Fate/Weird Tales   作:Hisa Wisteria

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Fate apocrypha世界の二次創作です。
基本妄想をシコシコ書いてるだけなのでそこのところよろしくお願いします
オリジナル鯖等々登場します。
断続的に書いていたものを書き足したり、かき直したりして投稿しています。気に入っていただけたら、ぜひともいいねしていただけると幸いです。


#4 栄光の騎士

そこにいたのは、真っ白な鎧に身を包んだおとぎ話に出てくるようなナイトだった。

顔を覆い隠す兜も、重々しくその体を守る鎧も、写す光のすべてを返すほどの純白さだった。そしてその騎士は左腕に持った半身を覆ってしまうような大きさの盾で私が力いっぱい放ったパンチを受け止めていた。

 

「くっ・・・」

 

「ご無事ですか? マスター。」

 

後ろにいる男を一瞥し、無事であることを確認した。なるほど、この騎士がキャスターの言っていたサーヴァント。私たちを先回りしていた奴か。

打撃の衝撃を完全に受けきり、今度はこっちの番とばかりに、右手に携えた大きな槍を私に向かって構える。

凄まじい早さの突きが私の心臓に向かって一直線に飛んでくる。私はそれに対して、重心を右足に移し、それを軸に体を回転させる。突きは隙が大きい。無防備になる側面からの攻撃を試みる。くるっと体を回した勢いのまま、騎士に向かってもう一発パンチを放つ。が、しかし大きな盾によって、左側面への攻撃は完全に封じられていた。

再び凄まじいまでの衝撃波と金属音が周囲に児玉する。

白い騎士は、その大きな槍を横薙ぎにふるう。私はたまらず、一旦後方に跳躍して距離をとる。

追撃を警戒しつつ、キャスターに話しかける。

 

「キャスター!こいつがあの男のサーヴァントってやつなの?」

 

「ああ、そう考えて間違いない。気をつけてくれよ。普通だったら、人間じゃ太刀打ちできないような存在だ。」

 

キャスターの言葉を聞き届け、改めて眼前の敵に集中する。

あの男のサーヴァント。美しき騎士は、男の前で臨戦態勢をとっていた。主の命があればいつでも攻撃を開始するためだろう。兜で顔を覆っていて表情までは見えなかったが、その立ち姿からはこれまで出会ったどんな人間にもなかった迫力が感じられた。

 

「たいそうな甲冑ね。それにそんな大柄の武器を簡単に振れるなんて。まさに伝承に出てくる騎士様って感じで素敵だわ。」

 

「あなたこそ、人の身で凄まじい力を持っている。加減は必要ないと理解しました。」

 

兜越しに発せられたその声は、どこか中性的で誇りと敬意に満ちているように聞こえた。乙女を救いに馳せ参じた白馬の王子様。人にそんな印象を与えるような声だった。

もし自分がお姫様だったら、この胸の高鳴りを恋だと思ったことだろう。だがこれは違う。それははっきりとわかる。私は今からこの英雄と殺し合いをするのだ。

全身の細胞が歓喜するのがわかる。脳みそから出た物質が自分の体を駆け回り、自分の細胞の一つ一つにエネルギーが届けられるのがわかるようだった。

感覚を研ぎ澄ます。満身の力を込めて地面をけり、今の自分が出せる最高速度で騎士に向かって突進する。

 

「っ!!」

 

相手はそれに反応し、盾を前に出して防御の姿勢を取った。

さっきの数回の打撃で、こちらの攻撃を受けきれると判断したのだろうか。だがそれは失策だ。今度はさっきまでとは違う。拳に魔力を宿らせる。固く固く握りしめたそれからは、煌々と赤い炎を放っていた。直前で踏ん張り、足と腰と腕を流れるような動きで連動させ、盾の中心に向かって全身全霊のパンチを放つ。

 

「おらああああああああっ!」

 

あたりに衝撃波と轟音が響き渡る。振るわれた拳によって、一帯が瞬時に炎に包まれる。その圧倒的な威力は盾ごと騎士を後方に弾き飛ばしていた。再び、地面を蹴って追撃に向かう。アスファルトの地面を転がりながら体制を整えつつあった騎士に追いつくと、もう一度拳に魔力を流し込んで打撃動作に入る。騎士は再び私に向かって正対すると、すかさず馬上槍の突きを繰り出してきた。

