爆豪くんが逆行しました   作:ネムのろ

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デクVSかっちゃんの戦闘訓練もありーの、
気が付かなかったことに色々気が付くデクくんと轟君。
それをすべて見て笑い転がりそうになってる尖水くんの提供でお送りいたします(笑)
デクくんかっちゃん轟くん、そろそろ色んなことに気が付こうぜ?
じゃないと尖水くん笑いで腹筋痙攣しちゃうよ?ww

皆様のコメント、毎回感想とても嬉しいデス!
ちゃんと読んでます!そしていつも活力もらってます☆
いつも遅い更新ですが、ついて来てくれると嬉しいです♪
待っててくれた読者様、神ってる…°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°


第6話 絆しスキル

「飯田くん?」

「指は治ったのかい?」

 

ひょんな事から軽い会話を交えて友達になった飯田と出久は、途中まで一緒に帰る事になった。

怖い人という印象しか飯田に持っていなかった出久だったが、ただ生真面目なだけだとわかるともっと気を許すようにホッと一安心しながら緩く笑っていた。そこへさらに声をかけてきたのが

 

麗日(うららか)さん」

「君は無限女子!」

 

目の前にやってきた人のよさそうな彼女は、改めて自己紹介をした

 

「麗日お茶子です!えっと、飯田(いいだ)天哉(てんや)くんに…緑谷デクくん?」

「デク?!」

 

言い出しっぺで間違われた?!と出久は焦った。

対するお茶子はうららか~に答える

 

「え?だって、体力テストの時に爆豪って人が…」

(こんな時にまでかっちゃんの影響力が…ッ!)

 

やっぱりキミは凄い人だよ!嫌な奴だけど!!などなど思いながら、出久は初めての女子との会話に緊張しつつも答える。自分は出久と言って、かっちゃんのあれはじつは勝己がバカにして言っているのだと。

 

だが、そこでお茶子はうららか~な空気で、ある一言を放った。

 

「でも、デクって…『がんばれ!』って感じでなんか好きだ私!」

 

後にこれが、出久の中で革命を引き起こすキッカケの一部となる。

 

「デクです!!」

「緑谷くん?!」

 

顔を真っ赤にさせながら嬉しそうにニヤケる出久を見て、それでいいのかと、別称なのではなかったのかと、飯田が聞き返すが…

 

「コーペルニクス的展開…ッ!」

 

お茶子は何の事かわからずに首を傾げる

 

「こぺ?」

 

こうして、はじめての友達にワクワクドキドキしながら出久は帰っていった。その彼の背中をそっと見守っていた誰かに、気づきもせずに。

 

「なるほどな…誰かに意味を変えてもらったって、あいつだったんか」

 

たしかにアイツならばやりかねないなと、今度は青空を仰ぎ見ながら、勝己もそっと歩き出す。出久と帰り道は同じはずだが、一緒に帰ったりはしない。

今更仲良しこよしはできないし、昔みたいにいきなり話しかけるのもどうかと思った。そんな事をして彼が驚いて後ずさるのは、目に見えている。そんな彼を見て傷つく自分が安易に想像できてしまう。

 

自業自得だ。自業自得なのだ。

 

少し…いやかなり寂しいがしかたがない。強制的にそう思わなければ、自分が押しつぶされて消えてしまうような、変な圧迫感を感じて息苦しさが沸き上がるようで。だから。だからこれで…良い。

 

ふと、胸の奥がギュッと何者かに捕まれたかのような痛みを覚える。少し苦しくて立ち止まった。

深呼吸を繰り返して、息を整える。汗が噴き出したがすぐに収まった。自分の身体が心の疲れを感じて耐えられなくなってSOSを出しているのは、勝己自身薄々わかってはいたが…

見て見ぬフリをするしかなかった。だって、こんなこと…誰にも言えない。

 

こんな情けない自分など。未来の記憶に苛まれているなどと。未来に残してきた出久が、最近よくここにいる出久と重なって、勝手に自分が苦しんでしまうなどと。

今更自分のやった事を、あんな悲しそうな顔をさせてしまったまま逝った事を後悔していると…誰に話せばいい?

