また数日投稿空くかもしれない…あばばはば
レミリアは驚いていた。
…何に驚いているかというと、先に大広間へと辿り着いていたレミリアの目の前にいる妖怪が原因だろう…
恥ずかしさのあまり、自室を飛び出して大広間まで走ったレミリアは胸の鼓動を抑えていた。
食器が並ぶテーブルへと辿り着くと自分の椅子に座って、一旦心を落ち着けるために深呼吸を始める…
「すぅ…はぁ……すぅ……はぁ……ふぅ…少し赤みも鼓動も落ち着いたわね…
確か、パチェから借りた本の吸血鬼は…お礼をする時にも口付けをしていたし…それに、外の世界では挨拶としてする人もいた筈…つまり、あれは深い意味なんてものは無い、純粋な感謝の印ということ…!!」
昔、パチュリーから借りたの中には1人ぼっちの吸血鬼の女の子が主人公の恋愛漫画が混ざっていた。その内容をレミリアは朧気ながらも覚えていて、…特に、ラストシーンの部分。
自分を救ってくれた男へ抱きついた主人公は幸せな涙を流しながら、口付けを交わし…2人の物語は終わっていく。
…そんな内容だった。
そんな事を思いながら何度も呼吸を整えていると
「…ッ!?何!?」
突然、肌に強大な妖力を感じた。尋常じゃない程の妖力に、レミリアの肌がざわつく…
膨大な妖力の震源地は自身のすぐ近くに感じた。その妖力の持ち主は、大広間の中央…
…つまり、レミリアの、目の前へと現れたのだった。
( 何よ、この妖力…!?一体何が…ッ!?)
レミリアは脳が即座に危険信号を出したことで、警戒心をいきなりはね上げた。
一瞬のうちに、手の平へ集めた妖力を固めて…
紅い槍を創り出した。真紅に濡れた切っ先鋭い槍…通称。『グングニル 』を構える。
すると突然。目の前の空間に赤黒い裂け目が現れ、中から3人の妖怪がテーブルへと着地した。
大きな音を立てて皿が何枚か割れる…そしてレミリアが、侵入者の姿を確認しようとして近づいた瞬間……その中の1人に、いきなり両肩をがっしりと掴まれてしまった。
一瞬でレミリアへと詰め寄ってきた人物。
「 あのぉー…いきなりで悪いんだけどねぇー…?私、霞ちゃんがここに居るって紫ちゃんから聞いたんだけど、霞ちゃんは、何処にいるのかなー?
隠したって無駄だから、早く会わせて欲しいなぁ?」
「ちょ、ちょっと離しなさいって…力強ッ!?い、いきなり現れた怪しい奴になんて言わないわよ!というかアンタ一体誰なのよッ!?」
( 嘘ッ!?私の力でも外せない…ッ!?一体何者なのよコイツはッ!?)
レミリアはいきなり現れた妖怪…額に一本の角があるので、恐らく鬼の類だろう…
掴まれた手を引き剥がそうとするものの…その圧倒的ともいえる腕力に、レミリアはまるで歯が立たなかった。
「あ、申し遅れてゴメンなさい?私の名前は紬っていうんだけど、ただの温泉妖怪好きな鬼の女の子だよ?
