メイド学校に通う佐天さん   作:ラーフィ

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第十話 大事な仲間の存在に気づかされました。

 

 

 

成夏祭とは、普段一般へ解放されていない、この常盤台中学女子寮が年に一度門戸を開く日である。

 

今日は常盤台中学の生徒たちが招待した大切なお客様が来場する。それを恥ずかしくない立ち振る舞いをもっておもてなししようという常盤台中学のイベントだ。

 

そんな日でも、佐天達は変わらずメイド姿である。

 

舞夏や鞠亜同様基本的にはお客様ではなくお客様をもてなす側ということもあってか、彼女たちの手に招待状は無い。

 

「というわけで私達も招待状をあげる側になったわけだけど、誰に渡した?やっぱ舞夏はお兄さん?」

「いいや、兄貴に渡したら私の面子が潰れるからなー。兄貴の友達に招待状を送ったのさー」

「ふーん……じゃあ鞠亜は?」

「同級生に。そういう佐天は?やっぱ例の主さん?」

「……ううん、私も同級生に渡したんだ」

「おや?その様子は納得いっていないようだね。これは渡したくても渡せなかったパターンかね?」

「喧嘩でもしたのかー?」

「うーん、そうじゃないんだけど……」

 

と言葉を濁す佐天に舞夏と鞠亜はおもわず首を傾げる。しかし佐天はそれ以上何も話そうとはせずに歩いていた。

 

その横顔がどこか寂しそうなのは気のせいだろうか。

 

「(……涙子のやつ)」

「(まーた何か抱え込んでいるな)」

 

幻想御手を通して多くのことを学んだのは決して幻想御手の渦中にいた人たちだけではなかった。それは友人である舞夏や鞠亜も同じ。

あの事件を通して佐天は悩み事を誰かに相談せず一人で解決してしまう性格だということを知った。だからこそ、舞夏や鞠亜もなるべく佐天の力になれるように努力したいと思っている。

 

なのに。

 

「あ、美琴さーん!」

 

どうしてこうタイミングが悪いのだろうか。佐天は友人である御坂を見つけると駆け足で駆け寄っていく。

 

「いやー常盤台中学の生徒はメイド姿でもてなすって聞いてましたけど本当だったんですね!!」

「からかわないでよ。私だってあんまりこういう姿をしたくないし、っていうかメイド姿じゃなくてもおもてなしぐらい出来るし……」

「でもお似合いですよ!」

「ありがとう……そうか、そういえば涙子は毎日この格好なのよね」

「なんでしょう、物凄く貶された気がします」

 

営業スマイルでにこやかに笑った佐天にちょっと顔を引きつらせながら。

 

「ま、まあメイド姿も可愛いし……ね?」

「ですよね!じゃあこの姿の写真を一枚……」

「あー悪いんだけど寮生の撮影は禁止になっていて」

 

パシャ。

 

「……聞いてる涙子?写真は禁止って」

 

パシャパシャ。

 

「はい、聞いてますよ。っていうか撮ってるのは私じゃないですし」

 

パシャパシャ。ああ、いいねぇ。いいよぉ。

 

流石に気づいた。

 

フラッシュのしている方向をあっちこっち追いかけると、それは記録係という腕章を付けた白井がテレポートを駆使してありとあらゆる角度から御坂の写真を何枚も取っていたのだ。

 

「ッ!黒子!」

「あ、白井さん」

「ごきげんよう佐天さん……ああ、いいねぇ」

「いいねじゃないわよ! なんであんたが撮ってんのよ!」

「誤解なさらないでくださいな。今日の黒子は撮影係、来年度以降の開催に向けてこうして参考写真を撮っているのですわよ。ですがお姉さま、こんなお召し物にも短パンを穿くのは如何かと。せめてドロワーズを穿いてゃおへあい」

「くーろーこー?どうして私のそんな写真が来年度以降の参考になるのかしら!」

 

むにー、と黒子の頬を引き延ばす。この見慣れた光景に佐天もただただ苦笑いしか出来なかった。

そうしていつものスキンシップをしていると、大きく開かれた扉の方から見慣れた人物がやってきた。

 

「あ、初春」

「おはようございます佐天さん。ええっと、御坂さんと白井さんは……」

「いつも通り」

「おはよう初春さん」

「ほはほうへふほういはふ」

「アハハ……御坂さんも白井さんもおはようございます」

 

初春もいつもの御坂と白井を見て苦笑いしか出来なかった。しかしそれも一瞬のこと。常盤台中学の寮を首と身体を大きく動かしながら。

 

「す、凄い……これが常盤台中学!!」

 

お嬢様に超が付くほど憧れを抱いている初春は目をキラキラさせながら声を上げた。

 

「白井さん、ご招待いただきありがとうございます!!」

「いえいえ、今日は存分に楽しんで帰っていってくださいな。では私たちが案内を……」

「待てぃ」

 