 

そんな事より、今は…今の出久の幸せをつくるために。自分が知るみんなの幸せを、掴ませるために。

今、俺にできる事を…やっていくだけだと。勝己は思った。

 

「あいつが…今あいつらしく居られんなら…それが一番良い。なぁ、そうだろ爆心地?」

 

ポツリとそう呟くのは、誰に聞くわけでもない。己に、これでよかったのだと言い聞かせるために呟いたのだった。

胸に手を当てて。出久が見えなくなるまで眺めていようと思った。あいつのためにした事だった。現にあいつはあいつで居てくれてる。あんな事があったからこそ、出久は人の痛みがわかるし、人にもっと優しくしようとするだろう。

 

芯は、そのまま強く育って行ってほしい。そしていつか……自分をも超えて、ナンバーワンヒーローになって皆を救っていく。そんなヒーローになってほしい。いや、皆を守れなくっても…自分を見失わないような立派なヒーローになって欲しい。

 

そのまま勝己が、物思いにふけりながら突っ立っていたからなのかはわからないが…誰かが顔の怖い自分へ声をかけてきた。

 

「よぉ!お前、爆豪って言うんだろ?」

 

昔、扱いが難しく絡みづらい自分によく絡んで、自分の事を良く知っていてくれていた友人がヒョッコリ顔を出した。

 

「…おめーはたしか、切島っつったか」

「おー!覚えててくれてたのか!」

 

忘れるわけねぇだろ。と内心ぽつりと呟く。

人懐っこく笑う顔。誰とでも気軽に話してくれるからこそ、色んな面で救われた。そんなこいつを、忘れる事などできなかった。

未来のアイツは元気にしてるかなと、ふいに思ったほどだ。

 

「お前の髪よォ」

「…お、おう」

 

ギクリと、彼の肩が不安で揺れ動いたのを、勝己は静かに見つめていた。その髪を赤く染めて憧れのヒーローのようになるために、必死になっていた背中を思い出した。だからこれは勝己のただの気まぐれだ。

かつての親友だった彼への、お礼と謝罪をこめて。

 

「漢らしくて良いと思うぜ」

「え」

 

いきなりアイデンティティを褒められた切島は、数秒固まった

 

生前言えなかった賛美を、今ここに。前世に何度も救われたから。ほんのちょっと声をかけてくれた。クズな自分を無視しないでいてくれた。

そんなこいつへ一度だって言った事がなかった褒め言葉を…。

後で後悔しないように…今になって未来のあいつへ言わなかった事を、礼と混ぜて謝罪の意をこめた。

 

ありがとうな。それから、死んじまってごめんな。

 

「じゃあな」

「あ、ちょっ…」

 

今日誰かと絡むのはこれくらいにしないと。でないと未来が変わってしまうかもしれない。未来が変わって、自分の知らないイレギュラーが発生したら…自分はどうしたらいいのかわからなくなるだろうから。

わかる範囲内で行動しなければと、勝己は慎重に動いていた。誰にも知られないように。今はまだひっそりと活動せねば。

 

でなければ、(アイツ)にバレてしまう。バレたら一巻の終わりだ…

 

「…怖ぇヤツって聞いてたけど」

 

後ろでは取り残された切島が、赤い頭を押さえて、にやけた。

 

「なんだ。やっぱあいつ、良いヤツじゃん!」

 

ぜってー親友になってみせっから!待ってろよ爆豪!

 

そんな事を切島が言いながら息巻いていたことなど、勝己は知らなかった。

 

 

 

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

 

 

 

「先生、これ」

 

爆豪が、なんとなしに声をかけてきて、俺がそれに振り向くとポイッと何かを空中に投げ出した。反射的にそれをキャッチすれば、ビシリと指さしながら口を開いて、まるで悪あがきする子供に言い聞かせるようにこう言った。

 

「ソレ、一日一回目に垂らせば、個性使ってもしばらくは目が乾かないハズだ。よって個性使える時間が延びる」

 

手元を見れば、先ほど状況反射で無意識に掴んだものは、どうやら目薬らしい。

 

「こんなのに気を使わなくたって、俺は…」

 

俺専用の特注目薬あるから余計なお世話だ。そう言おうとすれば俺の言葉を爆豪が遮った。てんで話になんねぇな。と言いながら。

 

「あんたが持ってる専用の目薬はソレ以下だ。いいか先生、ソレは俺が長年考えてきた方法、制作調合を、雄英のサポート科複数とツルんで編み出した上にプロのヒーローたちにちょっと実験台になってもらった(誰とは言わない)そのうえで完成した奴だ。」

 

お前…ヒーロー科でプライドやけに高いから絶対他の科には興味示さないと思ってたらさっそく絡んでたのか。しかも秘密裏にコレをわざわざ俺のために?わざわざ俺のために?

