東方湯煙録   作:鯖人間

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初日なので2話目も投稿!



…ストックがががが


巫女と賽銭と弾幕ごっこ

妖怪の山で椛と別れた後、紫はスキマでの移動中に霞を案内を始めていた。

…しかしその案内が普段、幻想郷へと迷い込んだ人間や異変を起こし、そして解決した後の案内以上に張り切っているのは、もはや誰から見ても分かるだろう。

 

「んふふふふ……今から霞を案内する所はね?『博麗神社』って名前なんだけれど…この幻想郷にある唯一の神社…って、あ、今は違うわね。確か少し前の異変で外の世界から新しい神社が妖怪の山へ幻想入りして来たのよ。だからそこの神社とは違って、元からある重要な───あ、いけないいけない。少し話を戻すけど…

その博麗神社って…この幻想郷において、とても重要な場所でもあるのよ。それなのに馬鹿な天人が地震起こした時があってね…私もついキレちゃって、その天人を存在ごと散らしてやろうかって思ったとこだったけど、どうにか丸く納めて…あ、また話がズレちゃったわね。ごめんなさい!」

 

とてもとても早口での案内の中で、過去に起こった出来事へと話が脱線してしまっている紫を見た霞の口角は、楽しげに先程よりもつり上がっていた。

 

「いや、構わないよ。むしろ、そう言った紫の話を聴くのは好きだからね…」

 

「え?もう!霞ったらそんな好きだなんてえへへへへへ……あ、それと霞…?実は言い難い事なんだけど…私、ついさっき藍…あ、私の式神なんだけれどね?その藍に急な用事で呼び出されちゃって…

くっ、私が他のところも直々に色々と案内したかったんだけど、あの時とっさに霞の妖力を感じたから、私ってば自分の仕事をほったらかして来ちゃったのよ…

…うう。それで今ね?藍ってばかなり怒ってるの…だから今夜はさっきの札で、私の家に来てくれない?ついでに、私の新しい式神の紹介もしたいのよ」

 

「…ほう。式神かぁ…」

 

そう言われた霞は…式神という言葉に、かなりの興味を惹かれたらしく、目には好奇心に満ちた光が灯っていた。

 

…やはりこの男、顔に出る。

 

 

「ふむ…分かったよ。私も式神とやらには心惹かれるものがあるし…ただ、今日はまだ時間もあるから色々と見て回りたいからね…

行くのはもしかすれば少し、遅くなるかもしれないが…それでも良いかな?」

 

「ふふ。もちろんよ!!存分にこの世界を楽しんできて頂戴!!」

 

 

紫は満面の笑顔で霞にそう告げる…そして、つらつらとそんな会話をしている内に、いつの間にかスキマが開いたのか……地上の様子が二人には飛び込んできた。

 

「あ、着いたわよ霞!ここが博麗神社よ!!」

「ふむ…」

 

 

そこは見渡す限り、辺り一帯を森に囲まれた古い神社の境内だった。高所にある所為か、日が少し隠れている。

そしてそんな霞の目に、年季の入った旧い鳥居が目に入った。かなり古い神社かと思ったものの、神社自体は質素な雰囲気を纏っているが…見立てより、かなりしっかりとした出来映えの、綺麗な姿をしていた。

 

 

「案内、ありがとうね。それじゃあ紫、また後でね?」

「ええ!もう首を長ーーーーーーくして待ってるから!!」

 

 

そう言って、手を振りながら紫がいた場所は一瞬でスキマに挟まれて何も無いただの空間へと戻っていった。

 

霞の目の前から紫が消えてしまった事を確認し、少しばかり周りの景色を見渡してみると…先程から見えていた鳥居の先に、石で出来た階段がある事が目に入った。

 

 

「へぇ…この神社に来るには、この長い階段を登ってこないといけないのか……結構大変だな。空を飛べると楽なんだが、人間には少し辛いだろうなぁ……」

 

「…ふむ。ここはもしかしてどこかの山の上なのかな。見晴らしはとてもいいし…風も心地よい良い所じゃないか。それに地形が見やすいのも良い……けど、人間が住むには、少し厳しいかな?

