東方湯煙録   作:鯖人間

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遅くなって申し訳ないです…
端末1つしかないのにやりたい事が多すぎますね…
ソシャゲの掛け持ちって大変。


人と妖怪と信用の料理

「い、一体何がどうなってんだよ…?こいつがあのフランだってのか…?」

 

霧雨魔理沙は今、眼前で行われている事に驚きが隠せなかった。フランドール・スカーレットとはこんなに笑い、明るい雰囲気を放つ少女だっただろうか?

 

…答えは否だ。

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

魔理沙が初めてフランを知ったのは…パチュリーのいる大図書館へ襲撃に行った際、盗んだ魔導書の中に入っていたメモが原因だった。盗んだ魔導書を意気揚々と持ち帰ろうとした時、魔導書の中からヒラリと1枚のメモが落ちてきた事に魔理沙は気がついた。

 

「『これはフランドール・スカーレットの狂気を抑える薬の製造方法について、独自に纏めた物である。』…何だこれ?この本の中からでてきたのか…?」

 

魔理沙は興味を惹かれてそのメモの続きを読んでいった。…しかし、その中に書かれていたのは決して魔理沙にとって面白い事では無かった。

 

 

 

『フランドール・スカーレットは先天的な能力の暴走により、狂気に心を飲まれ自我を失っている。そして妖精メイド8名を殺害…対象の存在ごと爆散させるため、遠隔的に身体を破壊することが可能と思われる。よって現在地下室へと幽閉済み。フランドール・スカーレットの能力制御の完了まで、地下室への立ち入りを禁じる…』

 

 

「な、何だよこれ……ここにそんなに奴が居るってのかよ…?確か地下室ってここに来るまでにあったよな…前にここに来た時に、確か咲夜がそんな事を言ってた気がするな…」

 

 

魔理沙は好奇心を刺激されたのか、そのまま地下室へと向かうことにした。そして長い長い廊下の先に、地下へと続いている1つの階段が見えた。

 

 

「あそこか…?なんだかこの辺の廊下はやたら暗いし結構不気味だぜ…」

 

 

そんな事を言いながらも薄暗い階段を慎重に一段ずつ降りていくと、そこには扉があった。その扉は見た目からして重そうなのだが……何より、その奥からとんでもない重圧を感じてしまった。

 

 

「…ッ!?」

 

その瞬間。魔理沙の脳から今すぐにここから去れといった、危険信号が送られた。この扉の奥にいる存在は、魔理沙の手には負えない存在だと身体の隅まで理解させられてしまった。

 

魔理沙はもう近づけない。全身が粟立ち、呼吸が数歩先にある扉…その先へと1歩も進めなくなってしまった。

 

( な、何なんだよここは……こいつはシャレになんねぇ…ッ!!ここは駄目だ。絶対近づいちゃいけねぇところじゃねぇかッ…!!!)

 

 

そう結論づけた魔理沙はゆっくりと、しかし内心で焦りながらも降りてきた階段へと踵を返して元来た道を戻り始めた。

 

 

 

 

……この地下室へいた、フランドール・スカーレットという少女を『恐ろしいナニカ』とそう。心に決めつけて…

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「えへへ!!!それじゃあ私、そろそろ妖怪の山に向かうから…張り切って霞の家を作ってくるからね!…あ!それと魔女っぽい見た目してる貴方って、確か魔理沙って言うんだよね?パチュリーが変な人間だって言ってたの!これから紅魔館に来るなら宜しくね?

…あ!泥棒はダメだからねー?」

 

「お、おう。霧雨魔理沙だぜ…宜しく。あと、本はさっき返してきたんだぜ…」

 

「…そうなの?…ま、いっか!」

 

 

ニコニコと笑うフランに、魔理沙は驚きつつ、平気な顔をした霞へと視線を向ける。

 

 

「あぁ…手伝ってくれてありがとうね、フラン?…けど、普通の宿でいいからね?紬だったら変に張り切るだろうから…これは万が一なんだけど、変な部屋とか足そうとしそうになったら止めてくれないか?」

 

「分かった!私に任せて!じゃあ行ってくるよ……あっ、最後にぎゅーっ!!」

 

「はい、ぎゅーっ……フランは甘えるのが上手いねぇ…」

 

「えー…そうかな?じゃあ2人共また今度ねー!!」

 

「ああ…いってらっしゃい」

「あ、あぁ…いってらっしゃい?」

 

 

…それが今ではこの有様だ。

今、魔理沙の目の前にいたのがフランドール・スカーレットだって…?

