東方湯煙録   作:鯖人間

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書きもしない小説の設定ばっか考えてる…
これはダメなパターンだ。

昼夜逆転が治らないのは、深夜に書いてるから(確定)


月人と妖怪と紅に染まる鬼

輝夜と永琳を予め用意してあった『八雲紫特製の札』を使用した霞達の手によって、輝夜と永琳が深い竹林の中で佇む庭園へとスキマで連れていかれた時。

 

輝夜の屋敷では、月の技術を惜しみなく駆使した『対平民用周波』によって、力なく倒れ伏した兵士達の他…

 

乗り込んでいた五十人に及ぶ月人達と共に、十隻にも及ぶ天舟が墜落していた。

最初は予想外の展開に着いていけなかった月人達。しかし、次第に舟から降りてきた月人達が増え始めるのを見て…霞は『計画』を開始することにした。

 

「…そこの貴様ッ!!下賎で低俗な妖怪の分際で…ッ…図に乗るなッ!!我々の力に、月の技術に、穢れた妖怪如きの力が通用すると本気で思っているんじゃあ無いだろうな!

貴様等、ものの一秒で蜂の巣に出来るのだぞ?」

「我々の舟を落としたのは、貴様らだろう!?」

 

各々が銃を所持しているのか、武器を見せながら二人へと詰め寄る月人達。

それを霞と紬は何も言わずに眺め続ける。

 

「…チッ…おい、貴様らに出来ることは、さっさと我らに罪人を引き渡す事のみだ。

…さぁ、大人しく八意永琳と蓬莱山輝夜を何処へ連れていったのか吐いて貰おうか…

貴様だって、無闇に命を散らしたくは無いだろう?」

 

ここで、霞が動いた。目に思い切り反抗的な炎を宿しながら、目の前の月人へと答え始める。

 

「…あぁ…実にその台詞は私に言わせて貰いたいね。お前はここの月人達のリーダーをしているんだろうが…何もかも、想定内で納まってしまったよ。色々考えたこっちが馬鹿を見る結果なんて、笑えないね?

…周りが見えない『間抜けな馬鹿』によって、崩壊する軍隊の話なんて…多分湯浴み1回分すら繋げ無いような、結果の見えた話題になるだろうさ」

 

「…何だと!?」

「そんなに死がお望みならばくれてやろうッ!!」

 

霞の本音の混じった挑発の言葉によって、月人達は激怒したのか一斉にその手にかけた銃を撃つ為に銃を構える…

 

 

が、しかし。その瞬間、全員の身体が硬直してしまう。

 

「紬、今だよ」

 

「まっかせてぇー…!!そぉーれッ!!」

 

「「「ぐッ…ぐわああああああッ!!!」」」

 

紬による月人達の行った『対月人用妖力鎮圧』…要するに桁違いの妖力を使って相手の意識ごと刈り取る脳筋技を駆使した結果、月人達はそのまま意識を落として行った。

 

 

 

「…何コレ、弱いなぁー…」

 

「…そう言うもんじゃないさ。けどこれからどうするかな…紬はまだ本気を出してないのにこのザマとは。月の技術はどうなってるのやら…

それよりも紬?あの時まさか輝夜があんな風に月と戦うことに対して前向きになったのは予想外だったから…流石に説明無しでその札を使ったのって、実は輝夜達にはけっこう悪い事をしたんじゃないかな?」

 

「えぇー?今更そんなこと言われたって困っちゃうよぉ!それにあんなに覚悟を決めたのに、そのまま隠れ家へ転移された時の輝夜ちゃん……とっても面白かったじゃん?

あれは最高の顔してたねー…!!自分の身に何かあった際、あんな風に呆けた顔して周りをキョロキョロする所とか、益々椿ちゃんにそっくりだしさぁー…!!