…ん。あの大きな山は…あれが妖怪の山かな?そう言えばあそこの山にも神社があるらしいし…今度行ってみようかな」

 

「…人間に会うのは、久しぶりだ」

 

 

そんな事を考えながら霞が神社の境内を歩いていると。本堂の目の前に『素敵なお賽銭箱はここよ!!!』と、でかでかと書かれた賽銭箱を見つけてしまった。思わず何事かと思い、賽銭箱の中身を覗き込んで見たものの…あまり中身は入っていないように見える。

…というか、すっからかんだった。

 

ここにはあまり人が訪れていないのか……いや、紫が確か、別の神社が出来たと言っていたっけな?

 

 

「ふむ…せっかく来たんだ。神を祀る事は大事だからねぇ…ここはひとつお参りでもしていくとしよう。どれ、賽銭は……む?そういえば私はいくら持っていたっけな…?」

 

 

霞はそう言って懐から財布を取り出す。

財布と言ったものの、ここ数百年は使った記憶も無いものであり、当然ながら中身の価値すら分かっていない。

 

 

………どうやら古いお札しか入っていないようだ。…これ、この世界でも使えるのだろうか?確かに外の世界で使えるであろう札とはいえ、これは確か…かなり昔に備えられたものだったハズ。

 

現在このお金にどれくらいの価値があるのかが分からないが…

 

「うーん………まぁ折角だし、これでいいか。」

 

そう言って霞はお札を賽銭箱に入れると…手を叩き、心の中で願いを零す。

 

「どうか、この先でまた新しい出会いがありますよう」「お賽銭!?!?」

 

 

突然の大声に霞の願いはぶった斬られてしまった。現れた少女は霞のこと等無視しては一目散に賽銭箱を掴んでガタガタと揺らしている…誰だろう、この少女は?

そしていくら賽銭箱を振っても賽銭の音が聞こえなかったのか、その少女は目に怒りを露わにして霞へと詰め寄ってくる。

 

「ちょっとアンタッ!!お賽銭の音が聞こえないじゃない!一体どういう事!?まさかとは思うけど、賽銭も無しにご利益だけ貰おうって考えてるの!?そんなのは許さないわよっ!!それに妖怪の癖して、そんなナメた真似が許されるとおもっ!?」

「すまない。少し落ち着いてくれないか?」

 

騒がしく叫ぶ少女の口に羽衣が巻き付き、その細い身体を縛りつけた。

 

「むぐぐぅぅぅー!?!?」

 

霞に近づいた瞬間、いきなり自分の全身を縛られた事に驚き、少女は戸惑っていた。しかしそれでも暴れることを止めない少女は、むーむーと叫びながら抵抗を続けていた。

 

「むっ、むぐぐぅ…っ!!むむむーっ!!」

 

なんというか、とても巫女っぽく無い風貌をしているけど、この子がこの神社の巫女なのだろうか?

 

なら、少しばかり誤解を解かなければまともに話すら出来ないかもしれない。

…かなり手を焼いた霞はとりあえず誤解を解くことから始める事にした。

 

「いきなりこんな事をしてすまないとは思っているけど……とりあえず落ち着いてくれるとありがたい。ほら、お賽銭ならきちんと入れたから…どうにか機嫌を直してはくれないか?」

 

傍から見ると少女の身体に羽衣を巻き付けて手足を縛っているという、紫による甘々判定でも

 

『それはダメよ!そんなのやっていいのは私なんだからーっ!!!』

 

…ああ、話が逸れた。とりあえずこれは自分でも分かる程、色々と大変危険であるだろうと思う光景なのだが…

 

一応、霞は表面上はそんな事を全く気にかけずに少女へと話しかける。そして少女がぷるぷると目に涙を浮かべ始めたのを見て、話をするために羽衣を少し緩める。

 

すると、すぐさまその少女は食い付いてきた

 

「…ぷはっ!ちょっとアンタ!私に一体何するつもりよ!!もし変なことしたら承知しないわよ!?

