Fate/Weird Tales 作:Hisa Wisteria
Fate apocrypha世界の二次創作です。
基本妄想をシコシコ書いてるだけなのでそこのところよろしくお願いします
オリジナル鯖等々登場します。
断続的に書いていたものを書き足したり、かき直したりして投稿しています。気に入っていただけたら、ぜひともいいねしていただけると幸いです。
此度の聖杯戦争において、ルーラークラスの英霊が召喚された。
フランスから持ち出された聖遺物。アメルハウザーの思惑。時計塔からの刺客。多くの策謀が交差する戦乱の中で、裁定者に与えられた役目はシンプルである。
聖杯戦争に紛れ込んだ異物。復讐者アヴェンジャー、ルイ17世の討伐である。
現在、フライブルグ郊外にて、ライダー陣営とキャスター陣営が交戦中
それと同時刻
裁定者ルーラー。アンティオキアのマルガリタは圧倒的な力の前に膝をついていた。
「なるほど…女神モリガン…これほどとは。」
すでに一画の令呪を用いて弱体化させているのにも関わらず、ここまでの圧倒的な差があるとは。こんな悪魔のようなものが現世に呼び出されるとは。
「おやおや。聖女とやらの実力はそんなものなのかしら?」
一瞬、啓示が下りた。次の一閃に暴力の具現ともいえる嵐が足元で巻き起こった。後方に跳躍し、さらに距離をとる。それを見て妖艶なる神性は笑いかけた。
「まだまだ動けるのね?其方ほどの人間はケルトにも少なかったわ。」
深紅のドレスの裾をたくし上げ、沈みゆく太陽を背に凄絶なる夢魔の女王はルーラーに向かって微笑んだ。
「わたくし、其方のように強い人間は好きよ。」
「流石はケルト随一の神霊。想像以上の実力をお持ちのようで。」
「うふふふ!この暴力の女神に挑むこと自体が不遜ということを知りなさい。少女。」
「裁定者として、あなたのような邪悪な存在を放置するわけにはいきません。」
右腕を覆うほどに刻みこまれた令呪を再び呼び覚ます。本来、中立を守るべき存在であるルーラーが命じるべきではない命令だが、彼女は明確な敵意をもってこちらに向かってくるのだ。裁定者の敵すなわち、聖杯戦争自体の敵だ。
「ルーラー、アンティオキアのマルガリタが主の御名のもとに命じます!自害しなさい、バーサーカー!」
ルーラーの持つ探知能力は強力だ。その瞬間、確かにバーサーカーの霊格が砕かれたのを感知した。ここではない、どこかで。
何が起こったのか一瞬わからなかった。
「あらあらあらあらら?其方、未だに気付いていなかったのかしら?わたくしはあなたと同じ聖杯に呼ばれたわけではないのよ?」
これまで感じていた違和感の正体であった。
「そんな、では一体あなたは……。」
「わたくし、勇士たちの戦いに正義だなんてくだらないものを持ち込む、其方のような無粋な女が大嫌いよ。」
女神が携えた矛槍を天にふるうと、そこにはすべてを飲むがごとき竜巻が現れ、その中から二頭の赤黒い馬に引かれた戦車が現れた。
「わたくしの戦車は殺戮の具現。其があるところには争いありき。わきまえのない邪魔者裁定者はここで死ね。」
「く…こうなったら…」
バーサーカーが宝具を展開するのであれば、ルーラー自身も持てる最強を出さなければならなかった。
「『“夢魔女王の暴戦車レッドデッド・チャリオット』!!」
女王が乗り込み、暴力の嵐そのものとなった戦車はルーラーめがけて襲い掛かる。土は抉れ、空気は裂かれ、空は濁った。夕日は赤く、そこはまるで血塗られた戦場そのものだった。
「宝具!『魔竜滅する聖十字ミラクルム・クルーシス』!!」
ルーラーである彼女が、生前に行った奇蹟の所業。悪しき竜を討ち、拷問を受けながらも、最後まで信仰を捨てなかった命の道の具現。死して聖列に加えられた生涯のすべてだった。悪を除き、信仰に生き、芽吹く命に祝福を与える宝具だ。
バーサーカーを正面から迎え撃つ。嵐に向かって、渾身の力を込めた十字架を叩き込む。女王は手に持つ二振りに矛槍を慢心の力を込めてふるう。荒れた平原にぶつかり合う二つの力は膨大なエーテルと衝撃を一体にまき散らした。
持てる全力を出し切ってなお、聖女はバーサーカーを打倒するに至らなかった。衝突跡に残された大きな窪みの底にルーラーは倒れていた。
「ぁっ……げほっ…」
霊格を砕かれ、下半身を分断された彼女は薄暗い天を見ていた。
「あらら、わたくしの嵐に飲まれてもまだ息があるなんて。聖女というのはつくづく気骨のあるものなのですね。」
窪みの上で笑うバーサーカーの手には、引きちぎられた下半身が握られていた。
「終わったんだね。バーサーカー。」
どこかから、幼い声が聞こえた。
「ええ、終わったわ。わたくしの愛しいクラン子供たちの王」
遠ざかる意識、退去しつつある体に鞭を討ち、バーサーカーの背後に現れた小さな影に目を凝らす。
「ッ…ぁ…ぅ…」
声は出ず、体も動かない。だがその視界に入ったものに絶句し、自分が召喚された真意を悟った。この子供だけは、絶対に野放しにしておいてはいけない。
「ほらほら、あの小娘はどうするの?」
「そうだね。本当は霊格を染め上げて、手駒として使いたかったけど、こんなにぐちゃぐちゃになっちゃったら治せないや。」
バーサーカーが持っていた下半身を投げ落とし、地面に激突した衝撃で血がルーラーの顔に飛び散る。それでも、彼女は小さな影を見据えていた。
「僕、聖人とか聖女とかは尊敬してるんだ。だから、せめて余すことなく使ってあげる。」
少年が手をかざすと、窪みの中にどす黒い液体がどこからともなく湧きだしてきた。
「ごっ…ぁ……」
「うふふふ!それでこそ、わたくしの愛しいクラン!」
ゆっくりとルーラーは飲み込まれ、暗く痛ましい黒に囚われていった。
「ねぇねぇバーサーカー?あの間抜けなルーラーのおかげで、聖杯戦争に欠員が出ちゃったよね?」
少年はバーサーカーのドレスを引っ張りながら言う。
「そうねぇ。わたくしの愛しい子。」
そういうとバーサーカーは少年をゆっくりと抱き上げ、その胸に抱いた。
「僕、いいこと思いついちゃった!さっきの霊格を使って小間使いを召喚しようよ!」
「あらあら、うふふ。 ・・・・あら?」
夢魔の女王は山々の方を見る。
「どうしたの? バーサーカー?」
女神が感じていたのは奇妙な感覚だった。それは自分ではない自分が生み出した子供。クランとは違う。血を分けた者の気配だった。
「どうやら、私に所縁のあるものも呼ばれているようね。」
夢魔は口を大きく歪めて笑う。
「私も面白いことを思いついたわ。」
静まり返った平原は、宵の闇に包まれ、すべてが黒へと溶けていた。