私に教えてよ
ねえ!
私の何が悪かったの?何が気にくわないの?
何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が!?
もう、いいよ
「ただいま。」
我が家に帰ると、いつも彼女がいる。
世の女性の中では、上の下辺りではないかという程のルックスの持ち主だ。
彼女に釣り合うのはアイドルぐらいでは?と思うこともしばしば
だが、結婚しているのは自分だから、そこは自慢していいと思う。
「お帰り、今日は遅かったね。」
とっても愛らしい笑顔をしているが、彼女の後ろから鬼の形相でオーラが睨んできているようにしか見えない。
素直に怖い。
「ちょっと上司が仕事増やしてきやがってさ、それを処理してたらかなり時間食っちゃったんだよね。」
焦り気味に説明をする。
「そう?なら良いんだけど。まあ、遅いと少しは心配するんだから、早めに帰ってきてね?」
こういうところがあるから凄く愛らしく思える。
マジで俺の嫁は可愛いからな、それもしょうがない事だ。
「ああ、ごめんな。どうにかして定時目指すよ」
「うん!」
凄く可愛い、尊い、死にそう。
そんな感じでとても幸せな時を2人で過ごしていた。
この頃から違和感はあったのだ。
だが、幸せオーラ全開のこの時には全くと言っていいほど気付かなかった。
どれ程の怪物に心奪われたのかも気づかずにいる自分はさぞかし滑稽に映ったことだろう。
2年、3年と時が経つにつれ、彼女への思いが薄れていった。
彼女への興味が、彼女の魅力が、物足りなくなってしまう。
出張と嘘をつき上司や同僚とキャバクラに行き、お持ち帰りした。
そして本番までした。
これは完全に彼女に対する裏切りだ。
彼女がいつまでも自分を慕ってくれている事、彼女は自分の言葉をいつも信じてくれる事。
それは絶対に当たり前じゃない。
俺と彼女とが歩んできた今までの時間があったからこその信頼関係だ。
それを俺は自分の手で壊した。
だがそれに気づかない。そんなことにも気付けない。
だからこの結末になったのだ。
「ねえ、ちゃんとこっち向いてよ」
ゴッ!
鈍い音が腕から鳴る。
痛みにより意識が覚醒すると、目の前には絶望が待ち構えていた。
まあ、彼女からしても今は絶望の瞬間だろう。
昨日まで信じていた相手が自分の事を裏切っていたのだから。当然だ。
そう、当然の報いなのだ。
「またあの女のことでも考えてた?私じゃなくて、あれを?」
彼女は向こうを振り返りながら言う。
そこには見るも無惨な姿をした、ミンチの中に沈む女性がいた。
髪を切られマダラ模様ができている。
しかし、そんな事は些細な、些細すぎる問題だった。
黒目をアイスピックに貫かれ、肺に包丁が刺さり、右腕は徐々に徐々に短くなっていく。
泣き叫び、のたうちまわり、失禁し、遂には動かなくなる。
俺はそれを見ていた。
恐怖が増幅していく。
最初はグロテスク過ぎて見たくなかった。だが、彼女の叫び声が耳にこびりついてくる。
次は自分だと、嫌でもその現実が迫ってくる。
抵抗しなければ、逃げなければと動物としての生存本能が爆発せんとするが、恐怖がその爆弾の火薬を湿らせていく。
膝が笑い、崩れ落ちていく自分。
だが、彼女は俺に刃物を突き立てたりはしなかった。
彼女はただただ笑顔で俺の方を見ていた。
安堵した。ひどく安堵した。
目の前で死にかけている人のようなナニカを見ながら、自分は生きていると、自分は助かったのだと頭の中で何度も何度も繰り返す。
「もう、私の事を裏切らないでね?」
彼女は笑いながら、泣きながら俺に語りかける。
彼女を痛めつける時の彼女の笑顔は喜色に彩られていたが、今はとても寂しそうな笑顔をしている。
「も、勿論だ。
もう君以外を見ないし、君以外に触れない。君以外を感じない。」
俺は誓った。
「嬉しい」
今の今まで人を痛めつけていたとは思えない程可憐で、とても綺麗だった。
その瞬間、自分の心がまた彼女へと向かい始めた。
彼女のことがひどく愛らしい。彼女こそが自分にとって至高なのだと気付かされた。
「私、少し疲れたの。ねえ、一緒に寝ませんか…?」
俺は無言で頷き、彼女と共に寝室へと向かう。
この後俺は、彼女の事を抱きしめながら、鉄臭い空気を吸い眠りに落ちた。
目を覚ますと、そこに彼女はいなかった。
強烈な不安が襲う。
しかし、それは全くの杞憂だった。
鉄臭い空気が充満する部屋で彼女は待っていたのだから。
「座って。
もう裏切られたくないの。
あなたを信じるためにあなたの気持ちを証明させて?」
彼女を安心させるためにすぐに椅子へと向かう。
そこには拘束具が満載だった。
それらをつけてもらい、席につく。
その瞬間、右手の甲に存在する骨が砕けた。
何度も、何度も、手に持つ金槌を入念に叩きつけてくる。
動けない。動かない。
これは痛みや拘束具によるものなどではない。
絶望だ。
深く、ドス黒い物が心に侵入してくる。
彼女の気持ちを味わった気がした。
希望から絶望へと落ちる瞬間だ。
泣き叫ぶ。
俺は命乞いをその始めた。
信じてくれ。もう二度と君を裏切らないと誓ったじゃないか。
そんな言葉をかけたところで彼女はもう止まらない。
青黒くなり、無惨な姿になった手に次の痛みを与えてくる。
次は指だ。
叩き、叩き、叩く。
爪を剥ぎ、指から徐々に徐々にと切り始める。
もう人としての言葉は発せなかった。
奇声をあげ、叫びながら許しをこう。
みじめに、無様に。
だが彼女の動きは止まらない。
昨日の彼女の姿がフラッシュバックする。
ああ、自分もああなるのだなと察した。
永遠とも思えるほどの時間は、これまでの人生で最も濃厚だった時間はいつのまにか終わっていた。
辺りがひどく静かで、真っ暗。
脳が死んだと錯覚しようとするが、全身の痛みがそれを許さない。
そして気付く。
自分の目は潰され、鼓膜は破られ、四肢は無いことに。
「これからは、ずっといっしょだよ?もう、離さないから。」
読破お疲れ様でした。
どうも、taitanです。
今回のお話はどうでしたでしょうか?
楽しんでいただけたなら幸いです。
今回のお話のテーマは、ズバリ!「絶望と希望」です。
青髭の真似事ですねw
今回は前回よりも心理的な描写に重点を置いてみたのですが、どうだったでしょうか?
ぜひぜひご意見のほどよろしくお願いします。
今回が初見の方で暇だと思っているそこのあなた!
他にも書いてるいるので、どうぞ見ていってください!
そろそろ終わりましょうか。
読んでいただき、ありがとうございました!(`・∀・´)