赤いベーシストはバンドもしたいけど恋もしたい! 作:倉崎あるちゅ
書いてたんですが、約2000文字が吹き飛ぶ事件がありまして……。急いで書いてたんですが結局ここまで延びました。
本っ当にすみませんでした!!!!! 気をつけます!
「……で、友希那の家に着いたわけだが」
俺は友希那の家の玄関先に立ち止まり、腰に手を当てて呟く。
今思えば彼女の家を直接訪ねるのは初めてかもしれない。今まではリサの家には行ったことはあるが、友希那の家には行った事がない。登校の時はタイミング良く家から出てくるし。
「じゃ、アタシがチャイム鳴らすね〜☆」
そう言ってリサが慣れた動きでインターホンを鳴らす。
『……はい』
少し待つと、微かにノイズ混じりの応答があった。声からして友希那のようだ。
「あ、友希那、アタシだよ〜♪」
『リサ? 少し待ってちょうだい。今行くわ』
「はーい♪」
そう言ってインターホンの通話が切れた。宣言通り少し待つと、友希那が家の中から出てきた。リサだけだと思っていたようで、俺もいる事に気付くと、その金色の瞳を少し開いた。ちょうど俺のいたところがカメラの死角になっていたようで見えてなかったようだ。
「ショウもいたのね。それで、どうしたの?」
「実はさ、今日聴いたあの曲なんだけど……」
「あの曲については忘れてと言ったはずよ」
私には歌う資格なんてないのだから、と目を伏せて、友希那はゆっくりと首を振る。やはり彼女は自分の気持ちは純粋なものではないと思っているのだろう。
なおさら、母さんから聞いた事を話さなければならない。
「今、うちの母親が帰ってきてるんだ」
「ショウのお母さん……紅宮優凪さんね」
「リサとあの曲について話してたら、母さんがどんな曲か訊いてきてな」
「それで友希那のお父さんの曲だってわかったんだよね〜。アタシはもしかしてって思ってたんだけどさ」
俺の言葉に続けてリサがそう言う。俺はそれに頷き、俯き気味の友希那を見ながら口を開く。
「加えて、あの曲ができたきっかけも知る事ができた」
「……きっかけ?」
俯いていた顔を上げて彼女は話す俺の事を見つめる。
俺とリサの二人は友希那に、先程母さんから聞いた、曲ができたきっかけを話した。
スランプになり、中途半端な気持ちで歌っていいのかと思った事。どうしたらもっと上手く歌えるか。そんな迷いを友希那の母親の一言で払い除けた事も彼女に伝える事ができた。
「だからさ、友希那っ」
「今のその気持ちを、そのまま歌に乗せて、ぶつけられないか?」
俺とリサの二人で言うと、友希那は悔しそうに顔を歪めていた。知らなかった事が悔しいのか、はたまた違うものなのかはわからない。
おそらく、まだ彼女はあの曲を歌うとは言ってくれないだろう。何かもう一押しできるものがあればいけるかもしれない。
俺は友希那に、お前が音楽に対する気持ちで悩んでいるのは、音楽に対して真剣だからだと気づいて欲しい。上手く言葉がまとまらないが、これはリサも同じ気持ちである事はここに来るまで話してわかった事だ。
「おや、リサちゃんじゃないか」
言葉が出ない友希那を待っていると、後ろからそんな声が聞こえてきた。後ろに振り向くとそこには背丈のある黒髪の男性が立っていた。
「あ、友希那のお父さん! こんばんは〜」
「あぁ、こんばんは。それで、隣にいるのは……」
リサと挨拶を交わし、彼女に向けていた視線を次に俺に向ける。
「はじめまして、紅宮優凪の息子の紅宮将吾です。今日は友希那さんに用事があってご訪問させていただきました」
うわ、自分で言っておいて友希那にさん付けするの違和感しかない。リサなんて笑ってるし友希那も微妙な顔をしてるし。
「そうか、君が優凪さんの……。君のお母さんやお父さんにはお世話になったんだ。良かったらここじゃなんだし、家に入っていかないか?」
「えっ、いえ、大した用ではないので」
「なに、遠慮しなくていいさ。俺も君とは話がしたかったからな」
綺麗な笑顔を浮かべる友希那の父親に言われ、助けを求めようとリサを見ると諦めなよ、と口パクで言われてしまった。
母さん達の知り合いと話すの緊張するからあんまり話したくなかったんだけどなぁ。
♪ ♭ ♪ ♭
「よく耐えたな将吾くん……! 頑張った……!」
「湊さんも、あのバカ二人がご迷惑を……!」
湊家のリビングに通され、俺達はソファに座って俺と湊さんは互いに昔の話に花を咲かせていた。
昔にあった俺の母さんと親父がやった珍行動。それに巻き込まれて湊さんは相当苦労したようだ。本当にうちのバカ親が迷惑をかけたみたいで申し訳ない。
