赤いベーシストはバンドもしたいけど恋もしたい! 作:倉崎あるちゅ
次の話にガッツリ書きたいがために今回は文字数少ないです。
アタシがショウの家に泊まってから三日くらい経ったこの日、学校が終わって、アタシは家でクッキーを作っていた。今日はバンド練習がない。友希那がまだ歌詞を完成させてないから、大まかな曲調はできていてもちゃんとした練習ができないから。
あれから、ショウはアタシと目を合わせてくれなくなった。合わせようとすると逃げるみたいにして燐子とかあこと話し始めるし。
「よしっ、できた」
クッキーが焼き終わり、味見で一つ手に取ってぱくりと口の中に入れる。
「ん、美味しっ♪」
よし、今日も美味しくできた。アタシはクッキーの粗熱を取った後に何個かに分けて袋に詰めた。リズがアタシのクッキーを食べたいって言ってたから作った。あとは友希那も最近食べてないって言ってたからかな。
それに……。
「ちゃんと、ショウと話したい……」
泊まった日の朝なんてリズと話してもアタシと話してくれないし。凄い隈作ってたから心配したのに。
思い出すとロクに話をしなかったショウに腹が立ってきた。
クッキーも作ったし、今日は友希那に渡して明日ショウにも渡そう。これで話すきっかけもできるし、話を逸らされる心配もないはず。
アタシは料理で使ったものを手早く片付けてからエプロンを外して自分の部屋に行く。窓を開ければ目の前には友希那の部屋の窓がある。
確か、歌詞作らないと、って言ってたからいるはずだよね。
「ゆっきなー! クッキーできたよー」
反応がないため、アタシは何度か友希那の名前を呼ぶ。すると、友希那の部屋の窓が開いて友希那が出てきた。
「やっと出てきた。クッキーできたよ♪」
「そう。ありがとうリサ」
「新曲の歌詞、どんな感じ?」
そう訊くと友希那は肩を竦める。結構難航しているみたい。
友希那は少し考えると、リサ、とアタシの名前を呼んで声をかける。
「用事がなければいいのだけど、少し手伝ってもらえるかしら」
「っ! うん! アタシで良かったら手伝うよ!」
今日はショウがCiRCLEでバイトだから行かなくていいし、昨日の残りで済ませるってメッセージ貰ってるから大丈夫。
それにしても、友希那から手伝って欲しいなんて珍しいなぁ。でも、こうやって言われると嬉しい。
アタシはベランダの手すりに手をかけて、友希那の家のベランダに飛び移る。
「リサ、落ちないようにね」
「大丈夫だよ☆」
友希那に手を貸してもらって無事に飛び移る事ができた。
足の裏についた砂利を払って友希那の部屋に上がる。机の上にはたくさんのメモが広げられて、そのメモを見ると、書きかけや、消したあとがいっぱいあった。
「どんな感じのがいいの?」
「そうね、感謝の気持ちとかかしら」
あぁ、それと、と友希那は言葉を続けて、友希那は珍しくニヤッと意地悪な笑みを浮かべた。
「ショウへの気持ちでもいいわよ?」
「っ……ゆ、友希那!?」
うぅ、友希那にまで弄られるなんて。友希那に言ったのアタシだけど、軽率だったかも。いや、多分だけどどっちみち知られたかも。最近燐子にも知られて生暖かい目で見られるし。
「リサ、顔赤いわよ」
「友希那のせいだからね!」
「それで、なにかあるかしら?」
「あー、うーん……」
感謝の気持ち、か。
「難しいならショウに対して感謝の気持ちにしておきなさい。その方が出てくるでしょう」
ショウに対して。それならいけるかも。
ショウは、太陽みたいに温かくて優しい。でも優しいだけじゃなくて、厳しい時もある。月みたいに遠くから見てくれたり。迷子の時や去年の海の時に思った。ショウは強い人なんだって。
アタシはそう思った事を友希那に言った。友希那はメモに単語だけ書いて、他には、と目で催促してくる。
「……ショウがいれば、怖くないって思うな」
