メイド学校に通う佐天さん   作:ラーフィ

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第三話 なんか私疑われてるんですけど!?

「無能力者だァ?」

 

「はい。確か空力使い(エアロハンド)ですけど……それが何か?」

 

首を傾げてかわいらしく問う佐天に、一方通行は呆気に取られた。

暗部が一方通行を利用するとしたらまず能力関係のことだろう。というよりそれ以外考えられない。

 

その考えから推測するに、佐天は一方通行の能力――ベクトル操作の能力者、あるいはそれに関連する能力の持ち主だと思ったのだ。もし彼女がベクトル操作の能力を持っているのだとしたら上が黙ってはいないだろう。僅かに地から出た芽を開花にさせようと努力するに違いない。

 

しかし聞いてみたらどうだ?ただの空力使いではないか。この能力自体は珍しくないし、実際彼女の上位互換は山ほどいる。

 

ますます上層部のやっていることが理解出来ない。でも嫌がらせとは思えない。しかしこの純粋無垢な少女に価値があるとも思えない。

まだ見ぬ力が彼女に眠っているというならば話は別だが、どうもそうは思えない

 

 

一方通行は考えた。もし彼女が本当は上からの命令ではなく、彼女個人としてこの家にやってきたのではないか、と。

 

それなら色々辻褄が合ってくる。彼女がレベル0でありながら反射に驚かなかったのも、どうして今の今まで平気な顔して学園都市のレベル5と接触しているのかを。

 

「テメェ、俺が誰だか分かってンのか?」

「はい。アクセラレータさんですよね?」

「……チッ」

 

最初は自分を殺しに来てるのかと考えた。だが実験中の自分を殺しに来るとは考えにくいし、本当に殺しに来てるのであれば寝込みを襲えばよかったのだ。

 

殺害でもなく能力関係でもない。

 

ならば、一体なんだ?

 

「(……まァ、俺の邪魔さえしなけりゃ何でもいいけどよ)」

「あ、そういえば今日の夕飯の材料買ってなかったですね。ちょっと出かけてきます」

 

と、佐天は自分がどれだけ悩んでいるかも知らないでさっさと出ていってしまった。

 

 

 

 

よく分からず派遣された彼女と、よく分からず振り回されている彼の奇妙な関係は暫く続いた。

 

 

 

 

――――

―――

――

 

 

 

「あ、うどんとそばどっちがいいですか?」

「……食えれば何でもいい」

 

 

 

 

「そういえばこの前私の学校近くにフォーティーワンっていうアイス屋が出来たんですよ!」

「……どォでもいい」

 

 

 

 

 

「あの、世界史を教えてほしいんですけど……」

「……チッ。どこだ?」

「ここら辺なんですけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何も変わることのなかった日常に、新たに加わった、どこにでも居そうな少女。

 

きっと彼女は誰かの思惑通りに動かされ、知らぬままに操られているのだろう。

 

だが彼は少女を突き放そうとはしなかった。

 

彼女の事を思うのならば、早めに縁を切っておいた方がいいと理解しておきながら。

 

それが何なのか。今の彼には分からなかった。

 

 

 

――――

―――

――

 

 

 

 

朝に自分のところに来て朝ごはんを作り、掃除を済ませてから彼女は学校へ行く。夕方になるとまたやってきて夕食を作るのはもちろん、世間話や勉強を見てもらったりしてーー

 

 

今までの経験では考えられない程普通の日常生活を送っていた。

 

 

数日経てば、研究者や自分を倒そうとする不良たち、まだ可能性として捨てきれていない佐天からなんらかのアクションがあると思っていた。しかし自分を取り巻く環境は変わる兆しすら見えない。

 

何日経っても彼女は変わらずここに現れ、記憶に残らないようなありきたりな会話を繰り返していく。

 

だから、きっと心のゆるみが生まれてしまったのだろう。

 

「あ、そうだ。アクセラレータさんて長いですし、あーくんって呼んでもいいですか?」

「……好きにしろ」

「じゃあそう呼ばせていただききますね!」

 

こんな提案をあっさり受け入れるなんて、研究者が見たらきっと腰を抜かすだろう。

 

それだけ、彼は成長……いや、元の『彼』へと戻っていっている証ではないだろうか。

 

 

 

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