東方湯煙録   作:鯖人間

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もう20話ですね…


あ、まだまだ続きますよ?


紬と早苗と守矢の神

「ふぅ…見たところ殆ど落ち葉は掃き終えたし…これで掃除は終わりかな?」

 

その日、東風谷早苗は日課として守矢神社の境内を掃除をしていた。天気のいい日にする掃除は楽しく、落ち葉を履き終えて綺麗になった境内を見ると心に達成感や充実感を感じていた。

 

早苗が幻想郷にやってきてからもうかなりの時間が流れていた。守矢神社は元々外の世界で昔からその土地を治めていた神を奉っている由緒ある神社だった。しかし時が流れるにつれて人々の信仰は段々と薄れてしまい…そして遂に、守矢神社の神へ向かっていた信仰心は殆ど消えてしまった。時代の流れに淘汰されてまったため、新たな転居地としてこの幻想郷を選んだのだがーーーーー

 

この世界、色々と常識から外れていた。

 

「今日はポカポカしていて気もちがいいですねー…こんな日はなんだか良いことが起こりそう…!」

 

早苗はそんな呑気な事を言いながらも竹箒を片付けると。昼食の準備をするために神社の中へと戻ろうとした。

 

「あのー…もしもし?そこの巫女さーん?少しお話してもいいですかー?」

 

その時、突然自分の背後から声がする…早苗が慌てて振り返った先には自分の胸元までしか背丈のない、見たことの無い小柄な鬼の少女が立っていた。

 

「あ、はい!守矢神社へようこそ!御用は何でしょうか?参拝はあちらの社から出来ますよ?」

 

「いや、今日は参拝が目的じゃあなくてねー?私、神奈子さんと諏訪子さんに用事があるんだけどー…会わせてもらっても構わないかなー?」

 

 

その直後、その鬼から発せられた重く、圧縮したかのような濃密な妖力を感じて早苗はその鬼の特異性に気が付いた。

 

 

(…ッ!?この鬼の子、多分とんでもなく強い…!一体どうして神奈子様と諏訪子様に…ッ!?)

 

 

 

その妖力はまるで早苗の身体にのしかかってくるかのように感じた。地面へと押し潰されるような早苗の身体はもう、指一本すら動かせなくなってしまう……返答しようにも喉からはひゅうひゅうと掠れた声を漏れるだけで、その鬼の問いに答えられない。

 

 

と、そんな時。その妖力をを感じ取ったのか、神社の中から金髪の小柄な少女と藍色の髪をした背丈の高い少女が飛び出してきた。

 

 

「そこの鬼!それ以上早苗に近づいたらタダじゃー……え?」

「なんだいこの妖気は…ッ早苗!今すぐ離れ……え?」

 

しかし2人はその存在を見て固まる。早苗は鬼が妖力を緩めたことを感じて駆けつけた2人の元へと素早く引き下がった。

 

 

 

「神奈子様!諏訪子様!この鬼は2人を狙って…え?」

 

 

早苗が2人へと警告した時、早苗の顔も固まってしまう…何故か突然、2人ら滝のような汗を身体中から滲ませてガタガタと震えだしたのだった。

 

「あ、そっちから出てきてくれたんだー…助かったよ。もう少しで神社ごと吹っ飛ばして強引に呼び出しちゃう所だったからー…?2人とも、お久しぶりだねぇー…?」

 

「つ、紬…ッ!?ど、どうしてアンタがここに…?けどいくらアンタが相手だからって、早苗を傷つけるつもりならタダじゃ置かないよ!?」

「そ、そうだよ!それに突然来て何いきなりシャレにならない事呟いてんのさッ!?普通に呼べばいいのに何でこんな重っ苦しい妖力垂れ流してるんだよッ馬鹿かおまッ!?」

 

「あ、それについてはゴメンなさい?どうやら勝手に妖力が零れてしまってたみたいなんだよねぇ?

