赤いベーシストはバンドもしたいけど恋もしたい!   作:倉崎あるちゅ

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またまた遅れてすみません。

書くモチベがあまり出ていませんでした。大変申し訳ありません。次からはちゃんとしますので。


四曲 LOUDER

 ライブ前日。

 ライブハウスCiRCLEのスタジオで俺とRoseliaのメンバー達は明日行われるライブに向けてラストスパートをかけていた。

 

「リサ、少し遅れてるな。テンポをもう二個くらい上げて」

「オッケー!」

 

 何回目かもわからぬ曲の練習後に、俺はリサに指示を出す。最初は俺も一緒になって弾いていたが十を越してからはこうして本番で弾く彼女達のみで練習をしている。

 

「あこ、リズムが走り過ぎてるわ。もっと皆の音を聴いて合わせて」

「はいっ!」

 

 俺がリサに指示を出していると、少し離れたところでは友希那があこを注意していた。

 俺は次に紗夜と燐子の方へ顔を向けて口を開く。

 

「紗夜と燐子はラストのサビをもっと盛り上がらせよう。まだまだ上げられるはずだ」

「わかりました」

「う、うん……」

 

 二人はRoseliaの中でも実力もあって安定感があるからこういう時は助かるな。すぐに対応してくれる。

 さて、最後に張り切り過ぎてる奴にストップかけるか。

 

「んで、最後に友希那。最初から飛ばし過ぎ。この曲の前に二曲も歌うんだから最後にはバテるぞ」

「……そうね、少し抑えた方がいいわね。気を付けるわ」

「おう。それじゃもう一度最初から始めよう」

 

 俺がそう言うと五人は頷き、演奏を始める。

 ここ数日の間に何回、何十回も聴いた曲のイントロが流れる。皆、疲れているはずなのに友希那の気迫に負けないようにと彼女の歌を支えようとしている。

 この曲を完成させたい、また生命を吹き込みたい、とその意思が伝わってきた。

 

 

 あの後何回か演って、完成度が高くなった。最初から飛ばしてた友希那もだいぶ抑えるようになり、リサとあこも注意を受けたところを直してくれた。紗夜は正確さが売りだが、ほんの少しわざと激しくして音を外す提案もした。燐子もまた同様の提案をした。

 

「お、お疲れ様〜。明日はライブ本番だし、そろそろ上がろっか」

「もうこんな時間になるんだ〜! 練習始めて三時間くらい経ってる……全然気づかなかったなぁ」

「皆、集中してたもんね……」

 

 あこ、燐子が三人で話していると、二人はスタジオ内に備え付けられた時計を見て黙る。

 

「ねぇ、ショウ兄! まだ予約時間残ってるよね!?」

「あぁ、まだ一時間くらい残ってるけど」

「……ギリギリ、まで練習、したらダメかな……」

「え!? ちょ、ちょっと二人ともまだ練習する気なの!?」

 

 あこと燐子の言葉にリサが眼をぎょっと剥いて問う。すると、話を聞いていた紗夜があぁ、と声を漏らした。

 

「私も残ります」

「えっ、紗夜も?」

「私も残るわ」

「友希那まで!?」

 

 困惑するリサにさらに追い打ちをかけるように、友希那も宣言する。え、え、と困るリサを見てると可愛いな、と思ってしまう。

 

「仕方ないな。……わかった。リサは上がるみたいだし俺がベース弾くよ」

「ちょっとショウ! 上がるなんてアタシ言ってないじゃん!」

「え、今の流れだとリサ帰ると思ってたけど」

「なんでいつも一緒に帰るのに今になって一人で帰らせようとするの!?」

 

 外真っ暗なんですけど!? と俺の胸ぐらを掴んでくる。冗談のつもりで言ったのだが、リサは本気だと思っているようだ。

 俺は冗談、冗談、と言って彼女の手を握って胸ぐらから手を離す。

 ていうか、お前どこからその力出してんの? 力強くないか。

 

「もう、休むのも練習のうちなんだからね〜!」

「それで、リサ。貴女はどうするの?」

「皆残るのに、一人だけ帰れるわけないじゃん! こうなったら、アタシも最後まで残るよっ」

 

 暗いのが怖い、ってのもあるか。

 

「ふんっ!」

「いっつ!?」

 

 ぼんやりそう思った瞬間、突然リサに足を踏み抜かれた。

 いかんいかん。声に出してたみたいだ。

 

 

「明日はもう本番、か」

「そーだね♪ 集中してたからあっという間だったなー」

 

 ライブハウスを出て、俺達は暗くなった道を歩く。

 友希那と紗夜が先頭になって歩き、その後ろにあこと燐子。最後尾に俺とリサだ。

 最近になってこうして彼女が隣に来る事が多くなった。前まで紗夜が隣にいたのだが。

 

「皆前に比べて技術も上がったし、あの曲をやって良かったな」

「うん、友希那も凄い張り切ってるもんね。負けないようにアタシも頑張らないとっ」

「あんま無理しないようにな。倒れたら元も子もないんだし」

「大丈夫大丈夫! だって、ショウがアタシの事支えてくれるんでしょ?」

 

