集中力が続かない…
スマホ持ってるとめっさ暑い。
「お、お姉様?私天狗って初めて見たんだけど…いつも皆、こんな感じなの…?」
「そんな訳ないじゃない!?」
「一体ここで何が…?」
咲夜は自分の目に映った光景に、息を飲んでしまった。そこには沢山の天狗や河童が工事を進めており…既に、二階建ての宿の形が出来上がっていた。
広場は綺麗に更地にされており、どうやらこの後…内装や庭造り。そして屋根の取り付けに入るのだろう…
…しかし、その広場にいた妖怪達は皆…頭のネジが外れてしまったのか、どうかしていた。
「だから天魔様よッ!この温泉宿はワシ達も使う憩いの場になるんじゃろう?それならばいつ、誰かに襲われても平気なようにッ!常日頃から自衛の手段を備えておくことは大切じゃと思うのじゃが!?」
「だーかーらーッ!!さっきからステルス性特殊迷彩仕様の壁とか対大型妖怪用連射型超電磁砲とか…不必要でしょうがこんなものッ!!お前ら河童はこの宿を一体何だと思ってるのよッ!!確かに河童の技術を見込んで依頼したのはこっちだけど、余りにも余計なことをするんなら…紬に言いつけて粛清してもらうわよこの馬鹿者がッ!!!」
「 お言葉ですが天魔様!既に1階の床下にはもしも核爆発が起きたとしても耐えられる設計の…地下シェルターを作ってしまっているのですが!?これは大丈夫でしょうかッ!?」
「アンタ達ははここをどんな危険区域だと思ってるのよッ!?…まぁ、それはまだ実用性があるし…良しとするけど…っておいコラそこのバカ爺ッ!!!その物騒な兵器を一体何処から出したのよッ!!お前、そろそろぶっ飛ばすわよ!?」
やたら物騒な設備を作りたがる河童と…それを受けて、酷く疲れた様子の天魔がそこには居た。
「わ、私はもうダメだ……お酒呑みたいよぉ…」
「しっかりしな萃香ッ!!あんたが抜けたらペースが大幅に落ちちまうじゃないかッ!それに、私たちもう既にやらかしちゃって紬にマークされちゃったんだから仕方ないじゃんか…私だって呑みたいに決まってるだろう!?」
「あー…霞の温泉が恋しい…」
「二人共ー?組み立ては終わったかなー?」
「「ヒイッ!?」」
「うーん…予定よりは出来てるね。頑張ったねー」
「そ、そうかい?」
「それなら良かったよ…」ホッ
「その意気で頑張ってねー?あ、宿ができたら宴会を開くから、そのつもりで居て下ねー?」
「え、酒飲めんの!?本当に!?」
「それを先に言っておくれよぉ!!そしたらもっと作業効率上がったのにぃ!!」
「それじゃあ頑張ってねー?」
「「おーッ!!!」」
物凄いスピードで宿を作り上げていく3人の鬼…
この3人だけでもう、天狗百人を越える仕事量をこなしていた。流石土木工事はお手の物な種族…
…先程までとは違い、ニコニコと浮かれた様子で持ち場の仕事に戻っていった。
…そんな中、天狗達は混沌の極みに至っていた。
「おいお前らッ!!さっさとここの整地と植え込み終わらせないと…って、寝てんじゃねぇよ起きやがれ馬鹿野郎ッ!!!」
「そうだぞ!お前らが働かないと全員メシ食えないまま徹夜することになっちまうんだぞッ!?俺にはそんなの耐えられない!」
「鬼子母神様…一体、どうしてこの山へ戻って来てしまったんだッ………!!!」
今の労働環境を嘆く者。
「あはははははッ!!!お仕事お仕事ずっとお仕事!!!あははははは!あははははははッ!!!」
「…!?おい!しっかりしろ!お前まで倒れたら誰がここの作業をするんだよッ!!!おい!衛生兵ッ!衛生兵はまだかーッ!!!」
…心身ともにぶっ壊れたのか、笑い出す者。
「ぐふッ……」
「ちょ、ちょっと貴方大丈夫!?しっかりしなさいよ!ここ、ただでさえ仕事遅れてるんだから…」
「お、俺はもうダメだ…ヘヘッ…俺ってば、つまんねぇ人生だったなぁ…志半ばで倒れちまうなんて、情けねぇ………
俺、生まれ変わったら下着になりたい。そして可愛い幼女の女の子に履かれたもるすぁッ!?!?」
「一辺死んでこいド変態野郎がッ!!!」
どこにでも居るただの変態の姿。
「かゆ…うま…」
「皆ッ!コイツから離れろッ!もう…手遅れだッ…!!」
色々と限界な者。
「紬さんみたいなボインの方が正義に決まってんだろッ!!あのおっぱいにはなぁッ…男の夢が詰まってんだよッ!!!」
「あぁ!?天魔様の方が絶対最強に決まってんだろうが!見ろよあの小ぶりなおっぱいッ!!あの慎ましさの極地から漂う色気が、お前には分からないって言うのかよッ!?」
「やんのかコラ!?」
「上等だよやってやろうじゃねぇかゴルァ!?」
そんな事を大声で叫びながら喧嘩を始める者…
河童達は何だかツヤツヤしているが…逆に天狗達は皆、どこかしらおかしくなっていた。
…元々、おかしい奴も多かった様だが。
力尽きたのか地面に倒れ込んだ天狗も多く、残っているのは多少の理性を残した天狗と……パワフルな変態しか、この場には居なかった。
何だか残念すぎる状況に、咲夜は頭を抱えてしまう…
すると、疑問点が浮かび上がってきた。
( おかしい…この工事が始まったのは、今日の昼頃だった筈でしょう…?流石に出来上がるスピードが早すぎる……鬼と河童の建築技術って、ここまで高かったのかしら…?)
