赤いベーシストはバンドもしたいけど恋もしたい!   作:倉崎あるちゅ

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また遅れてすみません。
夜勤とか被ると一週間に1度の更新が間に合わない時があるんです。
今回、3200文字程度の話です。もう少し長めに書きたい……。


十曲 スカウト

 

 今日はRoseliaのバンド練習がなく、皆それぞれ個人練習や用事、休みを満喫している。俺は昼からCiRCLEのバイトをしていて、先程個人練習をしに来た友希那の受付を行った。

 しばらく経ったあと、何冊か音楽雑誌が配達され、俺は確認のために適当に雑誌を引っ掴んでパラパラと眺める。すると、Roseliaの初ライブの時の写真が掲載されていた。一番大きい写真には五人とも一生懸命演奏していて、とてもカッコイイ写真が載っている。

 ふと、その近くの写真に目が行き、焦点がそちらに定まると、

 

「──ぷっ!」

「ん、どうしたのショウくん?」

 

 いきなり吹き出した俺に不思議に思ったのか、隣にいるまりなさんが首を傾げた。俺は口元を押さえてその雑誌をまりなさんに渡す。すると、彼女も俺と同じものを見てぷふっ、と吹き出した。

 

「あはははっ!」

「くっ……ふっ……あははははは!」

 

 まりなさんの笑い声でつられてしまい、俺も堪えていた笑いを出した。笑った理由は単純明快。五人揃って写っている写真で、一人だけ浮いている人物がいるのだ。

 

「あー、思わず笑っちゃった~」

「怒られると思うけど、これはなぁ」

 

 その人物とは紅いベースを手にした見た目が派手な少女──今井リサだった。

 写りがどうこう、というより彼女だけギャルっぽくて浮いているのだ。周り四人がそうでもないのにリサだけギャルっぽい。

 

「統一感がないせいか、見事にリサだけ浮いてて……ふっ……」

「こらこら、これ以上笑わない笑わない」

「すんません」

 

 まだリサを見て笑っているとまりなさんが俺の頭に拳を軽く落としてきた。落とすと言うよりコメカミに当ててきた。身長差があるので仕方がない。

 そのあとはやるべき仕事を手っ取り早く終わらせ、再びまりなさんと雑誌をペラペラと捲って雑談をしていた。

 すると、ライブハウスの入口のドアが開かれ、お客さん達が入ってきた。

 

「いらっしゃいませー!」

「あっ! ショウさん! こんにちはー!」

 

 まりなさんと一緒に挨拶をすると、明るい髪を二つに結った髪型の少女が笑顔で手を振ってこちらに駆け寄ってきた。

 

「なんだ、ひまりか」

「なんだってなんですか!?」

 

 俺の素っ気ない言葉にひまり──上原(うえはら)ひまりは涙目でなんでですかー!? と詰問してくる。

 

「ひーちゃんだしね~」

「あ、あはは……」

 

 後ろから来るのはマイペースなモカと、苦笑いを浮かべるつぐみだ。すると、その後ろからまた二人やってきた。

 

(ともえ)~! ショウさんがいじめるー!」

「よしよし、いつもの事だろ? ショウさんこんにちは」

「ショウさん……こんにちは」

「よっ、(らん)、巴」

 

 後からやってきたのは高めの身長と赤みがかかった長い髪をした、男の俺でもカッコイイな、と思える少女と雨河さんと同じく黒髪に赤いメッシュを入れた無愛想な少女。あこの姉の宇田川巴と美竹(みたけ)蘭だ。

 この五人がAfterglow。ギターボーカルの蘭。ギターのモカ。ベースのひまり。ドラムの巴。最後にキーボードのつぐみ。ちなみにリーダーは俺が先程いじったひまりだ。

 彼女達が来て、まりなさんはスタジオの準備をしてくるね、と言ってこの場を離れた。

 

「今日は雨河さんはいないんだな」

「れいにぃなら、大学でやらないといけないのがあるって」

 

 俺の質問に蘭が答えた。まさか雨河さんがちゃんと大学生をしているのが信じられなく、頬を引き攣らせる。

 

「……ちゃんと大学生やってるのか……」

「いつもあんなんだからな、れいにぃは」

「巴が一番雨河さんと付き合い長いんだっけ?」

「一番って言っても、蘭達と一、二週間ぐらいの差ですけどね。商店街の祭りで太鼓を叩く時に会ったんですよ」

 

 なるほど、と巴の言葉に頷く。

 雨河さんと知り合ってもうそろそろ一年経つが、Afterglowのメンバー達と知り合った経緯は知らなかったな。モカと話しててもそんなに昔の事を話さないし、雨河さんもそこら辺はあんまり言い出さないから。

