赤いベーシストはバンドもしたいけど恋もしたい!   作:倉崎あるちゅ

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遅くなってすみません。
北海道が全域で停電していたため、ネットも上手く繋がらず、更新出来ない日々でした。
倉崎は無事です(*´ω`*)
電気も復旧して水道も直りました。


それでは、陽だまりの少女、本編をどうぞ!


二曲 青薔薇のはじまり

 

 ──このバンド、ギターだけ上手くて、他は話にならないわね。皆バラバラでバランスが悪過ぎるわ。

 ショウに紹介されたギタリスト、氷川紗夜さんの演奏を聴くために聴いているけれど、あのフレーズを弾ける技術もだけど、土台となる基礎が尋常じゃないレベルね。流石ショウや彼の知り合いが候補に挙げるわけね。

 そんなショウは真剣な表情で、会場の奥でPublic Address(P A)の仕事をしている。ああやって、どんな演奏でもしっかり責任をもって仕事をするのは彼の良さね。

 だからこそ、ショウには私と一緒にバンドを組んで欲しかった。彼のベースは高い技術がある。それも、プロに負けないくらい。

 結局断られてしまったのだけれど。

 氷川さん達のバンドの演奏が終わり、一旦休憩となった。

 

「あ、ねぇ、あれって友希那じゃない?」

「しっ。聴こえるよ。友希那は気難しいって、有名なんだから」

「……」

 

 ライブを見終わると、数人の観客が私の事を話す。

 ──なんて言われようと別に構わないわ。私は、必ずあのフェスに出る。そしてお父さんの……私の音楽を認めさせる。

 私は氷川さんにバンドの勧誘をするため、会場を出てロビーに来た。すぐ後ろに誰かが来た気配がして、振り向くとショウが来ていた。

 ここ最近、というよりもリサと接してきて、彼女の料理を食べ続けているからか、彼は最初に出会った時より表情や雰囲気が柔らかくなった。リサと同じのようで違う陽だまりのような温かい雰囲気だ。

 

「声かけるんだろ? 俺も行くよ」

 

 友希那だけじゃ言葉足りないからなぁ、と笑うショウにムッと来た私は肘で彼の鳩尾を殴る。

 うっ、と呻く彼を置いて私は氷川さんがいる場所へ行く。しかし、なにやら彼女達は口論しているようで、とてもじゃないが話しかけられるような雰囲気ではない。

 これは、話が終わるまで待つしかないわね。

 

「いくらパフォーマンスで誤魔化しても、基礎のレベルを上げなければ後から出てくるバンドに追い抜かれるわ」

 

 確かにそうだと私も思う。隣のショウも小さく頷いている。

 氷川さんの言葉の後、バンドメンバー達は、練習と課題で寝る時間も無いと言った。その後には氷川さんにバンドの技術以外に大切なものは無いのかと問うた。

 

「無いわ。そうでなければ、わざわざ時間と労力をかけて集まってバンドなんてやらない」

「……っ! ひどいよ! 私達は確かに、いつかはプロを……って目指して集まった。でも皆、仲間なんだよ!」

「仲間? 馴れ合いがしたいのなら、楽器もスタジオも、ライブハウスもいらない。高校生らしく、カラオケかファミレスにでも集まって騒いでいれば充分でしょう」

 

 この子の考え、私と似てる。……そうか、だからショウと彼の知り合いは候補に挙げたのね。

 

「噂以上にストイックだな……。けど、友希那とは気が合いそうだな?」

「えぇ。……そろそろ話が終わるみたいよ」

 

 結果は氷川さん一人がバンドを抜ける形になった。

 他のバンドメンバー達はライブハウスから足早に立ち去っていく。

 それを見送った氷川さんは、はぁ、と溜息をついた。

 今なら話しかけるチャンスね。

 

「……少しいいかしら」

「……っ! はい、構いません。さっきの、聞いてました、よね? すみませんでした。人がいるとは気付かずに……」

「えぇ、聞いていたわ。けれど、私もそう思うもの。馴れ合っている時間があるのなら練習に使う方がいいわ」

「そう言っていただいて助かります。それで、話とは?」

 

 私はショウやリサのように、あまり言葉数は多いとは言えない。むしろ少ない方だ。だから、無理に言葉を多くする事は無い。余計な言葉はいらない。単刀直入に言う。

 

「氷川さん──いや、紗夜。提案があるの。私とバンドを組んで欲しい」

「──えっ?」

 

 

 

 ♪ ♭ ♪ ♭

 

 

 

「氷川さん──いや、紗夜。提案があるの。私とバンドを組んで欲しい」

「──えっ?」

 

 先程抜けたばかりの氷川さんに、友希那がそう提案を持ちかける。

 にしても、いくらなんでも急過ぎるし言葉少ないと思うのだが。氷川さんも驚いて目を見開いてるし。

 

「……私と貴女で、バンドを……? すみませんが、私は貴女の実力もわかりませんし、今はお答え出来ません」

 

 まぁ当然だろう。氷川さん、『CiRCLE(うち)』来るの初めてだし友希那の実力はわからないだろうな。現に彼女は友希那にこのライブハウスは初めてだと言ったし。

 さて、ここからは俺も話に参加しようか。このままだったら、険悪な雰囲気になりかねない。

 俺は前に進み、友希那の隣に立った。

 

「彼女の実力は確かなものだよ、氷川さん」

「貴方は、PAをしていた……」

「紅宮将吾です。ショウや将吾、紅宮でもなんでもどうぞー」

 

 笑ってそう言うと氷川さんは、では紅宮さんと、と生真面目な返事をする。

 

「ショウ、貴方は下がってて。私だけで──」

 