…なんだか今日は久しぶりにカスミンを摂取したおかげか体の調子がすこぶる良くってね?だから意図して妖力を出したつもりは無いんだけどー…ついつい妖力が溢れてきちゃってー…はっ!もしかしてこれが愛のなせる技というやつかな!?それならとっても嬉しいね!遂に私もそこまで至ったのかー…何だか胸の内側が熱くなってきちゃうねー…これはもう、一刻も早く霞ちゃんのためのお家を建ててあげないといけないねぇ!!うふふふふふふふふふふふふふふ」

 

 

 

警戒しながらも守矢神社の神として、早苗を守るために2人は紬に対して神力を纏いながら対応する………が、紬はそんなものは全く気にせず今朝の出来事を思い返してはイヤンイヤンと身体をくねらせていた。

 

 

…見ている此方が思わず毒気を抜かれてしまった。

 

 

「そ、その…お二人のお知り合い…ですか?」

 

早苗は恐る恐る2人へと聞いてみる…自分の常識が全く通用しなさそうな鬼の少女を見て、早苗の頭は先程までの極度の緊張と現在のなんとも言えない空気を受けてぐちゃぐちゃにこんがらがってしまっていた。

 

「ああ…こいつはこの幻想郷で最強の鬼である鬼子母神…名前は紬って言うんだよ」

「き、鬼子母神様ですかッ!?こ、この女の子が…?」

 

 

 

早苗の目の前にいる紬の姿はどう見ても子供だった。子供のような口調…しかしよく見てみると纏う雰囲気は大人びており、更に胸は大きいと自負していた早苗よりも遥かに大きかった。先程は圧倒的な妖力に負けてしまって気づかなかったのだが、紬の容姿は愛らしく、そしてその中から雄大な母性を感じる…そんな温厚そうな出で立ちをしていた。

 

 

「私、あんまり鬼子母神って呼ばれるのは好きじゃないんだよねー?立場上仕方ないとは思ってるけどー…あ、そこの巫女さんには名乗ってなかったね!うっかりしてたよ!

私の名前は紬っていって…ただの温泉妖怪好きな鬼だよ?」

 

「あ、紬さんですね!えっと私はこの守矢神社で風祝をやっている東風谷早苗という者です…こ、これから宜しくお願いします!」

 

 

早苗は後半に疑問符を浮かべながらも精一杯の気持ちを込めて挨拶をした。

 

 

「で?一体私達に何の用だい?わざわざここまで来たってことは…何か、デカい事をやるんだろう?」

 

「あ!そうなんだよ!実は2人にも協力して欲しい事があるんだよねー!これから妖怪の森に、霞ちゃんが住むための温泉宿を作るんだけどね?それで『任せて!』

 

 

諏訪子が紬の言葉を遮って即決した。諏訪子は目をキラキラと輝かせながら口を開いて

 

 

「という事は霞もついに幻想郷に来たって事なんだねッ!?それはめでたい事じゃないかッ!こうしちゃいられない…さぁ神奈子!さっさと紬についてくよッ!!」

「ちょっと待ちなって!?あぁもう霞の名前聞いたらいつもこうなっちまうんだから…紬!今から支度をしてくるから、ちょいと待ってて貰えるかい?」

 

「大丈夫だよ?温泉宿はこれから作り始める予定だし…それじゃあその辺で待たせて貰うねー?」

 

 

そう言って紬は境内に座り込んでのんびりと鼻歌を唄い始める…早苗が目まぐるしく動く状況に翻弄されていると、諏訪子がクイクイと早苗の袖を引っ張っていた。

 

 

「早苗、もう緊張しなくても大丈夫だよ?…確かに紬を目の前にしてまともに妖力ぶつけられたら今は抵抗あるかもしれないけど…ま、霞さえ害さなきゃ紬は良い奴だとは思うから!…まぁ、考え方がかなーり極端だから、慣れが必要だけどね…」

 

「は、はい…かなり怖かったです…流石は幻想郷ですね…久しぶりにここでは常識が通用しないと感じましたよ…」

 

「うん、分かるよその気持ち!アタシも神奈子も紬と最初出会った時は腰抜かしちゃってたと思うし…早苗は頑張ってたと思うよ、うん。」

 

 

