投稿期間が空くかも…?
現在夏バテしてます。
朝。窓の隙間からふわりと吹いてきた涼しい風が、流れるように頬を撫でたことによって。微睡みの中に浸っていた霞の意識は覚醒した。
「…ん?」
窓から差し込んだ光が少し眩しく、思わず目を背けてしまった霞だったものの、そこで自身の身体の異変に気がついた。
眩しい朝の日差しを受け、咄嗟に目を覆う為に手をかざそうとするがものの両手が重く、思ったように動かせない。
それを不可解に思い、隣に視線を向けた霞。すると自分の腕を抱きしめながら眠る、2人の少女の姿が霞の目に飛び込んでき……ん?2人…?
…一旦、整理してみようか。
確か昨日の夜、自分は慧音にとっての地雷を無意識に踏み抜いてしまったハズだ。今思えばあれは悪いことをしたと思うし、よく考えてみればあの瞬間、慧音にかけてあげる言葉はもっと別にあったのかもしれない。
…問題はそこからだ。確かにそのまま私と妹紅があの時、夜の森の中で気絶してしまったから、慧音は私達の安全の為に、わざわざここまで私達を連れて、この家へと運びこんだのだろう。
…それも理解出来る。
だからこそ、妹紅が霞の腕を抱きしめながら隣で寝ていることに対してはまだ、自分の中でも納得が出来たのだが…
「…どうしてお前がここに居るんだ…射命丸?」
霞は自分の右腕を抱きしめながら、先程から狸寝入りをかましていた鴉天狗の少女に声をかけた。この幻想郷に来てから何度か頭をよぎっていた…
射命丸文が、そこに居た。
射命丸は声をかけられた瞬間、まるで最初から隠す気など無いように笑いながらゆっくりと目を開ける。
「あやや…寝た振り、気づかれちゃってましたか。お久しぶりですね?霞さん。
…あと、おはようございます?」
「ああ、おはよう…久しぶりだね?…というかお前、昔はそんな話し方じゃなかった筈だと思うんだが…一体どうしたんだ?」
…霞の記憶違いだっただろうか?確か昔の射命丸は…『何してるのよ?』とか、『霞もやってみればいいじゃない…』とか。そう言った椿を彷彿とさせる口調を使っていたハズなんだが…
今の射命丸の口調は柔らかいというか…まるで誰の意識にも溶け込むことが出来る様な、何処ぞのジャーナリストのような雰囲気がしていた。
…確か紅魔館で読んだ新聞の著者名は…嗚呼、成程。
「よくぞ聞いてくれましたね!これは私の長年の努力によって身につけられた…一流の新聞記者としての、処世術の1つなんですよ!!」
「射命丸。まだ隣で慧音と妹紅が寝てるんだ…起こしちゃあ悪いだろう?もう少しだけでいいから、静かにしなさい」
「え、あ、はい…すみません…
それで、霞さん?今、ご自分の置かれた状況について…全て理解してますか?」
霞にそう言った文の目…透き通った赤い瞳には。『私、知ってますよ?教えられますよ?』という風な、言葉にするのが難しいけれど…
所謂『頼ってくれてもいいんですよ?』感が満載の、期待の混じった色が霞には読み取れた。
そう言えば、昔から情報に関しては強かったなぁ…
そんな事を考えながらも霞は答える。
「うーん…ここに慧音が居るってことは…ここは人間の里…ってことになるのかな?…私としては、どうしてここにお前が居るのかが知りたいんだけどね…?」
「あ、はい!それについてはですねー…順序を追って説明していきますと。
事の始まりは昨日まで遡りますけどー…私は昨日1日。テロ行為をリークした報酬として賢者様と鬼子母神様に許可を貰って、隠れながらも霞さんの密着取材をしてたんですよ。それで『待て待て待て』…え?」
何だろう…今、なんか聞き捨てならない事があった気がする。具体的には密着取材とか鬼子母神とか…テロ行為だって…?