…それで、貴方は一体誰なのかなぁー…?」
そう言って肩に込めた力を緩めてレミリアへと聞いてきた。
「…さっきの自己紹介について、大いに突っ込みたい所があるのだけれど…まぁいいわ。私はレミリア・スカーレット!誇り高き吸血鬼であり、この紅魔館の主よ!」
「へー…レミリアさんって言うんですかー…素敵な名前のコウモリさんだねー?それで、霞ちゃんは何処に居るのかなぁ?」
レミリアがそう名乗ると、紬は吸血鬼のプライドを平気で踏み抜いていった。心にヒビが入った音が聞こえたレミリアは、自分をコウモリ呼ばわりされた事に激昂した。
「…ッアンタ!!この私に向かってコウモリだなんて…失礼にも程があるでしょうッ!!今すぐ私を愚弄した事を訂正しなさいッ!!」
「あ、それはゴメンなさい?けど、今は私…もう色々と耐えられなくってるんだぁー…
…なんだか貴方の全身から漂ってくる、霞ちゃんの香りを嗅いでいると……ね?」
急に紬の妖力が突然肥大化し始めた時、紬の元へ2人の少女が駆け寄って来た。
「ちょっと紬!?何やってるのよ!貴方、この紅魔館を消し飛ばすつもりなのッ!?」
「紬、そろそろストップよ!そんな事すると霞に嫌われるわよ!?あとお願いします私に服出して下さい!?」
紬の両肩を掴んでいたのは…八雲紫と、何故か全裸の少女だった。
「はっ!それはいけないよね!…うーん…ここに居るのは分かってるし、仕方ないねー…不本意だけどここは大人しく待つとしましょうかー…
…それで、なんで椿ちゃんは何で裸になってるの?あ、もしかして遂に私と同じ趣を覚えてくれたって事かな!?」
「だからそんなわけ無いでしょう!?!?」
2人の叫び…というか主に後者の意見を聞いて、紬は落ち着きを取り戻した。
そして裸の天魔を見て首を傾げつつ、何か致命的な誤解したまま話し始めた。
その光景を呆然と見ていたレミリアは
( な、なんなのよコイツら…本当訳わかんない…)
紬と名乗る鬼の少女を止めたのはこの幻想郷の中でもトップクラスの実力を持つ八雲紫と天狗の長である天魔の2人だった。それが二人がかりでようやく治まるだなんて…まさか、この鬼って…?
レミリアが呆然としている所へ紫が近づいて来る…
「私たちは別件で霞のために動いてたんだけど…紬…鬼子母神が思ってたより色々と拗らせてて、貴方にも迷惑かけちゃったわね…本当にゴメンなさい…」
「…え、えぇ…別に、構わないわ…いきなり現れたのは驚いたし、貶されたりしたのはまだ、腑に落ちないけど…本当に、あれが鬼子母神なの…?」
「ええ。霞と同じく、太古の昔から生きている最古の鬼よ。…あの子…規格外に強いでしょう?」
「そうよ!吸血鬼の腕力がびくともしないって、どう考えてもおかしいわよ…ッ!?
それに、その隣にいるのは確か天魔だったわよね?…どうして裸なのよ?まさかとは思うけど、なんかアレな性癖なの?」
「それについては……その、不幸な事故よ。ほら、もう着替えてるみたいだから、その事はあまり追求しないであげて頂戴…?」
レミリアの目の前で行われていたのは、身体を自分の翼で隠している半泣きの天魔に…紬が自分の胸の谷間から新しい浴衣を取り出して、天魔へと差し出している姿だった。
…ん?谷間から?
「ちょっ!?今谷間から浴衣出したわよ!?あれどういうことよ!?」
「あー…やっぱり初見でアレを見ると、皆驚くわよねー…私も確かそんな感じだったわ。…アレ、鬼子母神の持ってる能力なんだけど…
『ありとあらゆるものを取り込む程度の能力 』
っていうのらしいのよ。それでこれがまた、ぶっちゃけ強すぎるのよねぇ…」
「取り込む…?つまり色々なものを体内に取り込んでる…って事?
けど、それって言うほど強くないんじゃないの?体内ならキャパシティがあるでしょうし…」
物を取り込む位なら確かに凄いことだが、それではあの規格外の力には結びつかない…
「まぁそう思うわよね?けど、あの子は取り込む量が桁違いに多いのよ。貴重品のような小物サイズのものから家具の用な大きなものまで……一体どこに入れてるのかしら…?