2人がそんな会話をしていると、そこへ紬が混ざってきた。

 

 

「初めて会った時の話かー…懐かしいねー?確か諏訪子さんの治める国へ私と霞ちゃんが立ち寄った時、神社へ着くやいなや諏訪子さんがいきなり攻撃してきたんだったよねー?」

 

「あ、あの時のことは水に流してくれよぅ!!仕方なかったって!急に強い妖力を感じたからてっきり妖怪が攻めてきたのかと思って…」

 

「そ、そんな事があったんですか!?…って、あの、それなら一体、鬼子母神様はおいくつなんでしょうか…?」

 

 

諏訪子様が治めていた国…神社の歴史を綴った書物の中に書いてあったと思うけれど…確か、数千年前だった筈。その頃から生きている妖怪はそう居ないが…どれも大妖怪ばかりだった。

 

 

「うーん…歳なんて数えたことがないから分かんないなー…それに霞ちゃんに出会うまでのことなんてどうでもいいし、すっかり忘れちゃったね!」

 

 

 

この少女、偉くバッサリとした性格らしい。

 

「そういや霞はどうしたんだい?昔はあんなにべったり引っ付いてたのに…」

 

「昔はカスミンが無かったから、今以上に引っ付かないといけなかったんだよねー…あ、霞ちゃんなら今は紅魔館にいるよ?」

 

 

「げっ…紅魔館かい?あそこはやたらプライドの高い吸血鬼がいるって聞いてたんだけど…あ、でも霞なら吸血鬼に会いにいっちゃうかー…それならこの幻想郷にも、すぐさま吸血鬼の存在が馴染みそうだねぇ?」

 

「そうだねー…今朝レミリアさんやフランさんには会ったんだけどー…もう霞ちゃんに懐いてたね。こう、べったりと?」

 

「何だって!?あの吸血鬼をもう手懐けちゃったのかい!?全く、霞ったら手が早いんだから…それに、あの吸血鬼に妹なんていたんだねぇ…ある意味流石は霞だよ。

…けどこのままだと、倍率ばっかり高くなっちゃうんじゃないかい?」

 

そんな諏訪湖の問いかけに、紬は笑顔で答える。

 

「えーっとねー…誰とでも仲良くなれるのが霞ちゃんの良いところなんだよねー?

それに、私的には倍率が増えるのは良いことだと思ってるしー…そしたらみーんなが霞ちゃんの事を必要としているのが一目瞭然だからね!あの鈍感な霞ちゃんだって分かりやすいよ!」

 

「へぇー…紬はホント懐が深いよね?霞を自分で独り占めとかしたいとか、そんな風には思わないのかい?」

 

「んー…私はもう、霞ちゃんから離れる気なんて全然、サラサラ、全くないし?

だから霞ちゃんがこれから先、誰とどれだけ仲良くなっても問題ないよ?あ、諏訪子さんも勿論大丈夫だよ?どんどん引っ付いて甘えて大丈夫だからね?」

 

「そ、それについてはまぁ、考えとくよ…でも思い返せば確かにそうだね…霞ったら能力がアレだから、もし身を固めたとしても…みーんな気にせずにグイグイ来そうで…って、ということは!?」

 

 

早苗は話に入り込めない。何故ならこの二人の会話にはひっきりなしに「霞」という単語が入るからだ。話を要所要所聞きかじっていた早苗には何の話をしているのかが分からなかった。

 

( 霞ちゃん…?女性の方かな…?)

そんな事を考えていた時守矢神社に諏訪子の声が響いた。

 

 

「それならまた霞の温泉にも入れるってことじゃないかッ!!!」

 

 

「アレまた入りたいと思ってたんだよねー!やっぱ他の温泉より気持ちよさが段違いだったよ!あ、早苗も入ってみないかい?霞って温泉湧かせる能力を持ってるんだけど……ありゃとんでもないよ?」

 

「お、温泉ですか?うーん…確かに外の世界では何度か入りましたけど、ここにはあまり温泉がありませんし…可能なら、入りたいですね?」

 

「よーっしそれなら霞と出会ったら皆で入ろうか!約束だよ!」

 

