【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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77話を投稿させて頂きます。

今回、タキリヒメさん登場。
タキリヒメさんは人を支配したり、管理するのが望みらしいので、可能な限りその望みを叶えさせるために、今の政治を批判し、自分がトップになったら良いことだらけだということを言わせてみたら、こうなりました。

9000文字近くあるので、時間が有る時にゆっくりと読んでください。
  
  


帰ってきた大荒魂

 

  

   

刀剣類管理局、局長執務室――――。

本部長の紗南と局長代理である朱音は、あることについて話し合っていた。

 

「特別希少金属利用研究所に居た柳瀬、エレン、衛藤といった3名の隊員は、このフードを被った不審者に襲撃され、特別希少金属利用研究所に保管されていたノロを強奪されました。その後も回収班を襲撃してノロを強奪しているようですが、………その際に、妙な力を使っておりまして。」

「その妙な力というのは、親衛隊第三席と同様の物でしょうか?」

「……ご存知でしたか。しかし、何者でしょうか?……やはり、旧折神派の……」

 

特別希少金属利用研究所で可奈美達を襲撃し、その後も荒魂討伐を終えた回収班のノロを奪っている和樹のことについてであった。

彼について話している理由は蝶型の荒魂を伴って特別希少金属利用研究所を襲撃した件もそうだが、親衛隊第三席の皐月 夜見と同様に蝶型の荒魂を使役していたことを特に問題視していた。だが、和樹と刀剣類管理局との接点は妹が刀使であったぐらいでしかなかったため、紗南と朱音は襲撃者が何者なのかは未だに分からずじまいであった。

 

「私にも分かりませんが、何らかの関連性を持っていると見て良いでしょう。」

「ええ、蝶型の荒魂がスペクトラムファインダーに反応しない理由が判明する前に彼を捕らえて情報を得ることができれば良いのですが……元親衛隊の獅童と此花は多忙により、まだ完全に抜けていない状態ですし、その両名と“あの子供”を失うことで更に状況が悪化することは未然に防ぎたいので。」

 

朱音と紗南が和樹を問題視する理由。それは和樹が出す蝶型の荒魂が夜見と同じくスペクトラムファインダーに反応しないことに疑問を抱く者が増え、優の中に居るタギツヒメ、刀使の充足率の低下によって多忙となった真希と寿ヶ花の体内に有る荒魂が暴かれ、二十年前の相模湾岸大災厄の真実が暴露されれば、今まで以上に刀剣類管理局と刀使、そして日米両政府に対する世論の悪化を招きかねないと紗南は朱音に述べていた。

 

「つきましては、この男に関する情報を制限したいのですが。宜しいでしょうか?」

「一部の者にだけ、知らせるということでしょうか?」

「ええ、皐月隊員と同様であるならば、情報は制限しておく必要が有りますので。」

 

薫がこの場に居れば、「勿体つけることか?」と言うであろうが、情報を制限したい理由があった。

 

一つは、親衛隊第三席と同様の力であるなら、どうやってその力を得たのか内密に探りたかったこと。

二つは、この襲撃犯が刀剣類管理局の人物と何らかの関わりがあった場合、あまり事を荒立てればその人物が、この襲撃犯を証拠隠滅のため、抹消する可能性があったからである。

 

上記の二つの理由もあって、内密に和樹を捕らえようとし、旧折神派である綾小路武芸学舎の結月学長には、和樹に関する情報を与えなかった。

それ故に、和樹は刀使を救いたいという意志で動いたことを朱音や可奈美達に知られることもなく、荒魂化した人間として、それらを何事もなく討伐した優とトーマスが追うこととなった。

そして、優に追わせることによって、タキリヒメ派の政治家からも優をタキリヒメに取り込ませることを延期させることができた。理由は、タキリヒメが何者か分からない和樹に襲われることがないようにということであった。

 

