待っていた人が居るかはわかりませんが…
どうぞお楽しみいただけたら幸いです_(:3」∠)_
静かだった。周りは一切の音がしなかった。ただただ、僕たちの息使いと足音がその場に反響して鳴り響くだけ。ゴクリと生唾を呑み込むけど、緊張でカラカラに渇いてしまった喉は一向に潤ってはくれない。
気配を感じ取れるように静かにゆっくりと足を進めていく。
(なんせ相手はあのかっちゃんだ)
対戦、奇襲に追撃と、かっちゃんの戦闘スキルは幅広く隙が無い。相手の癖を瞬時に見分けてどう戦えば相手が不利になるのか、どう追い込むのか作戦を一気に立てて突っ走る。
それこそまるで、激戦を何度も潜り抜けてきたプロのヒーローみたいだ。
あと要注意なのが、かっちゃんの作戦は相手を追い込むか、捕獲するか、撃退するかによって変わってくる。
頭の回転が速くてその時の状況判断がほとんど勘なんじゃないかって思うほど。でも綿密で完璧なんだ。勘じゃない。あれは経験から成せる代物だって素人の僕でもわかる。
なんでそんな経験なんて持ってるんだって凄く疑問に思うけど…あのかっちゃんだ。なんでもありが普通な気がする。
「麗日さん、作戦は言った通りプランAでいくから」
「わかった。」
「もしもの事があったらBで。じゃ、ここらへんでそろそろ会話はジェスチャーだけにしよう…」
「うん。相手に知られたら作戦も水の泡だしね!頑張ろうねデクくん!」
少しだけでも隙があったっていいのに…それをかっちゃんは感じさせない。どんな状況に追い込まれても、相手を威嚇し続けて、つねに相手の一歩先の行動を予測し動く。並大抵の人間技じゃない。
でも、僕はずっとかっちゃんを見てきたんだ。だから知ってる。きっと他のどんな誰よりも…
(風…?)
突然、建物の中から生暖かいそよ風が僕の方へ流れてきた。こんな建物の中なのに風なんか流れてくるのか?あちこち穴が開いているし…その可能性はある。けど…
(いや、違う!風が生暖かい…という事は、これ空気中でよくかっちゃんが使う…!)
他の人だったらきっと見逃してたと思う。けど僕は違う。違うぞかっちゃん!
「っらぁ!」
「!」
「え?!爆豪くん?!?」
やっぱりかっちゃんは頭上から飛んで突っ込んできた。爆風を出さずここぞという時に宙に浮くように静かに壁を蹴って移動してた。
生暖かい風は、君が静かに移動するときに使う超ミニマムな爆発の余波のせい。
「奇襲だ…」
「え?」
彼は奇襲するとき大抵ボクが(勝手に)解き明かした今の技を使用して、音速で相手へと突っ切る。
やっぱり合ってた!
「麗日さん下がって!このままプランAを続けて!」
「う、うん…わかった!」
でも何でだろう…今日に限って、らしくないミスを君は犯した。突っ込んで即爆破のかっちゃんが───なぜか僕へツッコんでくるとき一瞬、殺気を飛ばして声まで出してきた。
まるで自分が来たから要注意しろって言わんばかりに。でも、まさかね。考えすぎだよね。だって相手はあのかっちゃんだし。募った僕への怒りで口が滑っちゃったんだろうなぁ…かっちゃんらしいや。
見れば彼はもう次の攻撃のモーションへ移行していた。
(もう避け切る有余はない。なら防御!)
顔の前に両腕をクロスして防御の体制をとったと同時に、凄い爆音と爆発が僕を襲った。
「グゥッ!」
「デクくん…!」
「大丈夫。そんなにダメージ入ってないから…」
「…」
手で砂埃を拭い去ったかっちゃんは、真剣な面持ちでこちらを睨んでいる。
「こぉらデク。受けて無事でいるんじゃねぇよ…」
かっちゃんと本気でぶつかる時が来た!!