というか全く話が頭の中に入って来なかった。
「…結局、謎が謎を呼んだんだが?」
「あ、詳しく説明しますと…実は天狗の中に、鬼に媚びへつらう天魔など必要無いと豪語して謀反を企てたり。同僚の可愛くて仕事熱心な白狼天狗に気になる男性が出来たからって…嫉妬に狂ってその相手を見つけだして爆破してやるー…なんて宣う輩が現れたんですよね。
で、その情報を賢者様に伝えると…良くやってくれたと褒められまして。報酬として休暇を貰ったんですよ。
それで昨日、霞さんが『私の書いた新聞』を読んでいる所や…疲労困憊だった小悪魔さんを『完全に堕とした』所…そして、笑顔で抱きついてきたフランドールさんの頭を『撫でくり回してた』所までバッチリ見てましたよ!!!」
サムズアップしながらのやたら良い笑顔が、ガードを緩めていた霞の心に突き刺さった。発言の節々にやたらとアクセントを感じてしまったのは、多分射命丸の取材が本当に行われていたという証拠なのだろう。
…というか、後半の発言のインパクトが強すぎる。
「…昨日の私、全部見られていたのか…それならどうして隠れていたんだ?別に、知らない仲でも無いだろう?」
「え?そんなの簡単じゃないですかー?…別に顔を出しても良かったんですけど…魔理沙さんが近くにいると私にまで弾幕勝負持ちかけてくるんですよねー…
別に嫌いじゃないですけど、今は霞さんを優先したかったんですよ。
それに、少し顔を合わせ辛かったですしね…」
その瞬間。射命丸の顔に少しだけ、後悔の色が混じった事に霞は気がついた。
…そういえば射命丸とは長い付き合いだった筈なのに、ここに来てからは「天狗」と聞いても何故か思い出す事ができなかった存在だった。
…もしかして昔、何かあったのだろうか?
「…なぁ、取り敢えず話を1つずつでいいから飲み込ませてくれないか?」
「いいですよ?私もさっきの言葉だけで全て伝わるとは思ってなかったですし?」
射命丸はそう言って、目を輝かせながら霞の質問を待ち始めた。…実は霞は射命丸からこの話を聞いて…何個か質問したかった事があった。
一連の天狗の行動に…何故か関係があるんじゃないかと思える部分が霞の中で数箇所、見つかったからだった。
「まず…テロ行為やらリークやら…偉く外の世界の言葉を知ってるんだね?」
「それはですねー…やっぱりジャーナリストとして、色々な言葉を知ってる方が得をすると思ったからなんです。取材の幅が広がりますからね!」
「それは偉いね…で、その妖怪の山で起きかけたテロの原因って……もしかして私だったりするのかい?」
「あ、そうですよ?流石は霞さんですねぇ…ただそこに居るだけでトラブルを引き起こすんですから………よく分かりましたね?」
「…うん。お前の笑顔から察するに、それは褒められてはいないんだろうね…」
…どうやら当たっていたらしい。文のニヤニヤとした、こちらをからかうような視線が妙にくすぐったい。
大方、温泉宿を作ることを反対した天狗が居たんだろう。しかし、天狗は鬼に頭が上がらないのも事実。絶対的な縦社会の中でそんな謀反を企てた天狗は…既に、紬が粛清していることだろう。
自分がトラブルメーカーなのは…否定し辛いなぁ。
「あと、その白狼天狗の事なんだが…」
…何故だろう。ここで椛の姿が出てくるのは…?あの子は確かに仕事熱心で気遣いのできる可愛い子…だったけれど、別段特に何かした訳でもなく…ただ普通に、温泉に浸かっただけな様な?
「 …霞さんってば椛の事を考えてますよね?それ、もしかしなくとも当たってますよ?」
「 …ん?やっぱりそれも椛の事だったのか……というか、私は椛と一緒に湯に浸かっただけなんだが…どうしてそんなことに発展してしまったんだ?」
すると、射命丸は溜息を吐きながら霞へと苦笑を向けて理由についてを話し出した。
「あー…霞さん、そこら辺の常識が本当に昔っから変わってないですねぇ…
…良いですか?この幻想郷において霞さん以外に『私と風呂に入らないか?』
なんて聞いて、その相手が入ってくれるなんて…まず有り得ないんですよ。それこそ貞操観念ユッルユルな人間や誰かさんに心底惚れてる人ならともかく…
異性に肌を見せることを嫌ってるような女性…椛とか…あと、レミリアさんなんかとも一緒に温泉へ入れる霞さん。世間から相当ズレてるんですよ?
…それに、私だって…」ゴニョゴニョ
「………ん?」
何やら最後の方が、聞き取れ無かったけど…まぁ、普通はそうなのかもしれない。出会ったばかりの霊夢なんかには、かなり罵倒されてしまったし…
「あの時の椛って、霞さんの温泉に浸かったお蔭で髪も艶々お肌も赤子のような瑞々しいハリを持ってましたからねぇ…
…簡潔に言うと、魅力と色気が段違いでした」
「確かに……そうかもしれないな。…けど、どうもこれは私の性分でね…私自身、定期的に誰かと湯に入らないと…能力の使用上、問題があってね…?