それにねぇ!?私を舐めてるなら承知しないわよっ!!賽銭の音もしないのにお金入れたなんて、バレバレの嘘をついてんじゃ…」

 

「あぁ、それに関しては持ち合わせに小銭がなくてね…札を入れたんだけど。この神社ではお札は駄目だったのかな?」

 

 

「……お札??」

 

 

瞬間、少女の様子が変わる。

 

 

「……え?札?札って………それホント?嘘じゃないわよね?ホントよね?」

 

「本当だから…疑うなら確認してみなさい」

 

霞に言われて恐る恐る…拘束を解いた身体はゆっくりと賽銭箱のへと向き直り、その蓋を開けた少女は次の瞬間。大声で絶叫を上げた。

 

 

 

 

「い、いやったあぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!

ホントに入ってたぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

今、霞は神社の今に連れてこられて霊夢とお茶を飲んでいる。と言うよりも強引に連れ込まれて飲まされている…と言った方が正しいだろう。先程、妖怪の山で轟くほどの大声を上げた少女は満面の笑みで霞をもてなしてくれていた。

 

「いやー悪かったわね!!もう箱からなんの音よしなかったから、すっかり勘違いしちゃったわ!ホントにごめんなさい!あ、お茶のお代わりいる?」

 

「…あぁ、ありがたく頂くよ。」

 

もう、顔中ニッコニコである。どうやらこの少女は…相当感情を表す際の喜怒哀楽が激しいらしい。

 

…初めて会ったタイプだなぁ。なんて考える霞の元へ、お茶のお代わりが手渡された。

 

 

「全く…最近ってここに来る奴らってば、もうびた一文とした賽銭を入れないくせに、やたら酒とか持ち込んでよく宴会を開くのよね…アイツらってばもう、ここをタダで使える広場かなんかと勘違いしてんじゃないのかしら?あっ、けどあなたは別よ?もういつでも来ていいわ!お賽銭入れてくれる存在はもう神様みたいなものだし、じゃんじゃんウチに来てどんどんお願いしてお賽銭入れていって頂戴!!」

 

訂正。やっぱ現金な子のようだった。

 

はー…この世界にも、あなたみたいないい妖怪もいるものなのね。それに羽振りも良いなんて、素晴らしいことだわ、ホント。

…けどねぇー…女を縛るなんてのはちょっと頂けないわ。本当、あなた…次やったら許さないわよ?この博麗の巫女相手にあんな破廉恥な真似したら、ボッコボコに退治されても仕方ないんだから」

 

 

……何も聞かず攻撃姿勢に入られたので、個人的には正当防衛だと思っているけれど…まぁ、それは黙っておいた方が良さそうだろう。

 

「そうさな。忠告どういたしまして…それと、それについては謝るよ。そういえば、君の名前はなんて言うのかい?」

 

「ん?あ、自己紹介が遅れたわね。私は博麗霊夢。この神社の巫女をやってるわ…あ、それと妖怪退治とかも請け負ってるわよ。なんか気に入らない妖怪がいれば私に言いなさい?格安で退治してあげるから」

 

黒い髪につけた赤いリボンが目立つ、全体的に赤をモチーフにしている脇の開いた巫女服が特徴的な少女は、そう名乗った。

 

「そうか…私の名前は霞。ただの温泉好きな妖怪だよ」

 

「ふーん温泉?というか貴方妖怪だったのね…変に人間臭いから、人間かと思ってたわ。というか幻想郷に温泉なんてあったかしら?」

「ああ、それなら簡単な事だよ。私が温泉にまつわる能力を持っているだけのことだからね」

 

 

温泉という単語を聞いて、霊夢の顔に興味が宿る。

 

「へぇ…そうなの。そう言えば霞…ってどっかで聞いたことあるわね…どこだったかしら?紫がなんか言ってたような…」

 

「ん?紫を知っているのかい?」

 

「ええ、そもそもここに来たのも紫が…え?あなた紫を知ってるの?」

 

「ああ。古い友人というやつかな?」

 

紫の古い友人。普段は他人になど無関心であり、興味のない霊夢だったけれど…何故かこの時、霊夢には普段味わうことの無い筈の…数少ない興味が、湧き上がっていた。

 

「ふーん…なら紫とはいつ出会ったのよ?」

 

 

「えぇっとねぇ…確か、数千年前かなぁ…?」

「ブハッ」

 