 

大事だから二度、心の中で言ってみた。

 

あの爆豪が俺に気を使った少しの感動と、先ほどの彼の発言により誰の目が犠牲になったか垣間見えて。呆れ顔になってしまった俺を誰が咎めるだろう。

 

「お前…エンデヴァーさんとオールマイトさん実験台にしたのか」

 

遠慮なくあの二人を利用しようとするのは爆豪くらいのもので、他人の頼み事は冷たくあしらいながら蹴るエンデヴァーさんと、プライベートの頼み事は丁重にお断りするようなオールマイトさんが爆豪と緑谷だけには異様に甘いことは知ってる。

だからあの二人なら、爆豪の無理で危険で無謀な頼み事も聞いてしまう事は目に見えてわかっている。プロのヒーローを実験台にする爆豪も爆豪だが、それを了承したプロのヒーローもヒーローだ。

 

だとしても、まさかな…と思う自分の考えを、目の前の生徒が押し黙った事により、的中かよと溜息がもれる。あの二人が爆豪の頼み事で地面でのた打ち回ってる場面がやけに鮮明にはっきり思い浮かべられるくらいだ。

 

思わず笑ってしまいそうな顔を引き締めた。

 

「…」

「そっと顔逸らすなよ…」

 

やっぱり図星かよ。今度はため息が出てきた。

 

こいつは良くも悪くも良く視ている。そう思ったのは初めてじゃない。こいつとの付き合いは爆豪や緑谷が四歳の頃からだった。その頃から爆豪勝己という子供は、周りを良く視るタイプの少年だった。

 

まるで、周りに起こるすべての情報を逃さないとでも言うかのように。だから彼のやる事なす事すべてが何かに繋がっていると、後々じわりじわりと感じられる。

今だってそうだ。この爆豪思案の元で雄英の生徒でつくられた目薬も、きっと役に立つはずだ。

 

“雄英生徒がつくった”という事にかんしても、きっと何か意味があるのだろう。

 

「なぁ、爆豪」

「?」

 

問題はそこじゃない。こいつの事は自分でも信じられないくらい信頼しているのは自覚してる。自覚しているからこそ、こういう『おせっかい』を焼き始めた爆豪を、みすみす野放しにしてはいけないと、俺の勘が働いた。

 

「一体今度は何を知って(・・・・・)、“準備”してるんだ?」

「!」

 

思った通りだ。俺の言葉に反応して、目の前の爆豪の瞳が見開かれて、そのまま固まった。

 

こいつは昔からこうだった。どこでどんな手を使って情報を仕入れてくるのかまったくわからないが、爆豪は自分の周りが『危機』に陥ると知った時、それを打開するための準備をする傾向がある。

 

「昔から、お前はどこから情報をとってくるんだ?何と戦ってるんだ?お前の行動、言動全部、年齢にそぐわない時がある。…お前は一体何者なんだ?」

 

今みたいに俺にこんな薬を渡してくるのも、きっとその危機を回避するのではなく、危機になる人間を強化し自分で突破できるようにそっと背中を押すためだろう。

それは暗黙にこれから先、俺に何かが起きると言っているようなものでもある。

知っている。前から知っているから、どう動くか、動けるのか考えて行動するお前が、お前の持つその年齢と合わないんだ。どう考えても三十路は超えてるような繊細な作戦と思考の元で行われる行動だ。

 

俺の問いを聴いた爆豪は、しばし視線を彷徨わせていたが、後になにかに気が付いてフッと顔に影を落とした。

 

「それ、は…まだ」

「言えないか」

「…」

 

だが、年相応に落ち込むときもあるし、それなりに笑うことが出来るのだと知っている。だからこそ時々見せる“プロのヒーロー”の顔に、タジタジになってしまうのだ。

…注意しておくか。こいつの気遣いも素直に受け取ろう。昔、一度だけこいつの助言を聴かずに動いて大怪我したバカな先輩もいるしな。

 

