赤いベーシストはバンドもしたいけど恋もしたい! 作:倉崎あるちゅ
いつもどおりの、文字数です(4500文字)
話の矛盾もあると思いますが、御容赦ください。
数週間後、遂にやってきたFUTURE WORLD FES.に出場するためのコンテストの日。
朝早くに俺の家でRoseliaのメンバー達は最終チェックを済まし、電車に揺られて会場前に着く。
「もう一度確認するけど、忘れ物とかないよな?」
「大丈夫だよショウ兄! りんりんとリサ姉に確認してもらったからっ」
チラリとリサと燐子に目を向けると、二人とも笑顔で頷いている。大丈夫のようだ。友希那の方は大方リサが既にしているだろうから確認しなくていいだろ。紗夜もしっかりしてるし大丈夫だな。
「じゃあ、結果が決まったら連絡くれ。俺は残っても何もやる事ないからな」
本当は中に入って皆を支えたい。だが、目の前の五人の顔を見ると、その心配はいらないと思った。皆、覚悟を持ったいい顔をしている。
「それじゃ、出し切れよ、皆」
「えぇ、もちろんよ」
「当然です」
「ショウに教えて貰ったんだから、当然だよ♪」
「ふっふっふっ……! 我が活躍を心して待つがいい!」
「が、頑張り、ます……!」
五人ともそれぞれそう言って会場に入っていった。
俺はくるりと会場に背を向けて駅の方に向かう。これからCiRCLEでバイトがあるのだ。急にバイトに出ていいか訊いて承諾も降りた。
正直に言うと、体を動かしてないとRoseliaの皆のところへ行きそうになるからバイトを入れただけなんだけどな。
「──って、思ったのに暇過ぎでは?」
「あははっ、ごめんねショウくん」
今日は休日のため、バンドを組んでいる人達が多く来るだろうと思ったのだが一切来ない。来たとしても、前にここで働いてた人が楽器を弾きに来たりするくらいだ。
あまりにも暇過ぎて事の経緯をまりなさんに話した。苦笑いをして謝る彼女はそっか、と声を出す。
「今日だったね、FUTURE WORLD FES.のコンテスト」
「友希那が目指してたもんですからね。いろいろあったけど、そのおかげでそれぞれの目標ができた」
「皆の事、心配?」
「心配っちゃあ心配ですけど……どんな結果であろうと、あの五人なら大丈夫ですよ」
例え、コンテストに受かる事が出来ず、フェスに出る事が叶わなくともRoseliaならそれをバネにしてやる気を出してくれるはずだ。
「愛されてるな〜Roseliaは」
「はいはい、そーですね」
せっかく話の内容が良かったのにこうやってすぐ茶化す。この辺は雨河さんと一緒だ。初対面の時に仲良くなってたし。
「こんにちはー! 予約してた上原でーす!」
「いらっしゃい、ひまり。ちょうど暇だったんだ助かる」
いよいよどうしようか、と思ったところでAfterglowの五人がやって来た。その後ろには雨河さんの姿もある。
「やっほーショウくん! 今日って確かコンテストの日やなかった?」
「そうですよね〜なんでショウさんが〜?」
後ろからやってくる雨河さんとモカが俺にそう訊いてくる。
やはり、Roseliaのサポーターをやっている事を知っている人からすると不思議に思われるようだ。事情を話すと雨河さん、モカの二人がニヤニヤとした気持ち悪い笑みを浮かべていた。
「こいつら……」
「リサさん達愛されてますな〜」
「せやなー! いやぁ、青春してるなぁ!」
話すべきではなかったかもしれない。この二人に言えばこうやってからかわれるのは明白だったのに話してしまった俺の落ち度だろう。
ぐぬぬ、と口をへの字に曲げていると、見かねたのか、蘭が溜息を吐いてくいっ、と雨河さんとモカの首根っこを引っ掴んだ。
「ほら、ショウさん煽ってないで行くよ二人とも」
「あぁ! 蘭ちょっと待てぃ! まだショウくんの事煽りたいんや!」
「モカちゃんも〜まだ〜」
いいから行くよ、と駄々を捏ねる二人を引き摺って、蘭は歩き出す。俺はひまりに何スタジオなのか教えると、彼女も急いで先に行く三人を追いかけた。