と逃げるようにここから離れようとする白井の肩を掴んだのは舞夏だった。

 

「お前、撮影以外にも仕事があるのを忘れてはないだろーな?」

「………………」

「えっと、あの人は?」

「私と同じ繚乱学校に通う土御門舞夏。私と相部屋の人だよ」

 

首を傾げる初春に自分の寮生徒を紹介する佐天。

 

「じゃあそっちの黄色のメイドさんは……」

「あっちは雲川鞠亜。制服着てないけど同じ学校の生徒」

「へぇ~」

 

紹介された鞠亜はそれに気づいたのかエヘンと胸を張った。舞夏とは知り合いだったものの鞠亜とは初めて会った御坂も覗き込むように彼女の方を見ていた。

紹介が済んだところで、佐天は腕時計を見ながら、

 

「じゃあ私たちは仕事があるので先に行きますね」

 

スカートのフリルをくいっと持ち上げ小さくお辞儀をして、鞠亜と舞夏(と引きずられている白井)と一緒に厨房の方へと向かっていった。

 

 

 

――――

―――

――

 

 

 

厨房に向かったといっても繚乱家政女学校の生徒全員が料理の準備をするわけではない。もちろんお昼時には駆けつけたりするのだが、まだ午前九時半。厨房もそんな忙しくない時間帯だ。

 

二十人の内十人は厨房で待機し、他の十人は常盤台中学の生徒と同じようにお客さんをもてなす側になる。

 

「こちら今日のパンフレットになります」

 

そして佐天は客をもてなす側へと回っていた。これは先生が決めたことなので仕方がないのだが、出来れば厨房に居たかった。この時間帯は凄い楽だから、というだけの理由で。

 

「お、サンキュー」

 

受け取った他学校の男子生徒は佐天に礼を言うと、何かに気づいたのか唐突に足を止めてあたりをキョロキョロしだした。

 

「あ、あれ!?インデックスは!?さっきまで一緒だったのに!?」

 

その男子生徒は焦ったように頭を掻き出すがまあそんなことで見つかるはずもない。変わった名前だとは思ったが恐らくその『インデックス』という子が彼の連れなのだろう。目線が下にある辺り恐らく年下?

 

迷子を探しているだけのはずなのに人にぶつかったり壁にぶつかったり階段に躓いたりして『不幸だ……』と嘆いている男子生徒を見ていた佐天は見ていられなくなり、

 

「迷子ですか?」

「上条さんは迷子ではありませんことよ!?」

「ち、違います!迷子の子を探しているならお手伝いしようかなぁと」

「……いいのか?」

「はい。折角ですから案内も兼ねて」

「本当助かる。実はある程度見当は付いていたんだが場所が分からなくてな……」

「じゃあ一度そちらに向かいますね!」

 

自分のことを上条と呼んだ少年と佐天は一緒にある場所へと向かっていった。

 

この時。

 

厨房が目まぐるしく忙しかったなんて思ってもみなかった。

 

 

 

 

――――

―――

――

 

 

 

 

「とうま!とうま!ここのご飯はとっても美味しいんだよ!」

「そりゃあ上条さんが作るよりかは美味しいだろうよ。本物のメイドさんが直々に作ってるんだからな」

「にしても本当によく食べますねー」

 

コトっという音と共に新たな料理が置かれる。結局上条という男子生徒が探していたインデックスという少女は食堂でご飯を食べていた。

 

これだけなら特に言う事はないのだが問題なのはその量だ。既に十人前は平らげている。テレビに出ている大食いタレントといい勝負だ。ブラックホールが弟子に取りそうである。

その食べっぷりに厨房にいるメイド達はこんな時間から忙しくなるとは思っていなかったのか顔にいつもの笑顔はなかった。中には半泣きになりながら料理をしている人までいる。

そして偶然にも食堂に来てしまった佐天は当然の如く手伝わされる羽目になった。

手伝うのはいいが、それよりも上条という男子生徒が探していた少女の事の方が気になった。

 

制服でもなければ私服でもない白い修道服。学園都市ではありえないオカルトを信仰していそうな、宗教とかやっていそうな雰囲気だった。

 

確か上条という男子生徒はその子のことをインデックスと呼んでいたような……

 

「ちなみにインデックスっていうのは……」

「ああ、コイツの本名だよ」

「……目次じゃなくてですか?」

「ちがうよ。禁書目録のことだよ。あ、魔法名はDedicatus545だね」

「???」

「あー気にすんな。コイツはちょっと頭のネジがおかしくてな」

「そこはかとなく馬鹿にしてるね?」

 

この二人……というよりはこの白い修道服を着た少女の言っていることが全く理解できないのだが、どうやら二人にしか分からない話があるようだ。さっきの魔法名とやらもきっと合言葉か何かなのだろう。

 

「うーん……とりあえずインデックスちゃんっていう名前なんだね?」

「そうだよ!あなたは?」

「佐天涙子です」

「るいこ、おかわり!」

「まだ食べるの!?」

 