「……分かりました。そのように手配します。それと、紗南本部長。衛藤さんと十条さんに依頼があります。……護衛任務です。」

「……どのような方のでしょうか?」

「『市ヶ谷の姫』が衛藤さんと十条さんに面会したいそうです。……そのため、市ヶ谷へ向かう私の護衛任務としても同行をお願いしたいのですが……」

 

紗南は、朱音からの突然の話に驚くものの、至って冷静に、短くそう返答していた。

 

「……分かりました。当人達にはそのように伝えておきます。」

 

そんなこともあり、可奈美と舞衣は沙耶香の誕生日を祝えなかったことを残念に思っていたが、それはそれで良かったのかも知れない。

何故なら、沙耶香と姫和、そして薫は群馬山中と江仁屋離島で起きた荒魂騒動でそれどころではなかったのだから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数日後、防衛省市ヶ谷へ向かう車内。

朱音は、可奈美と姫和に状況を説明していた。

 

「これからとある重要な相手と面会します。」

「その重要な相手って、誰のことなんです?」

 

急に紗南から、朱音局長代理の直々の指令で連れてこられた可奈美は、重要な相手とは誰のことなのか尋ねていた。

 

(……早く終わらないだろうか?早く優に会いたい元気な姿が見たい抱き締めたい見てもらいたい。)

 

だが、一方の姫和は今回の任務に対して、余りやる気がなかったことに可奈美以外には気付かれていなかった。

 

「とても重要な相手です。……正直なところ、何が起こっても不思議ではありません。だからこそ、その相手も貴女方との面会を望んでいるのでしょう。そして私からも同行をお願いしたいのです。」

「……私達でお役に立てるんですか?」

 

朱音の話を聞いた可奈美は自分なんかで役に立つことがあるのか?とつい尋ねてしまう。

 

「貴女達でなければならないのです……。」

「私達でなければ?……っ!」

「……もしかして。」

 

だが、朱音に可奈美と姫和でなければならないと強く言われ、困惑しながらも可奈美は自身の御刀を見て、あることに気付く。

それは、タギツヒメと何か関連の有ることでは無いのかと。

 

そうしている内に朱音と可奈美達は市ヶ谷の防衛省に到着し、防衛省の事務官らしき人達に出迎えられていた。

恐らく、その重要な相手への案内係の様な者なのだろうと可奈美達は理解しつつ、市ヶ谷の様子を横目で伺っていた。防衛省市ヶ谷の警備をしている自衛隊員は武装し、少しピリピリしている様子であった。後は、警護の刀使が居るが、長船の刀使ばかりだったことに可奈美達が気付いたのは、市ヶ谷の警護に付いていた孝子と聡美が居たからであり、その様子から可奈美と姫和は舞草の中でも信頼できる者のみで警護しなければならないほどの重要な相手であると勘繰っていた。

そして、その聡美から「気を付けてね。」と言われたことに可奈美と姫和は気にならなかった………。

 

 

 

 

 

 

市ヶ谷の防衛省内でも、特に厳重に警備された通路を通りながら、幾層もある自動ドアが開かれる。それだけでも、その重要な相手は厳重に警護しなければならないことが充分に伺えた。

 

だが、その自動ドアが全て開かれた先には、監禁部屋というには不釣り合いな内装がされていた。

 

目の前には階段がある祭壇のような物が建てられていて、何とも言えない荘厳さがあったからである。

そして、その階段のある祭壇のような物のその一番上には肌も白く、眼元を手の様な物で覆っている“人”らしき者とどこか元気の無い綾小路武芸学舎の刀使が鎮座して居た。

 

「「!」」

 

だが、可奈美と姫和はその“人”らしき者に御刀が反応し、音を響かせたことから、その“人”らしき者は“荒魂”であると判断し、身構えていた。

 

「構えを解いてください、拝顔を賜り光栄です。……タギツヒメ。」

 

しかし、朱音に制止され、可奈美達は構えを解くが、それよりも朱音の“人”らしき者を「タギツヒメ」と呼んだことに驚いていた。

 

