赤いベーシストはバンドもしたいけど恋もしたい!   作:倉崎あるちゅ

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大変お待たせしました。
戦闘描写続きなのでモチベが上がりませんでした。




四曲 ダンジョンボス・キメラ

 

 

 

【グルゥ……ガアァァァァ!!】

 

 

 一歩、また一歩とキメラが足音を響かせてこちらへ歩いてくる。

 まだ奴の視認範囲には入ってはいない。逃げたいところだが、俺達の後ろにある通路は、この先は行き止まりだ。ダンジョンの入口に戻るにはモンスターの目の前を通って脇道に行かないといけない。

 俺はメインメニューを開いてアイテム欄の中から、使わなくなった装備と余った盾を引っ掴んだ。

 

『紗夜、これ使って。流石にタンクで初期装備はキツイ』

『わかりました。……ちゃんと返しますからね』

『別に返さなくてもいいって』

『いえ、それでは私が納得しません』

『はいはい……』

 

 紗夜が、俺があげた鎧と盾を装備したのを見てから、俺は次の指示を飛ばす。

 

『燐子はれいにぃさんに救援メッセ送って! 最悪全滅もありえる!』

『了解! (๑•̀ㅁ•́๑)ゞ』

 

 基本的にダンジョンボスは大人数での討伐がセオリーだ。

 人数的には今の俺達も大人数とまではいかないが、それなりの人数になる。しかしうち三人は初心者のためカウントはしない。いくら高レベルの俺と燐子、あこがいてもダンジョンボスの討伐は難しい。

 

『あこは友希那に直接バフのやり方教えてあげて!』

『わかった! ちゃんと教えてくるね!』

 

 正直、猫の手も借りたい状況だからな。吟遊詩人のバフで少しでも底上げしておきたい。

 そうやって指示出しをして、キメラの方を見るとあと少しで奴の視認範囲に入るところだった。俺は装備していた投げナイフを構えて、モンスターと通路の間を縫うようにして投擲する。

 黄色いライトエフェクトを輝かせながら、ナイフは地面に突き刺さって音を通路に反響させた。

 キメラはその方向に向かって走り、何事かと確認する。そして何もないとわかり、キメラはまた一歩ずつその歩を進める。

 これでなんとか時間稼ぎができた。ほっ、と俺は胸を撫で下ろす。

 すると、俺のモニターを覗いていたリサがねぇ、と俺の袖を引っ張る。

 

「アタシにも何かある?」

「じゃあ、リサにはヒールの上位版を覚えてもらうかな。スキル欄にハイ・ヒールってあると思うんだけど……あぁ、これこれ」

 

 今度は俺がリサのモニターを覗き込んでハイ・ヒールの名前を指差す。

 

「へぇ、靴みたいな名前だね」

「何も知らないとそうなるよな」

 

 俺もそうだったし。

 

「あ、ショウ。これもやった方がいいかな?」

「ん? あぁ、リジェネか。そうだな。戦闘が始まる前にかけてくれると嬉しいかな」

「りょーかい、任せて♪」

「おう、頼りにしてる」

 

 時間経過でHPを回復してくれるリジェネは高レベルのダンジョンでも役に立つ。ハイ・ヒールも併せて使えば、楽に、とまではいかないが負担は減るだろう。

 リサと会話をしていると、ポン、と通知音が鳴る。チャット欄を見ると燐子からのチャットが来ていた。

 

『れいにぃさん達、全速力でこっちに来るって! わたし達でそれまで持ちこたえよう٩('ω')ﻭ』

『ありがとう、燐子。あこ、そっちは?』

 

 メッセージを打ってくれた燐子にお礼を言って、俺は次にあこに確認をとる。

 

『バッチリだよショウ兄!』

 

 少し遅れてから、そうチャットが飛んでくる。

 よし、これで準備は整った。少し不安はあるがれいにぃさん達が来るまでの時間稼ぎだ。なんとか凌ぐしかない。

 先程キメラを誘導したが、もう既に視認範囲ギリギリまで迫っている。

 

『友希那、あこに教えて貰ったスキル使って』

『わかったわ』

 

 返事が来てすぐに友希那がスキルを使用する。

 

『La〜♪ La〜♪』

 

 綺麗な歌声が響き、俺達を鼓舞する。

 筋力と敏捷、耐久がそれぞれ底上げされる。

 

『湊さんと今井さんは私の後ろに!』

『あこも紗夜さんの手伝いします!』

 

 紗夜がタワーシールドを構え、あこが盾を装備した骸骨兵を呼び出す。その骸骨兵達は紗夜の隣に立って術者のあこ、後衛の燐子、友希那とリサを守るように盾を構えた。

 俺は前に進み、腰に吊ってある黒い剣を抜剣する。

 黒い太陽を背中に出現させ、剣に黒い炎を纏わす。

 

『行くぞ……!』

【グルゥアァァァァ!】

 

