爆豪くんが逆行しました   作:ネムのろ

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今回の話は結構詰めに詰めました。いよいよカッちゃんとデクくんが雄英に入るときがきましたよ!
個性把握テストもありまっせ!もちろん借りたオリキャラ君の事も少しわかるような、わからないような…

デクくんとかっちゃん…いや、オリジン組は大好きな私ですが
実をいうと相澤センセーも大好きなんです。
やる気がなくてやらない時とやる時のギャップがたまんねぇ……
何だよあんた!カカシ先生かよこのヤロウ大好きですありがとうございます!!!


第5話 My hero

心の中で…子供が泣いている。

それは幻なのか、たんに感覚的なモノなのかわからないけど

でも、たしかに

そこで泣いてるんだ───…

 

 

 

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

 

 

 

「ああ、嫌な夢見たな…」

 

尖水は、その呑気な怠そうな声に反して、汗だくで起きた。その顔は青白くて身体は震えている。

 

「あれから…もう11年」

 

そして、そのまま起き上がりながら、頬に伝う幾筋もの雫をそのままに。

 

「ああ…ホンット……」

 

雫がポタポタと床へ滴る。そうして消えていく。一つ一つゆっくりと。口元はほのかに笑っていて

 

 

「最悪だなぁ……」

 

しかし瞳は細く、哀しく光っていた

 

今日もまた、彼にとっての苦行難行(にちじょう)が始まる。

涙をぬぐって、鏡の前でいつもの表情の練習をしながら歯を磨く。そうして朝の5時ごろには家を出るのが日課だ。

 

彼はあまり家に滞在できない理由があった。だから───

 

「いってきます…」

 

父も母も寝ている中、誰も返事をしない冷たい空間にそう呼びかけるようにぽつりと呟く。勿論返事はない。少し寂しく思うも、ケンカなしで家を出られるのならば、寂しい思いをした方がよっぽどいい。

 

相手に怯えられて攻撃されて。泣きそうな顔で、恐怖した顔でこちらを見る瞳と遭遇しないだけでもかなりの儲けもの。そう自分を納得させながらドアを閉める。

 

「さぁてと~?今日はどっちが相談してくる日だ?」

 

彼の脳裏には緑色の髪の子と、薄い金髪の子が浮かび上がっていた。口笛を吹きながら、少し楽しそうに学校への道を行く尖水。

彼の苦難でしかない毎日が少しだけ変わったのは───この二人のおかげだった。

 

緑谷出久と爆豪勝己。

 

この二人のおかげで尖水は少しだけ。

そう。ほんの少しだけ

 

「~~♪」

 

楽しくなったのだ。

 

あの出会いの日から三年間。彼らの話し相手となり、相談相手として居続け、たまに偶然を装って出久を酷い虐めから助けたり、じつは裏でコッソリと出久を守ってたりする。ただ一番分かりづらい方法で。

 

それは勝己にも当てはまるようで。

 

「おい、テメーなんで俺が殴るよりもデク殴った?」

「え、あ…いや、だって」

「てめー俺がどこの高校いきてーか、わかってるよな?俺なら手加減できっからいいんだ。おめーはできねーだろうがああ?!」

「ひっ…す、みませ」

「俺の履歴に傷つけるような真似したヤツ、ボコる。」

 

という理由をつけては出久を守るので、実を言えば勝己もゴロツキに狙われてたりする。そのゴロツキを裏の裏でボコって勝己も守ってるのが尖水だと、誰も知らない。

 

そんなこんなでもう三年。中学生生活ともオサラバする時期がもうすぐそこまで来てる。なんだかんだ言って育児放棄はできない親が、中学生になっても尖水を自由にはさせてくれなかった。

ただ高校生になったら、即刻引っ越すつもりではある。家から少し離れた場所で、一からやり直そうとも思っている。

親がまた綺麗ごとで育児放棄なんやかんや言いそうだ。

 

「育児放棄…?そんな可愛いレベルじゃ…」

 