「わかったよ。お前の好意は素直に受け取る。俺はオールマイトさんじゃないからね」

 

そう言いながらフッと笑えば、爆豪はホッと胸をなでおろしたかのような顔をした。おいおい。そこまで心配するような事が起きるのか?…今からトレーニング三倍にして少し鈍ってる身体を鍛え直すか。

 

「…」

「授業はじめるぞ。さっさと入れ」

「…おう」

 

本当に。4歳の頃から一体何と戦ってるんだろうな。お前。

 

(いつか、話せる時が来たら)

 

お前の中でまだ燻ってる何かに、お前自身終止符を打つその時まで。

 

「待ってるよ。いつまでも」

「……」

 

爆豪は俺の言葉には何も言わなかった。代わりにペコリと軽くお辞儀をした。それだけで了承したとわかるくらいには、信頼されてると見ていいんだよな?

待ってるからな。だから

 

「あんま、抱え込み過ぎるなよ。爆豪」

「…ッ!」

「何かあれば、俺にも相談しろ。いいな」

「…ッす」

 

こりゃする気はあんまり無いと捉えて差し違いないな。短い返事の後、そのままサッと教室の中へと吸い込まれるように入っていった爆豪の背中を見つめながら、なぜかクツクツと笑いが零れた俺はというと

 

(さぁて、今日も始めますかね)

 

怠い感じに教室のドアを開けて入って、皆を見わたしながら

 

「授業はじめんぞー。合理性に欠くからさっさと黙って席つけー」

 

重たい瞼をそのまんまに、授業をはじめた。

 

 

 

 

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

 

 

 

わかっている。自分の心が悲鳴を上げていることなど。

 

わかっている。自分がもう、色んな重圧に耐えきれてない事を。

 

なにより…

 

「癒しが足りねぇんだよっっ!!」

 

バン!!と机を殴った爆豪を、皆は怪奇を見るような眼で見ていた。ナニアレ怖い。と。出久もあんな取り乱した勝己を見るのは初めてだったので引いていたし、何よりまだ話しかける勇気が今の彼にはなかった。

 

出久の怯えたような眼を見るたび勝手に傷ついているのは勝己だ。そして癒しが欲しいと考えてついに声に出してしまった己自身が、たまらなく今すぐに殺してやりたかった。

只今、勝己は恥ずかしさで悶えている。プルプルと震えてジッと我慢している。なんで声なんか出てしまったんだと、悶々と考えていると、肩に誰かがトントンと叩いてきたのがわかった。

 

顔を上げるとそこには───…

 

「よっ」

 

その特殊な目の色と髪の色…。そしてなにより怠そうな、眠そうな顔と声。そう。そこに居たのは──…

 

「「尖水/さん?!」」

 

思わず出久も声に出していた。

 

「尖水さん、どうして…」

「お前なんで…っ」

 

二人とも同じような事を聞いて来て、尖水はクスクスと笑った。

 

「こんなトコに居るのかって?おいおい、数日たって俺が居たことに気が付いてなかったのかよ?アハハ!ひっでぇ」

 

クルリと回って、制服を見ろと自らのクイクイ引っ張る尖水。

 

「同じ高校だったんか…」

 

何処かほっと安心する珍しい爆豪を見ながら、大騒ぎをしたのは、クラスの皆も予想していなかった出久のほうで。

 

「ええ?!尖水さんって年上じゃなかったんですか?!」

 

思いのほか声を張り上げた出久を見て、尖水は怠そうな声を出す

 

「ええ?俺、そんな老けてるような顔かね?」

 

怠そうに、しかしアハハと笑いながらそう尋ねる尖水。ワザと、口調を紳士のおじさんっぽく言った。

 

「つーか年上になんて、どう見ても思えないだろ。バーカ」

 

勝己は自然と悪態をついたが、心強い味方で馴染みある尖水の登場で、その顔は明らかに緩められ、ヒヒっと笑ってさえ居て。

あまりにも楽しそうに笑うから出久や、クラスの皆は目をかっ開いて固まるほどで。

え、こんな風にかっちゃんって笑うの?と出久さえ知らなかった勝己の素直100%の笑顔を間直で見てしまったクラスの皆は驚きに言葉さえ喉に詰まっていた。

 

(そうだよかっちゃんって、凄んでさえいなければイケメンで結構かわいいんだよ!凄んでさえいなければ!)

