東方湯煙録   作:鯖人間

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地の文って難しい…
これはもっと本を読めという事なのだろうか?


天魔と夢と鬼子母神

天魔と紫は今、地底へ続く穴を降り続けている…真っ暗なため安全を考えてふよふよと降っていっているせいか随分と時間がかかっていた。…多分、外はもうそろそろ明るくなり始める頃合なため、皆が清々しい朝を迎えるのだろう…そんな事を最初の内は話していた紫と天魔だが時間が経つにつれて次第に口数が減っていった。

 

それもこれも地下から溢れてくるこの澱んだ空気のせいだろう…息が詰まりそうな嫌な空気を感じていた時、微妙に煤けた風が2人の肌を撫でた。

そこで遂に紫に我慢の限界が訪れ、口を開くと

 

「これ、紬の家の前までスキマで行けばこんな思いしなくても良かったんじゃ……」

 

「……なッ!?だってそれは不可侵条約で…旧都への勝手な侵入をは全て禁止してい、る…?

…あれ?紬の家は旧都の手前…つまり旧都にいる連中とは出会わないから実質問題ナッシングなんじゃ…?」

 

 

 

 

「「………」」

 

 

 

 

 

「スキマ、開くわね…」

 

「助かるわ…」

 

 

 

どうしてあの時カッコつけてしまったのだろうと、さめざめと後悔した2人。

2人はその後、終始無言のままスキマへと入って移動を始めたのだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…ん?こんな森の中を独りで歩いて一体どうしたんだ?…もし、暇なら入っていかないかい? 』

 

 

 

ふと、懐かしい夢を見た。それはまだ自分が独りでいた時の思い出…

延々と続いた退屈によって、虚しさと孤独で冷えきっていた自分の心を温めてくれた………1人の妖怪の夢だった。

 

 

 

 

 

 

今、天魔たちがいるのは地底に広がる旧都の町…に入る手前の小さな小屋の中。

 

そんな小屋の中で眠る一人の少女の元へと辿り着いた2人は、来る途中に服に付いた煤をを払っていた。

…地底は風が吹き抜ける事があまり無い為、払っても直ぐにまた新しい埃が着くだけなのだが。

 

 

「それより…相変わらずここってボロいわよね。紬ってどうして好き好んでこんな所で寝泊まりしてるのよ?普通、もっと綺麗で広い部屋の方が良いでしょう?」

 

「…ゴミだらけの部屋に住む貴方が言っても説得力が皆無なんじゃけど…まぁ、1つ言うなら。

もう既に自分の住み着く予定の場所を…決めているからじゃないかしら?」

 

 

「…それってどういう事?というかこれ、どうやって紬を呼び出すわけ?扉に呼び鈴なんて付いてないし…直接声で呼ぶ感じなの?」

 

「いえ…そんな事はしなくてもいいわよ。どーせ紬の事だし。鍵なんて掛けて無いでしょ…

それに、紬を襲うような命知らずな輩なんて。この地底の中には居ないでしょ…」

 

 

そう言って天魔は無造作に扉へと手をかけると…軋んだ音を立てながら、簡単に扉が開いた。部屋の中は暗く、かなり埃っぽい。

そんな中、ボロボロの部屋の中に1枚の布団が敷いてあった。枕元にはきちんと畳まれた浴衣が置いてあり…その布団の中で、大きな膨らみが規則正しく上下に動いていた。

 

 

( んー…やっぱり紬は寝てるようね…って、あれ?あの浴衣を畳んでるということは…まさか…?)