「かっちゃんが敵なら…まず僕を殴りに来ると思った!」
かっちゃんに僕を見てもらうチャンスだ…今の、僕を!
拳に力が入る。今の僕を見てもらうためには、まだモノにできてないオールマイトの
なら…使わず君に、勝つ!!
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
おかしい。俺は何処か違和感を覚えていた。
(最初の頃と同じで、俺を背負い投げしたまでは前と同じだった)
思い出せ!何かが前と違ってやがる。
(なんだ…?何が違う?)
ああ、そうか。と思い出した。
(背負い投げしてからの、セリフがねぇんだ)
前世で俺を精神的に追い込んだ、あのセリフがまだ…
(自分の戦い方のスタイルを俺に見てほしいのか…それとも、どれくらい強くなったか見て欲しいのか…まぁ、どっちにしたって)
攻撃するわな!
「デクのくせして、俺と対等に張り合おうとしてんじゃねー!」
言いながら爆破しようと腕を振り上げた。その時、ああ…しまったと思った。
なぜならまた、デクが俺の腕をつかみ上げてまたも背負い投げをしたからだ。鈍い痛みが背中を襲う。この技は後にお前が磨きあげて十八番の内の一つになったほどだもんな。ヒーローの本質が出始めたテメェが使わないわけがねぇ。
「今のでわかっただろ…かっちゃん」
静かな建物の中、デクの声が良く響いた
「君は大抵、最初、右の大振りなんだ…」
デクの荒い息遣いが聞こえる。震えている。声も身体も。だが目は真っ直ぐこっちを睨んでやがる。伝えようとしてきやがる。あの頃俺が思ってもなかったもんを。
前じゃわかんなかったからあんな悲惨な結果に終わった。テメェに個性無理やり使わせて腕をバキバキにしちまった。
「どれだけ見てきたと思ってる?」
今でも昨日のように鮮明に覚えてる。内側から爆発したかのような、ボロボロになって赤黒く変色した腕の状態。
前ほどではなく、かといってこの出来事を避けて通れねェのはたしかだ。今日の失敗があって、あいつはまた一歩前進する。
失敗を重ねる事で見えてくるモンもあるっつー事だ。
「凄いと思ったヒーローの分析は…全部ノートにまとめてあるんだ…」
ああ、よかった。そう思っちまったのは内緒だ。そうだ。このセリフだよ俺が待ち望んでたのは。ヒーローデクの成長の一歩一歩を間直で見ていることに打ち震える自分が居て、なんか…みっともなかった。
だが、それもまた良いと思う。
ああ…やっぱり
「君が爆破して捨てたノートに…」
書いて、あったんだな。俺の事が。
わかっちゃいたんだ。だがああするしかなかった。お前が人の痛みや苦しみから目を背けないように。
身に染みているからこそ、お前は成長して、大人になって。№1ヒーローになってもどの付くお人よしになった。人の痛みがわかる奴だったからこそ、お前は本当の意味で人を救う事ができた。
あのノート、たしか13番目だったか…未来でもあいつはまだヒーローたちの事をノートにちまちま書いていたな。
死ぬ三日前、あいつのノートの№は1000単位にまでなっていた。しかも丁寧に俺の事はちまちま更新してやがったから気味悪がったっけか。
俺の最後まで、気色悪いデクの癖が治る事はなかったな。
ノートの中身については何も言わずに、デクはグッと拳を構えたまま睨むが俺にはわかる。俺がこんなでも、昔から俺はお前の中じゃ、身近なヒーローだったと。
泣き出しそうな潤んだ瞳は、真っ直ぐ俺を射抜いていて。いつもの弱気なデクからは考えられないほどの気迫と、瞳の奥に宿った強い強い光。
「いつまでも…雑魚で出来損ないの
認めてもらいてぇのか?俺に。
「かっちゃん、僕は…!」
笑わせてくれるぜ。俺はもう…とっくの昔に…それこそ生まれてくる前に。
「頑張れって感じのデクだ!!」
ああそうだ。その
まったくお前は。お前って奴は
「デェク!」
「っ!」
威嚇に掌にボンボンと小さな爆破を起こす
「ビビりながらよぉ…そういうとこが…」
グッと何かを見定めようと、俺を睨んでくる。そうだ。お前の持つ今の力を、俺に見せてみろ。
「ムカつくなぁ!(誇りに思う)」
震えながら、怖がりながらも、目の前の敵対するヤツを睨んで逃げずに立ち向かおうとする。困ってる奴が居たら迷わず手を差し伸べようとする。
ヒーローの本質を元々持ってて、キッカケでもっと成長したこいつだから…
最初から何も持ってなかったから。持った時、凄まじい力となって、脅威となって敵を圧倒できる。だからデク、お前は
(誇っていいんだぜ。お前の弱みでもあって、強さでもある“ヒーローの本質”)
だが調子に乗らねぇように釘刺しとかなきゃなぁ!
