赤いベーシストはバンドもしたいけど恋もしたい! 作:倉崎あるちゅ
私はただこれが書きたかった。
8.25 Happy Birthday!! Lisa!!
今日は八月二十五日。つまり、アタシ──今井リサの誕生日だ。
その筈なのだが、ショウや友希那からおめでとうのメールすら来ない。去年は来ていたのに。
友希那は忘れてそうだなぁ。最近作曲や作詞に忙しそうだし。ショウは……どうなんだろう。彼の性格からしてこういう誰かのイベント事って毎回覚えてると思うんだけど……。
うーん、うーん、とベッドに横になってゴロゴロと転がりながら唸る。
今年に入って、RoseliaのメンバーやPoppin'Partyをはじめとしたガールズバンドパーティの人達に出会って知り合いも増えた。日菜や薫、モカ達After glowと言った同じ学校の子達とPoppin'Party──ポピパの有咲とかはおめでとうのメールや電話が来て祝ってくれた。
ただ、Roseliaのメンバーはまだ、誰一人としてメールや電話がない。別に無くてもいい。少し、ほんの少しだけ悲しかったりするけど。
「……ショウも、忘れてたりするのかな……?」
携帯を見ながらその言葉を発して、目に涙が浮かぶ。ボフッと顔を枕に埋めた。
このまま寝てしまおうか、なんて考えた瞬間、家のインターホンが鳴った。今、母さんは買い物に行ったきり戻ってこないため家にいない。必然的にアタシが出ないといけないんだけど、今とてもそんな気分じゃない。
何度かインターホンが鳴ったが、しばらくして鳴り止む。
すると、玄関の扉が開く音が下から聞こえてきた。
「えっ?」
母さん? 買い物袋が多過ぎて開けて欲しかったのかな? いやでもそのまま二階に来ないよね? なんでこっちに来てるんだろ。
枕から顔を上げて、自室の扉を凝視する。
足音が止まり、一拍置いた次の瞬間、バンッ! と扉が勢いよく開け放たれた。
「おいこらリサ! いるなら出ろよ!」
眉間に皺を寄せて、口をへの字に曲げた少年が、ポカンと口を開けたアタシに言う。
いやいや、なんでショウがいるの? 鍵確か閉めてあったはずなんだけど。
そう言いたいのに言葉が出ない。
「……ん? リサ、何泣いてんだ? 何かあった?」
アタシの目に浮ぶ涙を見て、ショウがアタシの方に歩いてくる。傍まで来ると頬に触れ、優しく涙を払ってくれた。
「なんだー? お化けが出る夢でも見たか?」
ニヤニヤと笑いながら訊かれる。
そこでやっと頭が動いて、ショウに頬を触れられている事を意識してしまい、一気に熱を帯びる。
「ち、違うから! というか、なんでショウがアタシの家に……」
「暇してたからリサ誘って買い物にでも行こうかなって」
「で、でも鍵閉めてたはずなんだけど」
「それはさっき、おばさんから鍵預かってな。寝てたら起こしてってのも言われた」
アタシは母さんの行動に呆れて何も言えなくなった。確かに、部屋から一歩も出てないから寝てるって思われても仕方ないんだけど。
「さて、リサは身支度済ませて降りてこいよ。下で待ってる」
「え、ちょっと!」
「いいから支度すること! 色々と目のやり場に困んだよ!」
そう言って彼は部屋から出て下に降りていった。
というか、目のやり場に困るって……? 少し考えると、アタシの今の格好って部屋着のままだった。しかも、ショートパンツだし脚が大きく露出してる。
私服の時もショートパンツ履いてるけど……部屋着とお洒落してる服とはまた違う。
──すっごい恥ずかしいんだけど!!