 

 

「…ほら紬。そろそろ起きなさーーー…って、やっぱり服を着てないじゃないッ…!!…あーッ!畜生!…いつ見ても紬の胸は大きいわね…私だって、もっとこう…もう少し大きくなってもいいんじゃないの…?」

 

「え!?ちょ、ちょっと!どうして紬は裸で寝てるのよ!?この辺りって本当に防犯とか大丈夫なの!?」

 

 

ふかふかな布団を天魔がひっぺがすと、中から衣類を一切身に付けていない紬の姿がそこにはあった。

 

小柄な身体とは不釣り合いなほどの大きな膨らみを持つ少女は…布団を剥がされて尚、すやすやと寝息を立てながら眠っていた。

 

 

 

「全く…世話のかかる女の子よねぇ…おーい、そろそろ起きなさい紬ー?ほらほら」

 

 

天魔がペチペチと頬や脇腹を叩いてみた所、少女が目を擦って軽い欠伸をしながらも…その目を開いた。

 

 

「…んぅ…ふぁ……あれ?椿ちゃんじゃない…かなり久しぶり?」

 

 

天魔の事を『椿』と、本名で呼ぶ少女は久しぶりの再開を喜ぶように天魔の肩に手を置いた。

 

 

 

 

 

鬼子母神こと紬。

天魔の本名を知っている数少ない妖怪であり、唯一無二の親友でもあった。

…だからこそ、お互いに遠慮する事がない関係な為

 

 

「私ねー…椿ちゃんに会えてとっても嬉しいよ?…けど私、さっきまで凄く素敵な夢を見てたんだよねー…

…ねぇねぇ、椿ちゃんはそれについて…一体どうやって責任とってくれるのかなー?」

 

「えっちょ、つ、紬さん!?いきなり何を…ってちょっと待ってヤメテ!?そこ掴まれると脱げちゃうッ!?っていやぁあぁぁぁあぁあああッ!?!?!?」

 

 

そう言って肩に置いていた手で天魔こと椿の浴衣を掴むと、そのまま一気にずり下げた。いきなり素肌を晒してしまった事により、天魔は身体を隠そうとしゃがみ込ーーー…んだ結果。紬はむんずと目の前に来た椿の頭を掴んで自分の胸元に引き寄せ、そして頭をがっちりと両腕で固定して締め付け始める…

 

 

「椿ちゃーん?実は今日の夢には霞ちゃんが出てきてたんだけど…これからがいいところだったんだよー?そこの所をちゃんと分かってるのかなー?」

 

ググググググググググ

「ちょっ、わぷっ!?…ぶはぁ!この乳はガチでダメだって息ができないってお願い!!謝るから本当にヤメテーッ!?」

 

 

「何言ってるか聞こえなーい。椿ちゃん?もっと大きな声を出してくれないと、私も困るんだけどー?」

 

 

「んむっ…畜生ッ!!!こンの馬鹿おっぱいめぇ!!大きいおっぱいなんて滅んでしまえぇぇぇぇえぇえぇッ!…あっ」

 

 

そう叫んだ椿はその一言を最後に、ばったりとダウンしてしまった。

それを遠目で見ていた紫は戦慄する…

 

 

( …恐ろしいわね、アレ。服を脱がされて動きを抵抗できなくなった所を自分の胸で窒息させるなんて…女にとってのハメ技みたいな物じゃない。しかもアレって、私より大きいんじゃないの…?)

 

 

紬はダウンした椿を布団に寝かせると、ここでようやく紫の存在を見つけたのか…向き直って話を始めた。

 

 

「あれ?紫ちゃんもいたの?椿ちゃんに気を取られてすっかり気づかなかったよー…ゴメンね?

それで一体何の用事?あ!お茶出すからちょっと待ってて欲しいなー?」

 

 

「え、ちょ、ちょっと待ちなさいって!まず話をするから…って起きたのならさっさと服を着なさいよ!?」

 

 

紬はそう言って台所へと行こうとしたので紫は慌てて引き止める…けれど、紬はそのまま振り返ると困った顔をして

 

「うーん…あの浴衣は大事な浴衣だから、あんまり汚したくないんだよねー…だから私、自分の部屋で服は着ない派なんだけど…あ、紫ちゃんも脱ぐ?」

 

「脱ぐわけ無いでしょ!?私が困るから着て頂戴ッ!?貴方、その辺本ッ当に昔っから変わらないわね!!」

 

完全にマイペースな紬はそう言って頑なに服を着ようとはしなかった。紬の持つ能力が規格外というか色々と関係しているせいでもある為、昔から何かを身に付ける事を嫌っていた。

 

 

そんな中、二人の会話に横槍を入れる存在が居た。

 

 

「ふっ…無駄よ紫……紬の脱ぎ癖は昔っからの筋金入りだからね…それに、紬に命令できるのはこの世でたった一人………霞だけなんだから…」

 

「復活早いわね貴方!?」

 

「当たり前でしょ!!こちとら今まで何回この屈辱を味わった事か…ッ…私は、巨乳なんかに負けるわけにはいかないのよッ!!