「前みてぇにボロボロになられちゃ意味がねぇ!」
「…え?」
「歯ァ食いしばれ!」
そう言った途端に、デクが回避するのが見えた。見えてから敢えて───取り付けられた装備の引き金を引く。
『爆豪少年!それはいくらなんでもやりす──』
「黙っとれやオールマイトぉ!失格にならねぇ程度に火力を抑えたらぁあ!」
閃光が弾けたと同時に、そこら一帯を巻き込んで、大規模な爆発音と共に爆風が衝撃波となって辺りを駆け巡った。
建物はあまり壊れていなかったが、あの規模だ。ギシギシと鳴り始めてやがる。ちっと規模がでかくなったが、まぁ良い。
デクが慌てふためいて作戦を考えようと身を隠したのも、爆風の中確認した。
背中をやられてたっつー事は、機転を生かして咄嗟にダメージを受けることが出来そうな筋肉がついている背中を犠牲にしたか。
状況判断はまずまずだな。なるほど…こいつは前と違って簡単にはいかなさそうだ。
だが、それでも良い!こいつと真正面向き合って戦ってる。互いに譲れないものを天秤にかけながら。必死に、無我夢中で。
そうだ。俺を見ろ。
お前にとっちゃあ最悪なシナリオだ。そん中で戦闘センスとスキルを磨け!お前は…お前らは、まだまだ伸びしろがある奴らなんだからよぉ!
「進化を見せろや緑谷出久!!」
「…っ?!」
気分が高まって、ついこいつを本名で呼んだ瞬間にデクが息を呑んだのが分かった。ああ、あそこか。なるほどな。
「咄嗟でも見つかりにくいそこを選ぶなんてな」
「っ!」
「てめーにしては上出来だったのになぁ!俺に名前呼ばれたぐれぇで何動揺しとんじゃデぇク!!」
そこをニュッと極悪な笑顔をしながら爆発で近づくと、デクはバッと物陰から出てきて前面に手を滅茶苦茶に振り上げて大声で叫んだ。
「ちょっと待ってかっちゃん今のはズルい!!」
心なしか顔が真っ赤だ。…なんでんな真っ赤なんだ?
…風邪か?風邪にはナシと、ヨーグルトが効き目がある…味はモモかそのまんまか…じゃなくって!!戦いに集中しろ爆豪勝己!
「…ちっ!」
なに普通にアイツの面倒見ようとしてやがるんだ俺?バカか。これが長年あいつの面倒みてきた癖か。
うっわ。自分で気が付いて引いたわ。鳥肌立ったわ。自分の顔面を爆破してぇわ。
「食らいやがれ!」
「そう何度も食らうわけ…」
デクが一歩大幅に前進した。
「…ないだろ!」
ジャンプして、俺の頭上をクルリと回転しながら攻撃をかわす。
「…へぇ」
どうやら今のお前は、前より感情のコントロールや頭の回転が速く、機転も良い。作戦も思いつくのが前より早ぇ。ガキん時に経験した数多の事が、今のお前を形作っていやがるのか。
「面白え…」
「…」
今のお前がどんぐれぇ出来るんか、試してやるよ!