「……その名を指す者は既に()る。」

「では、何と?」

「……タキリヒメと呼ぶが良い。」

 

だが、「タギツヒメ」と呼ばれた“荒魂”はその名で呼ばれることを拒否し、別の名で呼ぶようにと朱音達に言っていた。

 

「承知致しました。私は――――」

「衛藤 可奈美、十条 姫和、折神 朱音だな。存じておる。」

「分かりました。……では、タキリヒメ。率直にお伺い致します。あなたは我々に仇名す者でしょうか?」

 

朱音はタキリヒメと名乗る“荒魂”に人間と敵対するのかと率直に尋ねていた。しかし――――、

 

「……………。」

 

言葉を返すことなく、沈黙をしていた。

 

「?」

 

何か不遜なことをしたであろうかと身構える朱音。その沈黙が長く続けば続くほど、この荘厳な場所と相まって、朱音の心はぐらぐらと揺れながら不安になるが、それと反対に可奈美と姫和は突然の話しに入ってこれなかったが、タキリヒメの長い沈黙のお陰で段々と冷静になれることができた。

 

だが、それがタキリヒメの狙いであった。

 

今、可奈美と姫和は大荒魂の一部であるタキリヒメを見て、不安を感じており、話を聞く態勢ではないのだ。だが、それは無理も無いことである。

今の可奈美と姫和は紫に取り憑いていた大荒魂と優に取り憑いているタギツヒメと比べているのだろう。なら、その不安が息詰まる沈黙へと変化し、“自分の声”を聴く最良のタイミングを待つべきだとタキリヒメは判断した。

そして、朱音は何もせず、長すぎる沈黙に冷や汗が出ていた。それを見逃さなかったタキリヒメは、局長としてはよくやっている方かも知れないが、政治家や女優としては素人であると理解した。

 

時に『沈黙』は、心を直接訴えかけ、御刀にも勝る武器となりうるのだとタキリヒメは理解していたが故に、それを最大限利用していただけであった。

 

その証拠に、タキリヒメが使う『沈黙』という武器を前にした朱音の心は、親から離れ迷子になった子供の様に狼狽えるばかりであり、可奈美と姫和は場の空気を悪くしないよう静寂を守っていくと心掛けると同時に冷静になっていった。そして、話しかけるタイミングは出鼻を挫くために、朱音が何か話しかける時であると確信し、その時こそが沈黙を破るべき時であると判断していた。

 

「……もう一度お「そんなことなどどうでも良い。その前に我に国籍と人権という権利は何時与えられるのだ?」っ……。」

 

急に喋りかけられた朱音は言葉に詰まり、タキリヒメの思い描いた通りに出鼻を挫かれ、動揺してしまう。

 

「我はこの国の政治家となるべく、随分前にそれを求めたが未だ良い返事を聞かない。これは、どういうことだ?」

 

タキリヒメは自身がこの国の政治家となるべく、国籍と人権を自身に付与するようにと大分前に求めていたが、その返事が未だに返ってこないことに不満を抱いているようであった。

 

「し、しかし、相模湾岸大災厄の被災者もおりますので、反感を買うのは必定であります。その場合は、先ずは我々に協力をお願いしたく……。」

 

しかし、朱音は江ノ島でタギツヒメやタキリヒメが起こした相模湾岸大災厄で人を大勢殺しているため、それは直ぐにはできないことであると述べていた。

 

「なればこそだ。状況は絶望的だ。それ故に、我は政治家となるべく国籍と人権を求めた。何故か分かるか?理由は、社会に要らぬ混乱を起こさぬようにするためだ。」

「……どういうことですか?」

 

しかし、朱音はタキリヒメのことを警戒しつつ、どういうことか尋ねていた。

 