…それに、本人曰く大気の力や大地の力。自然の力なんかの「目には見えない」力を認識して、自分の身体に取り込んでるのよ…」
「あぁ…確かにそれならあの力にも…
…ッ!?って、ちょっと待ちなさい!?」
その時、レミリアは気づいてしまった。目に見えない力を取り込む…なら目を凝らせば見え、感じ取る事が可能な霊力、妖力、神力の類はどうなる…?
それらの力を併せ持った何かの存在を…レミリアは、昨日。知っていた筈だ。
「…なら、あの鬼子母神は…霞の湯に含まれている、色々な存在の霊力や妖力を含んだ、霞の湧かせた温泉を…
霞の妖怪を癒す効能まで、自分の身体に取り込んでいるっていうの…?」
それを聞いた紫は驚いた顔をしたものの、すぐに、いつもの様な胡散臭い顔に戻った。
「…正解よ。あの子は多分、霞と出会ったことによってただでさえ強い能力の幅を、桁違いにはね上げた…この世界で最強の妖怪じゃないかしら?
私、あれ以上の存在を知らないし…」
「…道理で強いはずだわ。お手上げね…もう、勝てる気がしないわ…」
「性格が今は温厚になっているらしいからそれだけが救いなのよね…
…霞との仲もそこそこ深いから手強いし…ん?そう言えば貴方、どうして霞の事をそこまで知って………まさかッ!?」
それを聞いたレミリアは霞のことを思い出してしまい、また顔に熱が戻ってしまった。
「…!?べ、べべ別に私は何も…ッ…霞には、感謝してるだけなんだからッ!」
「え?何でそんなに慌てて…って、貴方…まさか本当に霞に気があるんじゃ無いでしょうね!?
嘘!?出会ったのは昨日が初めてでしょ!?そんなの早すぎるわよ!高貴なヴァンパイアのお嬢様じ即落ちってどういうことよ!
…それにどうして貴方から、霞の温泉の匂いがするの!?実はさっきからずっと匂ってきてたのよ!いやーっ!ダメよ!?霞は私のなんだからーッ!?」
「だ、誰も好きとか言ってないじゃない!!か、勘違いするのはやめてくれないかしら!?しかも落ちてるなんて…って、ちょっ!?は、離しなさいよーッ!?」
揉みくちゃの掴みあいに発展した、レミリアと紫を遠くから見ていた紬と椿…
「あら?霞ちゃんったらやっぱりモテモテさんになってる…椿ちゃん?私達も負けてられないねー…まぁ、負ける気なんてものはサラサラ無いんけどねー?」
「そ、そうよね。なんて言ったって私達は霞と過ごした時間も長いんだし、かなり有利な立ち位置のはずだしね!」
「あとは椿ちゃんのお胸がもう少し大きかったら…もう、言うことなしだったんだけどねー?」
そう言って紬は慎ましい椿の胸に手を添えると…椿の地雷をわざと踏み抜いてゆく。
椿の額に、青筋が走った。
「うるさぁぁぁぁぁあいッ!?今それ絶対に関係ないでしょぉうッ!?このおっぱいめッ!こんにゃろこんにゃろッ!!うぅっ!何でこんなに差があるのよぅ!」
そう言って椿は紬の胸をポカポカと叩くものの…逆に大きくぽよんぽよんと揺れて暴れ回る胸を目撃してしまい、心が折れてしまった。
へたりこむ椿を紬は優しく抱きしめると
「大丈夫だよー…椿ちゃんの胸も霞ちゃんはきっと好きだと思うから…だから、勇気を出してアタックしてみよう?」
「つ、紬ぃぃぃいぃぃい!!わ、私、頑張るぅぅぅぁぁぁあッ!!!」
「うん!それじゃあまた2人で霞ちゃんの布団に潜り込もう?そうすれば霞ちゃんもきっと喜ぶと思うよ?あ、勿論服なんて身につけないけどね!!」
「うん!わかったー………って危なぁいッ!?貴方、一体何を言わせる気よ!?」
「いやー…折角だし、これから会う霞ちゃんに対しての心構えを
1段階上げておこうかなー?なんて思っちゃってーーーー…勿論、上げるよねー?」
そう言った紬の鈍色の瞳には、有無を言わさぬ眼力が宿っている…
