赤いベーシストはバンドもしたいけど恋もしたい! 作:倉崎あるちゅ
はい、遅れましたが赤恋祝一周年です!
一周年にこの話が出来るのは凄く嬉しい。なんたって、私が好きな漫画の要素を詰め込むことが出来たから!!!
リズリットに先日の事を話し終えると、彼女は腹を抱えて笑い、ソファにごろんと横になった。ひーひーと笑い、目に涙を浮かべるほど面白かったようだ。
「あっははははは! 下着見られて引っ叩いたって!」
「ちょっとリズ! アタシすごい恥ずかしかったんだからね!?」
リサがリズリットにそう苦言を呈すると彼女はごめんごめん、と言いながら目の端に溜まった涙を拭う。
「そっかそっか、まぁ将吾のやつは痛かっただろうけど役得だったんじゃねーかなー」
「うっ……」
ソファに横になりながら、リズリットは顔を赤くするリサを微笑ましく見つめる。そんな彼女は近くに寄ってきたナウを抱いて、黒猫のふわふわの毛に顔を埋めている。
「……」
「な、なに……?」
ナウを抱いたまま小さくなるリサをニヤニヤと笑って見つめていると、リサが警戒したように質問した。
「なぁ、リサ」
リズリットは頬杖をついてだらしなくリサに声をかける。警戒している彼女はナウが痛くないようにほんの少し強めに抱く。
「お前ってさ、将吾の事好きでしょ?」
そう訊かれたリサの心臓がドキリと強く鼓動した。
「ち、違う違う! アタシは別にショウの事は」
咄嗟に、リサは首を横に振る。
しかし、リズリットは一瞬彼女の視線が浴室、すなわち将吾のいる所に向けられた事を見逃さなかった。
「ホントかぁ? 練習中あいつの事目で追ってたけど。今も一瞬向いてたし」
「っ!」
指摘されたリサはかあぁ、と頬を染める。彼女の反応が面白く感じたリズリットは次の一手を打つ。
「なーんだ、リサは将吾の事好きじゃねーのか」
ならさ、と彼女は言葉を続けて横になっていた体を起こしてソファの上で胡座をかく。まっすぐリサを視界に捉え、口を開いた。
「アタシが将吾の事、奪っちゃってもいいね」
「そっ、それは……!」
ダメ、とリサは言いかける。言えなかったのは、自分に自信がなかったから。
これまで将吾の生活を料理などで支えてきたが、彼女の中で、幼馴染の方がいいのかな、ウザくないかな、と後ろ向きな思考の影響ですぐに返せなかったのだ。
「アタシが将吾と付き合っても大丈夫だよな?」
好きじゃないんでしょ、とリズリットはさらに追い打ちをかける。
すると、
「ダメ! ……絶対ダメ、だから」
リサはナウを下ろし、立ち上がって必死な表情で拒否する。
一瞬でも将吾がリズリットと並んで笑っている光景を想像してしまったのだ。それが嫌で嫌でたまらなく、思わず洩れ出てしまった。
彼女自身、ここまで独占欲があった事に密かに驚愕する。
「……ふぅん」
リサの発言を聞き、リズリットは目を細めてニタリと笑う。それを見てリサは嵌められたのだと理解した。
「やっぱ好きなんじゃん。なんで嘘ついたー?」
「……だって、この間二人の事見ちゃったから」
「この間……ああー! 夕方の時の!」
言われて思い出したように、リズリットはパンッと柏手を打つ。
「ははっ、なに、それでアタシの事最初警戒してたんだ?」
白い歯を見せて笑う。リサはバレていた事に驚き、体を固くする。そんな彼女に、リズリットは優しい笑みを浮かべて話しかけた。
「安心しなよ、リサ」
「なにが……?」
「アタシは将吾に恋愛感情なんか持ってねーから」
肩を竦ませて手を大きく振ってないない、と全面否定をする。
「アタシはあいつと付き合う気なんてないよ。あいつの事を支えるなんてできねーし」
むしろ願い下げだ、とまでリズリットが言う。リサは何故か質問すると、だってさー、と彼女は浴室の方に目を向けて口を開く。
「昔から人助けばっかやって、それが原因でトラブルもあってさ。アタシはなんもできてなかったし。せいぜいできて、轢かれそうだった将吾を庇って轢かれたくらいだし」
「えっ……?」
「あれ? 聞いてなかった? アタシ中学二年の時にトラックに轢かれて去年目が覚めたんだー」
ほら、とリズリットは着ていたシャツをまくると、白い肌に痛々しい傷跡が残っていた。それを見たリサは目を見開いて顔を歪めた。
「他にもあんだけど……ま、それはいっか。悪いな! 変なもん見せて」
リズリットは屈託のない笑みを浮かべて、でもさ、と言葉を続ける。
「アタシができるのってそれだけなんだよ。でも、リサはそれ以上の事ができる。料理だって、編み物だってできる。明るくて社交性もある」