 

出久は混乱した頭でそんな事を思いつつ、笑う勝己から目が離せずにいる。後で絶対ノートに書こう。ていうか写真撮っておこうヨシこれをノートにはりつけよう。ていうか宝物にもう一枚撮ってしまおうヨシそうしよう。

言いながら無音でシャッターを数回押しまくった出久はそっとガッツポーズをした。

 

(なんなん爆豪くん?!ギャップ凄ない?今キュートな天使みたいだけどさっきは凄く怖かった!)

 

お茶子は声を出さず、しかし結構赤面しながら、先ほどの勝己の凄みのある睨みを思い出しながら身震いしたが、目の前の光景にすぐに目をキラキラさせた。

 

(あいつのあんな安心した顔…見た事ねぇ…それほど、爆豪にとって尖水っていう奴が、頼りになる、安心できる存在っつーワケか…)

 

焦凍も驚きながらジッと勝己を見つめる

 

(なんか…)

 

どことなく、寂しい気持ちと違う気持ちが沸々と湧き出てきて止められなかった。結果声に出してしまったのだった。

 

「「悔しい/な」」

 

その声にハッと気が付き振り向けば、出久。出久も焦凍のほうを驚きの顔で見つめていた。

 

「と、轟くん…だったよね…あの、かっちゃんとキミってどういう…?」

 

ゴクリと生唾を呑み込みながら、声を震わせて出久がおずおず尋ねる。

 

「緑谷っつってたよな、たしか。お前こそ爆豪とどんな関係なんだ?かっちゃんなんて言ってやがるし…」

「え、だってかっちゃんとは、その…お、幼馴染で…」

 

兄弟同然に育った。とは言えなかった。勝己の苦労も、彼の苦しみも悲しみも、何一つ彼の事を分かろうともしないで、そんな事が言えるハズもない。

彼が、ああいう風にひん曲がってしまったのは、きっと自分のせいだ。自分の責任だ。そう思っている出久は、だんだん顔が曇っていった。

 

「ただ…それだけだよ」

 

兄のように慕ってた。尊敬してた。自分の中の、オールマイトの次に来るヒーローだとも思っていた。

そのヒーローを、出久は自分の手で踏みにじってしまったと思っていた。あの時のようにはもう戻れないと、笑い合えないと。

しかし、何故か勝己のあの笑顔を見ると、諦めよりも、悲しみよりも、悔しさが勝ってしまった。それは目の前に居る焦凍も同じのようで

 

「き、君は?かっちゃんの、なに?」

 

だからこそ気になってしまうのだ。そんな気持ちになるほどに、彼は自分と同じように勝己に依存していると思った。だから勇気をもって聞いた。

 

「…なんだろうな。俺もよくわかってねぇ。たしか12の時にクソ親父が妙に会わせたがって、あいつは妙に会いたくないって突っぱねてたらしくって。」

 

焦凍は昔を思い出しながら話す。心なしか少しだけ楽しそうなのは、出久の気のせいではない。

 

「隙見て俺をあいつに紹介したんだが…面白いヤツだって思った。クソ親父を言い負かしたり、親父と互角に張り合えた同年齢のヤツなんて、初めて見たから」

「え、たしか轟君のお父さんって…」

「エンデヴァー」

 

それを聞くが早く、出久の脳裏には幾つものエンデヴァーの情報が浮かんでは消えていく。

 

「や、やっぱり?!でも…かっちゃんナンバーツーのヒーローと互角に張り合えたの?!しかも…12の時すでに…?でも待ってそれじゃあやっぱりあの時言ってたひとり言は本当でかっちゃん力セーブしてたって事なの?!あのかっちゃんのことだから無駄なことは一切しないと思うからきっと何か目的があって──」

 

ブツブツブツ…と言い始めた彼を止めたのは、楽しそうに尖水と談笑してた勝己で。

 

「うっせぇよクソナード。」

 

