赤いベーシストはバンドもしたいけど恋もしたい!   作:倉崎あるちゅ

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元旦に間に合わなかったの辛い……。
すみません、リアル雨河さんが北海道に来てて遊びで書く暇ありませんでした。
申し訳ないです。

そして、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますm(_ _)m


十三曲 緊張

 

 その後、スタジオの借りている時間が過ぎてしまい、練習は解散。友希那はスカウトしてきた事務所に断る旨を伝えると言っていた。

 なにやらあこと燐子がそわそわしていたが、どうやら衣装があこの分が作れたらしく、感想を聞いて欲しかったようだ。感想を聞くのは紗夜に任せて、俺はリサがバイトが終わるまで暇を潰す事になった。

 どうせ夜に俺の家でベース練習したり一緒にご飯を食べたりするし、バイトが終わって一緒に帰る事にしたのだ。

 ふと、空を見上げるとオレンジ色に染まるはずの空が暗い分厚い雲が空を包んでいた。

 

「雨が降りそうだな……」

 

 暇を潰していた本屋から出て俺はそう独りごちる。

 雨は苦手だ。ギターやベースのネックが湿気で曲がる時だってあるし、外へだって出たくても出られない。

 そんな事を思いつつ、別の所で時間を潰そうかと思った時、俺の近くの路肩に乗用車が一台停まった。

 何事もなく素通りしようとすると、窓が開かれ、アホみたいに元気な声が聞こえてきた。

 

「ショウくーん! やっほー!!」

「雨河、さん?」

「今からバイト行くんやけど、ショウくんもどうー? 飲み物奢ったるでー!」

「は、はぁ、いいっすけど」

 

 雨河さんのいつも通りのバカみたいなテンションに圧倒されつつ、俺は彼の車に乗る。雨河さんは俺がシートベルトを締めた事を確認して車を動かした。

 

「今井ちゃん迎えに行くと思って行きしなに拾おうと思ってな!」

「あ、そうだったんすか」

「それに早く着いても暇やからなぁ」

「本音それっすよね絶対」

 

 明らかにリサ云々の話なんてどうでも良くて、単純に暇を潰したかったんだな。いや、別にいいんだけどな。俺自身も暇を持て余していたんだし。

 

「いやー、最近つぐが倒れてな? アフロのメンバーも忙しくてあんま話せんくて」

「え、つぐみが倒れたんですか?」

「そうなんよ。生徒会の仕事とかバンドの練習を無理してて倒れたんやわ」

 

 Afterglowの方も大変のようだ。

 雨河さん自身、モカや巴、ひまりから聞いただけであまり状況把握が出来ていないため上手く動けずにいるらしい。加えて蘭が元々良くなかった父親との関係が悪化して不安定だということもあって、彼は相当頭を抱えている。

 

「蘭の家は結構長い華道の家でなー? 親父さんは蘭がバンドをする事に渋ってるみたいで、そんで衝突してるんや」

 

 今はもっとやべぇと思うけど、と雨河さんらしからぬ苦笑いを浮かべて言う。

 それから今日のRoseliaの事やアフロの事を話し合い、雨河さんは何かを思い付いたのか犯罪者のような悪い顔をしていた。解決したようで何よりである。

 リサがバイトするコンビニに着き、雨河さんが事務所入ってええでー、と言うので入らせてもらう事にした。その時にコンビニの中に入るので必然的に、仕事をしているリサと会った。

 

「あ、あれ、ショウ、どーしたの? まだ早いと思うけど」

「暇潰ししてたら雨河さんに捕まってさ。飲み物奢ってくれるって言うからついてきた」

「あはは……子供じゃないんだから、そーやってついて行かないの!」

 

 困ったように笑って、まるで母親のような事を言って人差し指を俺の胸に突き付けてくる。しかし考えてみて欲しい。どっちにしてもコンビニまで来るのだから早くてもいいのではないか。

 

「どうせリサを迎えに来るんだし変わんないだろ?」

 

