疲労が抜けない眠りたい。
ペースが落ちちゃう…ガクッ
咲夜とフランが、紬たちの登場によって無惨にも割れてしまった食器を片付けていた時。
大広間の扉が開いて、2人が入ってきた。
紬は誰もが『あ、この人滅茶苦茶機嫌いいな…』なんて思ってしまう程の満面の笑みを浮かべていて、逆に隣の霞は…長年抱えていた憑き物が取れたかのような、落ち着いた顔つきをしていた。
それを見て紫は歯をギリィと噛み締める…紬は霞の手を握ったまま腕まで組んでいるため、なんというか…こう、とてもうらやまけしからん状態だった。
霞を連れてきた紬は部屋に入ってすぐ、テーブルの上で割れていた食器に目をつけた。ここへ来た時、自分が割ってしまっていたことを思い出した紬は…咲夜へと近寄っていった。
「あ、それって私が割っちゃったやつだよね?あー…ゴメンなさい。さっきまで、ずーっと霞ちゃん成分が枯渇しちゃってて?注意力が著しく衰えてたんだよねー…きちんと弁償するから、今はこれを使ってくれないかなー?」
そういった紬はいきなり浴衣を緩めて、その豊満な谷間へ手を突っ込むと…谷間の中から、代わりとなる食器が次々に取り出されていった。
全員がその異常な光景に開いた口が塞がらなかった。しかし、そんな事はお構い無しとでも言いたげに、テーブルへと並べられた色とりどりの食器達は、天井の照明の光に照らされてキラキラと輝いていた。
そして誰よりも早く状況を何とか飲み込んだ咲夜が食事を配膳することによってらようやくレミリア達は朝の食事を始めることが出来たのだった。
しかし、そんな中で事件…というよりも
問題はまた起こった。
「はーい口を開けてね霞ちゃーん?それだと食べさせられないじゃ無いかー?ほらあーんだよあーん。口を開けるんだよあくしろよ?」
「あ、ずるーい!次は私の食べてねー?美味しいよー?」
「分かったから…むぐ。紬とフラン…もう残りは自分で食べられるから、できれば離れて欲しいんだけど…?」
「そうよずるいわ!私だってやりたいのに…隣代わりなさいよーッ!!このままだと、幻想郷に霞の隣独占禁止法とか作っちゃうわよーッ!?いいの?それでもいいのッ!?」
「そうよ!私だって食べさせたいのに!あと紬はわざと霞の顔に胸を当てるんじゃないわよ!それは私への当てつけなのかそうなのかコノヤロウッ!!!」
やたらと霞へ張り付いている紬が霞の口へと料理を運んでいるのを見て、フランもそれを真似して料理を口へと運んでいる…それを手前の席で紫と天魔がそれに対して嫉妬しているといった混沌と化した食事風景。
それを傍から見ていたレミリアは、頭を悩ませていた
( あーもう…それもこれも鬼子母神があんな事をしたから…ッ…!どうしてあんなことをしたのよ…もうッ!)
意識を取り戻したレミリアは、問題の行動を起こした紬の事を恨んでいた。
★
食事中、紬が霞へと話しかけた。
何か、意味あり気な視線を向けながら…
「皆と食べる食事は美味しいよねー?霞ちゃん?何だか昔を思い出すよねー…確かあの頃は、私が霞ちゃんにご飯を食べさせてあげてー…代わりに、私が霞ちゃんからカスミンを摂取してたよねー?
あ、そう言えば私。まださっきの触れ合いだけじゃカスミンが足らないんだけど…お代わり、くれるよねー?はい、あーんだよあーん!口を開けてねー?」
「「「カスミンッ!?」」」
「…分かったから、押し付けないでくれ……あむ」
紬はそう言って霞の食べていたパンをちぎると、口へと近づけていった。霞はもうそれに慣れているのか、特に気にした様子も無く口へと含んでいった。
…すると、紬は突然胸元をまた緩めて、そこから露出した大きな胸を霞へと引っつけながら目を閉じた。
一同が仰天する中、胸に包まれた霞の腕から白いオーラのようなものが現れた始め、紬はそれを谷間からを取り込み始める…
「あぁ…きてるきてる入ってきてる…あっ、ずっとご無沙汰だった分、いつもよりも多く吸収しちゃってるねー…なんだか満ちてる。今、私の心とカラダがカスミンを補給することによって満ち足りてるぅ…」
恍惚そうな顔を浮かべている紬の胸は何故か、先程より大きくなっているように見えた。それを見ていた少女達は、紬の余りに突飛な行動に赤面しながらも指摘する…
「ちょっと!?アンタ食事中に一体なにやってんのよ!?」
「鬼子母神様ッ!?一体何をされてッ!?」
「カスミン…不足…?…はっ!?ということは今、紬はカスミンを吸収して胸部へと取り込んでるってわけ…!?あーッずるいわよ紬ッ!それなら私だってカスミンAとかカスミンCとか全然足りてないのにぃ!!!」
「あーッ!紬がカスミンを補給したら幸福感によってまた胸が大きくなってしまうじゃない!!やめなさい紬!それ以上大きくなったら私の心が折れるッ!折れちゃうッ!?おーい霞ッ!私だってカスミン欲しい!紬!今すぐそこを変わりなさーいッ!」
「うわー!見てあれすごいよお姉様?あの鬼子母神って子のおっぱい
…さっきよりも大きくなってない?