あ、これもうやるしか道が残ってない。
「あ、はい…やります…」
「それじゃあその時は頑張ろうねー?」
天魔の顔から、表情が消えた。
そんな2人が会話をしていると…大きな音を立てて、大広間の扉が開いた。
どうやら咲夜が慌てて入ってきたらしい…咲夜の登場によって、掴み合いしていた2人はお互いに手を離した。
紬と椿は咲夜へと向き直るとぺこりと会釈をする…
「失礼ですが…どちら様でしょう?私、この紅魔館のメイド長をしている十六夜咲夜と申しますが…貴方は?」
咲夜は目の前にいた自分よりも小柄な身体なのに、自分よりはちきれんばかりの膨らみを持っている…霞と同じ色をした浴衣を着ている、色々と規格外な少女に話しかけた。
鬼の少女は誰かにそっくりな微笑みを咲夜に向けると
「あ、私は紬っていいます。そして、ただの温泉妖怪好きな鬼の女の子ですよー?」
「…ッ!?紬様…ですか?」
咲夜の顔に驚きの色が混ざった。…紬?確かそれは先程、霞様に聞いたはずの名前じゃー…
と、そんな事を考えていた時。急に、紬と名乗った少女の目が見開かれた。
その目は目の前にいる咲夜など…見ていない。今、開かれかけている扉の奥…
そこから現れる1人の妖怪の姿を確認した瞬間。
大きく腕を振りかぶって、紬の身体が飛び出した。
そしてその妖怪……霞めがけて一直線。
固く拳を握りしめて、そのまま霞をぶん殴った。
吹き飛んでいく霞…
「霞ぃぃぃいぃぃい!?!?」
「霞様!?」
レミリアと咲夜は突然豹変した紬の暴挙に、一瞬唖然としてしまった後。冷静になって叫び声を上げながら扉 廊下へと走ってゆく…
「ちょっと!?何やってるのよ!?」
「………あー、やっぱこうなっちゃったか…」
同じように紫も扉へと走っていったが…その中で1人、紬と長い付き合いをしている椿は…
薄々こうなると思っていた為、冷静だった。
3人が走っていった扉の先へと歩きながらも、椿は考えていた。
( …これでまず、突発的な怒りの部分は解消される…まぁ、どうせこの後の行為はあの暴力おっぱいによる締め落としと、温泉の要求である程度許されるでしょ……まぁ、酸欠でぶっ倒れるのが確定ってのも難儀じゃとは思うけどね…)
そんな事を考えながら吹っ飛ばされた霞の様子を見にいくと、予想通りに霞が絞め落とされる寸前だった。
( うわぁ…アレはキツそうね。あれ、私が本気を出しても抜けられないんじゃ…?)
そんな事を考えていると
「このあと、椿ちゃんもこれをするから。きちんと受けてあげてねー?」
「椿だと…無理なんじゃない、か…グフッ」
………ん?
椿は言われたことを理解する…そして、
「霞おま何言ってるのよこらぁぁあッ!?!?」
椿は、怒りの絶叫を上げた。
霞が殴り飛ばされる所から、紬の豊満な胸で窒息させられるまでの一連の流れを見ていたレミリアと咲夜は…言葉を失ってしまっていた。
ありえないスピードで動いた身体能力と、あの霞すら夢の世界へと送ってしまった…
見た目以上の暴力性を秘めた巨大な胸に。
最初に動いたのはレミリアだった。床を悔しげに何度も叩く天魔を無視して紬の元へと近づいて行く。
紬は気絶した霞の頭を自分の膝へと置いて、頭を撫でながらニコニコ笑っていた。
「ねぇ、貴方は昔からこんな…その、殴ったり、胸を押し付けたりしていたの…?」
「 はい!そうだけどー?まぁ…今回は私が悲しかった分上乗せしてましたから、強めに殴った所はありますし?逃がさないように強めに胸を押し付けた気もするけどー…
こんなのは昔からやってる挨拶みたいなもの1つなのでー…それにコレって、合法的に霞ちゃんに膝枕ができるから、一石二鳥でお得なんだよ?」
( …私の知ってる挨拶じゃないッ!?)
