【Infinite Dendrogram】名も無き<マスター>達の独白記   作:ナーバス

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黄河所属 【高位召喚師】Ⅴ:ルール

   黄河所属 【高位召喚師】Ⅴ:ルール

 

 

 

 趣味にかまけて仕事をおろそかにする人ってどう思います?

 自分はそういうだらしない人のこと、嫌いだったんですよね。

 職場にもいたんですよ、休憩時間とかにヘッドセットつけてデンドロデンドロ―って。

 いやいや流石にそれはヤバいでしょって、本社の人に見つかったらどうするんですか。って言ったことあるんですけどね、なんか村が気になるとか、シフト制だからとか言い逃れして、わけわかんないでしょ。

 

 でもね、まあ別に仕事で下手をするとかはなかったんで上司も何も言わなかったんですけど、見てるこっちとしてはハラハラするしモチベ下がるし、勘弁してくれよって感じでしたね。

 

 

 でもまあ、そんなに夢中になるようなゲームってどんなのだろうって、その人が理由でデンドロを始めたのは間違いないんですよね。

 

 

 びっくりしましたよ、だって風とか匂いとか温度とか、もうありとあらゆる感覚が現実さながらですからね。オフィスにいながら旅行してるみたいなもんじゃないですか。だからまあ、リフレッシュ的な感じでするのならまあ良いのかなって、最初はそう思いました。

 

 

 その問題の人、実はとても親身な人でしてね、仕事でもそうなんですけど、デンドロでも色々教えてもらいましたよ。

おススメの店とか、狩場とか、ジョブの組み合わせとか。一から十までなんでも教えてもらいました。

 誰かを助けるのが生きがいなんですって。今になって考えてみたら、だからこそメイデンのマスターだったんですかねえ。

 

 ……だからこそ、なんでしょうかね。

 

 

 ある日、突然その人が長期休暇を取ることになりましてね、まあ珍しいことじゃないし、貯まった有休を消費するのも必要ですし、そんなもんかなあと思ってたんですよ。

 

 でもね、長期休暇がどうにも終わらない。かと思っていたら、いつの間にか長期休暇だったはずが休職になってて、そして気が付いたら、もう半年が経ってました。

 

 

 あの人に何があったのか。私は聞くことが出来ませんでした。

 デンドロにログインしても、フレンドリストが光っているだけでどこにいるのかもわからない。

 

 最後の手段としてDINで情報をもらいに行ったんですけどね、無名のマスターの名前を挙げたところで入ってくる情報なんか欠片もなくてですね。それこそそんなことは知っている、っていう情報ばかりでして。

 

 

 あの人がこの世界で一体何をしていたのか。そして、今どうしているのか。仕事に戻ってくるつもりはあるのか。相談できる人はいるのか。そんなことばかり考えてしまう。

 色んな感情が渦巻きますよね、リアルでも、この世界でも良くしてくれた人が相手なら、なおさら。

 不思議なものでしてね、あれだけ仕事中にデンドロをしていたあの人のことを。はた目から見れば仕事をおろそかにしていたあの人のことを。わけわかんないと思っていたあの人のこと、仕事の合間の休みを見つけて自分は探しているんですよ。

 

 

 自分が嫌いだった、だらしのない人そのものになってしまってて笑えないんですが、でもきっと自分がこうしてあの人を探しているのと同じぐらい、あの人にとってデンドロは大事なものだったんだろうなって。

 

 そういうのがちょっとだけわかったのは幸せなことですかね。

 

 

 

 あの人を見つけたら何を話しましょうか、なんて声をかけましょうか。前みたいに、少し困り顔で首をかしげながら返事をしてくれますかね。

 

 

 お元気ですか。うーん。少し違うなあ。

 大丈夫ですか。重苦しいなあ。

 探しましたよ。……直球過ぎる。

 

 

 でもまあ、きっと出会ったら出会ったで自然と言葉が出てくると思うんですよね、もしかしたら泣いちゃって話すことも出来ないかもしれないですけど。そのときにならないとわからないですし。

 

 

 

 

 

 私がデンドロをしている理由は、だいたいそんな感じです。

 

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