尖水は首を振った。

 

「いや…今起こってる事すべて…俺のせいなんだ。しかるべき罰を受けてるだけなんだ。なにも問題はない。いたって普通だ」

 

そう自分に言い聞かすように呟きながら、彼は昔から通ってる公園へと足を運んだ

 

 

 

 

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

 

 

 

 

しっかりしろ、俺。今日まで色々耐えてきたじゃねぇか。したくもねぇいじめっ子を、いかにもこいつは悪者だと誰にも思わせるような演技を三年間し続けてきた。

 

「現実を見ろよクソナード君。てめぇにゃ雄英は無理だって」

「む、無理じゃ…ないよ。実例がなかっただけで…」

「だぁから無理だっつってんだろが!」

「ひっ…!」

 

デクもあの時みたく、カタカタ震えて何も言い返せないただのノートに何かを書くヒーローオタクになっている。

 

ここ三年間、ロクに話もしなかった。あいつの大事に書いてるヒーローになるためのノートを何回か爆発したこともあった。昔俺がやった事を少しだけやった。良い大人がこんなバカげた事をやるのは気が引けたが…

 

やらなければ、こいつは変われないと思ったからだ。前世のアイツが変わっていったのは、俺の苛めもあって見返したい、超えたい壁になったからだとも言っていた。

 

だからまぁ、奇肉の策で少しだけ焦げ目がつくように加減はした。アレはアイツの努力の結晶だかんな。俺がここで破壊していいモンじゃねぇ…

研究熱心で身に着けた洞察力には目を見張るものがあった。誰にも思いつかないような方法や作戦を思いつくのにも何度も驚かされたし、そんなあいつの機転のおかげで窮地を何度も救ってくれた。

 

尊敬に値する。

 

ただ、気になるのは前世ではあまりそう感じなかったデクの視線が、時々怖ぇくれぇ俺の行動を観察してるって処以外は、変わった部分はねぇ。

これなら問題なく…オールマイトから個性をもらい受けられるハズ。

前と違って、デクがヒョロヒョロじゃなく、今も続けてるトレーニングで結構体のつくりが良いから前みてぇにボロボロのズタズタには…まぁなるかもしれねぇが、グチャグチャにはなんねぇだろ。前みてぇに苦労はしねぇとは思う。

 

後の問題は…ここ一番の難関は。

俺の演技で、あの顔あの角度で、デクに助けを求めるような、縋るような顔をすりぁいいだけだ。まぁそこが難関なんだが……

 

「ハァ……」

 

思えば長かった。ここまでくるのに自分の演技で何度、胸糞悪さで吐きかけた事か。

 

「かーつきぃ」

「ああ?」

 

チッ。こいつウゼェ―んだよな…前世はあんまし関わらなかった中学ん時のクラスメイト。正直言うとこいつと関わり合いたくなかった。俺の肩に当然のごとく腕を回しやがる。

 

「慣れ慣れしんだよボケ!」

「おっと。そういうなって。なぁなぁ、今日もう一回やろーぜ?緑谷いじり」

 

平気な顔で、さも当然のごとくそんな事をいってのけるこいつが、俺は虫唾が走るほど嫌いだ。だが、山張ってるこいつとタイマン張るのは正直面倒くさかった。しかたがねーから同点で終わらせて、こいつと俺でそこらへんを〆てた。

 

こっちのほうが効率が良かったし、なによりデクをさりげなく裏で守ることもできた。

 

ただこいつの人格が歪んでやがる。

コイツ人を痛めつけるのが趣味らしい。だからデクは格好の餌食っつーワケだ。まぁ、俺がさせねーけど。誰かに殴らせるんだったら、俺が手加減しながら殴った方が良い。アザも残らねーし反動は派手でまるで本気で殴ったみてぇに見える。

 

それでも一メートル以上吹っ飛ばねぇのはあいつが諦めずに努力し続けて、筋力つけたからだな。

 