「あはは、やっぱりれいにぃさんいると楽しくなるね、巴ちゃん」
「確かにそうだな。まぁ、れいにぃがいるとモカもうるさくなるのが玉に瑕だけど」
残ったつぐみと巴が笑って話す。倒れたというつぐみだが、どうやらしっかり休めたようだ。元気そうで良かった。
「あの自由人二人をなんとか頼むぞ、二人とも」
「き、きっと蘭ちゃんがなんとか……」
「あたし達が言うより、蘭に言われた方が効くと思いますよ……」
確かに蘭があの自由人二人の手網を握っているようだったけど。
それじゃあ、とつぐみと巴もスタジオに向かう。コンテストの結果教えてくださいね、と二人に言われ、手を挙げて応える。
俺はふぅ、と息を吐いて手元にある紙束を丸めて、さっきからしゃがんで黙っている人物の頭に振り落とした。
「で、何さっきから笑ってんすか、まりなさん」
「いやっ、だって……! 雨河くんとモカちゃんに煽られて口への字にしてるんだもん! 笑っちゃうよー」
あー面白い、と目に涙を溜めて言う彼女にイラッとして、俺はもう一度まりなさんの頭に丸めた紙束を叩き落とした。
その後、飛鳥が友人数人連れてスタジオを借りに来た。飛鳥もまたバンド組んではいないが楽器を演奏できる。楽器はキーボードで、他の友人達はギターやドラム担当らしい。
俺も一時期彼らに誘われてセッションしたが、趣味でやってるという割にレベルが高かった。
「んじゃショウ、また後でなー」
「機材壊すなよ」
「壊さねぇよ!? どうやって壊すんだよ!?」
まったく、とぶつぶつ言って飛鳥は友人達のいるスタジオに向かっていった。
すると、ポケットに入れてあるスマホが振動した。俺はカウンターの影でスマホを確認すると、リサから通知が来ていた。アプリを立ち上げてメッセージを読むと、Roseliaの出番は終わり、今は結果待ちをしている最中らしい。
そろそろ俺もバイトが終わる頃だしちょうどいい。
「リサちゃんから連絡?」
「はい、今結果待ちしてるみたいです」
「そっかー、合格するといいね」
合格出来れば友希那と紗夜が夢見ていたFUTURE WORLD FES.に出られる。友希那は父親の音楽を認めさせる事が出来るし、紗夜は妹の日菜に負けないようにと更なる自信を得る事が出来る。
その後、バイトが終わった俺はリサに連絡を取ろうとスマホの電話帳を開いた。
「っと、リサ?」
電話をかけようとしていた時に、リサの方から電話がかかってきた。
『あ、もしもし? 今大丈夫だった?』
「今バイト終わってリサに電話しようとしてた」
『そうだったんだ、ちょうど良かったー! これから皆でこの間行ったファミレスに向かうんだけど、ショウも来れる?』
「わかった、今行く。結果も歩きながら教えてくれよ」
りょーかい、と返事を貰い、俺はスマホを耳に当てたままファミレスの方角へ足を向ける。
『えーと、結果から話すとアタシ達落ちたんだ』
若干声のトーンが落ちた。
えっ、という声が不意に出た。しかし、俺が何か言う前にリサがでもね、と言葉を続ける。
『審査員の人達からすっごい認められたんだ。アタシ達Roseliaは伸びしろがあるから、
「……出し切った?」
『うん、頑張った』
「やりきった?」
『もちろんっ♪ 皆も頷いてるよ』
そっか、と呟き、俺は溢れそうになる涙を堪える。
頑張ったのは彼女達の方なのに、何故俺が泣きそうになっているのか。審査員にここまで評価してもらえた事が嬉しいのもある。けれど、それよりも──
「もうそろそろ着くから切るぞ、また後でな」
『はーい、アタシ達も着くよ』
電話の終了ボタンをタップしてスマホをスリープ状態にしてからポケットに突っ込む。
心の中にあるモヤモヤを吐き出すように俺は大きな溜息を吐く。
「──一緒に、ステージに立てたらな……」
ガールズバンドとしてRoseliaがある以上、男の俺は出来てサポーター。一緒にステージに立って演奏する事は叶わない。
