Fate/Weird Tales 作:Hisa Wisteria
Fate apocrypha世界の二次創作です。
基本妄想をシコシコ書いてるだけなのでそこのところよろしくお願いします
オリジナル鯖等々登場します。
断続的に書いていたものを書き足したり、かき直したりして投稿しています。気に入っていただけたら、ぜひともいいねしていただけると幸いです。
山間の道路の真ん中に、ミサイルの直撃を受けたかのような破壊を受けたバスが転がっていた。
痩せ男と少女はその中から、時代にそぐわない甲冑に身を包んだ騎士と相対している。両者の間には微妙な沈黙が流れていた。
「ガレスって誰?」
そんな空気の中で、さっきの攻撃でボロボロになったバスの中からシブシソの間の抜けた問いが場に響く。
「アーサー王伝説に登場する騎士の一人だ。円卓最強の騎士ランスロットに見出され、数々の冒険を繰り広げた勇猛な騎士だ」
キャスターが答える。しかし当のシブシソはあまりピンと来ていないようだ。
「まったく…自分から真名のヒントを口にしてしまうなんて…不覚です…」
ライダーは兜の奥から自分への叱責を漏らしつつ、ロングソードを構えなおす。
「名前が今もなお語り継がれているというのは光栄です…しかし、これは聖杯戦争です。私にも願望がある。そのためにも、あなた方はここで仕留めさせていただきます」
ライダーが握る剣が再び金色の魔力を纏い始める。ゆらゆらと揺れていたそれは徐々に、刀身を包み込み、光を放つ剣としてその存在を確立していく。
「よくわかんないけど、本当におとぎ話の騎士様ってことよね?」
シブシソはバスの中から這い出て、ライダーに向かって正対する。キャスターは自分では戦えないらしく、少し距離を取った場所に立った。
シブシソはまたファイティングポーズをとり、ライダーは隙なく剣を構えている。
「騎士様が相手なら、私の名前も名乗らないとね」
母なる大地の嬰児は続ける。
「私はシブシソ・アナンシ。シビーって呼んでよね」
ライダーは兜の向こうから言葉を返す。
「その礼節に報いよう、シブシソ・アナンシ。私は円卓第七席次、ガレス。あなたの強さに敬意を」
そう短く告げた声はどこか嬉しげだった。誇りをもって殺しあう、どの時代においても変わらない戦士の矜持。ライダーが物語に刻んだ数々の武勲。それらを輝かせていたのは紛れもなく、ライダー自身が殉じた忠義と敬意の道。即ち、騎士道だ。
ライダーの足が踏み込み、一気に距離を詰める。十メートルほどあった間合いを瞬きの間に詰め、上段から渾身の一刀を振り下ろす。
この攻撃をシブシソは躱さない。正面から振り下ろされる剣を、魔力を流した両腕を交差させるようにして、こちらも正面から受け止める。
衝撃が一帯を駆け抜け、剣と腕が鍔迫りあう。
その時、銃声が鳴り響く。
シロウは最高のタイミングで引き金を引いた。攻撃を受けきった一瞬の隙。頭が反撃に転じること決定して、体が実行するまでのわずかなラグ。その隙間に、防御不能の弾幕を叩き込む。劣化起源7.62㎜弾の文字通りの集中砲火。7.62㎜弾のフルオート射撃と共に起こる反動は、熟練の兵士でも制御することの難しい。シロウは自らの体に強化の魔術をかけ、さらに近くにあった木を使って銃身を固定している。この状態であれば、完璧に近い反動制御が実現する。
ライダーたちが交戦している場所からは250メートル程度の距離があるが、今の状態の射撃であれば着弾の誤差は数十センチ。ライダーへの誤射の危険を考慮する必要がない以上、手加減する必要はない。
ライダーの攻撃の衝撃によって土埃が巻き上がる。照準器の真ん中にキャスターのマスターがいた位置から動かさずに、マガジンを一つ空にするまで撃ち尽くすまで、引き金を絞り続ける。
手入れの行き届いたHK417バトルライフルは、拡張弾倉に込められた45発の弾丸を、わずかに4.5秒で空にする。
劣化起源弾を45発使った掃射にどの程度の効果があるのか。普通の魔術師であれば確実に死ぬ。だがキャスターのマスターは明らかに普通の人間ではない。方法は不明だが、神秘の具現であるサーヴァントと渡り合う力を有している。であれば、楽観視はできない。必要以上に弾薬を消費するのは悪手だ。今撃ったマガジンの分で、相手の手の内を探れれば儲けものだと考えなければならない。
「さて、どうなった…」
視線を外さずに、照準器越しに土煙を注意深く観察する。
これで仕留められていれば、この上なく楽というものだ。しかし、現実とはいつも悪い方に転がるものだ。
土煙の中に、火花のようなものが散った。それを認識した次の瞬間、二つの大きな魔術のぶつかりが、煙を霧散させる。ライダーたちが、何事もなかったように力をぶつけ合っている。
それを見てシロウは険しい顔を浮かべる。
「(劣化起源弾は確かに命中したはず…それでも効果がないということは…)」
頭の中にあった、最も都合の悪い推測をおもわず呟いてしまう。
「あの女は神秘を纏っているのか?」
この世ならざる神秘。否、この時代にあるはずのない神々の時代の残り物。現存する、奇跡の産物。そんな例は、稀有とはいえ存在している。
あの女がそれを持っているというのだろうか?