「何言ってやがる。」

「ああ?」

「もう終いだ。てめーのお遊びに付き合ってられっか。俺はナンバーワンヒーローになるっつったろうが」

「…」

「ヒーローが、いつまでも、んな弱い者いじめすっかよ。今日でお終いだ。てめーとツルむのもな」

 

そいつは静かに最後まで聞いたかと思えば、裏路地に一人で来いと言った。最後のタイマン勝負をしろとも。どうやらあの日、同点にするためにワザといくつかあいつのパンチを顔面に食らったことに気が付いてたらしい。

 

おっかしいな…上手く演技できてたって思ったんだがな。

 

学校の帰り道、裏路地でタイマンで戦った。こいつの個性は知り尽くしてる。圧勝だった。あいつと別れた後、そう言えばと思い出した。

…そうだ。ここらへんだと…多分。

 

「あった…」

 

あの時の、ヘドロみてぇなヴィランが詰められたペットボトル。

 

「…」

 

あーあ…蹴ってこいつを出さなきゃいけねーんか。

 

「…」

 

ああ、どうすっかな…マジで今この中のヴィラン…東京湾に沈めてぇ…

 

「チッ!」

 

俺は思いっきりソレを蹴り上げた。その拍子にペットボトルの蓋がはじけ飛ぶ。それに詰められたヴィランが勢いよく飛び出した。

 

「げへへ…俺は運がいいぜぇ…」

 

少し、口元が緩んだ

 

「…クソが」

 

いまからこいつに捕まらなきゃいけねぇのかと思うと、反吐が出る。反吐が出るが…デクが個性を受け取るキッカケになるイベントだ。無くすと大変な事になる。

 

こんな嫌な俺をあの時みたく、救ってくれよな緑谷出久(My hero)

 

 

 

 

 

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

 

 

 

 

勝己は、己の渾身の演技のおかげで無事に事を進められたことに心底ほっとしていた。

出久は無事、無謀でも勝己を助けるために飛び出してくれた。正直もうそんな彼を見る事は叶わないと思っていたし。

何より今自分は、出久にとってのただの『嫌な奴』でしかないから。

 

その後オールマイトが出てきて二人を救ってくれた。そうして、出久に勝己が強がりを装って威嚇し帰っていく時、そっと物陰に隠れてオールマイトが出てくるのを待っていた。

 

そして無事オールマイトは出久に個性を渡した。勝己はそっとその場でガッツポーズをしたのは言うまでもない。

 

そんなこんなで日々は過ぎ去っていく。

最高のヒーローのオールマイトから個性を受け取り、オールマイトと共に出久はトレーニングを行っていた。

勝己はそれをひっそりと影から見守りながらグッジョブ俺。と自分自身をねぎらった。これで一応は当分の間、自分も未来にやってくる最悪な出来事を回避するためにトレーニングができるというものだ。

 

そう。爆豪勝己は三年の間、思考していた。そして決めたことがあった。

それはオールマイトもそうだが、未来で亡くすハズの英雄の先生方やクラスメイト達を救う事にした。

 

手始めに小学五年生の時、出来うる限りでオールマイトの負うはずだったあの致命的大けがを、少なからずとも最小限に止める事が出来た。

情報と経験があると、ここまでの事が出来るのかと驚き固まったが

 

(これだ…)

 

己のやるべき事、いまここでこうして第二の人生を歩んでいる理由を見つけたのだった。その日、勝己は今まで以上に打ち震えた。そして覚悟を決め、目的を見据えたのだった。

 

「爆豪少年」

「うお!?オールマイト?!お前なにして…で、デクは…」

「もう行ったよ。キミは帰らなくていいのかい?ここの所ずっと彼の様子を見ているようだが…」

 

もう夕方だよ?そういう小さい姿のオールマイトを見ながら、ハァ…と勝己は溜息をついた。

 

「…もう少ししたら…いく」

 

なんだかとても疲れたような彼の小さな背中を見ながら、オールマイトはポンと、勝己の肩を叩いた。

 

