赤いベーシストはバンドもしたいけど恋もしたい!   作:倉崎あるちゅ

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少し遅くなってすみません。

今回のイベ、リサ欲しくて課金しましたけど全く出ませんでした。泣きたい。有咲出たから実質リサ出たと暗示かけてます。

それと、お気に入り登録数があとすこしで400行きそうです。ありがとうございます。評価も下さって嬉しいです。


七曲 決意

 

 

結局、ベースの練習をしたあとリサと買い物に行った。料理はしなくていいと言っていたため、俺が頑なにリサに料理をさせなかった。

不貞腐れていたが、俺の、リサの料理とは比べ物にならないくらい拙い料理を食べたら機嫌が良くなっていた。自分で食べても彼女に比べたら美味しくない。

リサは満足そうな、俺は不満の表情を浮かべ、リサの家まで来た。

 

「ありがとねー♪ 美味しかったよ、ショウの料理」

「自分のじゃ全然美味しくないって思うんだがな……」

「そんな事ないって! 自信持ちなよー」

 

リサにそこまで言われて、渋々納得する。

家に送ったし帰ろうとすると、リサに呼び止められる。なんだ、と思って振り返って彼女の方を見た。

 

「この間、友希那のお父さんに良いベース無いか聞いたんだ。そしたら、知り合いから一本使わないベースあるから貰うって話があるんだって。それアタシにくれるらしいんだけど、慣れるために練習付き合ってほしいなーって思ってさ」

 

ダメかな、とリサが不安そうに訊いてくる。俺は呆れたように溜息をついて彼女に言う。

 

「リサの事、支えるって言っただろ? 遠慮してないでどんどん言っても大丈夫だから」

「ホント? よかったぁ」

「にしても一本使わないから、ね……」

 

使わないにしてもベース一本に相当な金額が必要になる。それを使わないから、という理由で誰か譲渡するのはただの馬鹿か、金持ちか。

そんなことを思っていると、リサが俺にスマホを見せてきた。

 

「これがその貰う予定のベースなんだけど……」

 

見せられた画像を見ると、一人の女性が紅い色のベースと一緒に映っていた。

長い黒髪で、顔の両サイドで紅い紐で結われた髪形。切れ長の翡翠色の瞳の見た目30代前半か後半の見た目。

そこまで見て思考が停止した。

これは俺の母親だ。俺とよく似た髪色に瞳の色。目元まで俺とそっくり。完全に俺の母親──紅宮優凪(ゆうな)その人だった。

アホだ。アホとしか言いようがない。何やってんだあの母親。去年の年末に少し帰ってきたと思えば急に居なくなるし、その次はまさか使わないベースを他人に譲るとかアホか。

しかも友希那の父親と知り合いだったなんて。通りで湊で聞いたことあるなと思ったわけだ。

 

「凄い綺麗な色だよねー♪ 楽しみなんだー届くの!」

「早く届くといいな」

「うん!」

 

リサにはこの事は言わなくていいだろう。言って気を遣わせるのが嫌だ。

というか、このベース、あのアホ専用カラーのベースで一本しかない筈なんだけど。やっぱ馬鹿でアホだ。それを忘れてる可能性が大きい。

顔に出さずに心の中で自分の母親を罵倒して、俺はリサに別れを告げ、さっき通った道を歩いていく。

しかし、ここでリサが自分のベースを持つのは大きい。俺の家だけでなく、彼女の家で自主練習もできるので上達する速度が早くなるだろう。オリジナル曲の完成度も上がる。

あとはやはりキーボードか。俺個人としてはあこと親しい燐子に入ってもらいたいのだが。この間断られたし、入ってくれるなんて都合のいい話あるわけないか。

はぁ、と軽く溜息をついて前を見ると、そわそわして挙動不審な動きをする燐子がいた。

 

「何やってんの、燐子」

「ひゃっ……!? ……あ、ショウくん……か。良かった……」

 

ビクッと肩を震わせて俺の姿を確認すると、燐子は胸を撫で下ろした。辺りも暗いし驚いたのだろう。

それにしても、何故ここに? 迷子になったのだろうか。

 