「伝承保菌者ゴッズホルダーなのか…?」
であるならば厄介極まりないと、シロウは思う。おそらく、このままでは決着がつかない。あれを倒すには、ライダーの残りの宝具も開放しなければならないだろう。
あの二人の打ち合いを見る限り、現状の実力事態はライダーに分がある。しかし、あの並外れたフィジカルは底知れないものを感じさせる。
「(ライダー、聞こえるか)」
構えていたライフルから弾倉を抜き取り、バッグにしまいながらライダーに呼びかける。
「(マスター、今のは…)」
「(説明は後だ。単刀直入に聞く)」
チャックをしめてバッグを肩に担ぐ。
「(このままで仕留めきれるか)」
ライダーはシブシソの攻撃を受けながら応える。
「(仕留めきるには今のままでは足りません。第三宝具を使えば確実に。)」
「(駄目だ。これだけ暴れれば他のマスター達の注意を引いたはずだ。先を考えれば、これ以上手の内は明かせない)」
「(しかし、彼女はまだ手の内を隠している節があります。このままでは…)」
「(もうすぐここに協力者が加勢しに来る。それまで時間を稼げればいい。できるか?)」
「(それならば問題なく)」
「(ぬかるなよ、ライダー)」
「(心配無用です!!)」
ライダーが力を込めて振るった剣がシブシソに襲い掛かる。剣からほとばしる魔力が、シブシソの放つ魔力とぶつかり合い、幾度目かの衝撃波をまき散らした。
同時刻、リン&アーチャー
「この私を待たせた挙句、迎えに来いだなんて、本当に頭にくるわ」
リン・トーサカは、アーチャーの背で揺られながら激昂していた。
その原因となった出来事の始まりは、所属する教室の教師であるロードエルメロイ二世からの連絡だった。
前日の晩、リンは英霊召喚を終え、前哨戦とはいえサーヴァントとの戦闘を経験した。彼女は時計塔でも上位に食い込む魔術的才能を有する彼女とはいえ、それなりの魔力消費があった。街のはずれにあるホテルにアーチャーと共についた後、周囲の警戒を彼任せて、リンは休息をとった。
次の朝、彼女がホテルの一階にあるレストランで朝食をとっていると、携帯電話が鳴った。彼女自身、そういった機械は苦手だったが、気を利かせた妹が無理やりに持たせたものだった。何の電話かと思いながら出ると、向こう側から知っている声が聞こえてきた。
「やあ。ミス・トーサカ」
一瞬、背筋が凍りかけた。その声は紛れもなく、 リンが教えを受けていたロードエルメロイ二世その人のモノだったからだ。
「ご機嫌麗しゅう。ロードエルメロイ」
取り繕った挨拶を述べながら、リンの頭は思考を高速化する。さっき食べたハニートーストから摂取した糖分を最高効率で脳に回して知恵を巡らせようとする。
聖遺物がなくなったことに気付かれるには、もっと時間がかかると思っていた。いや、まだ気づいていないかもしれない。時計塔では切れ者として知れ渡っているようだが、彼はああ見えて結構抜けているところがある。
そんな楽観的な思考を踏み荒らすように、ロードは言葉を発した。
「二世だ。それより、サーヴァントは召喚できたのかね」
一瞬にして思考がとまった。ばれている。脳が糖分を欲しているのが分かり、発作的に手元にあったティーカップに角砂糖を三つほど放り込んで混ぜた。甘ったるくなったコーヒーを飲み干し、深呼吸してからロードに向かっていった。
「なんのことでしょう」
「とぼけるな、レディ。君がやろうとしていることはすべて察しがついている」
どうやらすべてお見通しのようだ。