「君たちに何があったのかは聞かないよ」

 

あんなに仲良しで、キラキラ輝いていた二人を思い出す。一人は無個性でも元気良い、少し抜けている、しかし頑固な少年。

もう一人は、どこか大人びていて、とても心強い、真っ直ぐ正義を貫く眼光を宿していた。少し乱暴でも心優しい少年。

 

その凸凹でも良いコンビであろう仲良しな二人が、いつの間にかあんな風になってしまった。原因も理由もわからない。しかし

 

「爆豪少年は無意味な事はしないと、私は知っている」

 

前世のようなガリガリにというほどではない、痩せたナンバーワンヒーローが言う。あの日、最悪な事柄を回避できたはいいものの、オールマイトの負った傷は深い。

 

「…っ」

「知っているから、大丈夫だ。きっと緑谷少年も心の奥底ではわかってくれているさ。」

 

ニコリと笑う男は、力めば皆が知る、もとの姿であるオールマイトになる。活動時間は少し制限がかかっているが、前世ほど酷くはない。

 

「気休めは…いらねぇんだよ。オールマイト」

「気休めなんかでは」

「いいから。あんたはちゃんとデクに教えられる事しっかり教えといてくれよ。少し育てて置いたから、あんまし手間はかからねぇとは思うが…まぁ、色々ガンバレや」

 

オールマイトの事、個性、ワン・フォー・オールの事を知っていそうな言い方だが、彼は今更そんなことを勝己に聞くことはなかった。

勝己がなにか重大な隠し事をしている事は、初めて会ったあの日からなんとなく感じていたのだ。それが徐々に確信に変わってった。その一番の出来事があの日だった。

 

(まさかあの時、私を助けることになったのが小学五年生の爆豪少年だったとは…)

 

もしあの時、勝己が他のプロヒーローを呼びに来なかったら?もしあの時勝己の出す予測とプランと、彼の助けの爆破がなかったら敵の目を欺けられなかった。

そして、あの攻撃をモロに食らってきっと。きっと致命傷になって…考えたくもない。

 

ただ、怪我は負った。一生ものだと言われた。あの激戦だ。しかたがない。負ったが命には別条はない。まぁいくらか手術はしたが。

ただただ、あの日の勝己の言動がおかしかった。小学生が激戦の中に居れば震えあがるのに、彼はまるで歴戦のプロヒーローのように冷静沈着に振る舞った。そんなの小学生ができるはずがない。

 

彼が居たことで多くの者が救われた。ピンポイントでヴィランが攻撃する場所へ、彼が予測し仮定をたてて行動していたから。その彼を追っていったヒーローたちも遭遇し、手伝う形になった。

 

だからこそ、出久と勝己に何があったかなど、どうしてコソコソして出久のトレーニングを影から見ているのかも聴かない。いつか話してくれる時が来れば話してくれるだろう。

 

彼らに一目おいていたのはエンデヴァーとオールマイトだけではない。プロの間ではこの二人の子供は有名だ。事件に遭遇する確率が高いが、それを全て解決していることから将来有望なヒーローとして認識されていたのだ。

 

あと疲れた時に彼らを見ると和んで癒されてたから。

 

彼らがこの二人を見る回数は普通の子供よりも多かった。何故なら出久がしょっちゅうヒーローに会いたがったので、勝己が親の変わりに一緒について行ったのだ。

その場所に詳しいとかで最善のルートを伝って、見学と言う形でオールマイトやエンデヴァーに裏から手を回してもらって色んな事務所へ出向いたから、有名だ。

 

そして有名と同時に人気者だということは本人たちはまったく気が付いていなかったりする…

 

 

 

 

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

 

 

 

 

そうこうして、彼らは無事に雄英高校へと入ることができたのだった。

 

「よし!」

 

家を出て電車に乗り、やっとのことで雄英へと来た出久は、自分のクラスとなる戸を開けた。

 

「かっ…かっちゃん?!」

 

そこに居て飯田と睨み合いをしている幼馴染の姿を見て、そう叫んでしまったが最後、クラス全員が二人を見つめた。

 

「…」

(うわぁぁああかっちゃんゴメンよぉ!言うつもりはなかったんだ!まったくもって注目されようと叫んだわけでもなかったんだ!)