「どうしたんだ? 俺の家の前で」

「ぁ……いや……その…………くて……」

「ん?」

「は、話……直接……聞いて、欲しくて……」

「話? いいぞ。どんな内容?」

 

言いながら家の鍵を開けてドアを開ける。燐子に家の中に入るように促して家に入れる。

お茶をコップに注いで椅子に座らせ燐子の前に置く。

 

「えっ、と……今日、あこちゃんに……動画を見せて……もらったんだけど……」

「あぁ、あれか。どうだった?」

「……凄かった……ピアノと、合わせて弾いて……みたら……引き込まれる、みたいで……。動画……じゃなくて……本当の演奏と……合わせたら……どうなんだろう……って思って」

 

必死に自分の思いを伝えようと、燐子は俺の眼を見つめて言葉を紡ぐ。逸らしそうになる瞳がずっと揺れている。

 

「バンド、入りたいって思った?」

「わ……わたし、ずっと……ずっと一人で……弾いてたから……皆と演奏したいかな、って……」

「ライブで人前に立つ事になるけど、大丈夫?」

「そ……それは……」

「立つ自信が無ければやめといた方がいい。オススメしない」

 

少し、嫌な事を言った。

仲のいいフレンドで、友人である燐子を試すようにそう言って、俺はお茶を飲んだ。彼女は少し俯き、しばらく黙り込む。

燐子のはあくまで演奏してみたい、という興味。しかし、俺が求めているのは興味ではなく挑戦や決意だ。これは友希那も同じだろう。

そして、次に燐子が顔を上げた時、その瞳には決意の光が灯っていた。

 

「わ……! わたし……! 頑張る、から……! 動画じゃなくて……実際に、皆と弾きたい……!」

「っ!」

 

実際に会ったのはこれで二回目くらいだけど、大きな声なんて出してるの初めて見た。

 

「ひ、人前に……立てる……ように、変わりたい……!」

 

その言葉は正しく、俺の求めていたものだった。挑戦、決意。自分を変えたいという挑戦する事の決意。これならピアノの実力を見て、友希那に再度バンドに入ると言うことが出来たなら、燐子は加入することが出来る。

俺はパン、と柏手を叩いて椅子から立ち上がった。

 

「よし! よく言い切った! 友希那には俺から連絡しておくよ。キーボードが見つかったって」

「っ……うん、あり……がとう……ショウくん」

「いいや。お礼を言うのは俺の方だ。ホントに、自分の意思で伝えに来てくれてありがとう」

 

そう言って燐子に手を差し出す。彼女も俺の手を恐る恐る手を握る。

 

「嫌なこと言ってごめんな。でも、それくらいやらなきゃ友希那とか紗夜がうるさいかと思ってさ」

「ううん……大丈夫、だよ……」

 

再度ありがとう、と燐子に言って手を離す。

あとは友希那にキーボードが見つかったと報告するだけだ。そしてオーディションの日程。それで加入する事が出来たら、俺の役目は終わり。一年探してきた友希那のバンドメンバーが遂に集まる。

 

「それじゃあ友希那に報告しておくよ。他に何か用事ある? 聞くけど」

「大丈夫。あ……でも」

「ん? 何かあった?」

「ゲーム……する時の、環境……とか知りたい……なって……」

「あー、なるほどね。いいよ、んじゃ俺の部屋行こう。……あ、猫大丈夫? 部屋に猫いるんだけど」

「大丈夫……だよ」

 

良かった、と言ってお盆にお茶が入ったコップ二つとクッキーなどのお菓子を乗せてリビングを出て二階の俺の自室に足を運んだ。

俺の部屋を見るなり、パソコンのスペック、ゲーム機、本棚にある本達を見た燐子がテンション上がってたのが強く印象に残った。

 

 

 

♪ ♭ ♪ ♭

 

 

 

数日後のCiRCLEのカフェテラス。

あの日、燐子を家に送ってから友希那に連絡をし、予め燐子の都合のいい日程とバンド練習の日程をすり合わせて、今日、燐子のオーディションが始まる。

あこは燐子がピアノをやっていた事を知らなかったようで、なんで教えてくれなかったのー! と言って、その前に知っていた俺にも飛び火した。理由を話しても彼女は不貞腐れていた。