だからここに来てから直ぐに入ってくれた、紫と椛には色々と感謝してるよ…」
霞は、ここに来た時のことをぼんやりと思い返した。あの時の椛には紫が迷惑をかけてしまったかもしれないけど……正直、あの時の紫の行動は英断だったと言えるだろう。
霞は能力の性質上、誰かと共に温泉へ入り、温泉へ力を吸収しないと…行動力や精神力。体力さえもが著しく減退してしまうといったデメリットを持っていた。
…だからこそ実際に色々とギリギリだった為、始めて椛に出会った時はかなり強引に湯船へと誘ってしまったが…
もし、あの時に現れたのが融通の利く椛では無く…排他的な概念の強い大天狗だったとしたら…? いくら大妖怪の力を持つ霞とはいえ、弱体化した身体で戦うとなっていれば…かなり危なかったかもしれなかった。
そう霞が上の空な状態でそんなことを考えていると……それを見ていた射命丸は何か、意を決した様な表情をして霞の隣からムクリと起き上がると…
「 …霞さん。お風呂、入りませんか?」
「…ん?」
唐突に、霞を風呂に誘ったのだった。
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そのまま風呂場へと連れられてきた霞。浴槽の中に温泉をどうにか湧かせていると…既に射命丸は服を脱ぎ終わっていた。相変わらず早い…
「 霞さ〜ん…気持ちいいですねぇ〜…?」
2人で入るには少し狭く、全身を伸ばせる程は広く作られていない慧音の家の湯船の中に、霞と文は浸かっていた。
この大きさが、文の好みらしい。
「なぁ…射命丸…?これ、流石に狭くないか?私一人でも結構、身体を伸ばすと狭く感じるんだけど…?
それに慧音にもしこの現場を見られてしまうとなったら、流石の私も…もう一度あの頭突きを食らうのは、遠慮したいと思ってるんだけど…?」
多分、今のこの姿を慧音や妹紅に見られると…恐らく、厄介なことに巻き込まれるだろう。妹紅は『ズルい!!』なんて言いながらこの中に入ってくるんだろうけど…慧音が見れば、即。あの頭突きが飛んでくるだろう。
…慧音の全力の頭突きは痛みに強い霞にとっても、衝撃的な痛みだった。
更に、元々身体が大きい事もあり…身体を伸ばすと直ぐに浴槽へと足が付いてしまう状態だった霞。
もしここに妹紅が来たとしても…何処に入れるスペースがあるんだ、コレ…?
そんな霞の耳に、呑気な声が響いてきた。
「慧音さんなら大丈夫ですよぉー?もしもここに来たとすれば…私の秘伝の奥義で腰砕けにできますので!!というか私、今それどころじゃ………あー…全身に染みますねぇ〜…♪」
霞を背もたれ代わりにして湯に浸かる射命丸は…上機嫌で霞の方へと腕を伸ばしながら…温泉を満喫していた。濡れた黒髪が頬に張り付いているのが妙に扇情的に感じられた。
霞の上に乗っているような状態の為、必然的に身体が霞に見られてしまうものの…上を見ながら、辺りを警戒するようにチラチラと浴室の扉を見ている霞には、あまり関係は無かったのだが、
色々と枯れている悟り世代の妖怪の霞にとって…顔なじみの裸程関心の薄いものは大方、他に存在しないだろう。
「しかし…これ、慧音の家なのに勝手に浴槽を借りても良かったのかい?」
「あー…それなら慧音さんには昨日許可取ったんで大丈夫ですよー…?下見は昨日の内にして置きましたので…充分2人で入れるサイズだと判断してましたし。
というか…霞さんってば本当にマイペースですね?私も久しぶりにこの温泉に入りましたけど…ここまで自分の裸に意識が向かない男の方って、私。逆にデリカシーが無いと思うんですよねー…
それなりに自分の身体には自信ありましたのに…霞さんってば毎回私の話を聞くばっかりだったじゃないですか?それも結構楽しかったですけど、女としては何だか複雑なんですよねぇ。
それに昔よりも効能上がってません?疲れが取れるスピードが昔と全然違うんですけど…
…これは霞さんがあれから相当の数の女性と混浴したことがすぐに分かりますねぇー…?」
射命丸のジト目がチクチクと突き刺さる。
それを受けて霞は1度、自分へもたれかかる天狗の少女の身体を一瞥する。
ここまで健康的な肉質の身体に、女性らしい丸みを帯びた身体は…鴉天狗の中ではそうそう居ないと言えるだろう。