 視認範囲に入ったキメラが俺達を見つけて雄叫びをあげる。ボス専用の厳かなBGMが鳴り始め、俺は顔を引き締めた。隣のリサも顔を強ばらせて冷や汗を垂らしている。

 走って突貫してくるキメラはその勢いを利用して前脚で俺を切り裂こうと、鋭い爪をもつ脚を高らかに掲げた。

 

『──黒炎よ、我が盾となりて、厄災を焼き払い給え!』

 

 俺とキメラの間に魔法陣が描かれ、その魔法陣は黒い炎を吹き出してモンスターの前脚攻撃を防いだ。防御した事により、キメラに軽いノックバックが生じて少しの隙ができた。

 俺はモンスターの頭上まで跳躍し、山羊の頭をターゲティングする。

 キメラの山羊の頭は遠距離の魔法を使う。蛇の頭なら石化のブレス。獅子の頭なら火炎のブレスを使う。どの頭も遠距離には変わりないが、山羊だけは口から吐き出すのではなく離れた場所に魔法陣を描いて魔法を撃つ。

 そんな魔法を撃たれてはこのパーティはすぐに全滅してしまう。だからこそ先に山羊の頭を攻撃しなければならない。

 

『おら……!』

 

 剣に纏う黒炎が一際強く燃え盛り、俺は山羊の頭と獅子の身体の付け根に魔剣を叩き付けて、すぐに剣を引き戻し右薙に振るった。すぐあとに黒炎が勢い良く爆ぜて山羊の頭が吹っ飛ぶ。

 これでキメラは部位欠損した。遠距離魔法はしばらく撃てないため比較的安全に戦闘ができるだろう。

 

【グゥルゥアァァァァ!!】

 

 部位欠損によるダメージでモンスターが苦悶の声をあげる。

 俺はキメラの後ろ──蛇の頭の前に着地して黒い剣を構えて荒ぶる蛇の頭を剣で斬り付けていく。すると突然モンスターが雄叫びを上げながら後ろ足で立ち上がった。

 これは、ブレスを吐く予備動作だ……!

 

『紗夜! 盾構えて! ブレスだ!』

 

 俺がチャットでそう告げた直後、ゴバァァッ、と灼熱の炎が獅子の口腔から吐き出された。

 俺の画面からは炎に飲まれて何も見えない。ちらりと横のリサの画面を見ると、紗夜とあこの骸骨兵達が必死に炎を堰き止めている。

 

「リサ、ブレスが終わったら紗夜にハイ・ヒールかけてあげて」

「うん、わかった」

 

 俺がそう言うとリサはスキル欄を開いていつでも回復魔法をかけられるように準備をする。彼女の手が若干震えているが、おそらく緊張しているんだろう。

 

「大丈夫、紗夜の今の装備ならそう簡単に死にはしないから。ほら、肩の力抜く」

 

 ポン、と力むリサの肩を軽く叩く。

 すると、ぱちぱちと彼女は目を瞬かせたあと頬を緩ませた。

 

「ありがと、ショウ。初めてだし緊張するんだよね〜」

「俺も初めてのボス戦は今のリサみたいになったからわかるよ。大丈夫、今はRoseliaのメンバーがいるだろ?」

「うん!」

 

 知らない人達とやるより、いつもの仲のいいメンバーで攻略するというのは不思議と安心するものだ。例えそれが、どんな困難でも。

 ……まぁ、俺と雨河さん達は集まるとすぐ慢心して全滅も珍しくないんだが。

 

「よし、ブレスが終わった。リサ、回復」

「りょーかい☆」

 

 火炎が晴れた瞬間、煤だらけの盾を構えた紗夜が現れる。HPを見るとまだレベルも低いためHPが半分程削られていた。

 その奥で淡い緑色の光が輝き、一瞬で紗夜の黄色だったHPバーを緑色に満たす。

 

『今井さん、ありがとう』

『どーいたしまして♪』

 

 リサと紗夜がそうしている最中、俺は噛み付いてくる蛇の頭を切り落とそうと剣を振るう。

 細いくせに全然切れねぇ。ヌメってるせいで爆裂しない仕様なんとかならないのか。

 キメラの尻尾に苦戦していると、ドゴンッ、という音が聴こえてくる。視線をリサの画面の方に向けると燐子が魔法を繰り出していた。

 

『ショウくん、これじゃジリ貧だよ:(´◦ω◦`):』

『まだ開始して五分も経ってないぞ!? れいにぃさん達来るまで我慢!』

『けど……今井さんのヒールだけで足りるか……って、氷川さん危ないっ!Σ(・□・;)』

 

 俺と燐子がチャットをしていると、盾を構えていた紗夜に、キメラが押し潰そうと両前脚を掲げていた。

 

『紗夜さん! それは防御できないです!』

 

 あこがそう言った瞬間、モンスターが紗夜を両前脚で押し潰し、彼女のアバターはダウン。起き上がったところをキメラが鋭い牙で噛み付いて紗夜を壁まで投げ飛ばした。

 

