赤いベーシストはバンドもしたいけど恋もしたい!   作:倉崎あるちゅ

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毎週投稿が板についてきました。
いやー、なんでバンドリではこんなに捗るのかな。不思議ですね( ꒪Д꒪)

それでは、本編をどうぞ!

※6月10日8時40分頃、細かい誤字脱字修正しました。


四曲 もう一つの趣味と温もり

 リサと友希那と知り合ってから数週間経った頃。

 リサとはほぼ毎日スマホのメッセージでラノベやらドラマの事、あるいは学校での事をよく話す。

 学校も隣なので、よく一緒に登校もした。

 友希那は、あれ以来俺に会う度にバンドメンバーにならないかと声をかけてくる。

 何故かと言うと、一回、仕事でスタジオのセッティングを行うために自分のベースを使って、試しに弾いたのだ。まりなさんからはせっかくだし弾いたらどうかなー、と笑顔で言われたからと言うのもある。

 それを偶然見た友希那が俺に、という訳だ。

 もちろん断った。俺のレベルじゃとても友希那とは釣り合わないし、今人気を誇るのは普通のバンドではなくガールズバンドだ。友希那には俺でなく同性で探してほしいと言ってその時は諦めてもらった、のだが……。

 どうも諦めきれないのか、それともダメ元で言っているだけなのか解らないが、彼女は毎回俺を誘ってくる。

 

 ジョーカー『──って事があってさー。楽しいんだけどなんとかならないものか……』

 

 カタカタと素早くパソコンのキーボードを叩き、俺は読書とベースの他に、もう一つの趣味を今楽しんでいた。

 NFO、そう呼ばれるMMORPGのチャット欄に俺が打ったチャットの下に新たに、ポンッと文字が追加される。

 

 聖堕天使あこ姫『やればいいんじゃないかなー? バンドってカッコイイし! ね、りんりん!』

 

 りんりん『バンドの事はよくわからないけど、ジョーカーさんが楽しめる方を選んだらいいと思うかな(≧▽≦) 』

 

 この二人がNFOをやり始めてすぐに仲が良くなったフレンド達だ。この二人とはほぼ毎日クエストに行ったり、ただおしゃべりしたりしている。

 ……俺が楽しめる方、か。

 確かに友希那とバンドを組んでベースが弾けるなら、それはさぞ楽しいに違いない。彼女はフェス──FUTURE WORLD FES. に参加すると意気込んでいるのだ。練習もライブもハードだろう。

 俺はどちらかと言えばハードであればあるほど燃える性格で、中途半端にはしたくない。

 故に、ガールズバンドとしてやっていってほしいと思っている以上、俺の性格に反するし、楽しめないと思う。

 やはり、友希那には悪いが断るしかないな。

 心の中でごめん、と謝罪してゲームのチャット欄を見る。

 すると、そこには聖堕天使あこ姫が企画するオフ会なる文字があった。

 ──って!?

 

「……オフ会!? 待て待て! 性別不詳で通している俺はアウトだろ!!??」

 

 以前、別のゲームをやっている時に素の自分を出し続けたせいで、男だとバレて執拗に個人チャットに連絡をしてくる女性プレイヤーとゲーム内で会った事がある。

 その件があったおかげでMMOは多少性格や性別を作ったり偽ったりする方がいいんだなと肝に命ぜられた。

 それに、確かこのフレンド二人は俺の事を女性だと思っていたはず。なおさら悪い。今は離席で逃げるしかない……!

 聖堕天使あこ姫──あこが次にチャットを打つ前になんとしても離席して逃げなければ。

 

 ジョーカー『ごめん、私はこれで落ちるよ。仕事の電話が来てしまってね』

 

 聖堕天使あこ姫『えー! オフ会について話したかったのになー!』

 

 ジョーカー『すまないね(;゚∇゚)』

 

 りんりん『しょうがないよあこちゃん(*´ω`*) また今度話そう٩(ˊᗜˋ*)و』

 

 はぁ……なんとかなった。

 ではノシ、とチャットを打ってゲームのクライアントを落としてまたもう一度溜息をつく。

 人に嘘をつくのはやっぱり気が引ける。あまり俺は人に嘘をつく事をしないから、こういう些細であろう嘘でもすぐに罪悪感を覚えてしまう。

 

「……なんか甘いものでも買ってこよ」

 

 

 

 ♪ ♭ ♪ ♭

 

 

 