「…ええ。昨日の晩に召喚しました。聖遺物を勝手に持ち出してしまった件は謝ります。でも、もう手遅れよ。まさか、今更かえって来いだなんて言わないでしょうね」
ため息つきながら、開き直ってリンは堂々とロードに言った。聖杯に選ばれ、英霊を召喚したのだ。引き際の一線など党に踏み越えている。
「戻ってこい。と言いたいところだが全く君の言う通りだ。レディ。君はもう引くことはできない。魔術師同士の闘争に飛び込んでしまったのだ。無論覚悟はできているだろうな」
覚悟など、聖遺物を持ち出すと決めた時からついている。どんな手を使ってでも、この戦いに勝ち残り、お父様の遂げられなかった悲願に手をかける。それが私にできる、やらなければいけないことだ。
「もちろん。私はこの戦いが終わるまでロンドンに帰るつもりはありません。だから、余計な口は挟まないでください」
決意をもってロードに告げる。それに対して彼は食い下がってきた。
「いや、口は挟ませてもらう。成り行きでこうなってしまったが、これはこれで我々にとっては都合がいい。」
『我々にとって』という言葉にリンは少し顔を強張らせる。ロードの言う『我々』とは、即ち時計塔をおいてほかにないだろう。何かが裏で動いているのかと訝しむ。
「どういう意味ですか」
「我々時計塔からもマスターを派遣しているという事だ。私が推薦した封印指定執行者を参加させている」
リンにはその理由がすぐにわかった。
「そう、聖杯を時計塔で独占するつもりなのね」
「否定はしない」
冷たく言い放たれた言葉を受けて、リンは唇をかんだ。封印指定執行者は、相手取るには危険すぎる。しかし、時計塔に聖杯を渡すことはあり得ない。それは一族の悲願を手放すことと同義だからだ。
だからこそ、次に告げられた言葉は天啓に等しかった。
「そこで、君に共闘を申し入れたい。我々が派遣したマスターと協力し、最後の二組になるまで勝ち抜いてほしい。君が執行者を負かすことが出来たのなら、我々は聖杯を諦めよう」
吐き出された意外な言葉に、驚きながらロードに聞き返す。
「いいんですか?」
「言っただろう、君が参加するのはこちらとしては都合がいいと」
君は時計塔側の味方につけやすい…と、この切れ者は言いたいのだとリンは理解した。
「どうする。あとは君の意思次第だ」
「提案を受け入れるわ。ロードエルメロイ二世。」
迷いなく…元より他に選択肢などないが、リンは淀みなく答えた。
「よろしい。では、まずは執行者と合流してほしい。後程、その携帯電話に時間と合流地点を送信する。遅刻しないようにしたまえよ」
イングリッシュユーモアだろうか。正直にいってこの手の言い回しはよくわからない。
「執行者様にも同じことを言っておいてくださいます?」
「ああ、伝えておこう。では」
そういってロードは電話を切った。
以上が今朝の出来事である。
そこから、リンは集合時間になるのを待ってホテルをチェックアウトし、アーチャーと一緒に集合地点に向かったのだった。
しかし、そのポイントで一時間ほど待っても相手は現れず、いよいよ撤収しようとした所に電話が入った。それとほぼ同時に、自分たちかいる場所から南にいったところに大きな魔力を感じ取った。
そして今、電話での指示通り、アーチャーと共にそちらに向かっている最中なのだ。
「レディを待たせたツケは絶対に払わせてやるんだから」
そうリンが呟くと、アーチャーが笑う。
「ハハハ!全くその通りだマスター!うまい酒にうまい飯を存分に奢らせようぜ!」
快活に答えるアーチャーはリンをおぶったまま、大きく跳躍を繰り返し、ライダーとシロウの待つ戦場へと駆けていくのだった。