赤いベーシストはバンドもしたいけど恋もしたい!   作:倉崎あるちゅ

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お久しぶりです。

大変遅くなり申し訳ありませんでした。
リアルの事や別の事情で執筆する時間がなく、遅れました。
以後このような事がないように努めますので、よろしくお願いします。


十二曲 六人で

 

 

 数日後。

 あれから数日が経ち、友希那のスカウトの話を皆にしてから最初の練習の日がやってきた。

 スタジオには俺とリサ、紗夜がいつでも練習出来るように準備していて、二人共苦手なところを克服しようと個人練習をしている。

 紗夜の正確なギターの音色が続き、そろそろ彼女が苦手とするフレーズに差し掛かる。ミスなく終わりそうな雰囲気だったが、途中、音が少しズレた。

 

「……」

 

 一通り終わった紗夜は黙って自分のギターを見つめる。

 俺とリサは苦笑いを浮かべて互いに顔を合わせて、また紗夜を見た。

 

「紗夜ー? まだ早いし少し休んだ方がいいんじゃない?」

「そう、ですね。些か不満ですが」

 

 リサの言葉に頷き、紗夜はその藍色のギターを床に置いてあるスタンドに立て掛ける。俺は彼女に水が入ったペットボトルを投げて渡した。

 

「ありがとうございます」

「あともう少しで皆集まるだろうしそれまで休憩な」

 

 リサにもペットボトルを渡し、俺も喉が渇いたため自分用のものを飲んだ。休憩中、紗夜にどうしたら改善できるか訊かれ、中学の時に少ししか触れていない俺は彼女に何も答えてあげることが出来なかった。リサもベースしか触れていないため、俺同様答える事が出来なかった。

 しかし、何もしないで見ているだけなのは嫌なので、今どこかでライブをやっているであろう親のバンドグループのギタリストに訊いてみる、と伝えた。

 しばらく二人と話していると、リサのスマホが鳴り出した。リサがスマホの画面を開いて確認すると、神妙な表情でこちらを見てくる。

 

「何かあった?」

「あこからメッセ来たんだけど……友希那がホテルでスーツの女の人と話してるのを見たって」

 

 ピクっ、と紗夜の眉が動いた。

 おそらく、そのスーツの女の人は友希那をスカウトしに来た事務所の人間だろう。とりあえずあこ達には友希那より早くスタジオに着いてもらおう。友希那より遅かったらそれで一悶着ありそうだし。

 

「だいたい想像出来る。とりあえず、あこ達に早めに来るように言っといてくれる?」

「うん、わかったよ」

 

 リサに指示を出し、彼女はすぐにスマホに文字を打ち込んでいく。打ち終わってすぐにあこから返信が来て、もう既に移動しているようだ。行動が速いのはおそらく燐子の判断だろう。

 

「ねぇ、ショウ。どうしたらいいんだろ……?」

 

 リサが不安そうな顔でスマホを見つめて俺にそう問う。

 

「今は友希那を待つしかないと思う。皆の気持ちを伝える事ができれば、あいつも考えが変わるとは思うけど……」

「こればかりは湊さんが来ないとわからないですね」

 

 何はともあれ、皆が集まらなければ話にならない。

 友希那の事だから何も言わずに練習をするだろう。最初は練習してその後にでも訊くとしよう。

 その後、あこと燐子がやって来て、すぐあとに友希那もスタジオに着いた。その時の彼女の表情は、凄く迷っているようだった。

 それを気付いたのは長い間一緒にいた幼馴染のリサはもちろん、俺達全員だ。友希那は取り繕っていると思っているが、とても取り繕えてなどいない。

 

「……待たせたわね。さぁ、練習するわよ。時間が無いわ」

 

 迷いと焦り、その感情が滲み出ていて、あこと燐子が不安そうに友希那を見つめる。

 俺はパンパン、と柏手を打って明るく声をかけた。

 

「はいはい、練習やろうぜ。BLACK SHOUTの完成度も上げたいし、今日はそこを重点的にやろう」

「んっ、そーだね♪ ほらあこと燐子ー? ぼーっとしてないでやろうよ☆」

「あ、うん! ちょーっと待ってて! スティック出すから!」

 