口付けなんて目じゃない常識外れの挨拶に、心底驚き顔のレミリア。そして、それを聞いた紫は
「紬ばっかりずるいわ!私だって霞を膝枕したい!!」
…駄々をこねていた。
「いえいえー…これは譲れないよ?…けど、奪い取れるものならかかってきても構わないよー?」
「っ!もう!貴方に勝てるわけ無いじゃないの!それならそれでやりようはあるわよ!こうなったら眺めて楽しむしかないわね…」
紫が駄々をこねていると、長い廊下の先から……一人の少女が歩いてきた
「…あれ?どうしてこんなに沢山の人がいるの?お姉様ー?咲夜ー?お客様が来たのー?」
フランが歩いてきたことによって、すっかり食事の準備を忘れていた咲夜。
「お嬢様…今、誠に気になる状況ではありますが、先にお食事を済ませてしまいましょう。どうやら私ごときに理解出来る話では無さそうなので…私は用意をしてまいります。…霞様が目覚めましたら皆様をお連れしてきて貰ってもよろしいでしょうか?」
「えぇ…分かったわ。食事の準備、頼んだわよ」
「了解しました…では。」
そう言って咲夜が準備を始めたのを見て、レミリアはフランへ話しかける
「フラン?先に行って咲夜の準備を手伝って頂戴?」
「えー?…うん、分かった!よくわかんないけどここに居る人達の分も用意すればいいんだよね?あ、ゆっくり寛いでいってください!」
そう言ってフランは大広間へと走ってゆく…レミリアがしっかり者になったフランに感激していた時、紫と天魔は顔を見合わせて咲夜の後について行った。
「なら、私達も行きましょうか……今は、この2人の時間にしてあげましょう?」
「そうね…霞が起きた暁にはちょっとお話しないといけないんだけど、いまは仕方ないわ。
…紬!霞が起きたらちゃんとこっちに来るのよ!!」
2人が大広間へと歩いていくのを見て、何だか居心地の悪さを感じ取ったレミリアも空気を読んで大広間へと向かう事にした。
( …なんかこの空間って居づらいわね…ここは引いといた方が良さそうだわ…)
歩き出したレミリアへ、後ろから紬が声をかけた。
「あ、レミリアさん?気を使ってくれてありがとねー?それとさっき、レミリアさんのことをコウモリなんて言っちゃって…ゴメンなさい?
その羽、とっても可愛いよー?」
「い、いいわよ…これからは気をつけて頂戴?」
「分かったー!」
そう答えると、レミリアは少し早足で皆の所へと戻っていく…あそこまで素直に謝られると…何だか少し、くすぐったい。
それに、今の紬の口調は出会った時と同じ筈なのに…今は柔らかい雰囲気を纏っていた。
★
二人きりになった紬は霞の顔を覗き込むと…額に手を添えながら。今まで溜め込んでいた想いを零し始める…
「やっと会えたねー…私、とても嬉しいんだよ?霞ちゃんのいない時間はとーっても長く感じてたし…
私にも立場があるのは分かってはいたけど、やっぱり置いてかれちゃったのは悲しかったよ?それに、会えないのも辛かったしー…
…日を増す事に、心が徐々に冷えていく感覚がとぉっても嫌で、結局耐えられなかった。」
「…ねぇ、私。霞ちゃんと椿ちゃんが一緒にいてくれなきゃ…ダメになっちゃうんだよ…?