「あ、咲夜さん!それに紅魔館の皆も!良いタイミングだねー…そろそろ天狗の皆が頃合いだったから、待ってたよー?」
「ッ!?き、鬼子母神様ッ!?」
そう咲夜が考えていると、いきなり誰かに声をかけられた。驚きながらも後ろを振り返ると…そこにはいつの間にかこちらへと来ていた鬼子母神こと、紬が居た。
「んー…やっぱり紬って読んで欲しいんだけどねー?ま、仕方ないか。今晩は!咲夜さん?」
「 今晩は…お待たせして申し訳ございません。鬼子母神様…」
「いやいや、大丈夫だよー?これからが本番だし…それと、天狗さんはそろそろ限界だから、フランさんとレミリアさんのおにぎりを配って貰っても良いかな?」
そう言って紬はレミリアの方を向いた。…すると先程まで呆然としていたレミリアはハッと意識を取り戻し、顔を少し赤くしながらも紬へと向き直った。
「…あ、ま、任せておきなさい?…美鈴!今すぐ荷物を持って来て頂戴!」
「あ、はい!すぐに持ってきます!!」
紬の視線を向けられたレミリアは、少し慌てながらも美鈴からおにぎりの入った木箱を受け取った。
そしてフランにもそれを渡して、近くにいた天狗の元へと近づいていった。
それを眺めていた紬達。
「天狗さんの反応が楽しみだねー?咲夜さん?」
「…そう上手く行くでしょうか…?天狗といえば他の種族を軽視する傾向がありますので、やはりここは私が行くべきだったのでは…?」
ニコニコと笑う紬に対し、咲夜の心は不安で一杯だった。拒絶され、酷い言葉をぶつけられたりすれば…2人は、傷ついてしまうだろう。そう思った咲夜は2人の後をつけ始めるが…
「ダメだよ?」
紬に止められてしまった。
何事かと思い、紬の方へと振り返ると…
「その時はその時。私、今の若い天狗さんには凝り固まった堅苦しい風習じゃなくて…自分の目で見て価値観を決めて欲しいんだよねー?
考え方の凝り固まってる、古い考えをした天狗さんが居ると…この温泉宿が出来上がった時に霞ちゃんに対して、やっかみをかける人が出てくるかもしれないしね?
そして椿ちゃんにも許可は貰ってるし、これは悪い天狗さんを炙り出す良い機会なんだよ?
…実は紫さんから嫌な報告を受けてしまってねー…?犯人、探してるんだよ。」
「犯人…ですか?」
その言葉を受け、咲夜は顔を強ばらせてしまった。
「ええ。だから少し、2人を利用させてもらうね?あ!危険な事じゃないから、心配しなくても大丈夫だよー?」
「…はい、分かりましたが…どうしてそんな輩が…?」
「…うーん…大方、私への不満を霞ちゃんへぶつけたいんだろうね?犯人を見つけたら、きつーいお仕置きが必要だよねー…」
「…では、微力ながらお手伝いさせていただきます。私にも、何だか腹立たしく思ってしまいますので…」
「あ!それは助かりますねー! 咲夜さん、ありがとうございますー?」
「 いえ…お気になさらず…」
「…そうね。なんか暗そうな天狗だけど、話が早くて済みそうね。いきましょうか…」
「 …美鈴。今すぐ草陰に置いてある荷物を全て持って、こちらに来なさい?