 リサとアイコンタクトをして場の空気を変えてもらう。やはりこういう立ち回りが上手いのはリサだ。空気が読めて人の気遣いができるのは助かる。

 あこがバックから自分のスティックを取り出し、ドラムの方へ走っていく。その時に、まだ先程のホテルの件が尾を引いているようで、足を何も無いところで躓かせた。

 

「わわっ!?」

「まったく……少し落ち着いたらどうなの、宇田川さん」

「紗夜……さん、ありがとうございます!」

 

 慌てて支えようと俺が動き出したが、それより早くドラムの近くにいた紗夜があこを支えた。その表情はまるで妹を見るような暖かいもので、この前の棘のあるような雰囲気ではない。

 紗夜とあこも大丈夫そうだな。燐子もリサと打ち解けて笑顔が見えてるし、安心だな。

 

「さっきショウが位置とか合わせてたからすぐ弾けると思うよ」

「あ、あり……がとう、ショウくん……」

「おう、それが俺の仕事だからな。……友希那、マイクはどう?」

 

 ほんの少し胸を張ったあと、友希那にも確認を行う。大丈夫よ、という素っ気ない返事をもらい、練習を始める。

 BLACK SHOUTの厳かなイントロが流れ、友希那が歌い出す。あこやリサの細かなミスが出てくるが、今は全部通して、最後に指摘する形でいいだろう。

 そろそろ終盤に差し掛かった時、友希那の集中力が切れた。先程まで涼しげに歌っていた彼女の表情は苦悶の色に染められ、若干声量が下がった気がする。そのまま最後を迎え、友希那はまずあこに体を向けた。

 

「あこ、走り過ぎよ。もっと合わせてちょうだい。リサも、あこにつられてペースが乱れていたわ」

 

 確かに友希那の言う通りだ。だが、指摘を受けるのは何もリサとあこだけじゃない。

 

「そういう友希那も、集中力が切れてなかったか? 最後、声量も少し下がっていた」

「っ……えぇ、そうね。気を付けるわ……」

 

 そういう彼女の眉は顰められ、まだ集中出来そうではなかった。

 

「友希那、スカウトの件……まだ悩んでんのか?」

「っ!」

 

 スカウトの話を切り出した俺に驚き、友希那はリサと紗夜、あこ、燐子を順に見てまた驚く。大方、スカウトの話を聞いても驚かない彼女達を見て驚愕しているのだろう。

 

「さっき、ホテルで女の人と話してるのを見たってあこ達から連絡を受けてな。友希那には悪いけど、俺から皆にスカウトの件は話してる」

「……そう。…………えぇ、まだ私はスカウトを受けるかどうか悩んでいるわ」

 

 俺達と顔を合わせないように視線を落として語る。そんな友希那に対し、紗夜は真っ直ぐに彼女を見つめて、いや睨んで口を開いた。

 

「湊さんは、自分だけがフェスに出ることが出来さえすればそれでいいと、そう思っているんですか?」

「っ! …………私、は……」

 

 逡巡するように、友希那は瞳を揺らす。

 

「友希那さん……あこ達は、フェスに出るための捨て駒だったんですか……? あこ、せっかく目標出来たのに……」

 

 ドラムの目の前に座るあこがドラムスティックを握りしめて友希那に問いかける。すると彼女は紗夜に向いていた体をガバッとあこの方に向かせた。

 

「それは違うわ! ……確かに、最初の時はフェスに出るために集めてた……」

 

 けど、と言葉を続けて彼女は次に俺の方を見てきた。

 

「この前ショウに言われて気付いたわ。スカウトを受ければ確かにコンテストに出ること無くフェスに出られる。けれど、受けてしまえば自分達の()なんて無く、ただ売るための音楽に成り下がる」

 

 どうやら、俺がこの間言った言葉は届いていたようだ。それが気付くきっかけになれたのなら良かった。

 

「結論から言うわ。私は、スカウトを断ろうと思う」

 

 その言葉を聞き、俺達五人は目を見開く。

 