♪ ♭ ♪ ♭
で、家で軽くご飯を食べたらすぐにショウに手を引っ張られて、いつも来るショッピングモールとは違う、アクセショップに来た。看板を見る限り、お店の名前は『Feel』というらしい。
なんか、高校生が手を出すには敷居が高いものばかり置いてあるんだけど。
「ここ、ハンドメイクのアクセショップなんだ。SNSで知り合った人がここの店長さんでさ、すげぇ綺麗なアクセサリー作るんだよ」
そう言ってショウは、如何にもこだわりがありそうな装飾が施された指輪を手に取る。
言われてみれば、ここに置かれている商品達は、いつも行くアクセショップより温かみを感じる。一つ一つ丁寧に作られて、まるで命を吹き込むような、そんな感じ。
「あら、ショウ君じゃない。いらっしゃい」
ショウといろいろ見て回っていると、女性店員さんが話しかけてきた。この人なのかな、店長さん。
「
「主人なら製作途中よ。もう少しで終わると思うわ。……そちらにいる女の子は、ショウ君の彼女さんかしら?」
「うぇっ!?」
チラリとお店の奥を見て言ったと思ったら、まさかアタシの方に来た!? しかもうふふ、なんて気品のある笑い方をされたら悪気があるのかないのかわからないよ。
「違うって景子さん。この前話したRoseliaのベーシスト。わかってて言ってんでしょ。うちのベーシストはこう見えて純情乙女だから、からかわないでやって下さいよ。顔真っ赤にしてるし」
「ふふっ、ごめんなさいね。今井リサちゃんよね? ショウ君から話は聞いてたけど、本当に可愛いわねー!」
イマイチ理解が追いついてないアタシはパチパチと瞼を瞬かせるだけだった。
ショウから話を聞くと、この女性の方は
その間にアタシは景子さんと話をしながら、可愛らしい商品を見ていた。
「──それで、今日はアタシの誕生日なのに、ショウやRoseliaのメンバーはおめでとうも言ってくれなくて……」
若干不貞腐れながら景子さんに愚痴を言う。彼女の雰囲気がそうさせているようで、どこか安心する。ほんの少しだけ母さんに似てるかもしれない。
「そう……。でも大丈夫よ。話を聞いていただけだけど、ショウ君やRoseliaの皆は貴女の誕生日を忘れるなんてしないと思うわ」
「でも……」
「大丈夫! わたしも昔はそういうのもあったから、言えるわ。いい事が起きるはずよ!」
だからね、と景子さんは笑いかけてくれる。
「リサちゃんはいつも通りにしていればいいわ」
「……はい!」
景子さんに励まされ、だいぶ気持ちがスッキリした。
またしばらくお話してショウの事を待つ。少しして、奥の部屋からショウと男の人が一緒に出てきて、男の人が店長さんなのだとわかる。
「悪いリサ、待たせた」
「ううん、景子さんといっぱい喋れたし大丈夫♪」
「待たせたお詫びになんでも良いから持ってこいよ」
「え? いや、いいよ別に。悪いし」
「んー……リサはやっぱそう言うよなー」
どうするか、と言って首を傾げると、ショウは何かを見つけたみたいで、それを取ると店長さんを連れてレジの方に向かった。
──って、それもしかして。
「これでよし。ほらリサ」
「……やっぱり」
ポン、と手に握らされるラッピングされた四角い箱。
どう考えてもアタシが、いい、って言ったお詫びのものだろう。ホントにいいのになぁ。そこら辺頑固なんだから。
「俺が買いたいから買った。それをリサにあげたいからあげたんだよ」
「……ありがと」
「ショウ君買ったやつ、女の子にすごい人気のやつだから期待するといいよ」
「櫂さん、余計な事言わなくていいっス」
「ははっ、ごめんね。つい」
まったく、とショウは溜息をついてアタシの手を掴んだ。
「んじゃ、そろそろお暇します。ありがとうございました」
「うん、またねー」
「気をつけて帰ってね」
「へーい」
「あ、ありがとうございました!」
アタシ達を見送る二人に頭を下げて、お店を出る。
しばらく歩いてカフェで休憩することにした。注文を済ませて、アタシはさっき貰った箱の中が気になって、対面に座るショウに訊いた。
「ねぇ、ショウ」
「ん?」
「もらったもの、開けていい? 気になっちゃってさ〜」
「いいよ。リサにあげたものなんだし」
「ありがとう♪」
ショウに開けていいか訊いて、了承してくれたから早速ラッピングを丁寧に剥がす。
うわっ、箱凄い高そうなんだけど!? 中は一体どんなのが……。
緊張する手で箱の蓋を開けると、そこには銀色に光る、二つの輪っかが重なるブレスレットが入っていた。所々に紅い石が嵌められていてとても綺麗なアクセサリーだった。
「……い、いいの? こ、こんな綺麗なアクセサリー……アタシに」
「リサにあげるって言ってんだから素直にもらっとけよ」
そう言ってショウは視線を逸らして左耳を触る。
彼がピアスが着いた左耳を触る時は、隠し事や嘘をついてる時、もしくは照れてる時だというのは一年とちょっと接してきてわかった事だ。
何を企んでるのかはわからないけど、景子さんも言ってたし、何かあるんだろうなぁ。あ、これが誕生日プレゼントなのかな? でもまだおめでとうも聞いてないし……あとでサプライズ的なのあるのかな?