 

「あ、皆! スタジオの準備出来たよ~」

 

 スタジオの準備に行っていたまりなさんが帰ってきて、五人を案内する。俺は彼女達に手を振ってスタジオに送り出した。

 すぐにまりなさんは帰ってきて、休憩に入るね、と告げて『staff only』と書かれた部屋に引っ込んだ。

 まりなさんが休憩に入って数分後、自主練習をしていた友希那がスタジオから出てきて俺の下へやって来る。

 

「スタジオ、空いたわよショウ」

「おっ、お疲れ、友希那」

 

 やって来た彼女に労いの言葉をかける。

 ふと、友希那の表情が辛そうになっているのを感じた。些細な事だが、ストイックな彼女にはその些細な事が危うい。

 

「なぁ、友希那。何かあったか……? 辛そうな感じだけど」

「っ…………なんでもないわ。それより、Roseliaの次の練習の時なのだけれど──」

「──すみません、ちょっとよろしいでしょうか」

 

 俺の言葉に驚いたような表情を浮かべて間を置いて首を振り、友希那は次のバンド練習について話をしようとした。しかし、それはCiRCLEに入って来た、スーツを着た女性によって遮られた。

 

「友希那さん、少しお時間いただきたいんですが」

「失礼ですが、どなたでしょうか?」

 

 友希那がそう訊くと女性は名刺入れのようなものから、紙片を取り出してこういう者です、と友希那に手渡す。

 

「率直に言います。友希那さん、うちの事務所に所属しませんか?」

「なっ……!?」

 

 女性のその言葉に、俺は思わず声を上げて友希那を見た。だが彼女は首を振って、

 

「事務所には興味ありません。私は、自分の音楽で認められたいから」

 

 女性の勧誘を即答で断った。

 話は終わった。そんな雰囲気の友希那に、女性は必死な表情で声を上げる。

 

「待ってください! 貴女は本物だ! 私……いや、私達なら貴女の夢を叶えられる! 一緒に、FUTURE WORLD FES.に出ましょう!!」

「「……!?」」

 

 本気だ、この人。本気で友希那をスカウトしに来ている。

 聞いてみるとこの人は友希那のライブ二回目の時にスカウトしに行って断られているようで、諦めきれずに調べて、今に至ると。

 

「バンドにこだわっている事も知っています。だから、貴女のためのメンバーも用意しました」

 

 まずい。

 俺はごくりと生唾を飲み込む。

 Roseliaの初ライブが成功し、皆不安点もあるが好調で活動している中でこんな話題を出されたら何が起きるかわかったものでは無い。

 

「コンテストなんて出る必要ない。本番のフェスに出場できるんです! ステージだって、メインステージです! お願いします! 友希那さん……!」

 

 ここで友希那が頷いてしまったら、同じくフェスの出場を願っていた紗夜の気持ちは。友希那のかっこよさに惹かれたあこは。自分を変えたいと願った燐子は。幼馴染を支えたいからまたベースを手にしたリサは──

 

 ──どうなる。

 

 俺の気持ちなんかどうでもいい。ただの自己満足で手伝っただけだ。友希那がフェスに出られたらなと、ただそれだけを考えてメンバー集めを手伝ったから。

 でも、リサや紗夜、あこに燐子の気持ちは一体……。

 

「私……は……」

 

 彼女がどんな答えを出すか、俺の不安は募るばかりだ。

 

「確かに……Roseliaでは、次のFUTURE WORLD FES.でメインステージに立つ事は難しい」

「……友希那さん? すみません、何か気に触るような事を言いましたか?」

 

 何を言うつもりなんだ友希那。

 俺はこちらに背を向けている彼女の小さな背中を見つめる。

 友希那がフェスに出たいというのはメンバーを集める当初からわかっていた事だ。けど、今はRoseliaがある。集まったメンバーを無視して頷くのか……?

 そう思えば思うほど自分の顔が険しくなっていくのがわかる。

 

「……少し……待って欲しい」

「……!」

 

 俺はその言葉を聞き、今すぐ答える訳では無いと知り安堵した。

 これならバイト終わりにでも友希那と相談できる。一体彼女が何を感じて何を考えているのか、それを確かめなければならない。

 Roseliaのためにも。




この話数、バンスト13話だと学校行ってるんですけど、そのあとみんな私服なんすよね。なので友希那さん自主練習の時の日は休みの日でもいいかなって思い休みの日にしました。
この裏でリサとあこ、燐子がお茶会してます。バンストと一切変わりありません。
リサ出てないけど、間接的にリサ出てるからいいよね()


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