「皆が集まって練習をして、気付けば私はお父さんの事よりもRoseliaの事ばかりで……」

「……お父さん?」

 

 友希那の父親の事を知らない紗夜とあこ、燐子が首を傾げてわからない、といった表情を浮かべた。

 

「本当の私は、ただ私情のために音楽を利用してきた人間よ」

 

 そこから語られる友希那の父親の話は、いつの日か、俺の母親から聞かされた話だった。

 友人のバンドが苦しんでいて、何もしてあげられない事を悔やんでいたのを当時中学生だったのを今でも覚えている。

 父親のことを語り終えたあと、紗夜はそのバンドを知っていたのか、驚いたように目を丸くした。

 

「そのバンド……雑誌で見た事あるわ。インディーズ時代のものは特に名盤だって……。湊さんのお父さんが……そうだったの……」

「私はRoseliaを立ち上げ、私情を隠し、自分たちの音楽を極めると偽り、自分のためだけに貴女達を騙した」

 

 申し訳なさそうに顔を歪め、友希那はまた視線を伏せる。

 

「……私と違って、貴女達の信念は本物よ。──だから、こんな私はRoseliaから抜けるべきだと思う」

「お、おい──!?」

「ちょっと、待っ──」

「あ、あこだって──!」

 

 俺達五人は驚き、声を上げる。

 何も抜ける事はないだろうと、言いかけた瞬間、友希那は俺達の言葉を遮って口を開いた。

 

「──でも! でも私は……こんな自分勝手で、理想も信念も元を正せばただの私情だけど……! このメンバーで音楽がしたい……! リサがいて、紗夜がいて、あこがいて、燐子がいて……ショウがいて……この六人じゃなきゃダメなの!」

 

 都合が良すぎるのもわかっている、と繋げ、友希那は今思っている事を話してくれてた。

 

「……俺も、そう思う。このメンバーじゃなきゃ、意味が無い。友希那は私情を持ち込まないって言ったけど、始める理由や続ける理由なんて私情まみれだろ。高尚な理由なんて後付けだって思うぜ、俺は」

 

 そう言うと、あこがドラムスティックを振って立ち上がった。

 

「そーだよっ! あこだっておねーちゃんみたいに、って始めたんだし! 友希那さんの理由と全然一緒だよっ!」

「わたしも……自分を、変えたくて……自信を持ちたくて……」

「アタシは友希那と……まっ、言うまでもないか♪」

「抱えているものは、それぞれにあっていい。どうしても手放せないから、抱えているのでしょう。だったらそのまま進むしかない。……そうじゃない?」

 

 あこに続き、燐子とリサ、紗夜が友希那に言葉を送る。

 

「それに、私もこのメンバーで音楽をしたい」

「あこも! したい! りんりんはー?」

「わ、わたしも……した、い」

「もちろん、アタシもだよ♪ ショウは? たまには一緒に演奏してくれるよねー?」

「え、俺はサポーターだし……わかったっての、睨むなよリサ」

 

 皆思っている事は一緒のようで、笑って頷き合う。

 

「皆……」

 

 微かに目に涙を浮かべ、友希那はごく僅かに頬を緩めた。

 んじゃ、と俺は友希那の方に歩み寄って自分より低い位置にある彼女の頭を撫で回す。ちょっと、と嫌がる友希那を無視して、俺は頬を吊り上げて笑う。

 

「Roseliaとして、フェス──FUTURE WORLD FES.のコンテストに出場する。それでいいな、皆?」

「「「「はい!」」」」

 

 リサ、紗夜、あこ、燐子が声を揃えて返事をする。俺はただ一人返事をしない隣の人物に視線を送った。

 

「友希那、返事は?」

「えぇ……もちろんよ。皆、ありがとう……」

 

 その表情は、覚悟を決めたいい表情だった。

 

 




ドリフェスが始まりますね。
私はリサを引くために課金します。誰か、私の骨を拾ってください()

今年最後の更新です。
元旦にも更新されますのでお楽しみに(*´꒳`*)

それでは皆様良いお年を( *>ω<*)/
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