 俺がそう言うとリサは何も言わなくなった。微妙な表情を浮かべてうーん、と唸る。

 そんなリサに雨河さんが近付き、快活に笑って手を挙げた。

 

「おはー、今井ちゃん!」

「あぁ、なんだ雨河さんか。おはよーございまーす」

「ちょ、冷たくね今井ちゃん!?」

 

 さして興味もないかのようにリサは事務的に挨拶を返した。当然雨河さんは反応するが彼女は全くそれに取り合わない。

 

「いつもの事じゃないの〜?」

「モカもそんな事言わんといてや!?」

 

 お客が居なく暇だったのだろう。モカがトン、と彼の肩に手を置いた。

 その後雨河さんに飲み物を買ってもらい、リサと雨河さんが入れ替わるまでバンドの事や、北海道に最近出てきたバンドの事も聞いた。全員男と言っていたが、その実力は今のRoseliaと互角なのだとか。

 これは俺達も負けられないな、と闘志を燃やしているとリサが終わりの時間を迎えたのか、事務所に入って来た。

 

「おまたせー! 終わったよショウ!」

「お疲れ様。ゆっくりでいいから、着替えて来いよ」

「はーい♪」

 

 パタパタと更衣室に入って行くリサを見送ると、雨河さんが店頭に立つために、パソコンの前に置いてある椅子から立ち上がる。

 

「んじゃ、ショウくん! 今井ちゃんの事よろしくなー! 今日はありがとうー!!」

「いんや、俺もありがとうございました」

 

 おーう、と去り際に手を振って雨河さんは事務所を出ていった。

 ホント、あの人は相談に乗る時とかはいい先輩なのに、真面目モードが短いのが玉に瑕だ。直ぐにちゃらんぽらんな人に変わってしまう。本当に不思議な人だ。

 

「よし、着替え終わったよ。買い物して帰ろっか?」

「そーだな。今日はあんまりバンド練習も出来てないし家でして行くか?」

「あ、うん! して行きたいかな♪ もうベースを弾きたくて弾きたくて! ほらほら、決まったなら早く買い物して行こーよ☆」

「ま、待て待て……はしゃぎ過ぎだってリサ」

 

 俺の手を引いて連れ出すリサについていき、事務所を出て次にコンビニを出る。出る時に雨河さんとモカの二人に挨拶をするのは忘れずに出て、今日の晩御飯のための買い物にそのまま向かう。

 最初こそ二人でよく行くスーパーのレジのおばちゃんに何故か訝しげな目で見られていたが、今ではなにやら生暖かくて気味の悪い目で見られている。

 さっさと買い物を終わらせ俺の家に帰り、リサがエプロンを着けてキッチンに籠る。やけに張り切っていたので邪魔しない方が良さそうだ。怒られるのは勘弁だ。俺は黙って一階に降りてきたナウを構っていよう。

 

 

 

 

 ♪ ♭ ♪ ♭

 

 

 

 

「リサそこ違う」

「うっ……はい……」

「タイミングズレた、もう一回」

「りょ、りょーかい……」

 

 ベース練習をする時のショウは凄く厳しい。

 普段あんまりそういう厳しめの事は言わないから余計にそう感じるかもしれない。

 最初は普段と練習の時のギャップが凄くて戸惑ったけど今ではもう慣れた……んだけど、厳しくてたまにアタシは泣きそうになる。

 その分上手くいって褒められた時は凄く嬉しくて飛び跳ねそうになった事もあった。

 今はアタシが苦手なフレーズの所を練習してて、過去にショウも苦手な所だったらしい。

 

「次上手くいったら終わりにしよう。少し遅くなっちゃったし」

「え、もうそんな時間?」

「あぁ。リサが熱心なおかげで俺も時間を忘れてたよ」

 

 そっか、もう結構な時間練習したんだ……。全然気付かなかったや。よし、次こそは上手く弾いてみせる。少しでもいいからショウに追い付きたい。

 