「どっからでも、かかってきやがれデク!!」
「そのつもりだよ!かっちゃん!!」
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「デクくんメッチャ生き生きしとるけど、作戦の合図…そろそろ出してほしいなぁ…」
お茶子はただ今、敵陣に潜入してひっそりと物陰に隠れて事の成り行きを見守っていた。彼らの作戦はいたってシンプル。
勝己が出久に夢中になって攻撃してくるだろう事が予測できるので、その間にお茶子が敵陣まで攻め入って、合図がでるまでそこで待機する。チャンスがあればすぐさま場のすべてを利用して偽爆弾に触れればいい。
しかしこの作戦の時からお茶子は言い難い突っかかりを覚えていた
「たしかに爆豪くん、デクくんに向かっていったのはいいけど…」
うーんと、お茶子は静かに唸る。そう。これで作戦の半分は成功なのだ。勝己が出久へ向かったことで、彼の意識は出久に向けられる。という事は応戦の間、お茶子は自由に動けるという事。しかし…
「これじゃ爆豪くん、デクくん以外に興味ない事にならん…?」
そうなのである。先ほどの出久の作戦と良い、出久の予想通りに真っ直ぐ出久だけを狙ってきた勝己と良い、どうやら勝己は出久をぶん殴る事以外考えていなさそうなのだ。
勝己が勝手に前へ出たことにより、相手チームの相方の飯田はその場で待機するだろう。しかしこれで、かなり防御が手薄になった事は明白だ。
自分のチームメイトと力を合わせない時点で、すでに防御も何もかも手薄なのだが。
しかし、実のところそうではなかったりする。何故なら勝己は──
『飯田!準備は良いかぁ!』
「待っていたぞ、爆豪くん!」
「へ?!ば、爆豪くんが飯田くんと…連絡とったよデクくん!」
『ええ?!』
元から、出久とお茶子と飯田をこの戦闘訓練でしごくと決めていたからだ。勝己の行動や思考を予測し、ほとんど当たった事から出久は凄いと言える。しかし、もっと上を行ったのは勝己だった。
勝己は、出久が己の思考や行動を予測して動くことを予測していた…つまり、出久の思考や行動を読んでいたという事だ。読んでいて、あえて出久の予想通りに動き、そしてその中で自分に有利に動けるように策略していたという事。
意外や意外。あの勝己がだ。出久はそんな勝己を見て信じられずに大声を出しながら彼の方へと反撃したらしい。何かと何かがぶつかる音が聞こえる。一緒に怒号も飛ぶわ飛ぶ。
『かっちゃんらしくないよそんなの?!』
『俺らしいってなんだええ?!』
『頭良すぎにもほどがあるだろ?!ちょっとは隙を見せてよ!』
『甘えんじゃねぇ!隙がねぇ相手だったら隙を作らせればいい事じゃねぇか!』
ごもっともな意見だ。と全員が思った。
『そうだけどそうじゃない!』
『どういう意味だクソナード?!』
『だから、君の思考回路は異常だっていってるんだよ!どんな頭してんのさ?!それにちょっとは僕が作戦考える時間くれたっていいじゃないか!これじゃ公開処刑だよ!』
『うっせぇ!どうにかしろやクソが死ねぇえ!』
『超、理不尽!!!』
様々な破壊音が通信機から聞こえてくる。そしてその中で息も絶え絶えになってもおかしくないハズの二人が、ジャンプや攻撃、走ったりを繰り返しても怒鳴り合っている。
どんな肺持ってるんだお前ら…と、オールマイトをはじめ、その戦闘を液晶画面越しに見守っていたクラス全員が思っていた。
『反撃は止めかよクソナードくんよぉ!』
『…かっちゃんじゃない…こんなのかっちゃんじゃ…っ!』
『ああ?』
『だって…っ!僕はずっと君を…』
見てきたから…!