そして、霊夢は飲んでいたお茶を盛大に噴き出した。

 

「ん…おい霊夢…大丈夫か?」

 

慌てて霞が霊夢に駆け寄って背中を摩ろうとするが、それを霊夢は手で抑えると

 

「ゲホッゲホッ…だ、大丈夫よ。それにしても、す、数千年前って…あなたそんな見た目でかなり生きてるのね…若そうな見た目だから全然予想してなかったわ…」

 

霊夢の目の前にいる男は髪こそ白いものの、艶はあり背も高く、体つきもしなやかな筋肉が着いていた。時に風に靡いた浴衣から偶に見えていた身体は、かなり引き締まっていた。

 

「で…そんな大妖怪サマは一体何処で紫と出会ったってのよ?」

 

「ふむ…確か、人里近くの森の中で私が風呂に浸かっていた時だったね」

 

 

…は?何を言っているんだろうこの妖怪は?

 

 

「あの時のことはよく覚えてるよ。のんびりと湯船に浸かっていたら

私の上に急に大怪我をした少女が落ちてきてね…」

 

 

どんな出会い方をしてんのよ!?しかも大怪我って…

 

「怪我ってどういうことよ!?」

 

博麗霊夢は他人に興味が無い事で有名だ。たとえそれが人間だろうが妖怪だろうが賽銭を入れない奴らは等しく興味が無い…が。そんな彼女だが一応育ての親のような存在がいる。それが八雲紫だった…その八雲紫が怪我をしていたと聞いて、霊夢に動揺が走っていた。

 

 

「ああ、何でも急に襲われた妖怪との戦いで深手を負って逃げていた時に、崖から落ちてしまったらしくてね…そのまま、下にいた私の温泉へと落ちてきたんだと」

 

 

なんだその偶然は…そんな事が本当に起こるのだろうか?

 

 

「それで…その時紫は?どうなったのよ!?」

 

霊夢は霞に詰め寄る。それも、霞の目と鼻の先まで

 

「待った待った…近いよ。霊夢。大丈夫さ、あの時の紫は私の温泉で怪我を癒したからすぐに回復したよ。何も心配することは無いさ…それにもう、過去の話だからね?」

 

「っ…し、心配なんかしてないわよ!何言ってるのよ訳わかんないわ!!」

 

男に不用意に自分から近づいた事と、紫を心配していた事を同時に見抜かれてしまい、霊夢の顔が赤く染まった。

 

「というかあなた今怪我を癒したって言った?貴方ってそんな事まで出来るの?」

 

聞き捨てならない言葉があった。入るだけで怪我を癒せるなんて普通の妖怪に出来るわけがない…

 

 

「あなた…一体何者?」

 

 

霊夢は目を細めて霞へ問う…霞は霊夢の訝しんだ視線を感じると

 

 

「さっきも言ったけど私は霞。太古の昔から人々や妖怪を癒し続けてきた…ただの温泉好きな妖怪だよ?」

 

霞は真っ直ぐな視線で霊夢を射抜くと、すぐにさっきまでの微笑み顔へと戻った。

 

 

「良かったら霊夢も一緒に入ってみないか?一応それなりに効能がある温泉なんだけど」

 

 

霞は霊夢にそう言ったが…

 

…は?

 

「…そ、それって私にあんたと風呂に入れってこと!?い、嫌に決まってるじゃない!いくらあんたが悪い妖怪じゃないからって、初対面でそんなこと出来るわけないじゃない!?」

 

 

普段霊夢が関わっているのは悪友の霧雨魔理沙と八雲紫…それに

たまに遊びに来る伊吹萃香…ぶっちゃけるとそれ位しかいない。そして、男なんて特に興味など無いが…こう、真っ直ぐに「風呂に入らないか?」なんて聞かれたことなんて今までに1度も無かったのだ。

…いや、普通は無いことの方が多いと思うけど

 

 

「そうか…それは残念だな。私自身、誰かと共に風呂に入ることが

ここ暫く無くってね…この神社に来る前に紫や椛の2人と入ったんだけれど、あれも確か数百年ぶりだったかな…?」

 

 

(っ…!?過去を懐かしむ様なことを言ったと思えば、こいつ紫と一緒に入ったとか言ってんだけど!?え、入ったの!?嘘!?それに椛…椛……そういやどっかで聞いたわね。確か天狗だったかしら…?あ、あの白いわんこか。

犬なら仕方な……いわけないわよね!?あれ立派な女よね!?嘘でしょ!?)