だから、私はこの慎ましい胸に誓って…巨乳なんかには負けな、い、と…と…ッ……畜生羨ましいちょっと分けろよコノヤロウ!!!」

 

 

「天魔!?本音が漏れてるわよ!?」

 

復活した天魔が首を傾げた拍子に揺れた紬の巨乳を見て…隠しきれない己の本音と羨望をぶちまけた時。

 

紬が先程より目を細めて声を上げる…その目は絵の具をすべて混ぜたような…ぐちゃぐちゃに混ざった複雑な色をしているように見えた。

 

 

「…あのー…もしかしてわざわざここまで私に会いに来たってことはー………

…霞ちゃん…幻想郷に、来てくれたの…?」

 

 

絞り出したようなか細い声でそう言った紬。

紫が事情を話そうとしたその時だった。

 

 

「…ええ。昨日、幻想郷へ流れてき」

「椿ちゃん急いで!今すぐ霞ちゃんのとこ行くからダッシュダッシュ!ってそう言えば紫さんから場所聞いてなかったねうっかりしてたよさぁさぁさぁ紫さん早く場所を言ってください私今すぐあの人に会わないと行けないんですだから早く教えてください早く早く早く早く早く締めていい?締めても良いのかなー!?このままだと紫ちゃんも締めちゃうよさぁさぁさぁ!!!」

 

 

ガクガクと両肩を掴まれた紫は詰め寄ってきた紬の表情を見てしまった。歓喜・愛情・幸福…そんな表情の中に、複雑に絡み合う深い悲しみの感情を見つけてしまった。

 

 

…というか私、絞め落とされる!?

 

 

「か、霞は今紅魔館にいるから!!スキマでそこまで送ってあげるから服を着て落ち着い…」

「もうとっくに着替えてますよさぁ行こうじゃないさぁさぁさぁ!」

 

 

そう叫ぶと紬は一瞬のうちに浴衣に着替えていた。…流石に行動早すぎない!?

 

 

「わ、分かったから!スキマ開いてどーん!」

 

紬のあまりの勢いに押されてしまった紫は3人を飲み込むほどのスキマを作ると…そのまま紅魔館へと直接移動したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

…椿の浴衣を除いて。

 

 

「ちょっとッ!?こんなのってあんまりでしょーッ!?」

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

『霞ちゃん?本当に行っちゃうの? 』

 

 

霞はその時ちょうど、紅魔館で朝を迎えた所だった。

 

 

「ん…夢か…。もう朝かな…?この部屋は朝日が入らないから分かりづらいね…ん?」

 

朝起きると左にいた咲夜はもう居なくなっており右手の先をフランが握りしめ、指を噛んでいる……偶に甘噛みしたり舐められている気もするけれど…何とも咎めにくいほどに幸せそうな顔をしていた。

 

 

「あむ…かしゅみ〜♪はも…」

 

 

少しくすぐったいけれど…まぁ、好きにさせておくか。そう思った霞は暫くボーッとしていると、胸の上で寝ていたレミリアの目が開いた。

 

 

 

「んぅ…?もうこんな時間…?って霞?」

「あぁ。おはようレミリア…とりあえずその今にも零れそうな涎を拭いてくれると私的にはありがたいかな…?」

 

 

それを聞いたレミリアは顔を真っ赤にして、ぐしぐしと袖で口を拭った。

 

 

 

「い、今のは見なかったことにしておいて頂戴…」

 

「分かってるよ…それとフランが私の指を咥えて離してくれないんだけど…どうすればいい?」

 