…それにやっぱり私、自分の怒った姿って…あんまり人に見せたく無いから、こればっかりは仕方ないの。向こうでは紫ちゃんが居るんだから、それについては心配ないしね!」

 

そう言った紬は、照れくさそうに額を掻いていた。妖力を解放していくにつれ、そこにある象徴が疼くのだろう。

 

 

「そうか…なら私はあそこにいる、この月人達のリーダーらしき男と『お話』してくるから…ここに居る人は任せるよ。というよりも、これだけで足りるかい?」

 

「うーん…思ってたより弱いけど、大丈夫だよ?この人達、ちゃんと私も『オハナシ』しておくから霞ちゃんも頑張ってね!これが終わったらまた永琳ちゃんも交えてお風呂入るんだからねぇー!」

 

「…ああ。善処しよう…」

 

そう言って、霞は目の前に転がっている月人のリーダーと思われる男をむんずと掴んだまま、自身の妖力を固めて作った特別な空間へと入っていった。

 

 

霞はこれから、話し合いをするのだろう。輝夜を狙う理由は本当なのか、どうしても輝夜を連れて帰るつもりなのか…また、敵対した相手にはどのような態度で応じるのか…全てを把握した上で、行動すると決めたのだろう。

 

そして何より、紬のお願いを聞いてくれた事が一番の理由だと紬は信じている。

 

 

「…それじゃあ…私も本気出しちゃおうかな…ッ…」

 

しかし自分が行うのは、ただの肉体言語だ。

 

そう言った紬の額を裂きながら、紅く輝く一本の角が現れる。少し痛いがそんな事は気にしない。額を突き破って生えた真紅に染まるその角は…満月の光を反射して輝きながら、見る者にとてつもなく重厚な殺意と恐怖を振り撒いていた。

 

その姿はただひたすらに…紅く、重く、美しい。

 

鬼子母神としての力を完全に解放した紬によって、輝夜の屋敷周辺から月人達の生気が吸い取られていく。力を奪われ起き上がることも出来なくなった月人達は、それを呆然としたまま眺めることが出来なかった。

 

紬の黒髪は一瞬で白く染まり、目には紅い光が灯っていた。周りの建物はその膨大な妖力によって軋むような音を立て始め、その額から満月を割ろうとでも言うかのように、天まで届くかと錯覚する程のオーラを振り撒きながら突き出した角からは…赤い血が滴り落ちていた。その血は紬の頬を伝って…そのまま口元へと垂れていく。

 

 

「…ぁは……ははは………あははははははははははははははははははははははははははははははッ!!!!!!!!」

 

「…ヒィッ!?」

 

その血を紬が舌で舐めた瞬間、角から発してした光と共に周りへと爆発的に妖力が広がり始めた。屋敷の塀にはヒビが入り、堕ちていた舟は大きな音を立てて破損して行く。

どうやらそれを見て、月人達も思い出したらしい。遠い昔の日、地上を捨ててロケットへと乗り込んだ時…離れていく地上の中で、一点に光る紅い光があったことを。

そしてそれが、今自分の目の前にあるという事を。

 

「…はぁ…そぉんなにさぁー…怖がらなくっていーんだよ?私ってばさぁ…本当は恨みを抱えて何年も過ごすタイプじゃ無いんだぁー…?

けどぉ…ここに居る全員、死ぬ迄後悔させるのは…もう、決定してるからねぇ?

そんなに長い時間をかけてじわじわと嬲るわけでも無いんだけどぉー…やっぱり、霞ちゃんを哀しませた罪は極刑だから。絶対、許さないよぉ?」

 

そう言った紬の顔は、笑顔だった。それも、その少女のような見た目に映える最高の笑顔をしている筈だった。可憐に咲き誇るその笑顔は見るもの全ての動きを止めると共に…

その身体から発している、桁違いの妖力によって…立ち尽くす者、地べたに這いつくばる者…その場にいた月人達を皆平等に、圧力を与えていた。

 

「一秒でも早く、霞ちゃんに会いたいから…」

 

そして、動けなくなった月人達から…もう自分達には呼吸と後悔以外に出来る事は無いことを知らしめながら、月人達の全ての生殺与奪をその小さな手で。粉々に握りつぶした鬼は笑う。