…お嬢様が配った瞬間。周りの天狗に配り回るわよ」
「は、はい!分かりました咲夜さん!!」
咲夜は美鈴へ命令を伝えると、残った荷物を美鈴へと背負わせ…2人の吸血鬼へと目を向けた。そして何も問題無いことを確認して、自分も動き出す……例え何が起ころうと、サポートできるように構えながら。
★
「フラン?こういうのは初めが大事だから…相手の目を見て、しっかりと渡すのよ?」
「はーい!分かった!…ねぇ、お姉様?あそこに居る天狗さん、1人だし…最初はあの人にしよう?」
「…そうね。なんかに暗そうな天狗だけど、話が早くて済みそうね。いきましょうか…」
フランが指さした先に、独りで黙々と作業を進めている…ウェーブのかかった栗色の髪を、紫のリボンでツインテールに纏めている少女がいた。
見た目から、あまり社交感が感じられないのが難点ではあるけれど…最初は男の天狗よりも、女の天狗の方がハードルが低いと感じた2人は覚悟を決め、その天狗の元へと歩み寄っていった。
「 ……ん?そこに居るのは誰ー…って、きゅ、吸血鬼ッ!?な、何で吸血鬼がこんな所にいるの!?」
「 私は紅魔館の主ことレミリア・スカーレット。…そんなに怖がらなくても良いじゃない?別に襲ったりなんてしないわよ?」
「だ、だって紅魔館ってあの趣味の悪い壁が全部真っ赤な館の事でしょう!?何でそんな所にいる吸血鬼が妖怪の山に居るのって聞いてるのよ!!」
突然現れた吸血鬼にパニックを起こす天狗の少女。
…それも仕方ないだろう。レミリアは知らないけれどこの少女…実はかなりの人見知りだったりする。そんな少女の元へ自分よりも強い吸血鬼が現れたりしたら…まぁ、そうなるだろう。
そんな少女の元へ、フランが駆け寄っていった。震える天狗の少女のスカートを指で摘み、少女と目が合った瞬間。天然物の上目遣いを…悪魔的な角度で決めながら笑った。
「…あのね?私の名前はフランドールっていうの!フランって呼んでね?今日はお姉様と一緒に紬さんに言われておにぎりを握ってきたの!」
「皆お腹すいてると思って…どうぞ! 」
その時、フランの愛らしさが爆発した。
(…ッ!?な、何なの?この可愛い生物…ッ!?)
その笑顔を真正面から受けた結果…警戒心は、あっさりと剥がれ落ちてしまった。
天狗の少女はフランから木箱を受け取ると…中に入っていた、小さなおにぎりを手に取った。恐らく、手が小さい事からこのサイズなのだろうけど…何だか、こんな事ですら可愛く感じてしまう…
「…わ、分かったわよ。有難く頂くわ…」
「うん!えっと…召し上がれ?」
そして、少女がおにぎりを口に入れた。
咀嚼し、味わって食べる天狗の少女。
その光景を…レミリアとフランはドキドキと、胸の鼓動を高鳴らせながら見つめていた。
そしてーーー…
「えッ…!?このおにぎり、お、 美味しいってレベルじゃないわよッ!?これ、どうやったらこんなに美味しく仕上がるのよ!貴方凄いじゃないッ!?」
あまりの美味しさに、驚いていた。
「ええ…良かったわね、フラン。やっぱり貴方の作る料理は皆が認める程の完成度なのよ!」
「えへへ…嬉しいね、お姉様…」
天狗の少女は、フランのおにぎりを絶賛してくれた。その事がフランにとって、何よりも嬉しく感じたのだった。
「貴方、凄い才能ね…ねぇ、今度貴方について取材しに行ってもいいかしら?」
「『シュザイ』…?それって、何の事?」
天狗の少女は先程とは違い、何だかとても明るい様子でフランへ話しかけると…フランに。取材を持ちかけてきた。
「あ、取材って言うのはね…その人の事が知りたいから、質問することなの。実は私、こう見えてもジャーナリストなの。けど能力の関係上、普段からあまり外に出なくってね?同僚のいけ好かない鴉天狗に
『貴方のネタは新鮮味に欠けますねぇ?』とか
『貴方の新聞に、私の文々。新聞が負けるはずが無いでしょう?さっさと引きこもってないでその羽使ってネタ探して来なさい?』なんて言われてるのよ…
けど、貴方のことを取材すれば…きっと勝てるわ!安心して頂戴!私だって新聞記者としてのプライドがあるから…どこかの鴉天狗と違って、誇張したゴシップ記事なんて書かないから!…どう?お願いできないかしら…?」
「うーん、どうしよう?お姉様?」
詳しくわからないため、レミリアに助け舟を求めるフラン。するとレミリアは先程とは違って敵意を剥き出しにすると、天狗の少女を威嚇し始めた。