「じゃあ……お願いショウ」

「おう。リラックスな、リサ」

 

 うん、と頷き、アタシは紅いベースを構える。

 課題曲の序盤から始めていき、苦手なフレーズな所に差し掛かる。しっかりとスピーカーから流れるドラムのリズムを聴いて、アタシはベース特有の太い弦をピックで弾いた。

 ネックに添える手を出来るだけ滑らかに動かし、音をよく聴きタイミング良く弾いていく。

 集中すればするほど感覚が研ぎ澄ませれていく。Roseliaの皆と弾く時はまた違う感じで、形容しきれない感覚。

 気付けば曲は終わっていて、アタシはベースから目を離して目の前のショウを見た。

 

「どう……だったかな?」

 

 訊いてみると、彼はパチパチと目を瞬かせて呆然としていた。

 

「ショウ? ショウってば。……おーい、将吾〜?」

 

 名前を呼んでも反応がないから、初めてあだ名のショウではなく将吾と呼んだ。すると、彼はハッ、としてアタシを見る。

 

「ご、ごめん。あまりにも良くてボーッとした」

「ビックリしたよ、反応ないんだもん」

「悪い悪い。……うん、予想より何倍も良くなっててイチャモンの付けようがないな」

「ホント!? やった!」

 

 ショウに笑顔でそう言われ、アタシは小さくガッツポーズをとった。それを見たショウはあはは、と笑って機材の片付けを始めた。

 アタシもベースをケースにしまってショウの手伝いをする。

 数分で終わり、アタシ達は防音室から出た。瞬間、ドラムの音を大きくして酷くさせたような音がアタシ達の鼓膜を叩いた。

 

「ひゃっ!?」

「うおぅ!?」

 

 ビクッと肩を震わせ、アタシは咄嗟にショウの服を掴んだ。

 

「な、なんだ、今の音」

「楽器が落ちた音とかじゃないよね……?」

 

 もし幽霊だったらどうしよう……アタシ無理なんだよぉ……。

 若干泣きそうになっていると、次は外からバケツをひっくり返したような水音が聞こえてきた。アタシはビックリして掴んでいたショウの服に力を入れた。

 

「え、あ、雨……?」

「おいおい、台風が来たとかじゃないだろ……? なんでこんな酷いんだ……」

 

 アタシ達がリビングに行くと、さっきの大きな音──雷に驚いたのであろうナウちゃんがアタシに飛び込んで来た。

 怖かったのか震えている。

 

「お、おい、リサ……」

「どーしたの?」

「……これ見ろよ」

「?」

 

 テレビを付けたショウが頬を引き攣らせてアタシを見た。

 アタシは首を傾げてリビングに置いてある大きめのテレビを見た。すると、ニュースにはこの雨は明日のお昼まで続くと放送されており、アタシの頭は真っ白になった。

 

「今、窓から外見たけどとても傘さして帰られるものじゃないぞ……」

「え、えっと……これ、どーしたらいいんだろ」

「最悪、泊まるしかないな。これは」

 

 厄介な事が起きた、と頬を引き攣らせる。

 

「え、えと……その……車とかは?」

 

 それを見てアタシもつられて頬をひくつかせた。

 

「今ここにいるか? 車運転出来る人。他の人にも頼もうにもこの天気だと厳しいぞ」

「そ、そーだよね。あ、あはは……」

 

 あはは、と乾いた笑い声を上げ、アタシ達は頭を抱えた。

 

「……俺の家、ゲストルームあるんだけどホコリだらけだし親のファンの贈り物とかで埋まってるんだ……。親の部屋も入る事禁止されてて……」

「……う、うん?」

「俺の部屋しか使えない」

 

 え、えと、それはショウと同じ部屋で寝るとかそういう……!? え、あの、嫌だとかそんなのとかじゃなくてすっごい恥ずかしいんだけど!

