8日前、最愛の妻が亡くなった。
死因はプリンのプッチンがとんでもない勢いで射出されたことによって後頭部を強打したからだ。
どう考えても意味不明な死因なのだが、爆発四散したプリンと後頭部が陥没している妻が横たわっていたこと、DNA鑑定でも凶器の痕跡は何も無く、異例中の異例として死因は確定された。
意味が分からない。
だがこれは事実だ。
警察の方がこれまた特例中の特例で捜査資料を見せてくれたが、文句のつけようもない程完璧にプリンが原因で死亡していた。
その話はもう良いのだ。いや、よくないのだが。とりあえず!!!
俺の妻は死んだのだ。
その妻なのだが、写真を心の底から嫌いな女性だった。
いざ撮ろうとカメラを構えると必ず何かしらで顔を隠してしまう。
それでも無理強いしてしまうと大惨事になってしまうのだ。
過去2回、それをしてしまったことがある。
その結果、一回目はカメラを奪おうと駆け寄ってきた勢いで僕の手から滑り落ちたカメラはレンズが破損したことによりおじゃんになってしまった。
あの時の僕らの慌てふためき具合は客観的に見ればかなり笑えたことだろう。
そして二回目には飛び蹴りが飛んできた。
とても綺麗な姿勢で飛んでくるので呆然としながらそれを受け、水場に落として中の機構が壊れていた。
そんな出来事があったことは記憶にある。
まあ、そんな理由もあって僕は最近彼女の絵を描いている。
思い出が風化してしまわないように。彼女を忘れてしまわないように。
そんな理由だったはずなのに、今はどうして描いているか分からない。
ずっと一緒だったのに、ずっと彼女だけを見ていたのに。
彼女を描けば描くほど、思い出そうとすればするほど。
彼女の面影が変わっていく。
最初に描いた彼女はあまりに下手くそで見れたもんじゃない。
じゃあ、今描いてる彼女はどうだ?
彼女の垂れ目がちな眼はこんなに垂れていただろうか?
彼女の鼻はもう少し高くなかっただろうか?
一枚描けば一つ違和感を覚える。もう一枚描くとまた別の部分が気に入らない。
一度考えだしてしまったらもう疑問は止まらない。止まってはくれない。
今一度彼女との思い出を思い出そうとしても、今までに描いてきた絵が邪魔をする。
記憶は薄れていくものだ。ゆっくりと、ゆっくりとだが確実に消えていく。
僕はそれを消えないように、最後に玄関で見たあの笑顔を消えさせはしないように描いていた。
だが、それはきっと間違いだったのだろう。
僕の記憶に完全な彼女はもういない。
そんなことにも気づかないまま僕は彼女を描き続ける。
心を満たしていた愛情は徐々に苛立ちに塗り替わり、やがて憎悪へと形を変えていく。
もう、僕の描く君は、君じゃない。
設定は友人の「好きで描いてるのに難しくなったら嫌いになるのエモいよね」という意味不明な一言から。
殺害方法も友人の脳死発言から構想を得てます。
ジブンワルクナイデス
まだ次の話は何も考えてないです。
前回言ってたやつはデータが宇宙の彼方にさあ行くぞしましたごめんなさい。