「はぁっ!?ゆ、指を咥え…ッ!?は、破廉恥よ!レディが口をつけるなん…て…ッ!?ン〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!?!?!?」

 

 

 

ダダダダダダッ

 

いつものように霞を咎めようとしたレミリアは夜、自分がした行為を思い出す…と顔を真っ赤に染めながら、羞恥に耐えられず自室を飛び出していってしまった。

 

 

「…ん?どうしたのかな?レミリア…」

突然走り出していったレミリアに対して、霞が不思議に思っていると

 

「ぅうん…ふぁ…?あ、おふぁようかしゅみ…うぅん…温かぁい……」

 

フランが目を覚ました。しかし霞から離れようとはせず…むしろ近づいてきていた。

 

「こらこらフラン。私はもう起きなきゃいけないから…そろそろ離してくれると嬉しいんだけど?」

「えー…私もっと霞と寝ていたいのにー…」

 

フランが駄々をこねていると部屋へとノックが響く…そして扉が開くと咲夜が入ってきた。

 

「フランお嬢様。霞様。お食事の用意がそろそろ出来あがるのでそろそろ起床してもらえると助かるのですが…」

「うー…咲夜がそう言うなら…はーい!霞ー?また後でねー!」

 

 

フランはそう言って着替えをするためにレミリアの部屋を出て行った。

 

「それでは霞様もこちらに…どうされました?」

 

「…ああ、すまないね…さっきまで少し、懐かしい夢を見ていたせいか物思いにふけってしまってたよ…」

 

「夢…ですか?差し支えなければ内容を教えて貰っても宜しいでしょうか…?」

 

すると霞は懐かしいものを見るような目をしながら、大広間へと向かう咲夜へ語り出した。

 

 

「昔、私は1人の鬼の少女と出会ったんだよ。その少女はフランのように強力な能力を持っていたんだけど…それを使った結果、孤独になってしまった子でね…?」

 

「へぇ…そんな鬼が居たんですね…」

 

「うん。まぁそこから2人で旅をして色々な人と出会う内にその子も段々と笑顔を取り戻していったんだよ。…フランを見たから思い出したのかな?」

 

「確かに、それはそうかもしれませんね…それで、その鬼の少女とは…?」

 

「ああ。暫く私と共に色々な所を回って旅をしていたんだけど…天狗の治める森の中で、1人の少女と出会ってね…親友になる位に2人は仲良くなったんだよ。けれど、暫くしてその山を治めていた天狗の長とその鬼の少女が闘うことになってね…」

 

「ど、どうしてですか!?いきなりどうしてそんな事に…?」

 

「その山を治めていたのは天狗だからね…部外者には厳しい閉鎖的な種族な事で有名だから、闘う力の無い私がまず狙われたんだけど…その時にその子…本気で怒っちゃってね?その場にいた私を襲った天狗達を全員、倒しちゃったんだよ」

 

「そ、そうなんですか…お強いんですね。」

 

 

「そうだね…あの子は多分。私の知る限りでは1番強いんじゃないかな?…それでその時の天魔相手にも完全勝利して、その山の新しい長になってしまったんだよ。」

 

「そ、それは凄いですね…って、まさかその天狗の治めていた山って…?」

 

 

「あぁ…妖怪の山だよ。昔は鬼が居たはずなんだけど…あそこはかなり、昔とは景観が少し変わっていたねぇ…山自体が纏う妖力は変わってなかったからすぐに妖怪の山だと気づいたから、妖力を流してみたんだけど…反応が無くってね。その子がそこにいれば食いつくと思って妖力を山に流してしまったんだけど…結局、出会えなかったんだよ」

 

「ということはその鬼の少女って、まさか…」

咲夜が息を飲み込むと

 

 

 

 

 

「鬼子母神……名を紬。私の古い友人の1人だよ」

 

 

咲夜は驚きを隠せなかった。鬼子母神と言えば逸話が幾つもあるけれども…どれも化物じみた逸話ばかりだった。妖怪の山の天狗や鬼との闘いを殆ど一撃で終わらせ、明確な敵と認識した相手は全て黄泉へ送られる…そんな噂を聞いていたからだった。