 

「あ、あんた複数の女と一緒に温泉に入るなんてとんだスケコマシじゃない!!この変態!信用して損したわ!!ええいもう退治してやる!弾幕ごっこで勝負よ!スペルカードは4枚ね!!!」

 

 

もう退治してしまおう。この妖怪は多分女の敵だ。

 

そう思ってスペルカードを出したのに、霞は一向に出そうとしない。

 

「ちょっと!!話聞いてるの!?早くスペルカードを…」

「ちょっといいか?」

 

霞はそう霊夢に問いかけると

 

 

 

 

「弾幕ごっことは何かな?」

 

 

…は?

え、と、何を言ってるのかしら…?幻想郷でそれを知らない奴って一体…?

 

「実は幻想郷には今日来たばかりでね…で、弾幕ごっことは一体何なのかな?」

 

なるほど、今日来たばかり…それにしてはなんか馴染んでる気がするけど…

 

「弾幕ごっこっていうのはこの幻想郷で主流になってる遊びのことよ。スペルカードと言うものを作って相手に弾幕を撃ってそしてそれを避けきったら勝ちっていうルールよ。」

 

 

どうやら本当に弾幕「ごっこ」らしく危険な弾幕は禁止らしい…本当に遊びのようなものなのだろう。この幻想郷では戦いの際に必ずこの弾幕ごっこで勝負をするらしい。人間も妖怪も神もできる遊び…か。

誰が考えついたのだろう?

 

 

「へぇ…楽しそうだね。」

「だからその弾幕ごっこで勝負って言ってるのよ!この女の敵!えっち!変態!」

 

散々な言われようである。だがスペルカードなど今日知ったばかりの

霞が持っているはずもなく

 

「うーん…そのお誘いは遠慮させて貰うよ…何分私は争いごとが苦手でね…そのスペルカード?とやらも持っていないんだよ」

 

「そ、そんな事言ったって複数の女と一緒に風呂に入るやつが信用できるわけないじゃない!?」

 

霊夢の警戒心は留まることを知らなかった。

 

「うーん…そこまで嫌がられるとこちらも気分が悪いしね…ならこの話はなかっことにし」

「おーい霊夢ー!!!」

 

 

神社の境内から大きな声が響いた。…ああ。嫌な予感しかしない霊夢はギギギと音が鳴るような動きで後ろを振り返る。…その先に居たのは

 

「霊夢ー?おーい居ないのかー?…せっかくこの魔理沙ちゃんが遊びに来てやったのにそりゃないんじゃないかー?」

 

どうやら霊夢と同じ年くらいの少女が金髪の髪を風に揺らしながらこちらへ近づいて来る…少女の見た目は特徴的であり、まるで魔法使いの様だった。

 

 

「あ、ちゃんといるじゃねーか。叫んでも出てこないから留守かと思ったぜ…ん?そこの男は誰だ?」

 

どうやら霞のことを聞いているらしい。

 

「ああ、私の名前は霞。ただの温泉好きな妖怪だよ。宜しく。」

 

その言葉に魔理沙は興味深く感じたらしく

 

「へぇ…霞っていうのか。私は霧雨魔理沙っていうモンだぜ。普段は魔法の森に住んでるんだが…お前この辺じゃ見ない顔だな?どこに住んでるんだ?」

 

「あぁ…今日この幻想郷に来たばかりでね。そこら辺はまだ決めていないんだよ」

 

「へぇ。今日ここに来たばっかりなのか。とんだ奇縁もあったもんだな…そんで一体どうして霊夢はこいつに対して、敵意を剥き出しにしてるんだ?」

 

魔理沙がチラリと視線を移した先での部屋の隅で、霊夢は霞の方を向いてぐるるるる…と唸っている。

…犬かよ?