あの時、友希那に最初に誘われた時に受けていれば、俺もコンテストに参加出来ていたのだろうか。
それが、その思いがあってか、俺の心は悔しさでいっぱいだった。
♪ ♭ ♪ ♭
「お待たせしました〜! Wハンバーグ&エビフライ&チキンソテーのプレート、ご飯大盛りデザートのセットです〜」
ファミレスに着き、注文をした俺達は俺以外のメンバーの目の前に出された巨大な料理を頂こうとしていた。
「皆頑張ったし、今日は俺の奢りだ! ドリンクバーも付いてるし盛大にやけ食いやけ飲みしてくれ!」
いただきます、と言ってそれぞれコンテストの愚痴を吐きながら食べていく。
電話でも話した通り、皆やりきったようで、口では不満を漏らしていても今までで一番楽しかった演奏だったらしい。友希那と紗夜も口には出ていないが、表情で楽しかったのだと解る。
「わ、わたしも……やっぱり、この皆で、FUTURE WORLD FES.に出たいです。……それを目指してきた今までが、とても……楽しかったから」
ハンバーグを食べていた燐子のナイフが止まり、目を逸らさずに俺達の顔を見て話す。
「燐子……。アタシも……! アタシもまだ、もっとこのバンドをやりたい。だって……楽しかったから!」
リサの対面に座る友希那と紗夜を見て、彼女はそう言う。
「あこも、あこも! なんか今日っ、『あこだけのカッコイイ』をちょっと掴めた気がして……! そしたら優勝出来るんじゃないかって……!」
フォークにエビフライを刺して熱弁する。
俺はそれをお茶飲みながら聞いていた。皆それぞれ今回のコンテストで思うところもあったようで、今まで以上にバンドに対する熱が強くなった気がする。
ふると、皆の視線が俺に集まった。
「ん? どうした、皆」
「いや、ショウもなんかあるかなーって」
「あこ達は話したけど、ショウ兄は話してなかったから!」
「そうですね、紅宮くんの思っている事も聞いてみたいので」
どうやら、一人だけ話していないのは不公平だと思われているようだ。話すと言っても、俺は今までと何ら変わらない。
「話す事なんてないんだけど……まぁ、あるとしたら、今までと変わらず、俺は皆をサポートしていくさ」
それと、と続けて俺は少し残っていたお茶を飲み干す。
「来年のコンテストは、俺も行く。皆がどんな場所に立っていたか、俺も見たい」
そう言うと、リサとあこ、燐子がニッコリと笑う。紗夜は涼しげに微笑み、友希那は凛とした表情で俺達五人を見回す。
「来年のコンテストに出て、優勝する。その気持ちは同じようね」
今度は、ちゃんと彼女達を見守りたい。信じて待つとか綺麗事なんかより、自分の目で彼女達の勇姿を見ていたい。
「練習もそうだけど、これからは互いの事も理解していこーぜ。メンバー同士の理解が深まれば、また一段と凄みが増すと思うからさ」
ひょいっ、とリサのプレートからハンバーグの一切れを貰って口に放り込む。
なっ、と頬を染めて固まるリサを無視して咀嚼する。
「度が過ぎる馴れ合いはRoseliaには要らないわ。友達ごっこがしたい人は、今すぐ抜けてもらうわよ」
度が過ぎる、か。段々友希那の考えが良くなって来て嬉しいな。
それを察知したのか、他の四人も笑う。
──もっともっと、これからも。
第二章完結です。
バンスト一章がついに完結しました。次は軽くLOUDERです。ほんの触りくらいなものなのでご期待に添えない場合があります。
また、LOUDERのイベストを読み返す必要があるので次回の更新は結構遅くなると思います。LOUDER以降はオリジナルストーリーも挟みますのでそれも加えると遅くなります。申し訳ありません。
オリジナルストーリーは作者の私自身で胸キュンキュンして死ぬので、楽しみにしててください。まだ頭の中なんですけども()
Twitterやってますので、よろしければどうぞー! @kurasaki_hamelnでやってますー!
それでは失礼します。感想お待ちしてますー!