につき解散した俺は、特に何事もなく帰宅した。帰宅途中には素敵なイベントなど、特に起きること無かった。しかし、帰宅してから即イベントが発生していた。
「お兄ちゃん!今日も……しよ?」
そう言った小町の顔は実の兄である俺から見てもとても魅力的な笑顔をうかべていた。
「別にいいけど……大丈夫か?」
「?何が?」
「いや、何がって、身体だよ。もつのか?」
俺の心配を他所に小町はサムズアップしてきた。可愛いが何故かこう、イラッとくる仕草である。
「大丈夫だよお兄ちゃん!小町の身体は別にそんなにやわじゃないよ」
「なら別にいいけど。じゃあ早速、始めるか」
俺がそう言うと小町は更に笑みを深め、頷いた。
「うん、今日も本気で来てね?」
そう言った小町の表情に、ドキリとしたのは内緒だ。
さて、俺達は今、自宅にある修練場へとやって来ている。先程までの会話では捉えようによっては実の兄妹でキャッキャウフフな展開を迎えようとしてるようにも捉えられるが、実際はキャッキャウフフな展開など何処にも存在しない。小町は小柄であり、顔もとても可愛らしく、性格も誰とでも仲良くできるような素晴らしい性格をしている。しかし、意外なことにもとても好戦的な性格も隠し持っている。実は小町も魔法師で、それも俺とは違いとても優秀な魔法師だ。だが、錬金術を扱うことは出来ない。この比企谷家で錬金術を扱うことが出来るのは俺だけだ。昔は立派な錬金術の一族であったらしいが、時代が進むにつれ錬金術を扱う事が出来なくなったらしい。因みに俺は一種の先祖返りだ。
「今日はどんな内容にする?」
「小町が決めていいぞ」
小町は少し悩む素振りを見せたが、多分あれは悩んでいない。
「今日は外でやりたいな。久しぶりにお互いに本気で!」
「おいおい、本気で?それマジで言ってる?」
驚いている俺にはお構い無しに小町は外の修練場へと向かう。なんの為にここへ来たのだろうか……
「先に行ってるから!早く来てね!」
「あいよ」
小町はさっさと行ってしまったので俺も外の修練場へと向かう。
比企谷家は、一般的な家庭とは言えないだろう。別に特別有名と言う訳じゃないが、先に言った通り昔は立派な錬金術の一族。いくら錬金術が使えなくなったと行っても錬金術師特有の頭の良さを兼ね備えている。残念ながら小町はお馬鹿だが。その為様々な分野に手を出しており、魔法師の世界ではCADや魔法の作成、錬金術の理屈や小説家、武器商人に政治家など無駄に才能に溢れている。その為家は無駄に立派だ。それに自分を高める事が好きな一族な為、家でも仕事や研究など様々なことをしている。実に社畜的な一族なのだ。だから家に様々な修練場があるという訳だ。
俺か外の修練場に着くと、小町は既に居た。当たり前か。
「すまん、待たせたな」
「大丈夫!それより早く始めよ!」
どうやら小町はもう待てないようだ。誰に似てこんな性格になったのやら……
「はいはい、それじゃあはじめー」
俺のやる気のない合図と共に小町は俺目掛けて走り出す。小町は手にナイフ型の武装一体型CADを持っている。俺は薙刀型の武装一体型CADを持っている。小町の使っているCADは柄に4つのボタンが取り付けられており、その四つのボタンを決められたパターンに沿って押すと魔法を発動する特化型CADである。俺の目の前に現れた小町は俺の頭めがけてナイフを振り下ろす。現在小町のCADにかかっている魔法は硬化魔法で、強度はピカイチである。俺はその攻撃を薙刀を頭上で横に構え、受け止める。因みに俺の薙刀型のCADも特化型CADであり、俺の場合は送り込むサイオンを予め登録しておき、そのサイオン量に該当する魔法が発動する。俺も硬化魔法を薙刀に掛けているため、お互いの得物は傷一つ付いていない。俺の攻撃を止められた小町は後退する。俺は小町を追い、薙刀を長く持ち、振り下ろす。この時俺は魔法を発動している。斬撃による風圧を収束し、そのまま前方に放出する。簡単に言うと飛ぶ斬撃だ。魔法名は『風切り』。風切りはそのまま小町へと襲いかかる。しかし小町も風切りで応戦してきた。二つの風切りが衝突し、消滅する。その間にお互いに動き出し、単純な武術での応戦が始まった。小町は細かく動き回り、俺は小町を寄せ付けないように薙刀を広範囲で振り回す。そんなふうにお互いに似た魔法で戦っていたが、俺の薙刀の石突が小町の横腹にめり込み、勝敗は付いた。