 

 

 

「一撃で、楽にしてあげるねェ?」

 

 

 

 

月人達は、叫び声すらあげられないままに…目の前に佇む死を、最後の時まで眺め続けていた。

 

 

 

 

「…お目覚めかな?」

 

「…ッ…貴様等…!!我々にこんなことをしておいて、タダで済むと思っているのか!この妖怪風情が…早く蓬莱山輝夜をこちらに引き渡せ。さも無くば貴様の命は無いぞ?」

 

 

意識を取り戻した男に対して、いつもの様に振る舞う霞。そんな霞を見て露骨に嫌そうな顔をした男は、懐へと手を伸ばして小型の銃を取り出すと…それを霞に向けて構えた。

 

 

「ん…流石に、そんなモノで私が殺せると思わないで欲しいね。それと、私の質問に答えてもらうのが先に決まっているだろう?この空間がどうなっているかも知らないのに、良くそこまで上からものを言えるものだね…何だか逆に、その図太い神経は凄いと思うよ。

…まぁ、尊敬はしないがね?」

 

「貴様…ッ…月の技術を舐めるのも、いい加減にした方が身のためだぞ?貴様らのような地上の妖怪は、月と比べればまさに虫けらのようなモノに等しいだろう。なのに何故この私が貴様のような蛆虫如きの質問に答えないとならんのだ?」

 

 

男はそう言って、霞の質問を蹴り飛ばした。霞も予想を遥かに超える月人の態度を見て、失望に似た感情を胸に抱き始める。既にこの男との会話は、無意味に等しいと感じ始めてしまった。

 

 

「はぁ…ここまで筋金入りだと話にならないな。輝夜の言った通り、月に帰ったとしてもろくな事にならない。

…永琳のような存在が身近居ただけ、まだマシだったのかもしれないな…?」

 

『永琳』という単語を聞いて、男の様子が変化した。

…霞にとって、不愉快な方向へ。

 

 

「…貴様は何を言ってるんだ?蓬莱山輝夜の存在価値など、元から無いに等しいだろう『蓬莱の薬』なんてものを飲んだ罪人に、居場所など与えるはずが無いだろう?穢れを生み出し続ける害悪等、神聖な月の世界に必要ない。

月の民への見せしめの為に輝夜は連れて帰る。最悪1度殺すか四肢を切断してでも連れて帰るのは、このような罪人を増やさない為であり…永琳様の考えを正すために決まっている!!あの方にはもっと、月のためになる技術の開発をしてもらわないと困るんだよ…

我々はあの方が行う『家族ごっこ』に、いつまでも付き合う気は毛頭無い!」

 

 

「…あぁ、そうか」

 

それを聞いて、霞の目におぞましいモノを見るような、軽蔑の色が混ざる。

輝夜が月へと連れ帰られるのが嫌だと言ったのは…本当に、心から地上が好きだから離れたくないと言ったわけではなかったのだ。

しかしそれも霞には仕方ないと思えた。退屈から逃げた先にあったのは…希望ではなく絶望だったのだから。

目の前の地獄を知っていたから、輝夜はこの生活を捨てたくなかったのだろう。

 

霞は力なくそう呟くと、目の前の男を見据える。自分が今言った発言は間違っているとなど全く思っていないのか、先ほどと変わらずに傲慢な顔をして霞を脅していた。

 

 

本当に、この存在は好きになれない。

 

「これで満足か?それなら早く私ここから出すといい。命が惜しくないのか?あの罪人を護った所でお前に一体なんの得があると言うんだ?