 

「ああ。私の能力で温泉を湧かすから一緒に入らないか?と誘ってみたんだが、生憎断られてしまってね…」

 

(おお?なんかこいつ普通のことを言ってる風だけど結構やばいことサラッと言ってるぜ。これは私の中の魔理沙ちゃんレーダーがこいつは女の敵だとビンビンに警告しているぜ…?)

 

「…なぁ、なら私と弾幕ごっこで勝負しないか?もしお前がに勝ったら、その温泉とやらにこの魔理沙ちゃんが一緒に入ってやってもいいぜ?」

 

ふと、魔理沙がそんな事を言い出した。

その目は興味深そうに霞を見ており、爛々とした擬音が出ている様にも感じとれる。

 

 

「ちょっ!魔理沙!あんた何言って…」

「それは有難いけど…残念だな。私は弾幕ごっこをやったことがなくってね…」

 

「ああ、そりゃ残念だな。ならこの話はナシ…ところで本当に温泉なんて湧かせるのか?」

 

魔理沙が疑問に思ったのか霞へそう聞いた。すると霞が

 

「ならここで作ろうか?」

 

至極真っ当な顔でそう答えた。

 

「おお、そりゃいいぜ!現物を見たらこっちもモチベーションが上がってくるしなぁ!!やっぱなんか賭けないか?」

「そうか、なら即席で作らせてもらうよ。…ここでいいか。よっ、と」

 

霞は少し離れたところに妖力を流し込むと…魔理沙の目の前に、丁度2人入れる程度の狭い温泉が出来上った。

 

「お、おおおっ!?す、凄ぇじゃんか!?ホントに一瞬で温泉が湧いたんだぜ!?」

「嘘…ほんとに湧いてる…!?これが温泉を湧かせる力…」

 

 

そもそも、幻想郷に綺麗な温泉はほぼ存在していないと言っていい。もしあったとしても、それは整備されていない汚い温泉がほとんどである。それも殆どが森の中などにあるため、一般的に多くの人や妖怪が温泉になど入る機会など1度もなかったのだ。

…そして、そんな2人が目の前にある温泉を見て息を飲んだ事を確認した霞は、1つ提案をした。

 

 

 

 

「それなら今から霊夢と魔理沙の2人で弾幕ごっこをしてくれないか?で、負けた方が罰ゲームとしてこの温泉に私と入る…こんなルールでどうかな?」

 

何を言い出すんだこいつは…そんな勝負に乗るわけが

 

「よし、その勝負乗ったぜ!」

「ちょ、本気!?」

おい魔理沙ァ!?

 

「前々から霊夢をギャフンと言わせてやりたかったからな!まぁいつもは負けてやってるだけで、本気なんて出してないから霊夢が勝ってただけだしな!ほら霊夢!勝負しようぜ?」

 

ピキッ

挑発だと分かっているものの、霊夢の頭に青筋が走る。

 

「…フフ。いいわ…なら丁度イイわね。取り敢えずアンタをボッコボコにした後、そこの温泉にぶち込んであげるわ。それはそれは怪我も癒せて一石二鳥でしょうねェ?」

 

ピキッ

「…あぁ?霊夢よぉ…気が短いのはいけないぜ。こんなに愛らしい魔理沙ちゃんが負ける訳無いだろう?一旦頭冷やして温泉にでも入って、リフレッシュした方がいいんじゃないのかァ?」

 

 

 

二人の間を一瞬の静寂が襲う…!!

 

 

 

「「……上等ッ!!!」」

 

 

2人は上空へ飛び上がるとお互いスペルカードを構えた。

「霊符「夢想封印」!」

「魔符「スターダストレヴァリエ」!」

 

 

こうして、少女達による弾幕ごっこの火蓋は切られたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして2人の弾幕ごっこを真下で見ていた霞。

 

 

 

色鮮やかな弾幕を横目に見ながら湯船の中に腰を据えると

 

 

 

 

 

「ふむ。弾幕ごっことは美しいものなんだな…少々煩いけれど、それもまた楽しみの一つなんだろうね。こんな景色を見ながら温泉に入るのも、偶にはいいかもしれないな…」

 

 

 

 

2人の少女が弾幕ごっこで戦う中。呑気に湯船に浸かってそう零したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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