ねぇねぇお姉様!!あれって私もできるのかな?ねぇ霞ー?私にもカスミン頂戴ー!!」
「ちょっとフラン!?貴方何をする気…って胸を出そうとするんじゃありませんッ!ちょッ!あんなの普通に出来るわけ無いでしょ!?というかカスミンって何!?どうして皆そこに突っ込まないのよッ!?」
「えーッ?私には出来ないのー?私もあれくらい大きくなりたいのにぃー…」
そんなドタバタが周りで起こる中、問題の霞は咀嚼し終わったパンを
ゆっくりと飲み込み。口を開く…
「…紬?そろそろいいんじゃないのか?これ以上はフランの教育に悪いから…早く胸を仕舞いなさい。流石にもう、充分だろう?」
「あ、ゴメンなさい?、思いのほかちょっと吸いすぎちゃったねー…でも、久しぶりだから吸いすぎてしまっても特に問題ないよね?
あ、それならフランさんも一緒に、霞ちゃんにパンを食べさせてあげてみない?」
「それ楽しそう!私もやりたーい!」
「フラァァァァァァァァンッ!?!?!?」
…と、まあ。先程までこのような感じだった。あまりの疲労にレミリアが崩れ落ちていた時。霞への食事を終えた紬が一枚の紙を渡してきた。
「ん?お姉様どうしたのー?」
「な、何よこれ…って地図?…何処よここ…って妖怪の山?」
緩んでいた浴衣の中に、巨大な果実を仕舞いこみながら。妖怪の山の地図を取り出してテーブルへと置いた。そしてそれを指さしながらレミリア達へ目を向けると
「実は私と天魔ちゃんで、今日から霞ちゃんの住むところを創ろうと思ってるんだー!だからそれで、何か希望があれば参考にするんだけど…で、その希望をこれに書き込んでくれるとありがたいんだよねー?」
「え?それって霞の家を作るってこと!?それいいねーっ!私も霞のおうち、行きたーい!」
「ちょっとフラン何言って…というかいきなりどういう事?どうしていきなり霞の家を作るなんて話になったのよ…?」
「それはねー?」
「紬、それについては私が説明するわ…」
紬が説明する所を遮って天魔が声を上げる…いつの間にか、2人からさっきまでのおちゃらけた雰囲気が消え去っていた事に驚きつつ、皆が天魔の方を向くと…天魔は理由を話し始めた。
「実は近々、妖怪の山の統治をもう一度紬に任せようと思ってるの。如何せん、今の天狗たちは以前よりも日々を無為に過ごし。更に非行に走る輩も出てくる始末でね…
ここらで1つ、この天狗社会をビシッと締めようと思ってるのよ。その辺、鬼子母神が居れば楽なのよねー」
「そして、それと同時に妖怪の山で温泉宿を開店させようと思ってるんだー…そうすれば良識のある妖怪たちは憩いの場を得ることができるし?そこで日々のストレスなんかも解放できるようになるんだよ!!とぉってもお得に感じるよねー…
そして、なんと言っても霞ちゃんが遂にそこに腰を据えることによって!!!私がいつでも霞ちゃんに会いにいけちゃうんだよ!!まさに夢の同棲生活の始まりだね!!」
それを聞いた紫とレミリアの顔が引き攣った。そして同時にほぼ叫び声に近い声を上げる
「はい紬ストップッ!それはずるいわよッ!?それだったら私だって霞の家に住みたいんだけどーッ!?」
「貴方、前半いいこと言ってるのに…後半でもう、色々と台無しじゃないのよッ!?その爛れきった煩悩をどうにかしなさいッ!!」
「まぁ紫たちが言ってることも分かってるわ。けれど、何と言ってもこの計画には霞の能力が必要なの。だから霞が必然的に住むことになる…
そして、逆に考えれば…貴方たちも温泉宿なんだから1つ屋根の下。お客様として、霞の部屋にお泊まりだって…可能になるってことよッ!?」
「「「な、何だってェッ!?!?!?」」」
紫とレミリアが思わず声を上げてしまう中。フランだけが何も言わずに話を聞いていた霞へ寄り添うと
「ねぇねぇ私、今度は霞の家にお泊まりしてみたいな!!それって絶対に楽しいと思うよ?ダメかなぁ…?」
健気に笑顔でそう言ってくれるフランを愛らしく思い、頭を撫でる霞は遂に腹を括ったのか
「まぁね…さっき大広間へ来る前に紬に、
『 私達はね?霞ちゃんが新しい人や妖怪に出会うのは全然構わないんだよ。というか、むしろどんどん出会って欲しいくらい?