 気分転換も兼ねて、俺は近所のコンビニへと足を伸ばした。

 普段こういう買い物は夕方頃にスーパーに買いに行って冷蔵庫に置いてあるのだが、今回は冷蔵庫に置いてないし、ちょうどお茶やコーヒー、ジュース類なども切れているため、タイミングも悪くない。

 ……金額が高い事に目を瞑ればの話だが。

 高いんだよな、と思いつつコンビニまでやってきた。

 店の扉を開けて中に入る。すると、

 

「しゃーせー」

 

 ──凄く適当な挨拶をもらった。

 店員を見ると大学生くらいの男性の人が眠そうに目を擦っている。

 確かに時間はもうそろそろ午後二二時を回る。しかもお客が俺一人となれば暇で眠くなるだろう。バイトをしていると、本当はダメなのだが大変だし仕方ない、と思えてしまう。共感だろうか。

 大変だよな、と頭の片隅で思いながら飲み物が並んでいる棚へ向かって自分が飲む物をカゴの中に放り込む。

 パタン、と棚の扉を閉めてふと隣を見る。

 

「「…………」」

 

 視線を元に戻して、もう一度隣を見る。

 

「「…………………………」」

 

 おかしいな。俺の視界に見覚えのある栗色のウェーブ髪をしたギャルが、コンビニの制服を着て映ってるんだが。

 

「……リサ、なんでいる」

「そりゃ此処でバイトしてますから♪」

「だよな……」

 

 返事が予想通り過ぎて思わず、はは、と苦笑いを浮かべる。

 まさかリサのバイト先が家の近所だなんて。

 なんだ今年は。本屋でリサに会って、次に友希那と会って、その次の日にリサと友希那が一緒に居て、それと遭遇するとか。学校の通学路も一緒だし。偶然が重なり過ぎて怖く感じる。他にもまだあるのか……?

 

「ショウってここ来るんだ。家ってこの近くなの?」

「まぁな。いつもはスーパーで済ませるんだが、たまたまこっちに」

「へぇー! じゃあ偶然なんだ♪ なんか多いね、こうやってショウと会うの」

 

 リサも俺と同じ事を考えたようで、こちらは俺と逆でなんだか嬉しそうに笑顔を見せている。

 その笑顔は大変魅力的で、先程の怖さが吹き飛んでしまうほどだ。

 俺はそうだな、と相槌を打ってもう一度飲み物が並べてある棚を開けて飲み物数本カゴに入れた。

 その次にデザートが置いてあるコーナーへ行き、美味しそうなミニパフェをカゴに投入する。

 

「あ、そのパフェ美味しそうだよね。アタシも今度買おーっと☆」

 

 その言葉を聞きながら二個目のパフェに手を伸ばす。

 

「二個も食べるの!? 太らない……?」

「今日で二個食べるわけないだろ!? ……明日食べるんだよ」

 

 ピアスが着いている左耳を触りながら答えてレジへ向かう。

 会計はリサがやってくれて、その時に電子カードの方がポイントも貯まるしいいよー、と教えてくれたのでそれを作ってもらい、リサのノルマに貢献した。

 

「ありがとね! おかげでノルマ達成だよ♪」

「コンビニは大変だって聞くしな。それに一々現金で払うのもキツいものがあるし丁度いいよ」

 

 主に学校での食堂や自動販売機で小銭が消え失せていく。徐々に財布が軽くなっていくあの感覚は恐怖しかない。世の中の既婚男性はその感覚を毎回味わっているのだろう。尊敬する。

 

「さー! アタシもあと少しでバイト終わるし頑張りますかー!」

「おう、頑張れ」

 

 そんな会話をしていると、おー! と意気込むリサに向けて男性店員が話しかけてきた。

 

「あー、今井ちゃん。意気込んでるとこ申し訳ないんやけど、もう上がってもええよー」

 

 …………え、関西弁?

 エセ関西弁じゃなくて本場の関西弁だった。もう、それはそれはスムーズに、息を吸うような関西弁だった。

 

「え、いいんですか? まだ時間じゃないですけど……」

「ええよええよ。この時間帯ほとんど来いへんから。タイムカードオレ押しとくし、上がって彼氏クンと一緒に帰ったらええやん」

「か……カレシ……」

「彼氏……? え、俺?」

 

 男性店員がニマニマした顔でそう言って、リサがほんのりと頬を朱に染める。

 つか、彼氏ってなんだ。俺とリサはそんな関係ではない。友達だ。

 俺は首を振って違う違う、と否定をする。

 

「なんや、違うんか? そりゃ失礼したなぁ。いやぁ、今井ちゃんすまんなぁ? お似合いやったしぃ」

 