 そう思った途端顔が熱くなってきて、心臓がバクバクと音を立てて鼓動し始める。

 

「まぁ、俺はリビングで寝るようにするし、リサは気にせずに寝て構わないから。ちょうどよく昨日布団新しくしてな。新しい洗剤にもしたし、いい匂いだぞ」

 

 手を左耳に当て、ショウは視線をアタシから逸らして言う。

 あの、あの……そーいうのはアタシが意識しちゃうからやめて欲しいかなー? 胸がぎゅぅって締め付けられて苦しいから。

 

「う、うん。わかった」

「とりあえず浴槽洗ってくるわ。練習して汗かいただろ?」

「そ、そーだね」

 

 そう言ってショウはお風呂場に行ってしまった。手が空いたアタシはナウちゃんを抱いてソファにポスっと座り込む。

 すぅ、と息を吸ってアタシはナウちゃんのモフモフな毛に顔を埋めた。

 

「あぁぁぁぁ……! なにこれすっごい緊張するんだけど……!?」

 

 ビクッ、とナウちゃんが震えたけどそのまま抱かれ続けている。

 男の子の家に泊まるのなんて初めてだし、それよりも男の子の家でお風呂借りるとかハードル高いと思うんですが!

 そうやって悶えていると浴槽を洗い終わったショウが帰ってきた。

 

「リサ、すげー顔赤いけど大丈夫なの?」

「大丈夫だから! 気にしないでいいよ!」

「そ、そうか」

 

 食い気味に即答してしまったからか、若干引いたようにショウが返事をする。

 というか、なんでショウは少し時間が経ったら普段通りになってるのかな。アタシなんてまだ恥ずかしいし緊張してるんだけど。いつも家に来ているとはいえ泊まる事やお風呂借りるのとは違う。

 

「悪いけど、着替えも俺のしかないんだ。大きいけど許してくれ」

 

 やっぱりそうなるよね。そうだろうなと薄々思ってたけど。

 アタシはわかったー、と頷いた。

 まだまだ夜始まったばかり。アタシの心臓、大丈夫なのかな……?

 

 

 

 

 ♪ ♭ ♪ ♭

 

 

 

 

 とくにトラブルなども起きず、俺達は順番に風呂に入った。リサに俺の部屋に案内し、適当に彼女にラノベやら少女漫画、恋愛小説を手渡す。

 

「男の子の部屋に初めて入ったけど、想像してたよりずっと綺麗だね?」

「そりゃ片付けくらいするだろ。ゲストルームまでは手が届かないけどな。あ、でも友達の部屋はすげー汚いぞ」

 

 飛鳥の部屋なんて足の踏み場がないほどだったからな。

 お部屋ならぬ汚部屋を思い出していると、リサが本を持ってそわそわして居心地悪そうに俺のベッドに座っていた。

 

「ん……? あれ、リサって俺の部屋初めてだったっけ?」

「そーなんだよね、結構ショウの家に出入りしてるはずなのに部屋に入った事無くてさ〜」

 

 あははとリサが笑うと、彼女の視線はとある所で止まった。俺もそちらに視線を移すと、そこには幼い頃の俺の写真が飾られていた。

 

「ん、あぁ、昔の写真か。親と一緒に演奏した時の写真とか飾ってんだ俺」

「見てもいい?」

「お好きにどーぞー」

 

 そう言って俺はベッドにドカッと座る。リサは立ち上がって写真を見ようと一歩歩こうとしたその時──

 

「え゛」

「へっ!?」

 

 シュルッ、と俺の服を着ていた、リサのハーフパンツが下がった。

 ちょうどいい大きさのTシャツを着ているせいで、俺の視界には彼女の可愛らしいピン──

 

 

 「見ないでぇぇぇぇ!!」

 

 

 俺が色を確認する瞬間に、パァン! と、顔を真っ赤にして、瞳に涙を浮かべたリサが俺の頬をひっ叩いた。

 




皆が好きそうな展開を書いてみた。
ラッキースケベとかこの作品やってなかったから、どうかな? 私は書いてて楽しかったです(*´꒳`*)

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