 

勝己は睨むだけで、出久はワタワタおどおどビクビクしながら目を彷徨わせている。だからか、勝己が一瞬その凄みのある表情から寂しそうな表情をしたことに気が付かなかった。

 

(て、あれ…?何も言ってこない?)

「…」

 

出久は気が付かぬまま、他の生徒がワラワラと出久へと話しかけて、それを出久が照れながら、そしておどおどしながら短く返事を返していると、だらけた声と共に怠そうな、何とも力の抜けるような声が足元から聞こえて。

 

なんなんだと思いながら振り向けば廊下にゴロンと寝袋が転がっていて、そこに人が入っていた。

 

「ハイ、静かになるまで八秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性にかくね。」

 

しかもそんな人がクラスの担任だというのだからびっくりだ。先生となったその人の名前は相澤消太。この人もプロヒーローらしい。目が少し血走っていて、くたびれ感がハンパない。

本当にプロヒーローなのか?と疑問に思うほどだ。

 

その先生がさっそくやった事は個性把握テスト。個性を使って誰がどの個性を持っていて、どこまで扱えるか。それを見るためのもの。

体力テストでソレを測る。中学の成績はどんなものだったか聞けばみんな個性は使用禁止でそのテストをやっていた。相澤に言わせてみれば合理的ではないが文部科学省の怠慢だからしかたがないなと。

 

「爆豪、ちょっとこっち来てやってみろ。」

 

さっそく試験でトップだった勝己が、皆のお手本としてどういうものなのかを見せる事になった。

 

(…っていってもな…)

 

勝己は少し困っていた。ソフトボール投げを個性を使ってやることは問題ない。問題なのはその威力もスピードも、前世の時より記録が上回ってしまわないか。他の皆を恐縮させてしまうのではないか。

 

わざと手加減をするべきか、それとも全力で行って、今の自分がどれくらいなのか確かめるか迷っていた。

 

「爆豪、なにやってる」

 

時間がもったいないと、相澤が勝己へと声をかけると、勝己はどこか上の空で。ボケッと、何とも彼らしくない顔をしたものだから、それに一番驚いてしまったのが出久で。

 

「かっちゃん…?」

 

その出久の声にハッとして

 

「…相澤センセー」

 

クラスの誰よりも相澤を先生と呼んだことに、クラス全員が目を丸くした。このナリだから相澤を先生と呼ぶのにためらいがあったのだ。

それなのに一番先にそう呼んだのが、クラスでももうすでに乱暴者で顔怖いと思われてた勝己で。

 

「なんだ」

「昔の馴染みで聞く」

 

その言葉にクラスの皆は驚いてしまって。爆豪って先生と顔なじみなのか?!やら、なんか信頼して、信頼されてるって感じ。やら言い合っている。

 

「目の前にぜってー倒さなきゃいけねーヴィランが立ちふさがった時、プロのヒーローとして何が重要だ?」

「…色々あるが、まぁ最初は周りの市民の安全確保からだな。攻撃に特化したものならばヴィランに立ち向かっていく。その間にサポートが得意な奴は人命を守るのに回るな。何が重要かは、経験で見極めていくが…一番ヒーローになくてはならないものは自己犠牲だとも言われている。まぁ、俺はその思考は少し度を超してるって思うけどな」

「そうか」

「爆豪、お前なにが…「じゃあ最後に聞くけどよ」…言ってみろ」

 

勝己は瞳だけを相澤へと向けた。

 

「大切なもん守るためには…一体何が必要だと思う?」

 

その彼の静かな、しかしほとばしるオーラを感じ取り、何かを感じた相澤は

 

「お前、一体4歳のころから何と戦って…」

 