もう既に燐子には何個か動画を送っていて、それで練習してもらっている。他には課題曲をやってもらう事で技術の底上げを図った。

 

「燐子さんといったかしら? 課題曲は貴女のレベルに合ってた?」

「友希那……さん……! わ、たし……動画と……その……たくさん一緒に……」

「動画? 演奏レベルを確認したいのだけれど、それは難しかったという意味?」

 

訝しげに聞く友希那の表情は厳しい。誤解を生まないためにもしっかりと言わなければならない。

 

「そういう訳じゃないんだ。練習の動画を燐子に送って、それで練習をたくさんしてきたんだ。もちろん、課題曲も俺が目と耳で大丈夫な事も確認済み」

「そう……。そういう事だったのね。オーディションはリサとあこの時と同じで、一回だけ。それでダメなら帰ってもらうわ」

「はい……わたし……が、がん……ばり……ます……」

 

少し緊張気味の燐子はそう言って肩を強ばらせた。俺はそんな燐子の肩を優しく叩いて大丈夫大丈夫、と励ます。

 

「動画に合わせてたようにやれば上手くいく。自信持って、な?」

「そーだよ! りんりんならいける! ってあこもそう思う!」

「期待に応えてくれる事を祈っています」

「気張らずにやろうよ♪」

 

俺の他にもあこ、紗夜、リサが口々に燐子を励ましていく。彼女もはい、と頷いた。

 

「それじゃあ、スタジオに入るわよ」

 

友希那のその一言で俺達はぞろぞろとスタジオに入っていく。今日はまりなさんが居ないのか、男の先輩が対応してくれた。その際に女の子多くて羨ましいな! などとからかわれたが、友希那と紗夜の冷ややかな視線を受けて、先輩は黙って作業に戻って行った。

可哀想に。けど自業自得だ。

用意されたスタジオに入り、俺は楽器のチェックとアンプやエフェクターなど機材のチェックに入った。あんまり時間をかけたくないため、友希那と紗夜、リサにも手伝ってもらってすぐに終わる。

 

「準備はいいですか、白金さん」

「は……はい……」

 

俺は音がよく聴こえる位置に座り、五人の演奏を聴く。

いやはや……。最初から、この前の四人とは比べ物にならないくらい良いものになってる。バンドに入って実りのある練習をしているからか、リサとあこはこの短い期間で実力もつきつつある。紗夜も録音したものを聴いた時より格段にミスが減っている。

燐子が弾くキーボードに引き寄せられるように、五人の音がひとつにまとまっているのが解る。

 

 

曲が終わり、この前と全く同じことが起きた。

友希那が信じられないものでも見たかのように固まっている。それもそうだろうと俺も思う。そう何度も起きる事の無い、特別なものが何度も起きているのだから。

 

「なんか……凄かった。四人の時より……」

「私は問題無いと思いました。ちなみに、湊さんは?」

「……何故? こんな事何度も……おかしいわ……」

「えっ。そ、それって……。こんなにも良かったのにダメって事? な、なんでですかっ?」

「違う違う、前回みたいな体験が今回も起こっただろ? しかも今回は前よりも一体感があって、それで驚いてるんだよ友希那は。ほら、あこが勘違いするから戻ってこーい友希那ー」

 

残念そうに肩を下げるあこの頭を撫で、俺は友希那に声をかける。我に返ったのか、ハッとして友希那は燐子の方を向いた。

 

「あ……。ごめんなさい、ボーッとしてたわ。演奏に問題は無いわ。技術も表現力も合格よ。ぜひ加入して」

「……あ……」

「や……いやったぁぁ! やっぱりんりん凄い! 最強だよ!! ノーミスだったもんね!」

「あ……りがとう……。でも……ショウくんに……アドバイス……もらったり……家で、何度も……動画と、一緒に……弾いてたから……」

 

燐子のその言葉で四人共なるほど、と頷いた。

 