『だから…っ』
こんなの君じゃない!!そう啖呵を切った出久を見ながら、静かに、しかし徐々に声の音量を上げる勝己。
『お前ごときが俺の何を視て来たって?!生意気なんだよ!そういうトコがムカつくんじゃボケぇえ!』
『見てきたからわかるんじゃないか!こんなのやっぱりキミらしくないよ!!こんな…連係プレーなんて…ましてや他の人とタッグ組むなんて!!』
苦しそうに叫ぶ出久。顔は見えてないのに、お茶子の脳裏に出久が自分の胸元をギュッと手で握りながら痛々しそうに叫ぶ姿が見えたようにはっきり浮かんだ。
『…』
『…』
少しの沈黙が場を圧倒した。戦闘音も声も聞こえない。相手も、クラスの皆も息を呑んだ。そしてとうとう、誰かが溜息を零した。勝己だ。
『デクよぉ…てめぇはいつも…勝手な事を考えてくれやがって…なんで他のヤツと俺を別けて考えンだよ?』
『…え?』
『人を外見だけで判断するもンじゃねーって、前に言ったよな?』
勝己の声は静かで、しかしその場に響くようで。誰も彼に逆らえないような圧迫感が感じられた。そうそれは…プロのヒーローが強敵に当たって何かの拍子でブチ切れた時のような…
『…ンで…なんでそれが、俺に作用されねぇって考えンだ?』
『…え?』
『なんで、俺だけを隔てて考えンだ?』
あまりにも勝己が苦々しく、重苦しく言うので、出久もタジタジになってしまったらしい。先ほどの勢いがまったくなかった。
『そ、んなこと…』
『少し考えりゃあわかる事だ。そうだろ?お前はクソナードでも頭は良い。なのになんでさっきみてぇに、なんで俺が飯田のヤツと連携プレイできねーって決めつけた?』
『だって、かっちゃんだったら…っ』
『俺だったら?俺だったらなんだ?できっこねぇって?ふざっけンじゃねー!!』
声と共に、どこかで爆発音が聞こえた。
『これは
違うかオールマイト?そう問う彼の言葉に少々気圧されながらも、オールマイトは答えた「それが今現在出来うる我々教師の義務だ」と。
『それ、は…そうだけど』
『“起こらなそうな出来事”をも想定して動かねぇと作戦も個性もなんもかんも活かせないうえに、“自分のせいで何人か犠牲になりうる”可能性もある。』
その彼の言葉は重苦しく響いて。まるでそれを経験したかのような雰囲気で。出久はもちろん、それを聞いていた全員が固まってしまっていた。それをわかっているのかいないのか、勝己は続ける
『そして現実じゃ、相手も自分も友も知り合いも、ヴィランやヒーローでさえ“無力に死んでしまう世の中” でもあるっつー事だ』
その場だけでなく、クラスの全員が動けなくなった。現実の厳しさは知っているつもりだった。しかし、彼らは今ここで改めて、爆豪の言葉によっていかに自分らが楽天家だったのかを知る。
「あいつって…こんなに真面目だったんだ…」
そう言ったのは
「人は見かけによらないものなのね」
続けて言葉を発したのは
「爆豪すっげー!漢だぜ!!」
賛美したのはお馴染み切島だ。
「小難しい理論や建前わかったうえで、作戦考えるの上手すぎだろ。あいつ特攻系のバカだと思ってたが、やっぱ…強ぇな…心も身体も…」
次に顔を少し暗くしながらそう言ったのは焦凍だ。ちなみに彼はただ今、勝己と真正面で戦えている出久に嫉妬中である。ギリッと歯ぎしりもしてしまったほどだ。
「つーか二人とも戦闘に夢中になって頭から制限時間抜けてて草生えるー(笑)」
尖水が怠そうに笑いながらしゃべると、その彼の傍にいた梅雨が彼のほうを向いた。
「尖水辰って言ったわね貴方」
「そういうアンタは蛙吹梅雨だっけ?」
「そうよ。梅雨ちゃんと呼んで。尖水ちゃん」