その言葉を聞いた厨房にいるメイドさんたちは、三日三晩働き続けたような顔をしていた。それを見ていた上条は晩ご飯を考えるような気軽さで。

 

「しかし、お嬢様学校って言っても案外普通な感じなんだな」

「そうですか?」

「そりゃあ俺たちのショボい寮と比べたら全然こっちの方がいいけどさ」

「まあ美琴さんみたいな人もいますし、全員が全員お嬢様育ちってわけでもないですから」

「佐天さんもあんまりお嬢様って感じしないよな」

「っていうか私常盤台中学の生徒じゃないですよ?」

 

適当なところで話を切り上げるてせっせと皿を回収する佐天はあることに気が付いた。

 

そういえば、知らない男の人と話すの久しぶりだなー、と。

 

普段繚乱中学や常盤台中学といった女子学校の友人が多いため男性と話す機会はかなり少ないのだ。だが先ほどの彼と話していてそんなに苦痛ではなかったというかスムーズに会話が出来たのだ。

 

もしかしたら彼とは話が合うのかもしれない。

 

人柄の良さから友達も多い佐天はそれこそ友達に話しかけるような気軽さで。

 

「私は繚乱家政女学校の生徒です。今日はお手伝いなんですよ」

 

コトっと料理の皿を置く。目をキラキラさせながら料理に食いつくインデックスはその大食いっぷりに流石に苦笑いするしかなかった。

 

「あー、土御門の妹と同じか」

「舞夏の事をご存じで?」

「っていうよりソイツの兄の方だけどな。今日の招待状も土御門の妹に貰ったんだ」

「へー。舞夏のお兄さんってどんな人ですか?」

「妹をこよなく愛している変態」

「わーお……」

 

そういえば舞夏の持っている漫画は少女向けで十八禁ではないものの妙になまめかしいマンガを持っている。特に兄と妹でドロドロになるヤツが好きらしい。

 

兄が兄なら妹も妹というわけか。

 

あまり知りたくなかった友達の性癖を改めて認識したところで、佐天は一度厨房の方へ振り返った。

そこには先生が見たら雷が落ちそうなメイドらしからぬ表情が見て取れた。それを見てから、上条達にこう言った。

 

「じゃあそろそろ他のところ回りませんか?せっかく来たんですし」

「お、そうだな。インデックス、そろそろ行くぞ」

「えーまだ食べたりないんだよ!」

 

まだ食べるのかよ、というツッコミは心の中に留めておいた。

でもそろそろこの二人(というよりインデックス)を食堂から離さないと流石にヤバい。主に厨房が。

 

「バクバク食べる女は嫌われるぞ!」

「私太らないもん」

「太らなくてもだよ。男性は清楚な女性を好む傾向があるから、今のインデックスちゃんを意中の男の子が見たらどう思うかな~?」

「む……」

 

佐天の言葉を聞いて箸を止めたインデックスは少し考え込んだ。その後、割り切ったように今食べている料理を平らげて、両手の手のひらを合わせて。

 

「ごちそうさまなんだよ」

「うん!えらいえらい!」

 

くしゃくしゃと頭を撫でる。横では「おおっ!?」と猫が二本足で立ったのを見るような驚き方をしていた。

 

「さて行きましょうか」

「すげぇ、これがメイドさんか……!」

 

土御門や青髪がメイド好きな理由が少しわかったかもしれない。そう思った上条であった。

 

 

 

――――

―――

――

 

 

 

そのやり取りをずっと見ていた常盤台中学の制服を纏った女性は身体の中を渦巻くモヤモヤした感情を抑えきれなかった。

しかしそれを口に出すことはしない。というより今は出来なかった。

それ以上に気になることが頭の中に映像として映り込んだからだ。

 

「(どうして第一位と……)」

 

彼女は手に持っているリモコンをカバンの中にしまいながら考える。

 

彼女はメイドを除けば至って普通の女子中学生。

 

能力はレベル0。

 

色んなスキルを持っているが飛び出ているモノはない。

 

だというのに、

 

御坂美琴と友人関係であり、第一位とも接触しており、あの女が気にかけていて、

 

そして何より。

 

「(どうしてあの人と仲良くなっているのかしらぁ!?)」

 

その彼女の隣にいるのは食蜂の意中の男性である上条当麻がいるのだ。記憶を覗いた限りでは彼らは今日が初対面のはず。だというのにどうしてあんなに仲が良いのだろうか。

 

自分のことは永遠に思い出してくれないかもしれない。

 

それでも自分の好きな男性が他の女の子と仲良く話しているのは気にくわない。

 

どうして彼がここにいるのかは分からないが、食蜂には一つの推測が頭の中にあった。

 

「……そんなにメイドという響きがいいのかしらぁ!」

 

結局、根本的なところで食蜂は中学二年生だった。

 

 

 

 

 

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