今の少女はあの禍々しく、重圧の籠った妖力など、微塵も発することは無かったではないか。

 

…それどころか、女性すら思わず可愛いと思ってしまうほどに輝く笑顔を周りへと振りまいていた。

 

 

 

フランが部屋から飛び出していって少し経った頃。

衝撃的な時間を過ごした結果、呆然としていた魔理沙がはっと意識を取り戻した時。先程まで和やかに微笑みながら手を振っていた霞が自分を見つめてきた。

 

 

そして口を開くと

 

 

「フランはいい子だよ…あの魔理沙が驚いてる位なんだから、何か昔、フランによって怖い思いをしたのかもしれないけれどね?

…その時のフランと今のフランは間違いなく変わっているよ。それもとてもいい方向にね…」

 

そう言った霞は魔理沙の目の前へと向き直る…そして腰を屈めて魔理沙の目線に合わせると、魔理沙へと真摯な眼差しを向けた。

 

 

「だから、もう一度フランドール・スカーレットという少女の事を…測り直してはくれないか?

…きっと、お前とも仲良くできるだろうからね…」

 

 

 

…魔理沙は考えていた。あの時と今の光景で…フランの印象は変わっている。先程の笑顔や涙。霞へ甘える姿を見れば危険な様には見えなかった。まるで親子のように触れ合っていた2人に、危険な兆候など全く見えなかった。

 

 

…しかしまだ、足りない。

 

きっちりと心の底からフランのことを信じきる事が出来るピース…

 

パズルの最後のピースの様に何か、決め手となるような後押しが欲しかった。

 

 

「…えっと、まぁ…悪いヤツじゃあ無さそうだな…」

 

悪いヤツじゃない。…けど信じきれない。魔理沙が心の中でそんな葛藤を抱えていると、霞がさっきフランに手渡されていた木箱の中から1つのおにぎりを取り出して…魔理沙へと手渡した。

 

「…まぁ、食べてみるといい…論より証拠、百聞は一見にしかず…って言うんだっけ?」

 

「お、おう…頂くぜ…」

 

 

不審に思いつつ、そのおにぎりを食べた瞬間。

 

 

 

 

 

 

「美味ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええ!?!?!」

 

 

魔理沙は叫んだ。

 

だってこれ……メチャクチャ美味い!?!?…え?何コレおにぎり?おにぎりってこんなに美味しいものだっけ?すげぇ美味いわー何だこれ?元々あまり無い語彙力が消滅してしまったぜコンチクショウ。だれか!シェフを呼ぶんだぜ!!!

 

 

 

「お、おい?これをあのフランが作ったのかよ!?」

 

「そうだよ…美味しいだろう?」

 

「ああ…何だこれ?ほんとにおにぎりか?おにぎりに見せかけたなんか別の料理なんじゃないのか?てかおにぎりってなんだっけ?」

 

「ん、そこまで言うのかい?…まぁ、このおにぎりはフランにしか作れないんじゃないかな?しっかりと食べる人の事を考えてるからこんなに美味しいんだと思うし…

…それで、心を決める決定打にはなったかな?」

 

 

「…!?な、なんで私の考えてる事が!?お、お前まさかエスパーか!?それともサトリ妖怪かよ!?」

 

「いや、そんなに分かりやすい反応しておいてそれはないんじゃないかな?…私以外の人でも分かると思うよ。…あと、サトリ妖怪…?

…あ、『覚』か。そう言えば久しく見てないねぇ…』

 

「ぐっ…まじかよ。こんなにあっさりと見透かされるなんて、演技派の魔理沙ちゃんとしてはうっかりしてたんだぜ……ふっ!」

 

 

 

パァン!