煩く騒ぎ、禁忌に手を出し、我らから『月の頭脳』を奪った罪人等、何の価値も無いと言って……………ぁ?」

 

男の言葉は、最後まで伝わる事は無かった。男の背後から音もなく忍び寄った羽衣が男の体を縛り付ける。

身動きが取れずに慌てる男を蔑むような、冷酷な眼で見つめる霞は徐々に羽衣の締め付ける力を強くしてゆく。

 

 

「ああ。そうか…やっぱり、そうだろうな。非常に残念なことだが…どうやらお前達の言葉に、嘘偽りは無いらしい。

…だがお前は大いに選択を間違えたよ。見ていて清々しい程に、お前はその月人が1番だという自己中心的な考えに囚われた挙句、盲信的にそれを信じているからこそ…

今現在の自分の立場が見えていないらしい。

…お前は何を言っているんだ?何が命だけは助けてやるだって?…お前達は揃いも揃って、一体何を寝惚けた事を言ってるんだか…本当にお前達は救えないね。

この際だからはっきりと言っておこう。実は私達もかなり怒っているのさ…昔から、お前達のやり方なんて笑えないし、今回の輝夜の送還だって気に入らないし、お前達の頭は実に短絡的過ぎて…理解したく無いんだと思うよ。こんなにも頭にきてるというのに、もうお前達に関心を持ちたくないと思える自分もいる程だ」

 

「きッ…貴様…!!!我ら月の民に、穢れた妖怪の身で楯突こうと言う気かッ…!地を這う虫けらが、何を言うかと思ったら…何故、妖怪如きが我々に向かって対等に話す口ぶりなんだ?私には理解出来んな…」

 

「あぁ。私は今でも争いも闘いも、ましてや殺し合いなんて嫌で嫌で仕方無いけれどね……お前達は、どうやら違うらしい。どれだけ腹を割って話しても、共に湯を汲み交わしたとしても…お前達とは絶対に、私が相容れることは無いだろう。

なら、こちらも輝夜を護ると決めたんだから…それを脅かす存在には、相応のお返しをさせて貰わないといけなくなるからね…

………お前は、全力で潰すよ」

 

その瞬間、急激に締め付けた羽衣によって…男の体を砕く音が空間全土に響き始める。

 

「ぎ…ッ…あ、がッ…あああぁあぁああッ!!!!」

 

痛みによる絶叫と、泣き叫ぶような悲鳴が混じった音を聞ききながら…霞は呟いた。

 

「安心するといい…ここは私の空間だ。輝夜達の安全を確認すれば、その羽衣を取りに戻るから…気長に待つといい。

何、私が創った空間だ…私の能力にかけて、お前は絶対に死なないさ」

 

「た、助けッ…ぎッあ、があ、あ…ッ…アッ…!!」

 

自分でも信じられないほどに冷たい感情を持ったまま、霞はその空間から出る事にした。

 

やはり自分は、肉体を殺す事は出来ないらしい。

 

─────────────────────

 

 

「あっおかえり!霞ちゃーん!!!」

 

霞の目の前にあったのは…紅い花が咲き乱れた屋敷の姿と、いつも通りの紬の姿。

 

変わり果てた屋敷を見て、霞の心は揺れていた。

 

 

「…仕方ない。名残惜しいけど…私達もここを去るとしよう。こうなった以上、もうここには住めないし…たった数ヶ月程度しか過ごしていないけれど…この都での暮らしは充分、楽しめたよ。

…ああ、そうだ。こうなるなら最後に、折角だからあの茶屋で団子を買っておくべきだったかな…?」

 

そんな言葉を聞いて、紬の口角が上がる。

 

「…ふっふっふー…霞ちゃん。お団子ならここにあるよ?どーですかこの大きさと柔らかさ!まさに至高の団子だと思わない?ねぇねぇー…」

 

そう言って紬は霞の背中によじ登りながら、むにゅんと身体を密着させる。

大方こちらの返事を待っているのだろう。いつもなら小言を返すところだが…

 

今は何故か、安心感を感じていた。

霞の心を見据えた紬の行動に、心は支えられている。

 

「…あぁ…ありがとうね、紬」

「うふふ…どーいたしまして?」

 

そう言って二人は紫に貰った札を使い、スキマを開く。

 

行き先は輝夜達のいる…『永遠亭』

 

 

 

 

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