『ぐっ!』

 

 壁に叩きつけられ、紗夜のアバターからそんな苦悶の声が漏れる。

 彼女のHPバーを見ると、先程満タンになったにも関わらず、既にそのHPバーを緑色から黄色へ、そして赤色になり数ミリ残してどうにか持ち堪えた。

 

『紗夜、大丈夫!? 今回復するから!』

『あこちゃん! 氷川さんが回復するまで持ち堪えて! わたしは魔法の詠唱するから(;`O´)o』

『わかったよりんりん! 友希那さん! もう一度バフお願いします!』

『さっきのをもう一度やればいいのね? わかったわ』

 

 皆そう言ってそれぞれ行動していく、のだが──。

 

『ゆ、友希那さん!? それ防御力じゃなくて状態異常耐性ですよー!?』

『間違えたわ。どこだったかしら』

 

 うわー……あこ大変そうだな。助けてあげたいけど俺も俺で危ないしな。いつ石化のブレス吐いてくるかわからないし。

 そんなことを思いつつ蛇の頭の噛み付きを横ステップで回避していく。後方に避けてしまうとブレス攻撃の選択肢が出てしまうのを防ぐためだ。

 

「ショウ、これ大丈夫?」

「微妙。早く雨河さん来てくれると助かるんだけど……あと少しの辛抱」

「うげ。じゃあ皆にリジェネかけておくね」

「お願い」

 

 苦い顔をするリサと短く会話をしてからゲームに集中する。

 リサによるリジェネが入り、あこが召喚した骸骨兵のHPも回復していく。俺の減ったHPも少しずつ回復している。

 

【グゥゥ……ルガァァァァ!!】

 

 雄叫びを上げて、キメラは二回連続で前脚の爪を骸骨兵達に突き立てる。呆気なくあこの骸骨兵達は砕かれ、カランカランと骨が地面に転がった。

 

『ショウ兄〜!』

 

 今にも泣き出しそうなチャットの文面に俺は思わず苦笑い浮かべた。

 紗夜はリサのおかげで体力全快。燐子はあと少しで魔法が撃てるけど時間が必要。逆に俺の魔法は剣で詠唱無しの魔法が撃てる。やるしかないな、これは。

 俺はキーボードを叩き、スキルを何個か使って魔法を発動させる。

 

『紗夜! キメラ暴れると思うけど頑張れよ!』

『まったく、紅宮くんは無理を言いますね。……いいですよ、皆は私が守ります』

 

 俺は体を半身にし、黒い炎を纏う片手剣を顔の右側まで引き付けて構えた。

 確か、この構えは剣術で言うと霞の構えっていうんだったか。この前ピカピカな頭した着物着たおじいさんが言ってた気がする。

 地を蹴り、飛ぶように蛇の頭まで一直線に移動する。俺を喰らおうと口を開けているが、喰われる寸前で剣を突き出した。

 瞬間、突き刺した箇所から十字に黒炎が吹き出し、蛇の頭が弾け飛んだ。その後十字の黒炎が連鎖的に吹き出して獅子の体をも巻き込み、五段のHPバーを二割削る。

 

【ガウアァァァァ!!】

 

 予想通り、部位欠損したモンスターは暴れ、牙、爪による無差別攻撃が紗夜を襲う。しかし彼女はHPを削られながらも一歩も引かずに攻撃に耐える。

 

『天使の翼は厄災を払う。神聖なる光に呑まれよ! ──ホーリー・レイ!』

 

 その後方から、一条の金色の光が飛翔し、キメラの顔面に直撃して煙を立ち上らせる。燐子が魔法の詠唱を終えて撃ったのだ。

 体勢は立て直しつつある。なんとかなりそうだな。

 俺がそう思った瞬間、煙の中から、モンスターの眼光がリサの画面から見えた。

 

『怒り状態……! 氷川さん、後退してください! ∑(O_O;)』

『怒り状態で攻撃されちゃうと紗夜さんだと一撃で倒れちゃうんです!』

 

 燐子とあこがそう言うと紗夜がバックステップで後退する。

 煙が晴れると、キメラは口から赤い炎を漏らしながら唸り声をあげる。予備動作無しで攻撃がしかけられる瞬間、モンスターの頭上に紫色の魔法陣が展開された。

 

『え?』

『これは(゜ロ゜)』

『やっと来てくれたか、れいにぃさん達』

 

 魔法陣が展開して数秒後、紫電が煌めき、キメラの巨体を貫いた。

 

『ふははははは! 待たせたなー!』

 

 朱いローブを羽織った女性アバターが杖を掲げて、俺の後方に立っていた。その後ろに深い青い鎧を装備した男性アバターと露出の高い装備を着る女性アバターが控えている。

 雨河さんとあんじさん、とびの三人だ。

 

 

 

 






3日と4日の富士急のライブに私は行ってきます!
ライブ描写に磨きをかけたいですね。

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