 前を向いて歩いていると、リサが俺の視界に入るように身を乗り出す。微笑む彼女の顔が思ったより近くて一瞬ドキリとした。

 

「お、おう……」

「えへへ、期待してるからねー♪」

 

 そう言ってリサはあこと燐子の会話に割って入っていった。

 ……なんなんだよ、これ。

 俺は左耳に触れて、うるさい心臓の音を聞かないようにした。

 

 

 

 ♪ ♭ ♪ ♭

 

 

 

 家に着いたあと、アタシは真っ直ぐ自分の部屋に篭った。

 母さんが何か言ってたけど、アタシは今それところじゃない。

 

「あぁぁ〜! なーにが支えてくれるんでしょ、なのさぁぁ!」

 

 めちゃくちゃ恥ずかしい。顔熱いし、耳まで熱くなってる。

 ショウ、引いてたよねあれ……。あー、明日顔合わせるのが怖い。何言ってんのアタシ。

 ベッドにうつ伏せになり、枕に顔を埋めて足をバタバタとベッドに叩き付ける。

 

「……なんでアタシ、こんなドキドキしてるんだろ」

 

 足を動かすのをやめて、アタシは乱れた髪の毛を撫でて整えて自分の毛先を弄ぶ。

 

「リサー! 今日はショウくんのところ行かないのー? 行かないならご飯出来るわよー」

 

 階段下から聞こえる母さんの声に、ハッとしてアタシは大きな声で返事をする。

 

「今行くー!」

 

 明日はライブだからショウが来なくていいって言ってくれた。けど、なんか少し、よくわからないけど寂しかったな。

 

 

 

 ♪ ♭ ♪ ♭

 

 

 

「なんで少し寂しそうな顔してんだあいつ……」

 

 今日は来なくていいって言ったけど、なんでリサあんな顔したんだ。

 靴を脱いでうーん、と唸りつつリビングに入ると、いい匂いが俺の鼻をくすぐった。

 

「なんだ、母さんまだいたのか」

「あ、おかえり〜将吾」

 

 ただいま、と言ってソファにベースが入ったケースを置く。母さんがいるキッチンに向かうと、母さんの足元にはナウが尻尾を揺らしてうろうろしている。

 俺は黒猫を抱きかかえて、何を作っているのか確認した。

 

「今日は麻婆豆腐を作ったのよ。ほら、将吾好きじゃない?」

「あぁ、好きだけど」

 

 辛いものを食べたい時とかよく自分でも作るくらい好きだ。あんまり自分の料理は満足できないけど。主にリサのせいで。

 

「今日はリサちゃん来ないの?」

「明日がライブだから真っ直ぐ帰した」

「なるほどね。そっかそっか明日か」

 

 リサちゃんにも食べて欲しかったなー、と不平を言う。

 

「また別の日に作ればいいだろ」

「それが明後日の朝にはまたあっちに行かないといけないのよねー」

「明後日の朝ってまた急だな」

「あっ、でも安心して! 明日のライブには行くわ! リサちゃんのベースを弾く姿見たいもの! 友希那ちゃんの歌う姿も見たいわね!」

 

 ぐるんっ、と首を回してキラキラした目で言う。

 あんたいい歳してなにはしゃいでんだ。

 呆れていると腕の中のナウがペロリと俺の頬を舐める。くすぐったいけどやらせとこう。

 

「って、手を止めんなバカ親! 焦げる焦げる!」

 

 グツグツ煮立つ麻婆豆腐を見て俺は慌ててバカの手から木ヘラを取り上げる。ナウは小さいから片手で抱いている。

 ていうか、麻婆豆腐の量多っ!? また大量に食うつもりかこのバカ。

 

「ごめんごめん、つい夢中になっちゃった☆」

 

 てへぺろ、とでも言いそうなテンションで悪びれもなく言う。

 十分豆腐にも火が通ったのでガスの火を止めて、白米やサラダを皿に盛り付けていく。母さんは(どんぶり)に白米を大量に盛り、その上から麻婆豆腐をかけている。俺も丼派だけど流石にあんな量食べない。

 やっぱりおかしいわ、このバカ親。

 

 

 

 ♪ ♭ ♪ ♭

 

 

 

 翌日。

 ライブハウスCiRCLEにて、この日ライブが行われていた。ライブに出るのはRoseliaはもちろん、Afterglowや他のバンド達だ。

 トリは今勢いのあるRoselia。一曲目は魂のルフラン、二曲目はBLACK SHOUT。最後の三曲目、PAを務める将吾はその曲の音を合わせるため、MCをしている間に調節する。

 

「二曲続けてお届けしました。聴いていただきありがとうございます」

 

 キラリと首に下げるシルバーのアクセサリーがライトに照らされ輝く。

 それをフロアから見つめる男性と女性がいた。

 

「あれ、湊くんのアクセじゃない」

「えぇ、昨日友希那に渡したんですよ」

 