その言葉を聞いて静かだったクラスの皆がザワリと騒がしくなった。

 

「質問に答えろ」

「…そうだな。大切なものを守るには、それ相応の時間が必要だな。その時間を有意義に使うには、一時たりとも無駄にはできない。」

「…時間か……」

「まぁ、ヒーローそれぞれ答えはある。俺のは時間。だが…お前のは何だ爆豪?」

 

それはちょっとした好奇心だった。ずいぶんと大人びた少年の本質を少しでも知りたくて。だからか、勝己はその片鱗を少しだけ見せたのだった。

 

「俺にとっての必要なもん…」

 

急に憂いた瞳。凶暴性ある声が静かになって、何故かその場に響くようで。どことなく悲しそうなのに口元は微笑していて。

 

「あ…」

 

出久には見覚えのある顔だった。何かを決意して行動に移す前の顔。その顔はまるで何か遠い記憶を思い出しているような、その思い出に少し縋っているような。誰かを記憶の中で見ているような眼。

 

そんな出来事は数秒だったかもしれない。なのにまるで一時間もそうしているような錯覚がした。

 

「昔は力だ、知恵だ、一番になることだなんだと喚き散らかしてたかもしんねぇが、今は」

 

チラリと一瞬、出久の方を見た

 

「え?」

「今、俺にとって必要なもんは」

 

グッとボールを投げる構えをする

 

「守る!!ただそれだけだ!!」

 

そしてボールを投げ出す瞬間、「死ねぇええええええ!!!」と叫びながら爆風とともに投げた。みんなポカンとしていて、出久もだ。

 

「…死ね?」

 

出久がポカンとしたまま呟く。そうして出た勝己の最大限。924メートル。前世よりも記録が伸びていた。

 

「…ちっと抑えてまだコレかよ…加減ムズイな…」

 

ポツリとそう呟いた彼の小さな声を聴いたものは、出久と相澤センセーと、心配で物陰に隠れてみていたオールマイトだけだった。

いや、あともう一人。

 

「…テストで抑えたって、本気じゃねぇってことかよ…爆豪。どこまでてめぇは…」

 

赤と白の髪を持つ彼は、そっと事の事情を静かに見守りながら、爆豪勝己という少年を目に焼き付けるようにジッと見つめていた。

 

もっとも、そんな彼らと同じくして見守っていた者がもう一人いたが、そいつはフッと笑っただけで、何も言わずにそのまま眠そうな、怠そうな顔をして。

白緑色の髪がサワリと風に泳ぐ。なんともなしに、あくびをしながらそいつは笑った。

 

「やっとここまで来たか。緑谷出久。爆豪勝己」

 

 

…………。

 

 

その後、八種目トータル点数が最下位のものは見込みなしと判断して雄英をやめてもらうことを伝えた。それに焦ったのは出久だ。

だって彼はまだ上手く個性を扱えていない。試験の時も、今やクラスメイトになった麗日を助けるために飛び出して使ったら両足と右腕がぶっ壊れた。

 

一回しか使えない上に動けなくなってしまう。出久は使うか否か迷い続け、とうとう最後から数えて三番目の科目、ソフトボール投げで個性を使おうとした。

 

そう。使おうとしたのだ。

しかし個性は発動しなかった。見れば首に巻いた細長い布をシュルリとほどき、その布がフワフワ浮き、その下の黄色いゴーグルを見た出久が何のヒーローか当てた。

 

見ただけで相手の個性を抹消する個性

抹消ヒーロー

相澤先生のヒーロー名は『イレイザーヘッド』

 

マスコミにあまり顔を出さないゆえに、あまり知られていないヒーローでも、出久の情報にかかればなんてことなかった。

 

「見たとこ、個性が制御できないんだろ?」

「?!」

「また行動不能になって誰かに助けてもらうつもりだったか?」

「僕は!そんなつもりは…!」

「そんなつもりがなくても、周りは、そうせざるを得なくなるんだ。一人を助けて木偶の坊になるだけだろお前は。昔は無個性だったみたいだがな…個性が出たからと言って簡単になれるもんじゃないんだよヒーローってやつは。」