「先ず、仮に荒魂の我がこのまま社会から信用されていない刀剣類管理局と協力すれば、どうなると思う?荒魂討伐を生業とする刀剣類管理局は荒魂と手を組んだと見るだろうな。となれば、刀剣類管理局の信用は更に失墜することとなり、社会は混迷を極め、最悪国家機能は麻痺するかもしれん。そうなれば、荒魂討伐は勿論、お前の言う人と荒魂の共存共栄は達成することが難しくなるだろう。……であるならば、我が国政に打って出て善政をし、人々の荒魂に対する認識を変えてから刀剣類管理局に協力した後、荒魂と人間の共存共栄を邁進するのが最良であると考えたからだ。」

「……つまり、人々の信用を得るために政治家となり、そのためには人権と国籍が必要だったということですか?」

 

タキリヒメは人々からの信頼を勝ち取るために政治家になるということを決意したと朱音に答えていた。そして、これは刀剣類管理局のためになるとも……。

 

「そうだ。我はお前達に手を携えて、協力しようと提案するために此処へ呼んだのだ。共に多くの病根に犯された国を救うべくなっ!」

 

そしてこの国を救うべく、可奈美と姫和、そして朱音の三人の協力を得るべく此処へ呼んだのだと答えるタキリヒメ。

 

「……どうやって救う気なんですか?」

 

そのタキリヒメの答えに、朱音はどのようにしてこの国を救う積もりなのか尋ねていた。

 

「そうだな。では、可奈美。お前は御刀を今は何処で手入れして貰っている?」

「……信頼している砥師です。」

「そうだな。姫和は?」

 

可奈美の答えに満足したのか、タキリヒメは姫和に可奈美と同じ質問をしていた。

 

「……私もだ。」

「そうだ。皆、壊れた物が有れば、信頼している者や店に送り、直してもらっているのだ。それは可笑しなことではない。この者が責任を持って直してくれていると信頼しているからこそ、彼女達以外の者もそういった理由で信頼している砥師や青砥館といった信用している店に送り、責任を持って直してもらっていると理解しているのだ。……ところがこの国は何だ?皆が信用し、声高らかに耳障りの良いことを騒ぐ連中。そやつらが吐く言葉は決まってこうだ『差別を無くそう。』『経済の対策をすべきだ。』とな。しかし、そんな脆弱な彼らに最も重い責務を伴う政治を任せた瞬間、この国はどうなった?彼らは税金を上げ、若者を貧しくさせ、低賃金で働かせる労働者を余所から騙して連れて行き、その者達の雀の涙ほどの利益を貪るうえ、少々の利権にしがみつく傲慢な金権主義者そのものだっただけではないか。そして、彼ら金権主義者共はこの国を絶望的な状況にまで瀕しさせた責任すら取っていない!それ故に、国民は「今、選挙に行っても何も変わらない。」「社会主義国家のようだ。」と言われるほど今の政治を信用していない。彼等は信用されている砥師や青砥館以下のカスだっ!!……その証拠に、彼ら金権主義者の言う言葉とは裏腹に、この国は今では失業者は溢れ、次世代を担う若者は高い税金によって更に貧しくなるという20年前より絶望的な状況を創り上げただけではないか!?」

 

そうして、タキリヒメは今の政治を批判し、

 

「こんな絶望的な状況に在る国の出生率は地を這う状態であるが無理も無い!こんな絶望的な状況に在る国に誰が子供を産み、育てたいと思う!!そうだ、この絶望的な状況を打破するためにこの国は生まれ変わらねばならない。誰もが時代の夜明けを感じる変革が必要なのだ。国民に信用され、確固たる信念を持つ力強い指導者がこの国には必要なのだ!!国民と国家が一体となるほど、国家は国民に信用されねばならない。何故なら、選挙に行っても何も変わらないというあやふやな心情が蔓延る絶望的な世界なのではなく、国民が国政に参加しているという強い意志を持つ力強い国の元で、素質や命を連綿と受け継ぐ子供達に明るい未来を提供するため、今直ぐにでも腐敗した政治を打破するほどの変革をする力強い指導者が必要なのだ!!」

 