「あー……リサ、その、だな」
「ん? どしたの?」
「……誕生日おめでとう。言うの遅れてごめん」
「っ! ううん、いいよ! ありがとう♪」
そっかぁ、あの時左耳触ってたのは言い遅れて、今更言うのが気恥ずかしかったからかー。やっぱりショウってばそういうとこ可愛いなー♪
アタシがそう思ってると、ショウがそれと、と言葉を繋げる。
「そのブレスレット、内側に名前掘ってあるんだ。櫂さんがサービスしてくれたんだ」
言われてブレスレットを手に取って確認してみる。
ホントだ。文字書いてある。綺麗な筆記体で『Lisa』って書いてある。凄いなぁ、ブレスレットの幅、そんなに無いはずなんだけど。
流石はプロ、と店長の櫂さんを讃える。
今着けていいかも訊いて、いいよって言ってくれたからアタシは手首に着けた。凄く綺麗で可愛い♪
その後注文したものが届いて、軽食を食べながらなんでおめでとうを言うのが遅れたのか訊いたら、アタシが泣いてたのを見て吹っ飛んだらしい。その時にショウは顔を少し赤くしてたけど、多分アタシも顔を赤くしてると思う。
チャットじゃダメだったのかって訊いてみると直接言いたいからだって。ホントそこも頑固だ。
♪ ♭ ♪ ♭
カフェを出てから、ショウとショッピングモールで秋服が出てたから、どんなのが良いか相談しながら買い物をした。他にも、本屋に立ち寄って、恋愛物やライトノベルを見て回った。
ライトノベルも読んでいくうちに、あこが好きそうだなぁ、とか、友希那と紗夜に似てるなぁ、とか燐子に似合いそうな服だ! とかいろいろ思うようになって来て、それをショウに言ったら彼も笑ってくれた。
その次に、ショウが珍しく俺の家に来て欲しいって言ったから、今はショウの家の前まで来ている。いつ来ても大きい家だと思う。
中に入って、靴を脱ぐ。先にリビングに行こうと思ってリビングに続くドアを開けた。
すると──
パンッ! パパンッ! パンッ!
「きゃっ!」
『リサ、誕生日おめでとうー!!』
クラッカーを手に持ったRoseliaのメンバー、アタシの母さんと父さんにAfterglowのメンバーと雨河さん、まりなさんが笑顔で待っていた。
「え……え? な、なんで……?」
「そりゃあ、リサの誕生日を祝うために決まってんだろ?」
戸惑うアタシの頭に手を乗せて、ショウが悪戯が成功した時の子供みたいな顔でニヒヒと笑う。
もしかして、あの時に左耳を触ってたのはこれだったの!? え、でも理由聞いた時嘘ついようには見えなかったけど。
「ちなみに、カフェの出来事はぜーんぶホントの事な。嘘ついてもバレるってわかってるし」
ショウがニヒヒと笑いながらそう言う。
「ショウには嘘をつかないように徹底させたわ。その方が成功する確率もあがるもの」
「そうですね。紅宮君はわかりやすいですから」
「あー! それあこにもわかります! ショウ兄ってばすーぐ左耳触るよねー!」
「わたしにも……わかる……くらいだもん……ね」
「お前ら! それ俺が単純って言いたいのか!?」
友希那、紗夜、あこ、燐子に次々に言われると、ショウが心外だと言わんばかりにツッコミを入れる。
それを聞いて他の皆にも笑いが湧いた。
アタシも笑って、笑いが収まると、皆の目を見て行って口を開いた。
「皆……ありがとう! 凄く嬉しいよ♪」
お礼を言うと、異口同音にどういたしまして、と返される。
あこが、アタシの手を引いてこっちこっち! と興奮気味に椅子に誘導してくれた。テーブルには、つい先程並べられたであろうご馳走が湯気を立てている。
他の皆も椅子に座る。アタシ両隣には友希那とショウがいる。
「さぁ、主役が登場したんだ! せーので歌うぞー!」
今回の事を企画したと思われるショウが、皆に言う。あことモカ、ひまりがおー! と返事をした。
「よし! ……せーの!」
『Happy Birthday〜 dear リサ〜♪ Happy Birthday〜 to you〜♪』
『おめでとー!!』
「……ホントに皆、ありがとう……!」
♪ ♭ ♪ ♭