カウンターを左頬に掠めながら、槍の間合いの内側に潜り込み、もう一度盾に向かって一撃をお見舞いする。また衝撃波と炎があたりにまき散らされた。純白の騎士はたまらず盾を斜めにして衝撃をいなし、自ら後ろに飛んで距離を取った。

私はそれを追わない。たった一つの技とは言え、こちらの最強の手札の一枚を見せてしまった。もちろんこれで倒せると思っていた訳ではないが、相手の力量を知らずにこれ以上全力で戦い続けるのは危険だ。ここはあえて、泳がせて相手の手札を切らせることにした。

 

「その盾、超頑丈だね。私の全力を二発も耐えちゃうなんて。」

 

距離を取ってからも防御の姿勢を崩さない騎士の持つ盾には、二つの大きなくぼみが出来ていた。

 

「ふふ。あと何発耐えれるの?そのまま防いでばっかりじゃ長く持たないんじゃないかな。」

 

すると騎士は突然、防御の姿勢を崩した。攻撃かとおもい身構えるが、どうやらそうではない。

 

「そうですね。お見事です。その敏捷性と膂力、加えて魔術まで扱えるとは。このままでは、私の方が不利でしょう。」

 

そういうと手に持っていた槍と盾を手から離すと、それらは地面に落ちる前に、まるで灰になったかのように消えていった。

 

「マスター!」

 

騎士が叫ぶと、一振りの剣が彼の手に飛んできた。飛んできた方向には森が広がっている。振り返ると私に妙な魔術を使ってきたあの男の姿がなかった。どうやら今の戦闘の隙に森の中に身を隠したらしい。騎士に向き直り、ファイティングポーズをとる。どうやらここからが本番らしかった。

 

「このライダー。騎士は徒手にて死せず。ナイト・オブ・オナーお見せします。」

 

 

 

 

エミヤシロウが召喚したサーヴァントはライダー。真名はガレス。かのアーサー王が統べた円卓の騎士の一人、数々の冒険を繰り広げ、いずれは新しき円卓の筆頭になると期待されていた狼のごとき騎士。同じく円卓の騎士のガウェインの末弟にして、円卓最強の騎士ランスロットに見出された美しき手ボーメイン。

彼女が女であることには驚いたものだが、すぐに彼女が優れたサーヴァントであることを認識した。ステータスは言うに及ばず、彼女は三つの宝具を所有していた。

 

「(第一宝具の展開を許可する。相手の出方を伺いつつ可能ならその女を殺せ。)」

 

繋がったパスを通してライダーに命令する。敵は生身の人間。サーヴァントと互角以上に戦えるのは何かしらのカラクリがあるはずだ。あの男、キャスターの能力の影響か、もしくは自己強化に特化した魔術系統を扱うのか。現状でそれははっきりしないが、わざわざリスクを冒してまでマスターを前線に出すという事は、あのキャスターは戦闘向きではないという事だろう。

 

「(了解しました。では合図で剣を。)」

 

ライダーに運ばせ、あらかじめ森の中に仕込んでおいたバッグまで走る。小さな子供ならすっぽりと入ってしまいそうなそれの口をあけ、中から一メートルほどの剣を取り出す。この剣自体は何の神秘も魔術も込められていない。

ライダーの第一宝具、『栄光の騎士ナイト・オブ・オナー』の能力はその手に持つ武器はなんであれ彼女の宝具にすることが出来るというものだ。円卓最強のランスロットから学んだ技術、与えられた武器で敵を打倒するある意味での武術だ。本来の使い手であるランロットであれば、武器に限らずどんなものでも宝具として扱えるようになるそうだ。だが彼女の場合、宝具の効果は武器と定義されるものにしか発動しない。戦闘機や爆撃機などといった兵器に分類されるものや、そこらへんに落ちている木の枝などには適用されないのだ。

 

「マスター!」

 

ライダーの声を聴き、彼女に向かって剣を思いっきり投げる。空中でこう描いて飛んでいくそれはドンピシャりと、ライダーの手の中に納まった。それを見届け、地面に置いていたバッグを持ち上げて移動を開始する。並行してポケットから携帯電話を取り出し、とある電話番号を呼び出す。数度のコールの後、電話越しから、プライドが高そうな女の声が聞こえてきた。

 

「もしもし。あなたが協力者さん?」

 

