【Infinite Dendrogram】名も無き<マスター>達の独白記   作:ナーバス

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王国所属 【記者】 Ⅵ:エルダーチャリオッツ

  王国所属 【記者】 Ⅵ:エルダーチャリオッツ

 

 

 

 行き詰まりを感じた時に、俺は決まって1つの動画を見る。

 それは、諦めなかった男の動画で、初めて見た時からどれだけの時間が経っても色褪せることなく俺の心を支えてくれる。

 動画の主役は王国で一番強い男。否、王国で一番強い男になった男だ。

 全編通せば恐ろしく長いその動画は分割されたバージョンも投稿されているのだが、編集を加えていないオリジナルの動画が一番人気がある。

俺も所属している決闘マニアのクランにおいては、これを全部見ていることがクランに所属する条件とまで言われている始末だ。まあ、それだけ王国の<マスター>の中でフィガロの存在が大きいということだ。

 

 人気があるのだが、最初から最後まで見た場合、貴重な休日をまるまる消費することになるのが欠点と言えば欠点なのだが、俺はこの動画を見るのが大好きだった。

 

 

 【剛闘士】フィガロVS【猫神】トム・キャット。

 

 幾度の挑戦の果てにフィガロがトム・キャットを下した、最強の決闘者が生まれた、あの日の動画だ。

 

 

一分の無駄も無く、そして欠片も諦めず、ただただ前に突き進む。数えきれないほどの攻撃の押収によって、果てしなく高く頑丈な壁を、抉じ開け、乗り越える。そんな、言葉にすれば単純に極まる動画だ。

 

 何が起こったのか、何度見直しても俺にはわからない。ただひとつ確かなのはフィガロの思いが届いたという事実。

 無限連鎖のフィガロ。その名が示す通り、後半は現れる分身を全て倒し尽くそうとカメラの追えない速度で奮闘する。それでも絶えず増え続ける分身に折れることすらなく、ひたすら倒し続ける。常人であれば簡単に途切れてしまうような集中の糸を時間が経つにつれて逆に太くしていった、そんな試合。

 

 

 不思議なことに、あれの真似をしようと思ったことは一度もない。

 

 

 ただ、あの生き様に、ただただ勇気付けられた。

 

 俺はフィガロと直接話したことは無い。アイツからしたら俺なんてその辺に落ちている石ころみたいなものだろう。

 だけど、アイツがいたから俺は今でも頑張って生きていけている。

 

 リアルで、デンドロで、どれだけ辛い目に合ったとしても前に進む勇気をアイツから貰った。

 

 

 そんな俺だが、未だに1つだけ納得できていないことがある。

 

 

 

 ……なんで戦争に参加しなかったんだ、フィガロ。

 

 

 お前がいたら……この試合を成し遂げたお前なら、あの【獣王】も【魔将軍】も【大教授】のモンスター達も、倒せたんじゃないのか。

 

 

 ……何が「雑な戦いに興味はない」だ。

 

 

 ……もっとわかる言葉で説明してくれよ。

 

 

 ……なんで、お前みたいな凄い<マスター>のいる王国がこんなに落ちぶれちまってんだよ……

 

 

 

 ……なんでだよ、なんでなんだよ、フィガロ。

 

 

 

 画面の向こうにいる英雄はただただ戦い続けるだけで、何も答えてくれなかった。

 

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