「はい!喜んでご一緒させてもらいます!」

 

 

 

よく分から無いけれど…温泉に興味のある早苗は特に何も考えないままその提案を受け入れた。

 

 

「あーそれは良いですねー…あ、それでは温泉宿完成の暁には皆さんで宴会をしましょうか?」

「それ賛成だよ!よーっしなんだかやる気が湧いてきたーッ!!!神奈子はまだなのッ!?いつも遅いよ大して用意が必要な訳でもないのにぃ!!」

 

 

そんな話をしていると、神奈子が出てきた。

 

 

「お待たせ…全く、諏訪子の声が神社の中まで丸聞こえだったよ…で、場所は何処なんだい?」

 

「えっと…妖怪の山の中腹辺りになるんだけどー…ここに来る前にその場所の木々は取り除いておいたし、かなり目立つと思うから…すぐに分かると思いますよー?それじゃあ行きますかー!」

 

それを聞いて三人は山を見渡してみる…と、森の中に1箇所。完全に木々が消えて地面が見えている広場が目に飛び込んできた。

 

 

「お、おい紬!?あんなの勝手にやったら天魔のやつにどやされるよ!?」

 

「あ、それなら大丈夫だよ?椿ちゃんからあの周辺は自由にしていいって許可は貰ってるからねー…さぁ行こう?」

 

 

「えぇ!?私たち、この神社の許可とるの結構大変だったのに!?何でさ!?」

「そりゃ神奈子がいきなり信仰しろって天魔の家まで詰めかけたからでしょ…やっぱ馬鹿なの?流石は軍神(笑)サマですね?もしかして脳ミソまで筋肉で出来てるの?」

「酷いッ!?」

 

 

口喧嘩を始める諏訪子と神奈子。そしてその後ろにいるのがー…

 

 

 

「ちょ、というか皆さん歩くの早すぎないですか!?ま、待ってくださいよーーッ!!!」

 

 

天魔の許可や広大な土地の伐採を簡単にこなした事をサラリと言った紬は、そう言って広場めがけて一直線に歩き出した。その歩調は普通に歩いているように見えるのに何故かやたらと早く、3人それを追いかけるために走りだした。

 

 

 

早苗は、勿論バテた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紫ー?そろそろ紬が言ってた時間だけど?私、遅れたら紬にエライ目あわされちゃうから早く行きたいんだけど?」

 

「全く…分かったわよ、取り敢えず設計図はこれでいいわ。あ、勝手な機能つけるのは許さないからね!それじゃあ急いで広場へ移動するわよ!」

 

 

そう言って河童の集落から紫と天魔。そして腕利きの職人河童たちが妖怪の山の中腹…もとい、広場へとスキマを使って移動した。するとそこにはチラホラと集まっている大天狗や烏天狗…そしてその先で酒を呑む2人の鬼と、顔を真っ赤に染めてぶっ倒れている白狼天狗の姿が見えた。

 

 

「ちょっと勇儀!それに萃香はいつ来たのよ!?貴方達何勝手に酒なんか飲んで…ってその天狗って椛じゃないの!?何やってるのよおバカ!!!アンタ達これから作業するのに何で酒飲んで酔っ払ってんのよ!?」

 

 

椛は顔を真っ赤にして倒れている……かなり飲まされたのか完全に酔っているようだった。

 

 

「あ、紫に天魔じゃん!遅かったねぇ?いやー…ただ待つのもなんかつまんなくてね?久しぶりの旧友に会えたもんだからつい…?あははははは!!!」

「紫ィ!私を除け者にするのは許さないよッ!それにこの白狼天狗、ずるいんだよ!?もう霞の湯に2回も入ったなんて言うもんだからさー…つい一気飲みさせちゃったよ! 」

 

「鬼の酒一気飲みさせるとか、何をトチ狂ったことさせてるのよアンタ達は!!」

 

「椛のやつ…可哀想に。これだと使い物にならないじゃない…少し休ませとくべきよね…?」

 

「ホント勝手な事してるんだから…こんなの紬に見られたらどうなっ『呼びましたかー?』…て?」

 