 友希那の父と将吾の母、優凪だ。

 Roseliaのライブを見て湊は昔を思い出し、懐かしそうに微笑む。

 

「友希那ちゃん小さかった頃より歌がプロ並みね。歳を感じるわ」

「ははっ、確かにそうですね。俺もですよ」

「あぁん、でもリサちゃんカッコイイ! 普段あんなにオシャレして可愛いのにライブになるとあんなキリってするなんて! しかもBLACK SHOUTなんてOKの時のあの手振り! 可愛いわホント! 将吾いらないからリサちゃん娘に欲しい!」

「あ、あはは……」

 

 優凪の発言を聞き、湊は苦笑いを浮かべる事しかできない。まさに限界オタクといった様子だ。

 相変わらずな彼女に湊は思わず胃に手を当てる。心の中で、何も言えなくてすまないとPAの仕事をする将吾を見て謝った。

 

「次の曲で最後になります。次の曲は……私が一番尊敬するミュージシャンの曲をカバーしたものです」

 

 友希那がMCをし、曲の説明をする。

 

「そろそろね」

「そうですね。あの曲を友希那が歌うのはちょっと恥ずかしいですけど」

「そう? 友希那ちゃん湊くんに似てるしいいと思うけど」

 

 だといいんですが、と湊はなんとも言えない顔をする。

 

「それでは、聴いてください──LOUDER」

 

 タイトルコールした瞬間、ドラムとギターがアンプを通して鳴り響く。続いてキーボードとベースの音。

 

「優凪さんが譲ってくれたベース、リサちゃんとても大事にしてますよ」

「えぇ、将吾からも聞いて嬉しかったわ。埃をかぶっているより、リサちゃんが使ってる方があのベースも喜ぶはずよ」

 

 徐々にテンションを上げるセットリストのおかげで観客は大盛り上がり。その前の他のバンド達の影響もあるだろう。

 周りが盛り上がる中、二人もRoseliaが奏でる曲を楽しみつつ会話をする。

 

「そうそう、将吾くんなんですけど」

「ん? 将吾がどうしたの」

「リサちゃんにベースを教えてるみたいで。おかげでブランクがあったリサちゃんも前より格段に上手くなったんですよ。やっぱり、将吾くんは優凪さんに似てますね。他人に教えるのが上手い」

 

 湊がにこやかにステージの上の友希那を見つつ会話をするが、優凪はベースを教えてる、と聞いた瞬間からPAの仕事をする将吾を見ていた。否、睨んでいた。

 冷たく、刺々しい視線。

 

 

 ──それは、とても親が子供を見る眼ではなかった。

 

 

 

 ♪ ♭ ♪ ♭

 

 

 

 ライブが終了し、全員着替え終わった後。

 楽屋に荷物を取りに来た俺達はテーブルの上に何か乗っている事に気付いた。

 他のバンドの人達は荷物をまとめて出て行っている。Afterglowも雨河さんに引っ張られて早く出て行ってしまった。

 

「これは……?」

「スコア、か?」

 

 友希那が手に取って確かめると、スコアの端に走り書きで何かが書いてあった。

 

いいライブだった。父より

 

 湊さん、来てくれてたんだ。って事は……。

 俺は残りのスコアを取り出して内容を確認する。タイトルは母さんが所属するRED RIDEのもの。そしてその端には、

 

今度はRED RIDEの曲もやってねー♪

 

 

紅宮 優凪

 

 やっぱり……。湊さんの乗っかってスコア置いていきやがった。

 

「ショウ? 何見てんの?」

「……これ」

「ん? うわっ、優凪さんのところのスコアじゃん!?」

「──今井さん、本当かしら」

 

 肩越しからリサが覗き込んで、スコアを見て声を上げるとすかさず紗夜がこちらにやってきた。

 俺が持つスコアをひったくるように奪い、紗夜はまじまじとその紙の束を見つめる。そして数秒後、彼女の頬が引き攣り、次に俺の胸ぐらを掴んだ。

 

「紅宮くん……こ、これは……!?」

「まて……落ち着け紗夜……くび、首締まってる……!」

「ほ、本物のRED RIDEのスコアじゃないですか! しかも紅宮優凪さんの直筆……!」

 

 言いながら更にぐい、と手に力を込める。

 やめろ、死ぬ。俺の息の根が止まる。

 

「わわっ、紗夜ストップ! ショウが死ぬから!」

「紗夜さん手! 手放そっ!?」

「氷川さん……ショウくん、死んじゃいます……」

「まったく、貴女達何をしているの」

 

 むり……いしきが……。

 

「ショウ!? ちょっと大丈夫!? ねぇってばー!」

 

 Roseliaにとって大事なライブの日。この日、俺はギターの氷川紗夜の手によって殺される寸前だったが、リサが割って入ってくれて気絶だけで済んだ。

 リサ、ありがとう……助かった……。

 




最後、テキトーになったの本当すみません。こんなギャグで終わらせるつもり無かったのにキャラが動いた……。


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