「明るいって、それはリズだって……」
「アタシはすぐ手が出るからダメだよ」
将吾の顎何度殴ったか、と言って拳を突き出してすぐに拳を解いた。
「あいつ、リサといる時すげー楽しそうなんだよ。あんまり向こうじゃ見なかった」
「リズの時とアタシの時の扱いとか全然違くない?」
「おいおい、あんなの意識してるからに決まってんじゃん。逆にアタシは男友達みたいな感じだよ」
リズリットの答えにリサは釈然としなかった。
不満そうな表情をするリサを眺め、リズリットはひとつ溜息をつく。
「不満そうなリサに、ひとつ、アタシからプレゼントだ」
リズリットは傍にあったバッグを引っ張り出して、中を漁る。彼女は小さな箱を取り出して、リサに手招きして近寄らせた。
「手、出して」
「う、うん……」
差し出された手に、取り出した小さな箱を乗せて握らせる。リサは首を傾げてリズリットになんなのか目で問う。
「開けてみろよ」
優しい笑顔を見せて、リズリットは開けるように促す。リサは頷いて箱の蓋に手をかけて蓋を開けた。
中に入っていたのは、
「将吾がつけてるピアスのもう片方だ。リサにやる」
「えっ、でも……」
「あいつが勝手に置いてったやつだしいいっていいって」
そう言いながら、彼女は邪魔になった長い金色の髪を掻き上げる。その時に両の耳が露わになり、リサは両方に赤いピアスがつけられているのを確認した。
──アタシの、勘違いだった……?
「本当は今日将吾に返す予定だったんだが……それよりリサにやった方が良いって思ったんだ」
だから受け取ってくれよ? とリズリットは言う。
リズリットは将吾に恋愛感情はないと言った。ピアスは勘違いだとわかった。将吾がリズリットを抱きしめていた事もわかった。
リサが懸念していた事全て、綺麗さっぱりなくなったという訳だ。この時点で彼女に、受け取らないという選択はなくなったのである。
「ありがとう、リズ」
「いいよいいよ。お礼はライブの時にでもつけてくれたらそれでいい」
「うん、そうする!」
箱の蓋を戻して、リサはその箱をきゅっ、と抱きしめた。
すると、話が終わった直後に将吾が浴槽を洗い終えてリビングに戻ってきた。扉の開く音にびっくりしたリサは何故か咄嗟に箱を隠す。
「洗い終わって今お湯張ってるから。もう少ししたら入れるぞ。……って、なにやってんのリサ」
将吾は箱を背中に隠して不自然な格好で固まるリサを見て変なものを見るような目をする。
「な、なんでもない! なんでもないよー!」
「そ、そう? ならいいけど」
次第にジト目になっていき、リサは頬をひくつかせる。あはは、と苦笑いをして彼女は徐々に床に座り込んだ。将吾はまぁいいか、と呟いて足に擦り寄ってくるナウを抱き上げる。
浴槽に湯を張っている間、三人は他愛もない会話を繰り広げ、リサはここにはいない友希那の話をし、リズリットと将吾はお互いの過去にしたくだらな事を話した。
そうこうしているうちに湯が規定の量まで溜まった事を知らせるアラームが鳴り、将吾がお湯を止めて、優凪が買ってきた入浴剤をちゃぽん、と投げ入れた。
「先いいよ。どっちか決めて」
「ん? 一緒でいいじゃん。な、リサ」
「えっ、まぁリズがいいならアタシもいいけど」
ショウの家のお風呂大きいし、と小さく呟く。
「なら脱いだ服洗濯機に入れといて。洗濯終わったら、除湿機フル稼働して明日には乾かせておく」
「あいよー」
「うん、わかったよー♪ って、リズ!? ドアまだ閉めてないのに上脱がないの!」
「んだよー、別に将吾なんて気にならないって」
不服そうにへの字に口を曲げてリサに文句を言う。リズリットの今の格好は水色の下着を惜しみなくさらけ出している状態である。対して将吾はというと眼中にないようで、表情筋がピクリともしていない。
「んじゃ、頃合い見てバスタオル持ってくから」
「あ、うん……」
無表情こわ、とリサは心の中で呟く。
服を脱いで先に入っているリズリットを追って浴室に入る。リズリットは初めて入ったからか大きな浴槽にキラキラと目を輝かせている。
「ひろっ!」
「二人は余裕だよねー」
リサとリズリットは口々に感想を言って体を洗ったり頭を洗う。リズリットがリサの背中を洗っている最中、リズリットが手を伸ばし、無防備なリサの胸を掴んだ。
「ひゃっ!? ちょ、リズ! 怒るよ!?」
「うわー! リサ意外とおっぱいあるね!?」
「いいから手離してよぉ……! ぁ……んっ!」
「おお、めっちゃすげぇ」