 なんだこの店員。ゲスい顔してリサの事煽っているんだが。リサなんて顔真っ赤にして肩震えてるし。

 

「──っ! もう雨河(あめかわ)さんは黙ってて下さいー! それじゃアタシお先に失礼します!!」

 

 キッ、と雨河と呼ばれた男性店員を睨んで、彼女はパタパタとstaff onlyと書かれた部屋に引っ込んでいった。すると、リサが扉を少し開けて顔だけ出した。

 

「ごめんショウ、ちょっと待ってて」

「……リョーカイ」

 

 手を軽く挙げて扉を閉めるリサを見送る。

 俺は男性店員に視線を向けて彼に話をかける。

 

「雨河、さんでしたっけ。さっきの煽り、完全にわざとッスよね」

「おー、なんやなんや今ので解るん?」

「まぁ、リサが初心(うぶ)だって事は知り合って少しでわかりましたし、早く帰すためにあんな煽りをしたのかと思って」

 

 彼女はわかりやすい。

 恋愛小説、ドラマ、漫画の話をする時にたまに顔を赤らめたり挙動不審になったりする事がある。

 その時に確信した。すげー乙女じゃん、と。

 

「くはははは! よう見てるんやな。ま、早く帰したかったのはな? あの娘、暗いのがちょっち苦手みたいなんや。それもあってな」

「へぇ……」

「ちゃらんぽらんに見えるおにーさんでも、ちゃーんと考えてるんだよー!」

 

 自他共に認めるちゃらんぽらんかい。本当にそうなのかね。普通、自分の事をちゃらんぽらんなんて言わないんだがな。

 テンション高めにそう話され、突然あ、と男性店員は思い出したように声を上げた。

 

「自己紹介してなかったやん! オレは雨河(あめかわ)怜士(れいじ)いいますー! 後輩達からはれいにぃって呼ばれるかなー?」

「……俺は紅宮将吾です。ショウって呼んでください」

 

 よろしくー! とぶんぶん握手をされ、手が抜けるかと思った。

 テンション高めで、あこと気が合いそうな感じだ。一緒にいて退屈しない人、と言えばいいか。

 自己紹介も終えたところで、丁度いいタイミングで、リサが戻ってきた。

 

「ショウー、ごめん遅れて」

「ん、別にいいよ。雨河さんと話してたし」

 

 そう言うと、彼女はえぇ……と頬を引き攣らせた。

 

「雨河さんと会話出来たの? すごいね……」

「ちょっとぉ!? 今井ちゃん酷くない!?」

 

 アタシ無理だよ、と首を振る。

 どうやら、以前に俺の話を雨河さんにしたところ、それで盛大にいじられたらしい。彼の自業自得としか言いようがない。

 それから俺達はコンビニを出て、出来るだけ街灯が多く、明るい場所を通るように歩いていた。

 

「ごめんね? 送ってもらっちゃって」

「謝らなくていいよ。夜も遅いのに一人で帰らすなんてとても出来ないし」

「……ありがと」

 

 リサは照れくさそうはにかんだ。街灯の灯りでチラリとそのはにかんだ顔が見える。

 

「あと、はいこれ」

「え?」

 

 リサに、パフェと飲み物が入ったレジ袋を手渡す。袋は別けてあるので、自分の分は移してある。

 戸惑っている彼女はその猫目をぱちぱちと瞬かせ、レジ袋と俺を交互に見る。

 そんなリサに一言伝える。

 

「お疲れ様」

 

 

 

 ♪ ♭ ♪ ♭

 

 

 

「お疲れ様」

 

 街灯に照らされ、薄く微笑みながら言うショウを見て、アタシは今まで経験した事の無い胸の痛みに襲われた。

 彼の微笑む顔を見るのが気恥ずかしくて、スッと目を逸らす。

 どうしたんだろ……。さっきから心臓の鼓動が、鼓膜にまで伝わってうるさい。

 

「確か、この辺だったよなリサの家」

「えっ? ……あ、うん。そだね……」

 

 この感覚がなんなのかわからなくて返事が悪くなってしまった。

 不思議に思ったショウが少し距離を縮めて来る。

 

「? 大丈夫か、リサ? あ、コーヒーダメだったか?」

「っ、大丈夫大丈夫! コーヒーは好きだしなんでもないよ☆」

 

 あはは、と笑うが、ショウは訝しげに片眉を上げた。少しの間見つめられ、バクバク言っている心臓の鼓動を聴かれるんじゃないかとヒヤヒヤする。

 