「あー!!また負けたー!!」
小町は地団駄を踏みながら叫ぶ。
「かなりよくなったな、小町。今日は自己加速術式使ってないんだろ?」
「使ってない。これ特化型だし、ナイフの強化とかに気を回してたから」
「今日は本気じゃなかったのか?」
俺のセリフに小町は顔を顰め、
「本気だったに決まってんじゃん。自己加速術式使いたかったけど、お兄ちゃん相手にする時硬化魔法使わないと壊すんだもん」
そんな風に愚痴を零す。
「相手の戦力を削ぐには大事な事だぞ」
「わかってるけど、普通出来ないから。そんなピンポイントでCADだけ狙うなんて」
小町は俺をジト目で見ていた。
「なんでそんな目で見るんだよ、当たり前のことだろ?お前も平塚先生に教わらなかったか?」
「教わったけど!それは単純な武術の時でしょ!魔法が絡んだらそんなこと出来ないから!ほんとずるいよねー、その眼」
今度は羨ましそうな視線を俺へ向ける。次から次へと表情がかわり、百面相でも見てるかのようだ。
「何だったけ?その目の名前」
「解析眼アナリシス・アイだな。錬金術の副作用としてこんな目になった。この世の全ての存在を解析する眼だな。物質の構造、魔法式、エイドス、サイオン、とりあえず見えないものすら見えてしまう。別にいいもんじゃないぞこれ。俺は呪いだと思ってるし」
「えー、小町からしたら羨ましいよ。見ただけでなんでも分かるんでしょ?そんなのチートじゃん?」
「確かにチートだとは思うけど、なんでも分かるわけじゃない。自分の理解しているものしか知覚できないんだよ」
そう、この眼はただ解析するだけの眼だ。解析した結果の物質がなんなのか、それが知らないものならずっと分からないのだ。
「だからあんなに勉強したんだっけ?あの時のお兄ちゃんは凄かったよねー。朝から晩までずっと本とにらめっこ。どっからそんな集中力がくるんだか」
いやーそんな事もありましたねー。でも小町ちゃん?僕は君の集中力のなさの方が凄いと思うよ。勉強なんて開始10分で集中途切れてるし。
「まっその勉強のおかげで今があるんだが。ただなー、この眼、人に向けたらその人の構成物質が分かるだけなんだよ。サイオン保留量とか魔法特性とか、こう内面的な?精神的な物は一切分からないからなー。そこまで見れたら完璧だったのに」
「いやいや、そんなの見れたらお兄ちゃんほんとに敵無しだから。なーんでそんな眼があるのに普通の魔法は小町よりしたなんだろうね?」
小町は呆れながらも疑問符を浮かべていた。なんとも器用なことをするもんだ。
「さあ?親父譲りなんじゃないのか?身体技能は高い自信あるし」
俺の親父は魔法力が乏しいが、身体技能のピカイチだった。若い時には日本中の武術家に弟子入りして今では日本中のほぼ全ての武術を扱えるらしい。正直そこまでする意味がわからんけどな。
「まぁそうかもねー。小町はお母さん譲りだしね!」
俺のおふくろは魔法力が高い代わりに身体能力が著しく低い。普通の生活が送れる程度なのだ。小町は両親の才能を引き継いだハイブリッドな魔法師なのだ。
「ま、俺には錬金術があるから十分だ」
「そこだけは羨ましいよ!お兄ちゃん!」
「いや、そこだけって……」
小町はその言葉を最後にてててっという効果音が付きそうな走り方でその場を去って行った。基本的には俺達比企谷家では隠し事はない。だが、小町に伝えてないことはいくつかある。出来れば小町に知られることなく、生涯を終えたいと思っているが、多分そんな事にはならないだろう。いずれ小町もどこかで気付き、俺に絶望するだろう。そんな日の事を思い悲しみに浸るが、俺に悲しむ資格なんてない。俺は今日の戦いでの疲れを癒す為、風呂に入ることにした。
風呂を済ませ、後は寝るだけ。俺は今日1日を振り返っていた。一日で色々あったが、中々に平和だった。ちょっとした荒事はあったが、それを含め平和だった。こんな日がずっと続けばどれだけ幸せなことだろうか。しかしそんな平和は直ぐに崩れ去るのを経験上知っている俺は、明日からの学校生活への気合を入れ直し、静かに眠りにつくのだった。