「ねぇ友希那」
「なにかしらリサ」
「なんでショウとおじさん、あんな意気投合してんの?」
「私もわからないわよ……」
リサが隣に座る友希那にそう質問しているが、友希那は疲れたように首を振る。この苦労を知るのは昔からあのバカ二人と親交のある人達と息子の俺だけだ。
「何度も胃を痛めたけど、今こうして音楽関係の仕事が出来てるのはあの二人のおかげだ」
「そう言ってもらえると助かります」
後頭部に手をやり、俺は苦笑いを浮かべる。
「君は昔から人助けに走り回っていたと聞いていたからね。家に来る時は毎回人助けしてて会えなかったな」
「あー……そういやそうでしたね。友達の家に行くから着いてこいって言われてても俺が家から飛び出すんで」
すみませんでした、と俺はまた苦笑いを浮かべると湊さんはからからと軽く笑う。
「そういうところはお父さんに似ているな。あいつも昔はそうだったよ」
「へー、優凪さんが言ってた通り性格はお父さん似なんだねショウって」
「リサ、言わなくていい」
笑いながら言うリサを、コメカミに手を当てて反対側の手を挙げて制する。
凄い癪だがここまで似ていると言われると納得せざるを得ないだろう。凄い癪だが。遺憾だが。
「……懐かしいな。そうやってリサちゃんと将吾くんを見ていると昔の二人を思い出すよ」
「あ、それ優凪さんも言ってた。そんな感じなんですか?」
「あぁ、まだ学生の頃だけどね」
俺とリサの関係性と母さん達の昔の関係性と似てる、ね。それなら将来俺とリサが付き合って結婚となってもこの周りなら不思議はないという事に──。
「「っ!?」」
「っ! 二人ともどうしたの、急に固まって」
いやいやいやいや、ないないない! 俺とリサが? ないだろう。リサが俺の家に来るのはベース練習があるからだし、それがなかったら来ないわけだし。休日に買い物とか行くのは他に遊ぶ女子の友達がキャンセルになったからだ。
そりゃ、リサとなら、って一度くらいは考えた事はなくもないが、俺となんて彼女が嫌だろう。目付き悪いし。喧嘩とか弱いし。
「そ、それより湊さん。ひとついいですか」
熱を帯びる頬をできるだけ無視して、穏やかに微笑む湊さんを見た。
「ん? なにかな」
首を傾げて質問を催促する。俺は今回、この家に来た本題を口にする。
「──LOUDER、その名の曲について教えてもらえませんか」
しん、と数秒の間湊家のリビングが静まり返った。
友希那のお母さんはキッチンで先程帰ってきた湊さんのために食事を用意していて、そこからしか音がなかった。
「っ、ショウ……!」
「悪い友希那。でも、気づいて欲しいんだよ。お前のその気持ちは例え動機が不純だとしても、音楽に対する向き合い方は純粋なんだって」
止めようとする友希那に俺はそう言うとリサも頷く。
湊さんに視線を戻すと、彼は瞼を閉じていた。少し待つと目を開いて懐かしそうに笑う。
「もう十年、いやそれより少し前……三人が産まれる前だな。あの曲を知ってるって事は大方優凪さんだろう? その顔を見るに、友希那も知ってるな?」
まったくあの人は、と頭を掻く。
「大体は知ってるだろうから結末だけ言おうか。どう歌えばいいのか、そう悩んでいた時に俺はこう言われたんだ」
その時を思い出すように、湊さんはキッチンの方を向いて言葉を紡ぐ。
「そのままの気持ちをぶつけろ。その思いはとても純粋で、素晴らしいものなんだから、ってな」
にっ、と少年のような笑みを浮かべて湊さんは言った。
「……お父さん、私あの曲を歌いたいの」
「あぁ、話を切り出されてなんとなく察していた」
「あの曲から感じる音楽への純粋な情熱……それを私の歌声に乗せて歌える自信がなかった」
でも、と友希那は言葉を続ける。彼女の表情はいつもの凛とした雰囲気を纏わせている。
「でも、そうじゃないのよね。私は、この思いを乗せて歌えばいい」
「あぁ、完成していなきゃ演奏しちゃいけない音楽なんて存在しないさ。どんなにお前が技術や精神的な未完成さを思い悩んでいたとしても……その思いはとても素晴らしいものだって俺も思う」
「……ありがとう、お父さん」
これで、歌う意思が固まったかな。
俺はリサの方に目を向けると、彼女は友希那と湊さんを見てニコニコ笑っていた。俺の視線に気付くとぶいっ、とピースしてきた。
ふいに可愛いな、と思ってしまい、俺は咄嗟に目を逸らす。
なんで目逸らしてんだ俺。
「よーし、じゃあ次の練習に皆に伝えようぜ。あこも嬉しがるだろうしな」
「そうね。あこや燐子もやりたそうだったものね」