 

 

魔理沙はそう言いながら、顔を両手で引っぱたいた。突然の行動と赤く腫れた頬を見て霞が驚いているが…それは今は気にしない。そして先程とは違い、普段通りの豪胆な表情へと切り替えると

 

 

 

「よし、信じた!!!」

 

そう、言い切った。

それを見た霞は安心したように頬を緩めると

 

 

「…うん。流石は魔理沙だね…さっきまでとは目の色が雲泥の差だね?」

 

「ああ。そもそも魔理沙ちゃんは細かいことは気にしないもんでな…食えるキノコか毒キノコかは、取り敢えず食ってから考える派だぜ。…それに霞も居るんだし、悪いことにはならんだろう?」

 

 

そう言って魔理沙はニカッと笑った。…先程まで自分は何をうじうじと悩んでいたのだろう。そもそも自分はフランの事を何も知らないんだから…勝手に決めつけるなんてのがそもそも間違っていたのだ。

この先、何が起こるか分からないけれど…まぁ、霞がストッパーになるんだから大抵のことが楽しいことになるだろう。

 

 

フランについては、これから会う機会も増えることだし…時間をかけてゆっくり知っていけばいい。

 

 

 

「…そうだね。微力ながらも…フランがこの先、狂気にまた飲み込まれるなんて事がないように…癒す役目は任せてくれ。

だから魔理沙はフランや…この紅魔館にいる皆が困っていたら、助けてやってくれないかな?」

 

「おう、任されたぜ。…あー、なんかスッキリしたせいか腹減ったな?…なぁ、もう一個だけでいいからくれないか?こんな美少女がねだってるんだから、気前よく分けてあげるのが良い男って奴だと思うぜ?」

 

 

「分かったから…私の分も残しておいて欲しいんだけどね?…なら、そろそろ人里へ行こうか。きちんと案内してくれたら報酬として与える形にするとしよう」

 

「よーっしそれでいいぜ!それじゃあ案内するから…しっかりついてこいよ?」

 

「任せたよ。それじゃあ行こうか…」

 

 

 

そう言って2人は大図書館を後にした。普段から静かな大図書館で音をたてるのは…すぅすうと規則的な寝息を立てる小悪魔だけ。2人が外へ出た時、もう日が暮れてきたようで夕焼けの光が眩しいが…今から行けばまだ、完全な日暮れまでには人里へと着けるだろう。

 

霞は胸に期待を秘めながら、魔理沙と共に空へと飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空を飛びながら霞はふと、地上を見て疑問に思ったことがあった。

 

 

「なぁ魔理沙?やはりここは夜になったら……やっか人間を襲う危険な妖怪が出たりするのかい?」

 

 

「あぁ、基本的に森の中にいるから昼間に出会うことはあんましねーんだけど…夜は別だな。厄介な強さを持った妖怪もでたりするから…人里なんかじゃ夜中の外出は許されてないはずだぜ?」

 

「そうか…ん?なら魔法の森は大丈夫なのか?」

 

 

「魔法の森はなー…木とか群生してるキノコから常に瘴気が出てるんだよ。「化物茸」って言うんだけどな?こいつがまた厄介でなー…幻覚見せる作用とかあるから普通の人は住めないんだよ。だから人も妖怪も住み着こうとはしねーし……けどそのキノコには魔力を高める力があってな?私みたいな魔法使いからしたら絶好の修行場所になるんだよ。…霞もまた今度、来てみるか?」

 

「そうだね…興味はあるし、また機会があったら案内してくれないか?香霖堂って店にも興味があるしね…」

 

「おーおー分かってるから…あ、もう見えてきたんじゃないか?あれが人間の里だぜ?」

 

 

魔理沙が指さした先に、霞は家屋の連なる場所を見つけた。どうやら木でできた家が殆どのようで文明レベルはやはりそこまで高くないようだ。しかし遠目から見る限りでも目を凝らせば人の姿が見えるため、それなりの数の人が住んでいるようだった。

 

「ここまでくれば大丈夫だね。ほら、約束のおにぎりだよ?…っと、そんなに気に入ったのかい?」

 

霞が取り出したおにぎりを手に持った時。急接近してきた魔理沙によってすぐさま盗られてしまった。…世に聞く盗人スキルというものだろうか?