そう思える程にバランスの良い身体を持ちつつ、他の水準も粗方高いのが…射命丸だ。
キメ細やかな肌にスラリとした手足。快活そうな笑顔やハッキリとした声など、多くの男を熱狂させるポイントを兼ね備えていた。
だからこそ、霞は邪な目でその身体を見る事が出来なかった。それは他の女性にも言えることなのだが…
( 直ぐに興奮する妖怪もどうかと思ってるけど…長い事紬といたせいか、大きな胸や女性として完成した裸を見せられても…良さが分からないんだよな…)
自分の温泉へ入浴してくれる存在を…無意識の内に敬ってしまう傾向があった霞は
『自分と入浴してくれる』事がまず嬉しく思う為、相手の身体への興味など…持ち合わせていなかった。
更に、昔から所構わず胸を押し付け、抱きついてくる紬の存在によって…
…女体に、完全に慣れていた。
だからこそ、文や紫などのスタイルの女性の裸を見たとしても…美しい芸術品を見ているような感覚に陥ってしまうのが霞なのだ。
だからこそ、女性から感じる魅力や色気などが…どうにも『 そういった欲 』に結びつかない。
「 …いや、私だって射命丸は綺麗な身体をしていると思ってるよ?他の天狗とは比較にならないくらいに…」
「…え?ほ、本当ですか!?」
突然、微笑み顔の霞に褒められたことによって顔を赤く染めてしまった射命丸。
そんな文へ、霞は言葉を続けてゆく…
「 …けど昔のお前は…妖怪の森に居た変態天狗に
『あ!射命丸さん…いつも良いおっぱいですね!』『霞さんって色んな天狗と風呂に入ってるんでしょ?ちょっと自分にも教えて下さいよ!特に自分、射命丸さんのサイズが知りたいッス!!』
『はぁ…あんなに短いのに、どうして見えないんだ…?文さんの下着は…ッ!!』
…そう言った話が耳に入った時は、怒り狂って暴れてただろう?だからそういった話は嫌いだと思ってたんだけど…」
昔の射命丸は…確かどこにでも居る変態に対し、『死に晒せッ!!』なんて叫びながら竜巻を起こしていた姿を…何度か見ていたような気がする。
「そ、それはあの天狗達は存在が不快だったので…でも、霞さんも男の人と湯に入る事もあったんですね?そう言えば大天狗の中にも数人居ましたけど…
あんな感じのゴツい人も好きなんですか?」
「…まぁ自分ではそこまで実感は無かったけど…色んな時代の人や妖怪と入ったよ。後、人間の男や妖怪の男とも入ったからって人聞きの悪いことを言わないでくれ…
何だか発言に悪意を感じるんだけど…?」
「…え?霞さんって両刀なんですか…?」
「違う。…流石にこの流れは止めてくれないか?」
「あ、ごめんなさい…でもなんだか懐かしくって。昔はよくこうやって入ってたじゃないですか?あの時の私って、霞さんだけには本当の自分を見せられたんですよねー…」
射命丸と共に湯に浸かっていたのは…もう、千年位前の事だろうか?確かに妖怪と湯に浸かってきた中で、文はよく『入らせて?』と、自分から温泉へと霞を誘っていた。
その分。長い時が流れたからといって…射命丸のことすら忘れていた自分のことが、とても恥ずかしく感じてしまった。
そうやって、霞が少し悩ましげな顔を浮かべているのを射命丸は横目で眺めながら…霞の膝の上に座っていた状態から、くるりと霞の方へと振り返った。
…当然、湯船に浸かっているので…今の文の身体には何も身につけられてはいない。
規格外の胸を持つ紬や慧音にはやや劣る物の、天狗の中ではかなりの大きさを誇る大きな胸が霞に押し付けられる。
霞もどうやら突然の文の行動に驚いているようで…目を少しだけ見開いていた。
その大きさ故にさらけ出した胸は湯船に浮かんでおり、文は少しだけ顔を赤く染めているが…そんな些細なことは頭の中から放り投げ、そのまま霞へと話しかける。
意を決した文が口を開いた瞬間。
「すみません…逆上せちゃいました…」
真っ赤になって目をグルグルと回している文はそのまま霞へと倒れ込む。
霞の全身に柔らかな感触が感じられると同時に、急いで射命丸の身体を抱き起こす霞。
「 あぁ…射命丸は、長湯が苦手なんだったな…」
また1つ、昔の出来事を思い返した霞。
そう呟きながら、慧音たちが来ないことを願いつつ
蒸し暑い浴室を後にしたのだった。