赤いベーシストはバンドもしたいけど恋もしたい! 作:倉崎あるちゅ
あの後あこに、友希那が歌う曲を教えて、ドラム練習を頑張れと伝えてから、彼女は燐子と一緒に帰って行った。
リサは燐子と自己紹介した後から会話に参加せずに、ずっと考え事をしているのか上の空だ。
こんな感じで悩んでるリサを見るのは少し苦手だ。調子が狂う。
どうしたものか、と思った時、ふと数時間前のことを思い出した。
「アクセショップ、行ってないだろ? 行くか?」
「あ……うん」
本調子ではないリサを連れてアクセショップに行き、どんなものがあるのか見て回る。
去年だったらこういう店は入りづらかったのだが、リサに連れられて入る機会が増えたため周りの視線も痛くも痒くもない。俺自身、アクセサリーに興味は持っているため見ているのも楽しいものだ。
「なんか気になるものあったか?」
「んー、あるにはあるけど……微妙かな〜」
「そっか。じゃあ、今度来た時はいいやつ入荷してたら良いな」
そうだね〜、とリサは頷く。先程よりだいぶ元気が出てきたようだ。そのあとはアクセショップを出て二人で帰る。
友希那の歌を久しぶりに聴いたリサは少し興奮気味に感想を口にしていた。
次に話題に出たのは、やはり気になるのか、紗夜についての話になる。いくつものバンドを組んできた事、音楽に対する真剣さ。そして、なにかに対する意地のようなもの。
「あ、そういえば、うちのクラスに氷川
思い出したようにリサが言う。
「へぇ、同姓……って事は姉妹なのかな。写真ある?」
「待ってね、確か新学期始まる時にみんなで撮ったような……」
リサがスマホを操作して写真を漁る。しばらく待つとあった! と言ってずいっとスマホを突き出して俺に見せてきた。
画面を見ると、画質は粗いがしっかりとその人物が映っているのが見えた。
おお、この氷川日菜って子、確かに紗夜そっくりだな。という事は双子なのか。
その子について訊くと、性格は元気いっぱいで、なおかつ少し不思議なところがあるようで、たった一人で天文部なる部活に入っているらしく、理由を聞いたら、るんっ♪ って来るかららしい。
本当に紗夜と姉妹なのかと疑問に思う。顔以外似てない。
あれこれ話してたらリサの家に着いた。
それじゃあ、と言って俺は帰ろうとした時に、呼び止められる。
「……さっきの、アタシが支えるっていう話なんだけど……」
俯いて話す彼女に、何も言わずに続きを言うように促す。
「本当に、アタシに出来るのかな。……アタシ、中二の頃にベースやめちゃったからブランクあるし……初心者に近いんだよ……?」
「確かにブランクはあるだろうな。けど、結構前に友希那が言ってたんだ。リサはいくら口で忘れたーとか言ってても体は覚えてる、って。ダンスにしてもテニスにしても、そうじゃないか?」
不安そうに瞳を揺らすリサの眼を見つめて言うと、彼女はハッとしたように少し眼を見開く。身に覚えがあるようだ。
「ベースだってそうかもしれない。口で忘れてる、って言っても、きっと体は覚えてるかもしれない」
「…………」
リサは黙ったまま俺の言葉を聞き入れている。俺はそのまま、もし、と言葉を繋げた。
「もしも、本当に忘れてたなら……俺が教える」
次の言葉を言おうとすると、少し心臓の鼓動が早くなる。なんでだろう、と思いはするが、そんな疑問は無視して俺は彼女の瞳を見つめて言葉を紡ぐ。
「──俺が、リサを支える……!」
♪ ♭ ♪ ♭
頬がかあぁ、と熱くなる。
ショウから聞かされたその言葉を理解した瞬間に、アタシの心臓の鼓動は早鐘のように打つ。
「友希那を支えるリサを、俺が支える……!」
だから、と続ける。
「友希那と一緒に、バンドを組んでみてほしい。リサなら絶対うまくいくって、俺は思う」
翡翠色の瞳がアタシを見つめ続ける。視線を逸らしたくても逸らせない。……違う、逸らしたくない。
ここまで一生懸命な彼の気持ちを無下にするなんて事をしたくなかった。
アタシは胸に手を置き、未だに鼓動が早い心臓をおさえるようにする。
「……わかった。アタシ、やってみる! 友希那を支えてみるよ」
アタシがそう言うとショウは安堵したように笑みを浮かべた。アタシもいつもみたいに笑う。
「だから、ショウはアタシの事支えてよね♪」
調子に乗ってウィンクもする。するとショウはわかったよ、と言ってアタシの頭をワシワシと撫でた。
「ちょっ! 髪崩れるってばー!」
もー! と睨むと彼は左耳に触れていた。
ははーん、さてはショウ照れてるなぁ?