もう、勝手にどこかへ消えたり旅に行ったりなんかするの…絶対にダメなんだからね?」
紬はそう言って前に屈み込むと、さっきまでとは違って優しく。ふんわりと霞を抱きしめる…
長い間、紬の胸の中で溜まっていた想いを伝えるために…
悲しみ・寂しさ・怒り…そんな負の感情と共に、また出逢えた喜び。また触れ合える幸せなどの…キラキラと、輝くような感情を乗せて。
…そして、霞の目が開いた。
ゆっくりと。目の前にあった紬の胸の中へ…ポツリ、ポツリ、と。言葉を零した。
「…紬。本当にすまなかったね…私はあの時、正直浮かれていたんだと思うよ。森や街で色々な人と出会って話を聞いたり、怪我や病を癒したり……それが、あの時の私の…たった一つの存在理由なんだと本気で信じてたんだよ…」
霞のは過去の自分の考えの甘さに後悔…そして、悔しさを滲ませた言葉を漏らししていた。
「だからこそ。あの時、重要な立ち位置に居た紬や椿を残して、1人で旅に出てしまった…戦えない私が2人の近くでいると厄介事に巻き込んでしまうと、勝手に思ってね…それでそのまま黙って山を去ってしまったんだ…」
紬はそれを、黙って聞き続ける。
「…その後も、色々な人や妖怪との出会いがあってね…?沢山、癒してきたんだよ。けれど、ふとした瞬間に2人を思い出してしまってね…ずっと心にしこりを抱えていたんだ。…けれど、それを抑え込んで旅を続けていたんだけど…遂に限界が来てしまってね」
「色々な人を癒すために歩き続けた結果…心が、疲れてしまったよ。妖怪も減って、人々からも必要とされなくなって…次第に私は無気力になっていた…知り合いの居ない世界で独り、山奥で過ごすようになったんだけど、もう…そこには誰も来なくなってね。結局、最後の最後は…独りになってしまったよ………紬。あの時は…本当に、すまなかった…ッ…」
霞は長い間心の中に秘めていた深い後悔と謝罪の気持ちを一筋の涙にして、吐き出したのだった。
霞の謝罪……もとい、慟哭を聞いた紬は。膝から起き上がろうとした霞をむぎゅっと膝へと押さえ込むと…霞へ、微笑みを向けた。
その微笑みは、時が経っても変わらない。
「…全部、許すよ?霞ちゃんったら珍しく泣いちゃってるし…これから皆と食事をするんだから、おめめが腫れちゃったら皆が心配しちゃうよぉ?
…あ、そうだ私が拭いてあげるね!!」
そう言って、霞を抱き起こすと…自分の着ている浴衣の袖で、霞の涙をぐしぐしと拭っていった。
そして紬は立ち上がって、また霞を抱きしめる。紬の胸元から霞の鼻腔へ、果実のような甘い香りが広がっていった。
先程とは全く違う安心感と心地良さは先程とは違い。…剥き出しになり、本当はずっとひび割れていた霞の心をじんわりと癒してゆく…
紬は落ち着いた霞の様子を見ると、優しい声音で囁き始めた。
「…うん。詳しく話すのは、今じゃなくてもいいよ。霞ちゃんが私達以外の沢山の人や妖怪を癒していたの、風の噂で知ってたしぃー…」
「…その結果、自分が孤独を感じることになっちゃった事も…今、分かったし。
…もう、皆を癒せるのに…自分の心を癒せないのが弱点なんだからぁー…霞ちゃんは、やっぱりお馬鹿さんだよ。
…うふふ。これからはもう、独りぼっちになんてさせてあげないよぉー…?この世界では、みんなが霞ちゃんのことを待ってるんだからね?
…それじゃあ、大広間に行こう?」
その言葉は、霞の心に響くには充分だった。
「…ああ。そうだね…ありがとう、紬…」
2人はそのまま大広間へと歩いてゆく…
紬は、固く握った霞の手から感じる温かさに…
柔らかな、笑顔の花を咲かせていた。
リア友に「続き待ってるぜ!」なんて言われたら
書く気力って凄い湧いてくるもんですね…
どうやら自分は単純な人間らしいです。ハイ。