「紗夜もあー見えてやりたそうだったよねー♪」
「練習メニューはもう出来てるし、それやればなんとかライブまで間に合うだろ」
練習メニューを書いた手帳をリサと友希那に見せると友希那は当然ね、と呟く。対してリサはうげっ、と声を漏らした。
「ね、ねぇショウ、ホントにこれやるの?」
「当たり前だろ? 安心しろよ、ベースなら俺も一緒に練習するからさ」
「うぅ……キツキツだけど頑張りますかっ」
湊さんから歌ってもいい、という許可も得たし、あとは俺達が一生懸命練習して、本番で演奏するだけだ。
♪ ♭ ♪ ♭
翌日、俺達は紗夜、あこ、燐子にメッセージで話があると伝えてCiRCLEのスタジオに集まっていた。
話す内容はもちろん、昨日の湊さんが昔歌った曲についてだ。
「おっす、おはよ〜♪ アタシ達が最後か」
「あっ、友希那さんとリサ姉にショウ兄!」
「よう三人とも」
「おはようございます」
俺とリサ、友希那がスタジオに入ると、既に紗夜達がスタジオ内にいた。あこと燐子が楽器の前にいるところを見るに、彼女達二人は結構前からいたようだ。
「突然呼び出してごめんなさい。今日は改めて、皆に話したい事があるの。先日聴いてもらった曲なのだけど、あの曲は私の父の曲なの」
「えぇ〜っ!?」
「友希那さんの……お父さん……?」
それから友希那はどうして昨日曲を忘れてと言ったのか、その時の気持ちを紗夜達に語った。そして最後に、あの曲に向き合いたいという気持ちは本物だと気付かさせてくれた人がいた、と俺とリサの事をチラリと見て言った。
もう一度、あの曲に命を吹き込みたいと言う友希那は真剣な表情で紗夜とあこ、燐子を見つめる。
「ライブまで日がない上に、私情で申し訳ないと思ってる。でも、私は……」
「ダメだなんて言っていませんよ、湊さん。ただ、少し驚いただけです」
「あこは大大だーいさんせいですっ!」
「わ、わたしも……皆であの曲が、演りたい、です」
三人ともやる気に満ちた笑顔で友希那に声をかける。
「だってさ、友希那?」
「皆……」
「なにも心配なんていらないさ。皆の性格は期間は短いけどわかる事だろ?」
「えぇ、そうね」
俺達が話していると、あこがうずうずしてドラムの方へ走り寄った。
「あの曲が演奏できるの嬉しいなぁー! 頑張らなくちゃっ!」
「演るからには全力でやらなねば、湊さんにも、湊さんのお父様にも失礼よ。これから本番までに練習の時間を増やして完成させるわよ」
「もちろんですっ! あこだってやる気満々ですからねっ! りんりん、練習始めよう!」
「う、うん……やろうあこちゃん」
「練習メニューはもうできてるから、確認頼むな紗夜」
俺がそう言うと、紗夜はわかりました、と頷いて俺がノートにまとめた練習メニューを受け取る。
「良かったね、友希那」
「えぇ……皆、ありがとう」
一瞬目を潤ませ、友希那は口の端を少し吊り上げて紗夜達の下へ向かった。
良かった。これならなんとかなりそうだ。
「ありがとね、ショウ」
「ん? 俺はなんもしてねーよ。今回は母さんと湊さんのおかげだ」
「そーだけど、なんとなく、さ?」
ぎゅ、とリサに手を握られる。突然な事にドキリと心臓が跳ねる。リサの方を向くと、彼女は白い歯を見せて俺に可愛らしく笑いかけてきた。
「ほらっ、ショウも行こ? ベース、一緒に練習してくれるんでしょ?」
「っ、当たり前だろ! 一人だけ見てるだけなんて嫌だしな!」
リサに手を引かれ、俺は今日のために背負っていたベースが入ったケースを背負い直す。
「わー! ショウ兄も練習やってくれるの!?」
「紅宮くんも参加ですか。新鮮ですね」
「ショウくんも……ベース、弾けるって言ってたもんね」
「それじゃあ、練習始めるわよ」
それぞれ準備終え、俺達は配置に着く。中央に友希那、左に紗夜、その後ろにあこ。友希那から右にリサ、そのすぐ近くに同じベースを弾く俺、その後ろに燐子の配置だ。
「スコアは皆に行き渡っているわね。少しずつ進めていくわよ」
「おう」
「は〜い☆」
「はい」
「はいっ!」
「わ、わかりました」
異口同音に返事をし、俺達は音を奏でる。
そのままの気持ちを大きな声で伝えるための曲を。
最近、夫婦以上、恋人未満。という漫画を読みまして。その展開が私好みだったので無意識に何度も読み直ししてるくらいです。
おそらくその漫画に引っ張られる可能性がありますが、ヒロインがギャルなので引っ張られても違和感はないはずです。
よかったら読んでみてくださいな! 赤恋にも反映できそうならやりたいです。
感想、評価お待ちしてます。