「なにショウ? 照れてる?」
「照れてねー」
「嘘だー!」
ほらほら〜、と顔を背け始めるショウの視界に入るように動いていると、ガチャ、と玄関のドアが開く音が聞こえた。
「リサ〜? 帰ったの? 何騒いでるの〜?」
「ぁ……」
「…………」
振り向いて確認するとドアを開けてこちらを見るアタシの母親の姿があった。
しかも今のアタシとショウは結構近く、というかほぼ密着している。
た、タイミングが悪過ぎるよ……。
「か、母さん……」
「あらあら? お邪魔しました〜♪」
「ちょっ、ちょっと待ってっ!?」
バッ、とドアにかじりつき、アタシは母さんを呼び止める。
「なになに、どうしたの? ゆっくり彼氏くんとお喋りしてていいのよ?」
「ち、違うから! か、彼氏じゃないから!」
めっちゃ笑顔でそう言われて、アタシはまた頬が熱くなったのを感じた。
「そうなの? ご飯出来てるから、彼も一緒にどうかしら?」
母さんがショウを見て笑いかける。
あ、アクセショップ見て回ったし時間遅くなっちゃったし、ショウの家行ったら結構遅くなっちゃうなぁ。
「あー、どうする? この時間からショウの家行ってアタシ作っても遅くなるよ?」
「…………バカリサ」
「ふぇ?」
ショウが頭を抱えて何故かアタシの事を罵倒してくる。よくよく考えてみると、アタシは失言をしたのだと理解した。
「ふふっ」
隣を見るとニコニコと微笑む母さんがいる。
「違うからぁぁぁぁ!!」
♪ ♭ ♪ ♭
ムスッとした表情で隣に座るリサが黙々と、彼女のお母さんが作った料理を食べている。それをニコニコとした表情で見守るリサのお母さん。
あはは、と笑いながら二人を見る俺。
どういう状況なんだ。いや、リサの家でご飯食べてるだけなんだけど。あ、この肉じゃが美味しい。やっぱり親子だな。味付け似てる。
「ごめんって、リサ。機嫌直して」
「母さんなんて知らない」
顔を背けて白米をはむはむと食べる彼女を見て、リサのお母さんは困ったように笑う。
「でも驚いたわ。リサがよく話す男の子がこーんなかっこいい子だったなんて」
「い、いえ、俺なんてただ目付きが悪いだけなんで……」
ふいにかっこいいなんて言われ、気恥ずかしくなり左耳を触る。
「去年から付き合いがあるのに紹介してくれないんだもん、母さん悲しいわ」
「だって今回みたいな事になりそうだったし……」
どうやら、去年の海の時は俺の事は見えていなかったらしい。
そのあとも根掘り葉掘り俺とリサの関係やら友希那の事、学校、バイトの事を訊かれて、俺とリサは訊かれた後はげっそりとした雰囲気を漂わせていたと思う。
そして、一番の爆弾発言は、俺の家で夜ご飯や弁当を作るリサの事を通い妻、と言った事だろう。これには俺とリサはお互い顔を真っ赤にした。
──なんでこんな事になったんだ。これは多分、リサも思ったに違いない。
最近、Twitterが活発になってきていろんな作者さんと絡むようになったんですけど、なかなかに皆さん面白かったです。
それと、ハーメルンに登録してない方、Twitterの方で更新情報上げてますのでどうぞ。
@kurasaki_hameln
でやってますので。
それでは、失礼しまーす!