「フラン!天狗の新聞なんて信用出来ないわよ!この天狗達はは異変を起こした時の私のことを、『赤い月夜に現れた吸血鬼の幼女』とか『悪趣味極まりない館、紅魔館』なんて見出しで新聞バラまいてたの、私知ってるんだからッ!!!」
「あんなのと一緒にしないでよ!?私の新聞はあんな新聞作りを遊びでやってる奴とは違うんだから!お願いしますフランさんッ!!」
「フラン、ダメよ!?絶対に恥ずかしい事を書かれちゃうわよ!」
何だか必死な様子の少女に押されて、フランは考え込んだ。『シュザイ』という物が何なのかがあまり分からないけれど…何だか、悔しがる少女の力になってあげたくなった。
「ねぇねぇ、その『シンブン』ってどんな物なの?」
「え、それも知らないの…?新聞っていうのはね…この幻想郷中の色々な情報を詰め込んでいて、更に沢山の人がそれを読んで色々なことを知れる…そんな、立派な物の事よ!」
自信満々な顔をした天狗の少女。
そして、それを聞いたフランの目がものすごい勢いで煌めき始めた。ずいっと前かがみになって天狗の少女へと詰めよると、ニコニコと笑顔を浮かべている。
「じゃあ、それに私が載ったら……私の事を沢山の人が知ってくれるって事!?」
「勿論そうよ!人だって妖怪だって…皆が、貴方のことを知ってくれるわ!」
「じゃあ、私にもお友達も出来るってこと!?」
「少なくとも、キッカケにはなるんじゃないかしら?」
その言葉を聞いて、フランの心は決まった。
「はい!そのシュザイ?ってやつ受けます!ねぇねぇいいでしょお姉様?私、お友達が欲しいの!」
そう言って笑顔を向けるフランに対して、もう止めることなどレミリアには出来なかった。私の妹、可愛い過ぎる。
レミリアは、仕方なくそこで折れた。
「…そこまで言われると、もう。しょうが無いわね…
ただし、その現場には私も居合わせること…これが必須条件よ。それで大丈夫かしら? 」
「勿論構わないわ!!それじゃあ取材に向かう日程をー…『おいはたて!貴様、何を1人でサボってるんじゃ馬鹿者が!』…って、五月蝿いのが来たわね…」
天狗の少女を呼び捨てにしたのは…大天狗の様だった。後ろにはその部下が何人か、ぞろぞろと付いてきている…
どうやらまだ、おかしくなっていないらしい様だが…後ろにいた天狗達は、かなりフラフラしていた。
「ちょっと休憩してただけよ!!私の分の作業は終わらせたんだから少しくらいいいでしょう!?」
「自分の分が終わったら他の所手伝いにいかんか!皆、まだ飯など食うておらんのだぞ!?」
「今から配られるんだから当たり前でしょう!?向こう見なさいよ!もう配られてるんだから…さっさと受け取ってきなさいよ!」
「ふん、飯なんて何処に………おい、まさかとは思うがあそこの人間が配り、そこの吸血鬼が持っているのが。我らの飯だとでもいう気じゃあなかろうな?」
大天狗は広場にいた咲夜達とレミリア達を指差して、尊大な態度のまま問いかけてきた。
「よく分かったわね。その通りよ?あのおにぎりは鬼子母神に言われて…私たちが握ってきたものよ。アンタの後ろの天狗達も、お腹が空いているのなら…こんな天狗の後ろじゃなくて、配給の列に並びなさい?」
そんなレミリアの意見を、大天狗は笑い飛ばした。
「はははははッ!!吸血鬼なぞの作った飯など怪しくて食えたもんじゃないわ!あの若い天狗共は全くなっとらん…どうして余所者が持ってきた物を、すぐに食おうとするのじゃッ!!我ら誇り高き天狗は、この神聖な森の秩序を守る偉大な存在なんだぞッ!?そもそもどうして我らがあんな鬼の言うことを、易々と聞かねばならんのだ!!」
それは誰が聞いても分かる程の、あからさまな吸血鬼を軽視する発言だった。
恐らくこの大天狗は、それなりの重役にいたものの…紬の存在により、己の肥大化したプライドを傷つけられたのだろう。
「…貴方、気に入らないわね…」
だからといって、吸血鬼にだってプライドがある。誇り高き吸血鬼の末梢であるレミリア。
そんなレミリアが怒りによって。手の平に妖力を集約し始めた瞬間。
グシャッ…ビリィッ…!!!
誰かが、大天狗の左の羽を…毟り取った。
「…え…?」
いきなり起こった事件に、部下の天狗達は呆然としながら乾いた声を漏らす。
「ぎゃあぁぁぁあぁあッ!!!!」
予想していない痛みに、大天狗が悶える。
そんな大天狗を、冷たい目で見下ろす鬼が…
そこには居た。
「 はーい…犯人、見つけちゃったねー…?」
現在改稿してますん。
ひと月前の自分からの成長を感じる…(願望)