…でも、それならきちんと自分の帰ってくる場所を作っておいて欲しいの。ちゃーんと自分の家を持っていれさえいれば、そこに霞ちゃんへ会いたい人が集まれるからねぇー…
あ、寧ろ温泉宿なんて作っちゃう?私、お金と材料なら持ち合わせがあるから…椿ちゃんに頼んで作っちゃおうか?』
…なんて言われてたんだけど、割と皆には好評みたいだね…ならここは、お言葉に甘えさせて貰おうかな…?」
「よぉしその言葉を待ってたよ!それと紫さんとレミリアさんとフランさん…それに咲夜さんにお願いなんだけど…皆さんには、霞ちゃんの宿作りを手伝って欲しいんだよね?」
そうお願いしてきた紬は、初対面の時のように威圧することもなく。ただ、純粋に力を借りたいと願う真摯な目をレミリア達へと向けている…それを見て、先程までの毒気を抜かれてしまったレミリアは口を開いた。
「…ふん。いいわよ、家づくり…手伝って上げる。フランと咲夜もいいでしょう?」
「はい、私はお嬢様のご命令ならば…」
「え?私お外に出てもいいの!?やったぁ!張り切って作るのお手伝いするよー!」
そのための助力を買って出たのだった。
「あ、本当に?ありがとねー!!吸血鬼の力とそこの『有能』って言葉を実体化させたようなメイドさんの力があれば百人力だね!これで霞ちゃんの家作りが捗るよー!」
「あの、鬼子母神様…それと、力仕事ならここの門番も連れていった方がいいですよ?」
「あ、それはありがたいねー…紫さんは?」
そういって咲夜はこの場にいない美鈴を職務命令で連れ出す事にした。そして、先程から色々と考えていた紫は
「…色々と考えたけど。家づくりには賛成するわ…手伝いもする。…けど、設計は私に任せて頂戴?私、外の世界の旅館とか知ってるから、そこだけは譲れないのよ」
「あ、それは私としてもありがたいねー!それじゃあ建設するのは私と椿ちゃんと天狗たちでー…設計するのは紫さんと河童さんにも手伝って貰うことにする?」
「そうね…自分たちが使える場所なんだから。一応頭数として入れていた方が良いでしょうし…あ、鬼はどうするの?」
「鬼は勇儀さんを連れてくれば事足りると思うよ?」
「まぁ…まだ地上が嫌いな鬼も多いはずだしね…それに条約の事もあるし。でも河童が居るなら話は早いわ!ちょっと今から行ってきて話を纏めてくるわ!」
「あ、私も動ける天狗達に号令を出さないと行けないわ…ついでに送ってくれないかしら?」
「あ、それなら作る場所の地図を渡しておくね?太陽がてっぺんに登った時から始めるから、遅れないようにしてねー?」
「分かったわ!それじゃあ霞!楽しみにしててね!」
「立派な宿を作って見せるから!!!」
自分の家を作るためにやる気満々な二人を見ていると、何だか、無性に嬉しく思ってしまった霞は普段より、優しく微笑むと
「2人ともありがとうね…出来れば過ごしやすい宿だと、私は嬉しいかな?」
そう伝えた。すると2人はさらにやる気の炎を燃やして、スキマの中へと消えていった。
「それじゃあ紅魔館の皆は、日が沈み始めた頃に助っ人に来て貰えるかな?…あ、咲夜さんは天狗に配るおにぎりを作ってきてもらえるとありがたいんだけど。材料はこちらで用意してるからさ!」
そう言われると、咲夜の中で何かが燃え上がった。…これはある意味咲夜への挑戦だった。この試練を越えた先に、真のメイドとしての心得が待っている気がしたのだった。
「…分かりました。メイドの誇りにかけて100人でも200人でも満足させるおにぎりを作り上げてみせましょう!」
「ありがとね?それじゃあ私も材料を台所へ置いてきた後、一旦地底に戻らないといけないから…これにて失礼します!」
紬はそういって台所へと向かっていった。
「それじゃあ霞は夕方まで何するの?私、まだ霞といたいんだけど…駄目?」
「うーん…皆が家づくりをしている中、歩き回るのはなんだか気が引けてしまうね。…大図書館で幻想郷の本でも読んで、地理を勉強しておこうかな?」
「うへぇー…私勉強キラーイ!わかんないことばっかり考えてたらいつの間にか寝ちゃうんだよねー…なんでだろ?」
そんな話をしていた時、レミリアがフランを呼ぶ…
「フラン?今日は私と咲夜でおにぎりを一緒に作りましょう?…流石に咲夜1人だと不安だわ…手伝ってくれるとありがたいのだけど…どうかしら?」