 

 

「へへっ…そうだな。これ作ったフランにはどうも握りの才能があるとみたぜ。次なんか作ったら教えてくれよー?」

 

「分かったよ…今日は色々とありがとうね?」

 

「おう、こっちこそだぜ。…あ、混浴についてはまた聞くからなー?んじゃなー!」

 

魔理沙はそう言って手を振りながらも霞の元から離れていった。そのまま魔法の森へと向かって行く…と、

 

そこへどうやら魔法の森らしき場所が霞の目に入ってきた。木々が鬱蒼と生い茂っている見た目がかなりジメジメしている雰囲気の森のようだが…魔理沙の言っていた通り、森全体が薄い瘴気によって覆われていた。

 

 

 

「 幻覚を見せる瘴気か……私にも効くのだろうか?」

 

 

また、興味を惹かれることが増えてしまったが…今重要なのは人里についてだろう。そこから霞は人里めがけて飛ぶスピードを上げ始めた。比べて少しだけ涼しくなった風が肌を撫でる感覚が心地良い…

 

 

かなり昔…霞と出会った天狗の中で

 

 

『最速で空を飛ぶのは気持ちいいのよ…私自身がが風になったみたいでね。…何よ?そんな目で見るくらいなら貴方もやってみればいいじゃない?絶対に爽快な気分になるから…』

 

 

そう言っていた天狗の事を思い出した。

 

 

そんな事を考えながらも霞はスピードをさらに上げた。じょじょに近づいてくる人里は夕方なのにまだ活気に満ちていた。この世界の人間の営みを初めて見た霞は自然とそこから目が離せなくなっていた。

 

 

 

そうして霞は地面へと着地すると、まず辺りを見渡した。

 

 

…農民が田畑を耕している姿や走り回る子供の姿。遠くには甘味処や呉服屋、それに寺子屋のような物も見えるが…中には妖怪のような見た目の存在も混じっていた。

 

どうやらこれが紫の望んでいた人と妖怪の共存……本来決して混ざりあわない者同士が手を取り合って生きている、紫にとっての理想郷なのだろう。

 

…霞はこの光景に、感慨深い何かを感じていた

 

太古の昔から生きてきた霞にとって、今まで見てきたものや触れてきたものは膨大な量を誇っている。しかし、それでもここで見た光景は今までには無い、美しい光景だと…霞は心の底からそう思っていた。

 

 

「紫は頑張ったんだね…この幻想郷は私にとっても生きやすくなっているし…これなら普段の行動と言動をもう少しだけでもいいからしゃっきりとすれば大妖怪の中からも頭一つ飛び抜けられるんだと思うけどねぇ…?」

 

 

 

昔の紫はかなり頻繁に連絡をくれていた。

 

幻想郷を創りあげるまでの間は、かなりの回数を紫と共にした様な気がするなぁ…

 

 

『ねぇ霞!この札を使えばいつでもお話できると思うから…もうどんどん使っていいからね!あ、私から話す時も使うからそのつもりでね!』

 

『霞!聞いて聞いて今日ねあのねー…』

 

『ちょっと霞聞いてよ!!!私、人と妖怪が共存できる新しい世界を創ろうと思ってるって言ってたじゃない?その土台が出来上がってるのよ!あ、霞も完成したら来てね!絶対よ?』

 

『霞ー…疲れたから癒してー…?はっ、これって妖力辿れば霞の居場所が分かるんじゃ…?紫ちゃん天才!それじゃあこうしてーっと…』

 

『うふふふふ霞の隣で寝るって素敵…ここが私の求めていた幻想郷なのかしら…?至福の一時ってこのことよねー…』

 

『霞ーッ!!今日も癒し……ッ女の匂い!?霞ッ!!今日は一体誰と入ったのよ!?』

 

 

…後半につれて何だかズレて来てしまったが、仕方ない。これもまた、紫の愛嬌なんだろう。

 

 

 

「さて…この人間の里では、どんな出会いがあるんだろう?」

 

 

霞は妖怪よけの策を辿り、入口へと近づいてゆく…

 

 

「…おいそこの妖怪!一体何しにここまでー……」

 

 

そこには里を流れの妖怪から守るために、見張りをしていたと思われる1人の少女がいた。霞と同じ白い髪をした少女は霞の姿を目に入れた途端、驚愕に目を見開いていた。

 

 

 

「ーーー〜〜〜〜ッ!!!」

 

 

そしてこちらへ目掛けて一直線に突撃してくる…霞が衝撃に備えて腰を深く落とし、そのまま身体を固定した瞬間。

 

 

 

「霞お前今までどこほっつき歩いてたんだコノヤロォーッ!!!!!」

 

「グハッ」

 

 

 

全ての勢いを膝に込めた、全力の膝蹴りが霞を襲った。流石に強烈過ぎるお出迎えに霞の意識は途切れてしまう。

 

 

 

 

最近これ、多くないか…?

そんな事を考えながら、霞は遥か後方へと吹き飛ばされていった…

 

 

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