「さて! 皆、お腹も落ち着いてきてプレゼントも渡し終えたかな? ここからは、俺達Roseliaのライブだ! リビングを出て向かいに防音室があるから、そこに入ってくれ!」
しばらくモカ達と喋っていると、ショウが楽しそうにそう言った。
アタシはもちろん、母さんと父さんにモカ達や雨河さん、まりなさんは知らなかったみたいで、皆首を傾げていたけど言われた通り防音室に向かった。
そこでは、もう既に準備万端のRoseliaのメンバー達がいた。さっきから見かけないと思ってたらここにいたのかー。
『ライブと言っても、二曲しかやらないんだけどな。んじゃ頼むぜ、友希那、紗夜、あこ、燐子』
マイクを手にしたショウが言うと、四人が頷く。そして、マイクをスタンドにセットして、次に彼が手にした物は、白色の一本のベースだった。
スティングレイと呼ばれる、高音にクセのあるベースだ。
友希那、紗夜、あこ、燐子。そしてショウの五人で演奏するようで、まさかショウが演奏するなんて思っていなかったであろう皆が驚きの表情を浮かべている。アタシも、まさか観客側になってショウが弾く姿を見れるとは思ってもみなかった。
『まず一曲目、ショウがBirthdayソングだって言うから、演奏します。……Re:birth day』
あはは、違うと思うんだけどなぁ。でも、ショウらしいや。それに乗っかってあこと燐子が賛成したんだろうなぁ。
アタシじゃなくて、ショウだから曲も少しアレンジが加えられてる。おそらく、これ練習したの最近じゃなくて一ヶ月以上も前だと思う。拙いものだったら、友希那と紗夜が許さないもんね。
アウトロが終わり、次の曲に移る。次の曲はなんだろうと思ったら、聴き慣れたイントロが流れた。
『陽だまりロードナイト』。アタシが凄く好きな曲だ。
聴いた瞬間、涙が流れる。拭わないでそのまま、演奏するRoseliaのメンバー達を、アタシは笑顔を浮かべて見つめ続けた。
♪ ♭ ♪ ♭
演奏が終わり、聴いていた皆から拍手が送られた。
俺は四人と顔を見合わせ、楽器を置いて皆の所へ戻る。すると、リサが微笑みながら泣いていて、俺と友希那に抱きついた。
「ホントに……ありがとう、友希那、ショウ……! 今日の日は一生忘れないから……!」
「大袈裟ね、リサは……」
「あぁ、ホントだよ。それに、感謝を言うのは俺らの方だからな?」
ハンカチでリサの涙を拭いてあげて、俺は一つの紙袋を部屋の端っこから持ってくる。
中身を取り出して、その箱の蓋も開ける。
そこには銀色のネックレスが収められていた。装飾に薔薇が施されていて、花弁に紅い石が嵌められている。実は、リサに買ったブレスレットもこれと同じシリーズなのだ。
「Roselia全員とお揃いのネックレス。皆石の色が違うんだぜ?」
「ちょっと、ショウ、それ私達聞いてないわよ?」
「言うわけないだろ、俺個人のプレゼントだし」
なんで言ってくれないのー! とあこからも言われたが、俺がそうしたいからしただけだ。
そうやってRoseliaの面々と会話をしていると、リサが黙っている事に気づいた。
「……本当……ぐすっ……あり、がと」
さっきより泣いて、俺の服を掴んでお礼を言われた。
「あー! ショウ兄がリサ姉の事泣かせたー!」
「いけないんだーショウさん」
「女の子泣かせたらあかんっていつも言ってるやろー?」
あこ、モカ、雨河さんがわかってるくせに言ってくる。とりあえず無視して、リサの頭を撫でる。
いつもは髪が崩れるから嫌がるけど、許してくれた。
「こちらこそ、いつもいつもありがとな、リサ」
──陽だまりのように眩しい彼女に、感謝を。
イベもあるわ、執筆もあるわ、仕事もあるわ、リサ復刻来るわで大変でした( ̄▽ ̄;)
完成してよかった。
ちょっとネタバレもありましたが、御容赦下さいm(_ _)m
今回のリサ復刻で、リサに全てを賭ける覚悟でガチャを回したら水着リサ来てくれました。
書いたら出るんだなって実感しました。
今回、読んでいただけてありがとうございました。それではまた近いうちに。