 

ギロリと、赤く光った目が出久の目を貫いている

 

「緑谷出久。お前の力じゃヒーローになれないよ」

 

その言葉を聞いて、出久はますます何かを決意した。

 

個性を戻してすぐ目薬を目に数滴たらしながら、相澤は見込みはない。そう考えていた。昔知り合った時はほんの少しだけ見込みはあるかもしれないと思ってしまった手前、今の出久の姿を見てなにをちんたらやってるんだと思う反面あきらめもついた。

 

己が知る緑谷出久は、個性が発現したとともに消えて無くなったのだと。

 

(あのころはガキだったからなのか、それとも誰かが傍にいたからか。強く見えたんだがな)

 

キラキラと輝いていた。成長と共に消えてなくなったんだな。と相澤は思った。

しかし、皆の予想から斜め上に行ったのは出久だった。

 

今のままじゃ何も変われはしない。ヒーローになれやしない。変化を追い求めなきゃ前には進めない。

 

「おいおい、マジか?!」

 

オールマイトが陰で見守りながら驚き、呟いてしまった

 

(僕は人より何倍も頑張らなきゃダメなんだ!!だから全力で)

 

力強く。周りの空気さえも消すほどの威力で。まだコントロールできないありったけの力を、指一本先の部分に集中させて。

 

(今僕にできる事を!!)

 

思いっきり振りかぶったその手からボールが放たれる

 

 

「スマーッシュ!!」

 

 

そうして出た記録は

 

「805メートル…」

 

前世の時よりも上がってんじゃねぇかよ…と勝己も驚いていた。

クラス中が騒ぐ中、相澤に向かって、腫れあがって痛い人差し指をものともせずに、グッと拳をつくり

 

「先生…」

 

緑谷出久は相澤へと向き合った

 

「まだ、動けます!」

 

ニヤリと無理やり笑ってそう告げた出久に、相澤は今までに感じた事のない衝撃を受けた。それこそ何かが彼の中で革命を起こしたみたいに。

 

(こいつ…!)

 

相澤は久々に胸の底から喜びで打ち震えていた。そしてその顔にはほのかな微笑が浮かび上がった。

 

力の調整はまだできない。

行動不能になるわけにもいかない。

ならばと、考え付いたのが今の行動だ。

 

(最小限の負傷で最大限の力…)

 

何だよ少年…っ!カッコいいじゃないか!

 

と、影から見守っているオールマイトも、打ち震えていたのだった。

 

結果的に最後までポイント数が少なかったのは出久だったが、相澤が除籍は嘘だといった事によって事なきを得た。

 

もっとも、あれは本当だったが相澤も出久の中に何かを感じたのだ。

そのためアレ全部は最大限を引き出すための合理的虚偽などと言ったが、後で相澤と話をしにいったオールマイトは見抜いていた。

 




なんとなしに色々書きたいとこだけを書いていったら、いつの間にかこんな文字数に…
10000文字超えてしまったです!すんまっせん!!
最初は軽い気持ちで5000文字くらいいけばいっか☆
なんて思ってたのに…スマートに終わらせるつもりが、さらにこんな終わり方。
文字数からしても時間の無い方、疲れてる方には苦行でしょうに…

続編はもっと文字数少なくするか、二つ三つに分けて投稿しよう…

なので、今回だけは見逃してくださいね~('ω')ノ
次回もこう、ご期待あれ!

…また読みに来てくださいね…よかったらコメや感想…?待ってますです。
気力があれば返信しますが、基本読んで嬉しくて舞い上がってそのまま何書くか
迷いに迷って恥ずかしくて断念する派ですので別に返ってこないからって
読んでないということではないです。

チャンと読ませてもらってます!書く活力とさせていただいてます!!

ではでは、よい一日をお過ごしくださいませませ<m(__)m>
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