アタシがそう言うと、友希那はそう、とほんの少しだけ笑った。こうやってRoseliaのおかげで友希那が笑うようになってアタシも嬉しいな。
「リサ、他にはある?」
「あっ、あとはさこれとかは?」
友希那の筆箱からペンを取り出してアタシもメモに書く。ショウといえば、というものを書いた。
「いいじゃない。私もいいと思うわ」
「でしょー!」
♪ ♭ ♪ ♭
CiRCLEでのバイトが終わり、俺は冷蔵庫に入っている残り物で食事を済ませて使い終わった食器を洗っていた。すると、近くに置いておいたスマホが振動した。
手を拭いてスマホを手に取って画面を見ると、電話をかけてきたのは友希那だった。俺は画面をスライドさせて電話に出る。
「どうかしたか?」
『新曲の歌詞作りを少し手伝って欲しいのよ。単語だけでもいいからお願いできるかしら』
「友希那からなんて珍しいな」
『今回はリサに感謝の気持ちを伝えたいのよ』
なるほど、それは確かに友希那だけの言葉より人からも聞いた方がいいな。
どうやら紗夜とあこ、燐子からは既に聞いているらしく、残りは俺のようだ。
「そうだなぁ……まぁ、皆と被るだろうけど、リサはやっぱ笑顔だよな」
『そうね』
「優しくて、温かいくて。日向にいるみたいって言うか」
トクン、とリサの笑顔を思い浮かべると微かに胸が鼓動し、言葉を紡いでいくうちにまた強くドクン、と鼓動した。
最近ずっとだ。最近というより、リサとリズが泊まってからなんだが。どうもリサと目を合わすと俺が彼女を押し倒した時の光景が思い出されて気恥ずかしくなる。
『他にはないかしら』
ほか……ほかか。ちょっと長くなるし、単語でもないが友希那ならなんとか納めてくれるだろ。
「リサと会ってから、俺の日々は変わって楽しくなった。大袈裟だけど、世界が変わったみたいっていうか……」
そう、と友希那は電話口で微かに笑う。
「も、もちろん友希那達のおかげもあるからな!?」
『わかっているわ。焦らなくてもいいわよ』
「……焦ってねぇし」
『本当かしら』
「ホントだって」
珍しく弄ってくる友希那に切るぞ、と言って俺は電話を切ろうとすると、彼女は待ちなさい、と待ったをかけた。
『一回だけ言うわ。リサを泣かせたら、許さないわよ』
「お、おう。わかった」
俺の返事を聞いて、友希那は自分から電話切った。
まったく、今日のあいつはなんなんだ……?
♪ ♭ ♪ ♭
二人の意見を聞いた私は机の上に広げたメモを順に見ていく。最初のうちは気づかなかったが、二人の意見を聞いていくうちに、私は何をやっているのかと疑問を持ちそうになった。
何故なら、ショウとリサの言っていることがほぼほぼ一緒だったのだから。二人とも、同じ気持ちだったという事がわかる。
ふっ、と自然と笑みがこぼれる。
「ショウはまだ気づいていないようだけど……いったいいつ気づくのかしら」
そう独りごちて私は紗夜と燐子、あこと作った骨組みを基にショウとリサから聞いた単語を言葉を変え、またはそのまま使って歌詞を作っていく。
しばらく時間が経ち、私は手を伸ばして伸びをする。パキパキ、と背骨が鳴った。時計を見ると針は既に深夜三時を指している。
「もうこんな時間なのね」
集中すると時間を忘れてしまうのは悪い癖だとショウとリサに言われる。私は机の上に置いてある飴を一つ手に取って口に入れた。
舐め終わったら歯を磨いて寝た方がいいわね。あまり遅く起きてると二人がうるさいもの。
さて、あと一息。あと少しで完成する。
結局、飴を舐め終わっても完成するまで続けてしまった。時刻は既に五時。仮眠は取れるはず。
寝不足だけど歌詞が完成したからいいわ。
そういえば、曲名考えてなかったわね。
私はちらりと歌詞の一文を見た。
「曲名は──」
さてさて、次の話で第四章は終わりです。
本文読んでて気づいた人もいると思います。つまりそういうことですね。
紅宮くんの気持ちがだんだんと明確になりつつありますね。さぁどうなるかなー!
感想、評価お待ちしております。