腐葉土蹴って走りながら要件を手短に伝える。

 

「リン トーサカだな。すまないが、予定変更だ。」

 

「変更? どういうことよ。」

 

「敵と交戦状態に入った。今からライダーに派手に暴れさせる。魔力を感知してその場所に来い。わかったな。」

 

「えええ?!ちょっとそれどういうことなのよ!」

 

「詳しくは後で話す。じゃあな。」

 

電話を切って、ポケットにしまう。そのまましばらく走ると少し開けた場所に出た。事前に斥候させて割り出しておいた絶好のスナイピングスポット。小高い丘のような地形の中腹であり、そこからはライダーとあの女が戦っている様子がよく見えた。そこにはキャスターの姿もあった。こちらを追ってくると思っていたが、奴はただ、ライダーとあの女が戦っているのを見ながら動こうとしなかった。やはり、あいつには戦う能力がないと考えて間違いなさそうだ。

コートの内側から、折りたたんで隠し持っていたHK417を取り出し、ストックを伸ばす。セーフティを外し、チャージングハンドルを引いてチャンバーに弾丸を装填する。

木にもたれ掛けるようにして重心を固定し、スコープをのぞき込んで、再度敵の位置を確認する。

劣化起源弾の威力では魔術師を一撃で屠ることはできない。

先代、衛宮切嗣が使っていた起源弾はあらゆる魔術師を一撃で葬ってきた。無論、常人であれば7.62㎜の弾頭は、アーマーなしに受ければ、一発で致命傷を与えうるだろう。しかし、相手が魔術師の場合は、それ相応の防御を固めているものだ。オリジナルの起源弾はその点を逆手にとった武装だ。しかし、この弾丸では完全に仕留めるのであれば、三発は必要だ。薄まっている起源の発露という効果を十全に出すには、それくらい当てたい。

だからこそ、射撃のタイミングは完璧でなくてはいけない。確実に葬れる弾数をぶち込める最高のタイミングに、単発ではなく連射による面制圧で確実に殺す。

ライダーは優秀なサーヴァントだ。多数の宝具に加えて白兵戦も高いレベルで行える。あいつなら、絶好の機会を作り出せるはずだ。

 

「さあ。お手並み拝見だ。」

 

 

 

 

 

ライダーのサーヴァントを名乗った騎士の手に握られていたのはなんの装飾も施されていない剣だった。鞘に納められたままのその剣を、英霊が持つ規格外の神秘である宝具と考えるのは自然なことだった。

だが、キャスターのマスター。母なる大地の嬰児であるシブシソ・アナンシには一目見ただけで、その剣がそういった神秘に属するものではないことが分かった。

現代でこそ、あんなものを見ることは少ないだろうが、彼女がいた地下闘技場では稀にあのような得物を振り回すやつがいた。中世ごろにヨーロッパで広く使われていたロングソードだ。全長1メートルほどのシンプルな剣。

質素だといえるそれが、白銀に輝く甲冑に身を包んだ騎士の手に握られているのは、とても不釣り合いに感じた。そのせいか、なんとなくシブシソは嫌な予感を感じていた。

 

「さっきのでっかいランスはもう使わないの?あっちの方がリーチはあったけど。」

 

純粋な疑問と探りを入れる目的でシブシソは問う。

 

「あなたの敏捷性の前で、馬上槍では不利でしょう。しかし剣であれば、遅れは取りません。」

 

そう言いながら、ライダーは鞘から剣を抜く。刀身もやはり何の変哲もないものだった。

紳士的な態度で発された言葉は、やはり敬意が感じられ、決して油断はしないであろうことが読み取れた。

 

「真名開放。」

 

その瞬間、ライダーの体から放出された魔力が風圧を起こす。道端に散らばっていた落ち葉が舞い上がり、突風のようにあたりに駆け抜けていく。

シブシソは驚きつつも、ファイティングポーズのまま、ライダーを観察していた。

ライダーの手に握られていた剣は、さっきまでの無個性さを捨て去り、金色の魔力をまとっていた。

 

「『栄光の騎士ナイト・オブ・オナー』、発動。 絶対アブソリュートリー。全力で参ります。」

 

舞い上がっていた落ち葉が地面に落ちた瞬間、一閃の光になってライダーはシブシソに突進していた。

 

「せいっっっ!!!」

 