刀使の殆どが腕が良いことで信頼して、御刀の柄巻き等を新調して貰っている青砥館を例に出して、この絶望的な状況に在る国を力強く信用されている指導者の下で絶望的な状況を打破することができる変革を促すことで、国民の支持を得ると同時に信用を得ようとし、そのための指導者になろうとしていたとタキリヒメは説明していた。

しかし、タキリヒメに「こんな絶望的な状況に在る国に誰が子供を産み、育てたいと思う!!」という言葉に反応した姫和は、相馬原駐屯地の宿舎で優に言った“人は人と交わり子を成す”等のことを言ったことを思い出し、タキリヒメの言っていることがどこか事実であると感じ、心苦しく思っていた。

 

……だが、姫和は気付いていない。荒魂の話しに聞き入ってしまっている自分が居ることに。

 

「しかし、その指導者は力強さだけではなく、国民から強い支持を得なければならない!!それには、不法移民等の問題を解決し、支持を得ると同時に、この地に古くから住まう民からも支持を得なければならないのだ。だからこそ、荒魂である我が起たねばならないと確信したのだ。全ては荒魂と人間の境界線を取っ払った理想郷を体現させ、どんな時代よりも、どんな国よりも強固な国家を創らねばならないためだ!!そのために、我はこの現世に荒魂として生まれたのであり、その宿命に従い力強い指導者となることを決意したっ!!!」

 

タキリヒメは熱弁する。

若者は貧しく、高い税金に苦しみ、失業者に溢れるという絶望的な状況下では、出生率が地を這うように低いのは仕方がないことであると。だが、自身が大荒魂から分かれ、この世に現れたのは宿命であり、その宿命に従い力強い指導者となって、荒魂と人間が共存共栄することで、この国を強固な物へと変貌させ、この国を絶望的な状況から脱すると熱く語っていた。

 

「……その指導者になれるのですか?」

 

タキリヒメが言う“指導者”とは、己自身のことを言っているのかと尋ねる朱音。

 

「そうだ。……嘗て、悪魔と呼ばれたヒトラーやスターリン、ポル・ポトという“人間”は我以上に非道な者であるが指導者になれたと聞いておるぞ?」

 

タキリヒメはそう言って、過去の人間の指導者の悪い部分を挙げて、朱音に反論していた。

 

「それに、我がこの国の指導者となり、今よりも豊かな国になれば国民の意識も変わる。そうなれば、世論は荒魂をとにかく恐れるという考えから、融和政策を支持するようになるかも知れんぞ?そうなれば、優という少年の待遇は少しでも良くなるのではないか?」

 

タキリヒメは此方につけば優の待遇が良くなると言って、優の姉である可奈美と優のことを気にしているであろう姫和を攻略しようとしていた。

だが、タキリヒメは事前に姫和のことを調べており、父親がSTT(特別機動隊)の隊員で荒魂によって殉職し、母親もタギツヒメを封印する際に命を落としているというのに、タギツヒメと融合している優を姫和が斬ろうとしないところから、何かしら負い目を感じていて斬ることができない状態なのだろうと推察しており、先ずは姫和から説得しようと決めていた。

 

「それにだ。誰がこの国にS装備といった技術をもたらしたと思っている?誰が隠世技術の恩恵をこの国に授けたと思う?我がこの国の指導者となれば隠世技術は独占することができ、その技術力でこの国をもう一度、経済大国として再び蘇らせることができるのだ。それに、我は四ヶ月前はノロを支配下に置き大人しくさせ、殉職する刀使の数と荒魂による被害は激減させていたのだぞ?我がこの国の指導者となれば荒魂を中心とした防衛組織を創設し、この世界の兵器が効かない無敵の部隊を指揮することもできる。そうなれば、離島防衛等も荒魂に任せることができ、年々増加している自衛隊と刀使の負担も減り、防衛費といった政府の歳出を減らせられる。……これによって、国の歳出を減らすと同時に隠世技術による利益で国民は税金という負担から逃れられることができ、その蓄えた力で不況という暗い世界を打破するのだ。……こんなことができるのは、荒魂である我だけだ。そう考えれば、我につくだけでこの国に多大な貢献をし、国民の生活を守っているのと同じことだ。」