手を動かしてリサの胸を揉みしだく。
すると、脱衣場のドアが開いた音が聴こえ、ビクリと二人が震える。開けたのはもちろん将吾。ナウを頭に乗せてバスタオルを見える位置に置いた。
「バスタオル置いとくからなー」
「おーう! それより将吾、聞いてくれよ!」
「なに?」
リズリットの嬉々とした声音を聞いて、将吾はうんざりとした返事をする。
「リサのおっぱい意外とあるぞ! しかも形いい!!」
「……」
この間にもリサの胸はリズリットによって弄ばれている。彼女は将吾に洩れる声を聞かせまいと口を押さえて我慢していた。
「リサー、殴っていいぞそのまな板」
「あ゛ぁ゛?」
「自分が鉄板だからって羨ましがってるだけだから」
「あ゛ぁ゛!?」
「まな板鉄板大絶壁」
「てめぇ将吾ォ!! こっち来やがれ! 今すぐぶっとばしてやらぁ!」
将吾の煽りを聞いたリズリットはリサの胸から手を離し、青筋を立てて浴室の扉に手をかけた。
当然、その隙を逃さなかったリサは息を荒くしながらゆらゆらとリズリットの背後に立ち、ゴスッ、と彼女の頭に拳を叩き込んだ。
目を回してふらふらしているリズリットの体に着いた泡を洗い流し、彼女を湯船に落とす。
リサは溜息をついて汗ばんだ体をまた一から洗ってから湯船に浸かった。彼女の中で、リズリットはある意味で油断ならない人物だと認定された瞬間だった。
全員無事──かどうかは本人次第だが──に風呂を済ませ、三人と一匹は将吾の部屋へ場所を移動した。
リズリットはベッドに横になってスマホをいじり、将吾とリサは恋愛小説、漫画、ライトノベルを取り出しては自分の好きなシーンを語り合っていた。
「でさ、アタシここ好きなんだー! 名前呼んで欲しくてわざと主人公に対して苗字で呼んでるとこ!」
「あぁ、そこもいいよなぁ!! 俺はこことか好きだけどさ」
将吾がそう言うとリサはわかる! と興奮気味に同意する。互いの趣味が共通しているため、話が噛み合い、延々と二人で会話が進んでいく。ベッドに横になっていたリズリットはそんな二人を見て呆れたように小さく溜息をつく。
──こいつら、なんでこれで付き合ってねーんだ。
リズリットの疑問に、当然誰も答えてはくれない。仲良く話す二人を見つめてから彼女は目を閉じた。
時計の針が二時頃になり、二人はようやくベッドにいるリズリットが静かになった事に気付いた。大の字に横になり、へそを出して寝息を立てている。
「この野郎……」
「野郎じゃなくない?」
「細かい事はいいの」
セミダブルのベッドを一人で占領するリズリットに将吾は呆れた。このままだとリサとリズリットで寝てもらうつもりだったベッドがリズリット一人になってしまう。
リサをリビングのソファに寝かせるのは気が引ける将吾は金色の少女を起こすべく肩を強く揺らした。
「起きろってリズ。それだとリサ寝れないだろ」
少し大きめの声で呼びかけてもすーすーと寝息を立てるだけである。何度か揺すっても起きないため、将吾は今日何度目かの溜息をついて諦めた。
「仕方ねぇなこのまな板」
「あ、あはは」
寝返りでスペースが空くだろうと将吾は予測し、リズリットの肩から手を離して、彼はベッドに背を向けた。その瞬間、
「のわっ!?」
突然強烈な蹴りが将吾の背中を襲う。不意打ちだったため彼は前につんのめり、バランスを上手くとる事ができずに前に倒れる。
しかし、前にはリサが座っており、その彼女は突然倒れてくる将吾に驚いて目を見開いていた。
「わっ!?」
倒れる将吾を押さえようとして手を前に突き出すが、いくらテニス部とダンス部を兼任するリサといえど、男性、しかも割りとガタイのいい将吾を押さえるのは無理があったのか、彼共々床に倒れ込んでしまう。
「いっ、つつ……くそ、リズのやつ……。リサ、大丈──」
「うん、大丈夫だよ──っ!?」
将吾が上体を起こしてリサを見ると、お互いの顔が至近距離にあった。あと数センチ動かしてしまえばキスもできるほどに。
二人とも、突然の事に驚き、理解が追いついていなかった。先に復帰が早かったのはリサの方で、理解した瞬間に顔を真っ赤にして体を硬直させる。その際に、将吾を押さえようとして突き出した手が力み、彼の服を握りしめる。
そして、右手が温かい事にリサは気づく。
「っ……」
将吾の手だ。二人の手がまるで恋人繋ぎのように重なっている。
正体を察した彼女の心臓がどくんと鼓動する。
倒れる寸前、将吾も手を突き出して衝撃に備えようとしていた。その時にリサと手が重なったのだ。
──なに、この状況!?