騎士の剣は、上段からシブシソの頭に向かって凄まじいスピードで振り下ろされる。彼女は剣の軌道を目で追いつつ、体を右側にそらして斬撃を躱す。剣はアスファルトの地面に触れるや否や大量の魔力を一体にまき散らした。そのまま距離を取ろうとしていたシブシソの足場もめくれ上がり、一瞬足を取られた。

 

「ふっ!!」

 

土埃の中で、生じた隙を逃すまいと追撃が振るわれる。軌道は光の線となってシブシソに襲い掛かり、その剣圧によって土埃は吹き飛ばされていく。

その攻撃を彼女は躱せない。首元に狙いすまされた一撃が迫る。とっさに全霊の魔力を纏わせた腕でガードを挙げる。

 

観る者の目を晦ませる閃光があたりにまき散らされ、大量の魔力が爆発にも似た衝撃波を起こす。

シブシソは剣戟によって弾き飛ばされた。アスファルトを転がりながら、横転したバスの中に叩き込まれた。

 

「痛たた・・・」

 

痛みを感じつつ、瞼を開けて全身を確認する。剣の攻撃を受けた左腕には大きな切り傷がついていた。血が肘を伝って流れ出ている。しかし、傷は大きいものの、それほど深いものではないようだ。拳に力を入れると、少し痛んだが、まだ動かせそうだった。そのほかは軽いかすり傷程度だけだ。

腕から流れる血をなめつつ、立ち上がろうとすると。

 

「マスター!!!」

 

キャスターの怒号にも似た叫び声が聞こえた。

瞬間、バスが眩いばかりの光に包まれた。ライダーが剣を振るい、放出された魔力がバスもろともシブシソに襲い掛かる。

 

「くっ・・・!」

 

全身に魔力を纏わせて防御する。魔力の流れが消え去るまでの数秒の間、彼女がこれまで受けたことのない攻撃を、文字通り肌で体験した。

 

シブシソはバスの残骸の中で、攻撃を何とか耐えきっていた。

ガードを挙げたまま立ち上がる。全身に纏っていた魔力のおかげで、ダメージは最小限に留めることができていたようだ。

だが、防御に多く魔力を回した分、かなり体力を消費してしまったようだ。呼吸が乱れてしまう。それを悟られまいと、酸素を求める肺を必死になって抑え込み、ゆっくりと息を吸う。

 

「大丈夫か?!マスター?!」

 

近くで見ていたキャスターが走り寄ってくる。傍に来て傷を見始めた。

 

「私は大丈夫・・・。危ないから離れて・・・。」

 

シブシソの言葉をキャスターは聞こうとしなかった。自分のスーツのポケットからハンカチーフを取り出し、腕の傷に巻き始めた。

 

「その耐久性、膂力、技術。賞賛に値します。私の友たちの中にも、これ程の者はなかなか居ませんでした。」

 

優雅さすら漂わせながら、されど明確な闘気をもって歩み寄ってくる騎士は、あくまで紳士的に言葉をかけてくる。

静かに呼吸を整えつつシブシソは余裕をもって言葉を返す。

 

「なかなか居ないってことは、私ぐらい強い人も居たんだ。あなたのお仲間さんに。」

 

全身の細胞が狂喜するのが分かった。神話の、伝説の、おとぎ話の英雄たちと、自分は肩を並べられると。そう解っただけでもこれまでの人生には大きな価値があったと思えた。何のために与えられた力なのかも分からなった。

でもたった今理解した。私はこの聖杯戦争の中で、誰よりも大きな喜びに辿り着ける。

 

「フフっ・・・嬉しいですか?」

 

ライダーが笑った。すこし驚いたが、すぐに自分の顔も笑っていたことに気が付いた。

 

ライダー立ち止まり、剣を構える。

 

「でも、この程度では兄様・・・、ガウェイン卿の足元にも及びませんよ。」

 

ガウェイン卿?とシブシソは頭の中で反芻する。彼女がそれを誰のことであるかを思い出す前に、キャスターが口を開いた。

 

「なるほど。これ程の力をもっているとなると納得だ。アーサー王伝説の円卓の騎士。その中でも随一の騎士ガウェイン。その兄弟、加えてさっきの馬上槍・・・。」

 

少し考えた後、キャスターは立ち上がりながら言う。

 

「光栄です。高名な、あの円卓の騎士ガレスとまみえることが出来るなんて。」

 

 

 

 

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