「ち、ちょっと急だったから驚いただけだから! ありがとー♪」

「……まぁいいや。早く帰ろう。せっかく雨河さんが早く上げてくれたんだし」

「そうだね! よしっ、早くいこ──」

「──リサ!」

 

 なんとかこの鼓動を抑え、気を取り直して進もうとしたその時、アタシの手をショウが強く握って彼の方へ引っ張られた。

 そしてアタシの体はショウの腕の中に収まり、突然の事で硬直する。

 

 ──瞬間。

 

 信号無視をして来たセダン車が猛烈なスピードで目の前を横切って行った。

 ……危なかった。

 ショウが気付かなければアタシは今頃あの車に轢かれていたかもしれない。あのスピードだ。最悪死んでいたかも。

 急に怖くなり、腰が抜けそうになったが体はショウが支えてくれているため座り込む事はなかった。

 

「危なかったな……。あの運転手、若かったしいつか事故るな」

 

 お願いだから人様に迷惑かけんなよ、とショウが呆れたように呟いた。次にアタシの方を向いて心配そうに訊いてきた。

 

「怪我、ないか? それと手、強く握ってごめん。痛かったろ?」

「だ、大丈夫。引っ張ってくれてありがとう。助かったよ」

 

 アタシがそう言うと、ショウはほっと息をついて良かった、と独り言を呟いた。

 さ、行こうと声をかけてくれるが、アタシは動けずにいた。不思議そうに首を傾げる彼に向けて、アタシはあはは、と苦笑する。

 

「ごめん……さっきので腰少し抜けちゃったや」

「あー……しゃーねぇなそりゃ」

 

 そう言ってショウはピアスが着いている左耳を触る。コンビニでもその仕草を見たが、癖なのだろうか。

 なんて思っていると、ショウが目の前でしゃがんで顔をこちらに向けて顎でしゃくった。

 ……これって、乗れって事……?

 え、え? と戸惑っていると彼は速く、と言いたげに、ん、と小さく声を出す。

 アタシは急かされるままショウの背中に掴まり、体を預けた。

 重くないかな、と不安に思ったその時には既に目線はいつもより高くなっていた。

 男の人の割に細いし、華奢な雰囲気だった彼が軽々と人を背負う事が出来るのが凄いと感じる。それと、少しの申し訳なさも。

 

「ごめんね、おんぶしてもらって」

「歩けないんだし、しょうがないって。それに今日のリサ、謝ってばっかだぞ。どうしたいつもの明るさは」

「……あはは、アタシもわかんないや」

 

 なんだそれ、とショウは笑う。

 事実そうなのだから他に言いようがない。

 また鼓動がうるさくなってきて、頬もだんだん熱を帯びてきた。

 ショウに聴かれたらどうしよう、と思うと恥ずかしくて耐えられない。

 早くこの時間が過ぎればいいのに、と願うと同時に、心の片隅でもっと……と願っている自分がいて困惑した。

 そして、家まで着いて、アタシはショウの背中から降ろされた。

 心地よかった温もりが離れ、少し寂しくなるが、それを表に出さずに笑顔で彼にお礼を言う。

 

「ありがと♪ おかげで無事に帰れたよー」

「どういたしまして。家も近いし、夜のバイトの時はこうやって一緒に帰ってもいいぞ?」

「あ、それは嬉しいかなー☆ アタシ暗いの、少し苦手でさー」

 

 アタシがそう言うとショウはハッ、と鼻で笑った。

 

「……幽霊とか出そうって?」

「やめてよ! アタシそういうの無理なんだから! 眠れなくなったらどうすんの!?」

「寝なきゃいいんじゃね」

「肌が荒れるしやだ! 責任取ってよね!」

 

 えー、と面倒くさそうに呻いた。その次に彼は、でもまぁ、と言葉を続けて、

 

「そん時は寝るまで電話なりメールなり付き合うよ……」

 

 困ったように笑って、左耳に手を触れさせた。

 その笑顔でまた、アタシは胸に痛みが奔る。けれど、その痛みは何処か温かくて、心地よく感じた。

 




オリキャラが出てきました。このキャラは私の知り合いの性格を使っています。結構ゲスくて面白いので許可をとって使わせていただきました。この人もバンドリやってて、アフロ推しでしたねw

今回、急に展開が早くなりました。ちょっと、とある方の作品を読んで糖分過多になってしまいましてね。今幸せいっぱいなんです(昇天しかけ)

これからも毎週投稿出来るように頑張りますので、どうかよろしくお願いしますm(_ _)m
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