「ちゃん付けかー。まぁ、お近づきの印って事で梅雨ちゃんって呼ぶけどさー…俺の事ちゃん付けは…ちょっと」
「あらどうして?クラスメイトで友達になったのだから、これくらいは当然ではないかしら?ケロケロ」
「お、やっぱツユちゃん個性カエル?」
「そうよ。あなたの個性はなぁに?」
「んー…時期にわかるんでねーの?楽しみに見てたらいーと思うぜー…」
言いながら欠伸をする尖水の、包帯が巻いてある手首が見えた梅雨は、そっとソレには触れずに彼をじっと見つめる。
「欠伸?それに気だるそうね…ケロ。尖水ちゃんもしかして寝不足なの?」
「んー…そうさなぁ…」
「朝起きるのが得意なの?それとも…」
そこで梅雨が尖水をまたもジッと見つめた。彼女のつぶらな大きな瞳に見つめられて、さすがの尖水もタジタジになる。
「べ、べつにいいんじゃね?」
「ケロケロ。ダメよ尖水ちゃん。」
梅雨は尖水の手をそっと取った。手首の包帯は見ずに。
「どんな理由があったとしても、自分を大切にできるのは自分なのよ。だから無理はしないでね。何かあったら私でよかったら話し相手…聞き相手になってあげるわ。ケロケロ」
「!」
その彼女の言葉と笑顔に揺り動かされて、尖水は一瞬目を見張って硬直した。そうして少しした後、フッと微笑した。
「ああ。約束するぜ。あんがとなツユちゃん」
「ケロケロ。ええ。どういたしまして」
一方その頃、あの二人も動き始めたらしい。あちこち煙があがっていた。
『どうして、君は…そこまで解るんだよ?』
出久が勝己に詰め寄る。
『…』
『おかしいじゃないか!一体どういう事なんだよ?!まるで全部、君自身が…!』
『敵に隙を見せるんじゃねーよ動揺しすぎだデェク』
『?!』
そう聞こえたが最後、また破壊音が続いた。
「デクくん?!」
『ごめん麗日さん!このままじゃダメだから、作戦はBのほうを!』
「わかった!」
キッと前を向き直していざ、飯田の後ろをとろうとしたが…麗日が一瞬目を離した隙に飯田はそこには居なくなっていて。
「あ、あれっ?!飯田くんはどこに…」
「油断しすぎではないか麗日くん!」
彼女の背後を取って、拘束しようとした飯田は、しかし避けて攻撃を仕掛けてきた麗日とまた距離をとる。
「女子だと思って見誤っていたよ…麗日くんキミは…格闘技が使えたのか!」
『はぁ?!あの丸顔が格闘技だと?!』
それに一番に反応したのは向こうで出久と戦っている勝己で。
「うん。ワケあって今まで黙ってたん。ごめんね」
「いや…それも作戦の内だ。それに今のはいい判断だった。」
飯田の個性は素早い。よって今ので避けていなかったら…
「ケガをさせてたかもしれないからな…」
少し、思いつめたような節があった飯田だが、続けてお茶子を睨む
「さぁ…このブツが欲しけりゃ実力で奪ってみるんだなぁ!ぐへへへへ」
「………」
飯田が、いきなり彼らしからぬことを言い始めたのであっけにとられてお茶子の動きが止まってしまった。彼なりの生真面目さがここで出て来てしまったらしい。彼はヴィラン役に徹している。
お茶子は呆れて物も言えなかった。が、しかし素早くお茶子が動いたかと思ったら、彼女はパンチとキックを交互に出しながら、犯人捕獲テープを巧みに使って飯田を翻弄する。
(ただ者ではないと思ったが…っ!これほどとは!)
お茶子の攻撃が頬スレスレに横切る。勿論、飯田も負けずと応戦する。彼のスピードにさすがのお茶子も若干ついていけてない。が負けてもいない。
そんなのが続いたかと思いきや…急に下の階が崩れ始めた。その直後だった。
『麗日さん、今だ!』
「了解!飯田くんごめんね!」
彼女が個性を発揮しつつ飛び上がった。
次回、戦いの決着がつく。お楽しみに( ・ㅂ・)ノ☆彡