 すると、隣の友希那が食い下がってくる。しかし、俺は最後まで言わさずに遮った。

 

「いやいや、実力もわからない、の時点でお前自分の歌で見せつけてやる的なの考えただろ? 険悪な雰囲気にするつもりかよ孤高の歌姫サマ?」

「…………そんなつもり、ないわ」

「考えてたのか……」

 

 長い間と瞳を逸らす感じからして考えていたらしい。

 少しカマをかけたのだが、まさか当たるとは。

 

「とにかく、まず自己紹介すらしてないのに、なんで最初にバンドを組んで欲しい、なんて言うかなー」

「そ、それは……」

 

 ここで普段のリサの存在が大きく出るな。クラスでどうしてるんだろうか。確かリサとは別のクラスだと思うんだけど。

 ま、そこは追々。今は氷川さんだな。

 俺は氷川さんに視線を向け、隣の友希那の背中をポンと軽く叩く。

 

「彼女は湊友希那。今はソロのボーカルをしてる」

「……挨拶が遅れたわね、湊友希那よ。私はFUTURE WORLD FES.に出るためにバンドメンバーを探しているの」

「で、それを手伝ってるのが俺っていうわけ。氷川さんならフェスの事聞いたことあるんじゃないかな」

「っ! 私も以前からFUTURE WORLD FES.には出たいと……。ですが、知ってるとは思いますがあのフェスはこのジャンルの頂点とも言えます。フェスに出るためのコンテストですらプロでも落選が当たり前」

 

 続けて彼女はいくつものバンドを組んできたが実力が足りず諦めてきた、とも言う。

 

「ですから、それなりの実力と覚悟がなければ、私はバンドを組みません」

「その心配は無いと思う。友希那の実力はここら辺じゃ有名だ。『孤高の歌姫』なんて呼ばれるくらいだからな」

「……私はフェスに出るためなら、何を捨ててもいいと思ってる。貴方の音楽に対する覚悟と目指す理想に、自分が負けているとは感じていないわ」

 

 穏便に済まそうと思って間に入ってるのに、どうしてこうも喧嘩口調なんだ友希那は。それほど氷川さんに入って欲しいって事なんだろうが。

 取り敢えず、だ。彼女には友希那の歌を聴いてから判断してもらおう。

 

「取り敢えず、友希那の歌を聴いて判断してくれないか。その方が手っ取り早そうだ」

 

 友希那に言っておいて、結局はこの結果に落ち着くのか。……前途多難の予感だ。

 

「わかりました。ひとまずは一度、聴くだけです」

「えぇ、それで充分よ」

「あぁ」

 

 

 

 ♪ ♭ ♪ ♭

 

 

 

 

 将吾、友希那、紗夜が話し終え、三人はそれぞれの場所に向かった。将吾はPAの仕事。友希那はステージで待機。紗夜は観客としてだ。

 友希那の歌が始まる前に観客の人数が増え始め、それを見た将吾は笑みを浮かべる。

 ──一年前より大分増えたな、友希那のファン。

 そう思いながら彼は自分の近くにいる紗夜の背中を見た。

 その彼女は予想よりも観客が多く、その観客達が口々に友希那の名を呼ぶものだから大いに驚いていた。

 ──すごい熱気。こんなにファンが……? しかも押しているのに全然騒がない。……皆、あの子の歌を待っているみたい……。

 ゴクリ、と喉が鳴る。

 静かな会場の中、入口から入ってきた二人の人物が会話をする。

 

「ほら、ここがドリンクカウンター。ステージから一番遠いから、ここにいれば押されないからね……って、りっ、りんりん!? あわわわ〜! りんりんの顔が青いー!」

「……う、うちに……わたし……帰……」

「りんりんしっかりしてぇ〜!」

 

 会話が聞こえてきた将吾と紗夜は、その方向に目を向け、人物を確認する。

 ──りんりん? え、なに、まさかNFOのりんりんじゃないよな? 違うよな?

 ──あの人……確か同じクラスの白金(しろかね)さん? 彼女もファンなの? それにしても、隣の子騒がしい……。

 将吾は顔には出さずに内心汗をダラダラと流し、紗夜はクラスメイトの少女の隣の背丈が小さい少女に対しムッとした表情を浮かべる。

 彼女が注意しようとした、その時──

 

「───♪」

 

「っ!」

「……! やっぱ……カッコイイ……!」

 

 曲が流れ始め、友希那がその美しい声を響かせる。

 紗夜は目を見開き、背丈の小さい少女は目を輝かせた。

 ──!? ……なに、この声……? ……こんなの……。

 紗夜のクラスメイトの少女は青白かった顔色が治まるほど驚いている。

 ──本物……だわ。やっと……やっと見つけた……!

 ステージ上で歌う友希那を見て、紗夜はそう確信付けた。

 そして、ライブハウス端にいた見た目が派手な少女──今井リサが幼馴染の成長を見て呆然としていた。

 アクセサリーショップに行くと言っていた彼女だったが、やはり気になったのか、将吾がライブハウスの中に入ってしばらくした後に彼にバレないように入ったのだ。

 

「去年の海の時より……凄い……」

 

 将吾からは毎回友希那のライブの様子を聞いて知っているが、直接見たのは久しぶりだった彼女は呆然とした後、温かな笑みを浮かべる。

 一方PAをしている将吾は観客の反応、歌っている友希那の状態を見て、浮かべていた笑みを一層深めた。

 

 




原作コピペにならないように、在り来りですがライブハウスにリサを紛れ込ませました。
どうなるかはお楽しみに!



…………感想………………来ても………………いいのよ…………? (/ω・\)チラチラ
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