 

タキリヒメはS装備といった隠世技術をこの国の発展に使ううえ、この国の防衛力に荒魂を使えば銃弾といった近代兵器が効かない無敵の武装勢力を創設することができ、これによって年々増加の一途を辿る刀使と自衛隊の負担を減らし、防衛費等の政府の歳出を削減すると共に税金を減らすことによって、再び経済大国として復活させると述べつつ、朱音達に近付いて行った。

 

それを見た可奈美は御刀を構えて、タキリヒメを警戒していた。

 

「待て待て、我は話しをするだけだ。」

「!…信用できるか!!」

 

可奈美の様子を見たタキリヒメは手を上げて、朱音には危害を加えないと身体で表現していた。しかし、可奈美を見て慌てて構えた姫和はタキリヒメの話しをもう少し聴きたいと思う心を抑え込むように、激昂しながらタキリヒメのことを信用できないと答えていた。

 

「二人とも!…構えを解いて下さい。」

 

朱音に構えを解くようにと命令された可奈美と姫和は渋々といった感じで構えを解いていた。

 

「……タキリヒメ、申し訳ございません。」

「構わん。我も図々し過ぎたかもしれん。」

 

タキリヒメはそう言うと、三日月宗近と大典太光世を隠世から取り出すと、綾小路の刀使に向けて投げていた。

 

「お前が持っていろ。」

「うわわっ!?」

 

その綾小路の刀使はタキリヒメの突然の行動に驚きながらも何とかキャッチしていた。

 

「ねぇぇぇ!タキリヒメ危ないじゃん!!」

「煩いぞ、我の従者なら、それぐらいどうにかしろ。」

「御刀投げる奴が偉そうなこと言うなっ!バカァッ!!」

 

綾小路の刀使は恐れ知らずなのか、タキリヒメに抗議していた。

 

「……失礼ですが、あの方は?」

 

しかし、朱音はタキリヒメに話しかける綾小路の刀使は何者なのかと尋ねていた。

 

「ああ、アレは田辺 美弥とかいう一介の我の従者だ。」

「違いますっ!私は綾小路武芸学舎中等部一年の刀使田辺 美弥と言います。朱音様っ!!」

「「「……………。」」」

 

涙目になりながら朱音に訴えかける美弥。それを見た朱音達は何とも言えない気分であった。

 

「私、あの人というか、タキリヒメのことを本部に連絡したら、国の偉い人達からタキリヒメと一緒に此処に居ろと言われて途方に暮れていたんです……。」

 

この美弥という刀使はタキリヒメと偶然に出会い、本部に連絡したのが運の尽きであった。

本部に連絡し、タキリヒメを送ったら、突然タキリヒメから「あいつは我の従者だ。」と言われたことと、秘匿されている部分の多い二十年前の大災厄を引き起こした大荒魂と接触したということで図らずも機密に触れたことで美弥はタキリヒメと共に此処に監禁されていた。

 

「……ああ、歩ゴメン。一緒に頑張ろうって約束したのに。」

 

なんでこんなことにと嘆きながら、俯く美弥。それを見た朱音はタキリヒメに彼女のことを再度尋ねていた。

 

「……あの、彼女とはどういった関係で?」

「あの女は我の従者として使っている者だ。………まあ、どのようにして出逢うことになったか、説明しよう。」

 

タキリヒメはそう言って、綾小路武芸学舎中等部一年の刀使田辺 美弥との出会いから、どのように従者の様に扱うこととなったか話そうとしていた。

   

   




  
  
姫和「人は人と交わり子を成す。そして素質や宿命を連綿と受け継いでいく。私や可奈美がそうであるように。」
タキリヒメ「こんな絶望的な状況に在る国に誰が子供を産み、育てたいと思う!!」


こういう会話をさせたかったので、少し満足。
   
  

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