「ショウ兄ってホントなんでも出来るよね! こう……全知全能の神が舞い降りたって感じ!」

「キーボードもわかっちゃうって凄いよね〜」

「だからこの前も言っただろ? 親がベーシストだって。それで、バンドの事はある程度わかるんだよ。……あとあこ、それだと俺が神様みたいになるからやめてくれ」

 

あことリサが俺の事を変に担ぐ。あこに至っては少し友希那と紗夜に慣れたのか、いつもNFOで言っているセリフを口にしている。

先程の会話に疑問を持ったのか、紗夜が口元に手を当てて俺に質問してきた。

 

「……紅宮くんの親御さんって、もしかして海外でバンドをしている『Red Ride』のベーシスト、紅宮優凪さんですか……?」

 

やはり、彼女くらいのレベルだと俺の母親に辿り着くか。隠している訳でもないし別にいいのだが。

 

「あぁ、合ってるよ」

「やはりそうだったんですね。苗字が一緒だったのでもしかしたら、と思っていたんです」

「まぁ……ある意味であのアホ集団は有名だからな……」

 

リーダーのボーカル、赤間(あかま)祐希(ゆうき)さんをはじめ、あのバンドは中々にやらかしてくれる。なにせメンバー全員名前につく色が赤系だからRedにして、語呂がいいからRideにするというハチャメチャなネーミングセンスをしている。

友希那とリサもRed Rideの名前を知っているのか、目を見開いて驚いている。

 

「さ、一旦この話は終わり! 後でいくらでもアホ達の話してあげるから。それより、さっきチラッとライブハウスのスケジュール見たらライブの日程があってさ。運が良かったら入れるかもしれないし、聞いてみようぜ」

「あとで絶対聞くわよ、ショウ。……そうね、五人揃ったのだし、ライブに出る」

「よし、確認しに行ってくるわ。皆はそのまま練習してて」

 

俺はそう言って怖い顔している友希那から逃げた。

あれは絶対、何故言わなかった、と怒っているに違いない。目がマジだった。

スタジオの重たいドアを閉め、ふぅと息を着いた。すると、ちょうどよく先輩が掃除をしていたのか、ロッカーにモップを片付けている最中だった。

 

「あ、先輩。聞きたいことあるんすけど」

「ん? どうしたー? 彼女ならいないぞ」

「高校生に手を出したらしょっぴかれますよ。……そうじゃなくて、ライブが近々あるんですよね? それって枠空いてたりします?」

 

最近彼女と別れたらしい先輩はフリーであると主張してくるが、そんな情報はいらない。それよりライブについて欲しい。

先輩はんー、と唸ってから受付のカウンターまで戻った。俺もその後ろ姿を追う。

 

「あったあった。えーっと……うん、空いてるわ。どうやら向こうの日程が合わないらしいな。……もしかして」

「はい、今ようやくキーボードが見つかって五人揃ったんすよ。なのでライブでも、と」

「なるほどねー! うん、まりなさんに伝えとくし参加してもいいと思うぞ」

「ありがとうございます。とりあえず、友希那にも伝えておきます。帰りに参加するか言いますね」

 

了解、と先輩は快活な笑みを浮かべた。

俺はスタジオに戻り、ライブの事をみんなに話して、全員の同意の上ライブに参加する事が決まった。それを帰りに先輩に伝えて、無事に、初ライブの予定が決まったのだった。

この地域では登竜門とされる少し大きめのライブだ。友希那と紗夜はやる気を見せ、リサとあこもはしゃいでいた。燐子は自信がなさそうだったけど、変わりたいと願った彼女なら大丈夫だろう。

ライブまでの練習がキツくなる事でリサとあこから魂が抜けてたのは苦笑いが思わず出たけど。

 

──それと、夜遅くまで友希那とリサとのグループチャットで質問攻めされるのは辛かった。寝かせてくれ。頼む。




少し時系列いじってるからこれくらいならいいかなと思ってます。
主人公がメンバー探しに介入してるなら速くなっても違和感ないなと。というか、1年間何やってたんだ、紅宮くん。

Red Rideについては完全に思い付きです。メンバー全員名前のどこかに赤系の色が入ってるなんて当初予定してなかったですw

感想、評価お待ちしております。
それでは失礼します!
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