 

 

現在は地底へと鬼たちを連れて行ってそこで暮らしている…と、紅魔館へ取材に来ていた鴉天狗の書いた新聞に載っていたと、思う。

 

 

「その子は妖怪の山の長になったわけだから、そのまま妖怪の山の統治をしなければならなくなってしまってね……何度も引き止められたんだけど、私はそれを断ってそこからまた旅へと出たんだよ…」

 

 

「え…?」

 

咲夜は唖然としてしまった。さっき、鬼子母神の事を話している姿は

凄く楽しそうに話していたけれど…今の霞の目の色は、後悔と自責の念が混ざった深く、暗い色をしていた。

 

 

「まぁこの話はこれくらいにして…そろそろ大広間に着くけれど、向こうが何だか騒がしくないかい?」

 

「確かに…そうですね。私、様子を見て来ますのでお先に失礼します!」

 

咲夜はそう言って霞の目の前から消える…

 

 

そして、霞は誰もいない廊下を歩きながらも夢の続きを思い出していた。

 

 

( 確かあの時の紬は初対面だったのにいきなり殴りかかってきたっけ…懐かしいな…)

 

 

暫くして大広間の扉へ辿り着いた霞が、何やら騒がしい部屋の扉を開いた瞬間。

 

 

 

目の前にあったのは、拳を構えた少女の姿だった。

 

 

ドガシャーンッ!!!!!!!!

 

 

「霞ぃぃぃぃぃいッ!!!」

「霞様ッ!?」

「ちょっと紬!?いきなり何してるのよ!?」

「………あー…やっぱりこうなっちゃったか…」

 

 

 

遠くからレミリアや咲夜の悲鳴と紫や椿…?の声が聞こえた気がしたが…

 

 

今は、気にすることは出来ない。

 

 

半端じゃない威力の拳をマトモに受けて、ドアをぶち抜いて廊下へと転がり込んだ霞の目の前に。

黒く艶やかな長い髪を片方に結い上げ、額から1本の角を生やしている…見覚えのある、水色の浴衣を着た少女が霞の目の前に立っていた。

 

霞と目が合った瞬間。その少女の口が歪んだ。

 

 

「うふふふふふふふふふ……霞ちゃーん?やっと会えたねー…この瞬間をとぉっても、待ちわびてたよぉー…?何にも言わずに私達の元から去っていって、私や椿ちゃんを悲しませた罪はとーっても重いんだよぉ?」

 

 

…ああ、とても懐かしい声だ。間延びした声と疑問形の多い独特な喋り口調…それに姿もあの時から全く変わっていない…

 

 

 

「あぁ…久しぶりだね紬…挨拶にしては少し、過激じゃないか…?」

 

「ふふふ…何を言ってるのかな?もしかして霞ちゃんってば歳の取りすぎで忘れちゃったのかな?私たちの出会いは、いつだってこれだったよねぇー…?

…それじゃあ、そろそろお仕置き。始めるねぇ?」

 

 

 

そう言って紬は一息の間に霞の目の前へと移動する……そして自分の胸元を緩めると、霞の頭を掴んで自分の胸へと押し付けた。細く華奢に見える腕からは想像もできないほどの見強力な力を持っている紬はあっという間に霞の頭を固定して動かせないようにしてしまった。

 

 

「むぐ…つ、紬…私が悪かったよ…謝るから離してくれないかな…?呼吸がしづらい……甘ったるい……」

 

「うふふふ…絶対離さないよぉー…?この程度じゃあ私たちが受けた鉛のような悲しみも、目の前が真っ暗になる位の失意も、荒れ狂うような激情も……全然伝わってないようだし?

それに次は椿ちゃんだって、これするんだからねー?」

 

「椿、じゃあ無理なんじゃないかな…グフッ…」

 

 

 

そう呟くと同時に酸欠によって霞の意識は闇へと沈んでゆく…

その呟きを聞き取ったのか遠くで椿がなにか叫んだ気がするけれど

 

ダメだな…落ちてしまう…

 

 

 

本当、懐かしい匂いだなぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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