そう言い放つと、大人しく自分の席についてしまったのだった。

その後すぐに、焦凍が勝己の座っている席まで移動して、何か聞こうとしたのだったが、オールマイトが颯爽と現れてしまったので彼はしぶしぶ諦めて席に座るしかなくなった。

 

(これでいい…)

 

勝己は気づいていた。焦凍が何か言いたげだったのを。しかしこれ以上イレギュラーが起きてはいけないと、軌道修正しようとした。そして、成功したのだった。

 

(…つーか、やっぱオールマイトかっけぇよな……)

 

午後のオールマイトの授業は戦闘訓練だと告げられた。各々がコスチュームに身を包み現れて、いざどんな訓練か説明を聞いてチーム分けとなった。

すべて勝己が知る通りだった。また勝己は同じチームメイトとやるし、出久もそうだ。そして、対戦する相手も同じだった。

 

出久チームVS勝己チーム

 

一瞬、出久が萎縮したのを、勝己はギロリと睨むことで彼の底に秘めている対抗心を燻った。そうして出久は勝己を睨み返したのだった。

 

(そうだ。それで、いい)

 

思わずニヤリと笑ってしまった勝己

 

(それでこそ、俺が認めた緑谷出久だ。俺が知る、俺の hero)

 

嬉しくなってしまった。確実に出久が、自分の知る未来の出久になってきていたから。だからおもわず笑ってしまった。すぐさま自分の配置に行った勝己は知らない。

出久が、勝己のニヤリ嬉しそうな顔を見たあの後、数秒赤面して固まっていた事実は、チームメイトのお茶子しか知らなかったりする。

 

(あんな顔されたら、私だって固まってまうよ!)

 

ちゃっかりお茶子も見てしまっていたのだった。

そして、勝己が歩いていくその道すがらに、いつの間にか尖水がいて。思わずビクッと驚いて身体が一瞬だけ固まった。

それを見て少し笑いながら尖水は、困ったように怠く勝己へと言葉をかける。

 

「爆豪、お前さぁ~皆を絆そうとしないでくんねぇか?」

「はぁ?何いきなり意味わかんねぇ事いってやがんだ尖水?」

「なに、お前気が付いてねーの?うーわー…皆さまご執心様。安らかに眠ってください。南無阿弥陀仏」

 

なむなむ…と手を合わせながら擦る尖水の手を無理やり払い除けて、睨む

 

「おい、勝手に誰かを殺すな。つーかお前の言う皆って誰だ?」

 

その言葉に尖水は何かを察した。と同時に怠い顔をした。

 

「…あー…もういい。からかうのも面倒くさくなってきた。」

 

自分がいかに周りの皆を垂らし込んでいるのか。想像もしていないのだろう勝己本人に説明するのがとてつもなく面倒になった尖水は、その一切を受け流すことにして、それ以上彼をからかう事はしなかった。

 

「じゃーなー」

「あ、おい尖水!」

 

腕を上げ手を怠くゆっくり振る。その動作は本当にやる気あるのかと、聞きたくなるくらいに誰がどう見ても怠そうだった。

 

「お互い、ほどほどに頑張ろうな~」

 

有無を言わせずそのまま退場していった彼の背中を見つめて、勝己もそのまま前へと歩き出す。

 

「クソ…なんだったんだ。」

 

皆を絆すってなんだ。俺は誰からも嫌われる存在を演じてんだぞ。唯一友だと認識させなきゃいけねぇのは切島だ。それ以上はやらない。そう決めてんだ。

 

(じゃなきゃ未来が変わっちまう恐れがある)

 

なのに尖水のあの言葉は一体なんなんだと、勝己は本気で首を傾げながら頭の上にハテナマークを浮かべていた。

 

「…波乱万丈な人生だよなー。メンドクサイ性格も合わせてすべてが怠いほうへ向かってんぞー。ばくごー」

 

やる気のない声でひとり言を零すのは尖水。

 

「いつか、緑谷と轟の嫉妬が爆発しないように祈っててやるよー」

 

ケラケラ笑って、チラリとモニターを見た。そこには出久の覚悟した顔。そして尖水は今度は焦凍のほうを見た。

 

「しかも本人たちが嫉妬してるって理解してねーのが一番ウケるんですがねー」

 

ああダメだ。気を許したら爆笑する。そう思いながらクックックと彼は一人静かに笑った。

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