「えー?でも私霞と…」「フラン?」
フランが何かを言いかけた時、それを霞は遮った。そしてフランを諭すようにゆっくり話しかける…
「フラン?私もフランといるのは楽しいけど…今は、レミリアや咲夜と一緒に過ごしなさい。そして、色々な事を共にやってみなさい。私は今日大図書館で過ごすから、フランはしっかりと咲夜のお手伝いをするんだ…分かったかい?」
「…うん。分かった!私、お手伝い頑張るね!お姉様ー!私もおにぎり作るの手伝いたーい!!」
そういってフランはレミリアへと駆け寄って言った。レミリアが口をぱくぱくとさせながらもこちらへお礼を言っている姿は、何だかとても面白かった。
2人が台所へと行ってしまったので霞も移動を始める…確か大図書館への道はこの先だったはず…?そんな曖昧な記憶を辿って大広間を後にしたのだった。
しばらく歩いていると、大図書館の扉が見えてきた。どうやら道は合っていたらしい…霞は心の中でひと安心しながら扉へと手をかけた。
「さて…来てみたのはいいんだけど、本が多すぎて目的の本が何処にあるのか全く分からないな…小悪魔なら知ってるかな…?」
紙とインクの匂いが漂う大図書館の中で霞は、幻想郷についての本を探していた。しかし、数が多すぎる本の前でそれは無理だと悟ってしまった。司書の小悪魔を探そうと思い、壁際にある本棚へと向かおうとした時。
「…あら?霞じゃない…大図書館に何か用事かしら?…それとも、温泉の方?」
そこで、本を返していたパチュリーと出会った。出会い頭の一言を聞いて、霞はさっきまでの予定を変更することにした。
「ん、そうだね…喘息が治っているか確証がないからね…もう一度、入ってみようか?」
その言葉を聞いたパチュリーは昨日のように、少しだけ頬を朱に染めながら返事をした。
「ええ。ありがたく御一緒させてもらうわ…んんっ。きょ、今日も治療。お願いするわね……お医者サマ? 」
そう言って、少し顔を赤く染めながらもパチュリーは霞を自室へと連れていく…そしてそれを聞いて、霞は紬が言っていたことを思い出した。
『皆が霞ちゃんのことを必要としてるんだからぁー…霞ちゃんはこの先絶対に独りになんてしてもらえないからねぇ?
いつも誰かが側に居てくれる筈だから…もう絶対に、独りぼっちじゃないよ?』
そう言いながら手を握った紬は笑顔だった。なら私も、きちんと相手に笑顔を返していかないといけないな…と。そんな事を考えながら霞はパチュリーの後ろを歩いていた。
「…着いたわよ。ここが私の部屋…少し埃っぽいのは無視して貰えるとありがたいわね?」
そう言って連れられてきた部屋には、やはり大量の本があった。それに何やら色鮮やかな薬品も沢山置いてあるため、実に興味深い。
「そっちは魔法の研究部屋だから汚いし、余り見ないで頂戴?とりあえず、この辺りにそんなに広くない温泉でいいから…あ。」
そう言ったパチュリーは何かを閃いたらしい。
「ねぇ霞?貴方の湧かせる温泉って、地面から湧かせた温泉を妖力を固めた結晶で囲っているけれど…その結晶の形って、自由に変えたり出来ないかしら?」
「うん?…そう言えばいつもこの形にしていたけど…あ、どうやら変えられるみたいだね。…何か、理想の形でもあるのかい?」
「そうね…貴方が創り出す温泉って、ただ円形にに広がっているだけだし…例えば底を浅めに創れば、寝転がりながらお湯に浸かったりする温泉だって出来るんじゃない?」
今まで創ってきた温泉は大きさを変えているだけでいつも、同じ形をしていた。
それに色々な機能性を付ければまた、違った楽しみ方が出来る。パチュリーの言葉でそう気づいた霞は早速行動に出る。
ベッドの手前に妖力を流し始める…そして湧き出した温泉を素早く浅く囲って、寝転がれる程度の深さの温泉を創り出す…と、どうやら実験は成功したようだった。
「凄いじゃない…これなら寝転がった状態で湯船に入れるわね?」
「どうやらそうみたいだね…長く生きてきたけど、まだ、私の能力は応用が効きそうだ。ありがとうパチュリー…おかげで固定観念を振り払えたよ」
「力になれたのなら嬉しいわ…なら、入ってみましょう?」
そう言って、霞とパチュリーは新しい温泉へと歩みを進めた。
誤字報告、有難うございましたm(_ _)m