 

 

その一言に紫の表情は凍りつく…ただ一言聞こえただけなのに、まるで時間が止まったかのように…誰もが固まってしまった。冷たく重い、そんな声を聞いた萃香と勇儀の酔いは…一気に冷めてしまった。

 

 

 

「何だか騒いでいたから急いで戻ってきたんだけどー…萃香さーん?勇儀さーん?…どうしてこんな事になってるのか、詳しく、説明してもらえるかなぁー?」

 

 

一瞬で2人の背後へ立った紬は2人の肩に手を置く…そして徐々に力を込め始めた。

 

 

「ちょ、痛い!?ご、ごめんって痛たたたたたた!!!肩がッ!肩が砕けるうううううううううッ!?!?!?」

「わ、悪かったって痛いッ!?ほ、本当にゴメンなさッ痛たたあぎゃああああああああああッ!?!?!?」

 

 

 

山の四天王として恐れられていた伊吹萃香に星熊勇儀。まともに戦えば命がいくつあっても足りない相手のはずなのに…そんな2人が痛みに悶絶している姿は、かなりの恐怖としてその場に居た天狗や河童たちの心に強く刻み込まれた。

 

 

 

「まぁ謝罪はそれくらいにしますか。…それじゃあ、お仕置きだね?」

 

 

 

「「ヒィッ!?!?」」

2人はお互いの肩を抱きしめ合い、震えている…

 

 

 

「それじゃあ『ぶっ飛び霞ちゃん』と『ぐりぐり霞ちゃん』のどちらか選んでね?お仕置きは各自、選んだ方にするからさー…」

 

 

 

 

「「何それッ!?」」

 

 

 

聞いたこともないお仕置きに2人は青ざめる…しかし受けなければ何も始まらないため、勇儀が覚悟を決めた。

 

 

 

「なら私は『ぶっ飛び霞ちゃん』で…!」

「ゆ、勇儀がそれなら…私は『ぐりぐり霞ちゃん』の方を…?」

 

 

「わかったよ!それじゃあ勇儀さんはそこに立ってねー…いくよー…そー、れッ!?」

 

 

「げふぅ!?」

 

 

ドガシャーン

 

 

紬は肩を後ろへと引き絞った後、少し跳ね上がりながら可愛らしい掛け声とは裏腹な威力の篭った拳を…勇儀の脳天へと振り下ろした。

勇儀はそのまま地面に頭をめり込ませて気絶してしまったらしく、ピクピクと四肢を痙攣させていた。隣で起こった惨劇に萃香が息を飲み込む……その瞬間、紬に頭を両腕で掴まれた。

 

 

「それじゃあ萃香さんのお仕置きも始めるねー?」

 

 

 

…そのまま萃香と比べると雲泥の差の豊満な胸へと萃香を誘うと、ガッチリと固定し…そのまま締め付け始めた。

 

 

 

「~~~~~~~!?!?!?」

 

甘い香りが顔中に広がり、柔らかい感触を感じたのは一瞬だけだった。そこからは呼吸の出来ない時間が始まって……脱出しようにも万力の如き力で固定されている手は、萃香の力でさえ外せない。そして次第に酸欠によって抵抗する力を失った萃香は…そのまま意識を失ってしまったのだった。

 

 

 

「ふぅ…お仕置き、完了だねー…?」

 

 

 

そう言った後、崩れ落ちた萃香を見た天狗や河童達は震え上がった。今目の前で起こった惨劇を、現実だと認めたくない…皆が、そう思っていた。

 

 

「紬、流石にやりすぎでしょ…皆、固まってしまってるじゃないの…」

「えー?そんなに力は込めてなかったんだけど…それなら仕方ないねー…?はい!それじゃあ皆?張り切って温泉宿……つ く ろ う ね ?」

 

 

 

「「「「「「了解しましたァァァァァァァァァァッ!!!!!」」」」」」

 

 

こうして、温泉宿作りは鬼の犠牲と天狗と河童の悲鳴の様な叫び声と共に。始まったのだった…

 

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