簡単に言うならば、将吾がリサを押し倒し、床ドンをしている、という事である。それも、将吾の足が彼女の太ももと太ももの間にあるというおまけ付きだ。
リサが手と服を握った事で、遅れて将吾も復帰した。彼女の双眸を前にし、徐々に頬に熱を帯び始める。
──やばい、リサ見てるとすげー胸痛い……。
瞳を潤ませて目尻に涙を溜めて、彼女は将吾を見つめる。彼もリサの事を見つめ返し、互いの視線が絡み合う。
「リサ……」
頬を真っ赤に染めて涙を浮かべ、手を握る彼女に、将吾は思わず顔を近づける。
──なんだ、これ。俺今、何してんだ。
将吾とリサの息が熱く溶け合う。
──胸、ずっとどくどく言ってる……。ショウが近くて、手温かくて……。
リサは目を閉じ、目の端に溜まった涙を流す。
あと少しで、互いの唇が触れ合いそうになった瞬間、将吾のスマホに着信が鳴った。
「「っ!?」」
二人とも急の事でびっくりして肩を震わせた。
我に返った将吾はガバッ、と起き上がって床に落ちていたスマホを取り上げて部屋を出ようとする。
リサは上体を起こして出ていこうとする彼を見る。
「このまま俺も寝る。その、なんか、ごめん」
「あっ、う、うん……おやすみ」
おやすみ、と将吾は前髪をくしゃりと掴んで言って部屋から出ていった。
残されたリサは、ぼう、として人差し指を唇に当てる。
「触れた……よね……?」
スマホが鳴った時、互いに驚いた。それにより、ほんのわずか二人の唇は触れ合ったのだ。
「っ……」
自覚した瞬間、リサは顔を覆って床に転がった。まるで顔から湯気を出す勢いで左右にゴロゴロと行ったり来たりする。
嬉しいようで名残惜しいようで。ようやく止まったリサはにやける口を必死に抑えていた。
♪ ♭ ♪ ♭
着信が鳴るスマホを手に、俺は最低限寝る事は出来るゲストルームに入った。
電話に出ると相手は飛鳥で、やっと出た、とイラついたような口調だった。
『さっきからメッセージとか電話したんだぞ! 無視りやがって』
「悪い……。でも、助かった」
『助かった? なに、どゆこと?』
飛鳥がそう訊いてくるが、俺は何も言わずにスマホを持っていない方の手を口元に持っていき、手の甲で口元を抑えた。
あぁくそっ……あのままだったら俺は今頃……。
俺はきっとあのままリサにキスをしていただろう。なんでかはわからない。けど、目を潤ませて頬を染めてた彼女を見ると体が勝手に動いていた。
──でも、最後のあの感触は……。
「っ……!」
すげぇ、胸苦しい。
狂おしいほどの感覚を味わい、飛鳥の言っている事に適当に返事をして電話を切った。正直何を話したかわからない。
俺はベッドに身を投げ出し、胸に手を当てる。
早鐘のように鼓動しているのがわかる。でもその正体がなんなのか喉元まで来ているのに出てこない。
「寝れるわけねぇだろ、こんなの」
心臓の音が鼓膜に振動するほどうるさくて、とてもじゃないが寝れるとは思えなかった。
めっちゃ書いててキュンキュンしたぁぁぁ!!!!
書きたかったやつその2ぃぃぃぃ!!!
個人的に、まな板鉄板大絶壁は知性落とせたと思います。書いてて楽しかった。
感想、評価お待ちしております。感想はなんだっていいので気軽にどうぞー(*´꒳`*)
倉崎がしっぽブンブンしますので。